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のらのら

男性 - 東京都

はじめまして。レビュー開始から一年が経ち、二年目の目標を全国制覇にしました。一杯のラーメンに出会うまでの経緯も書き記しているので、前置き等が長くなりがちですがお許しください。しかし採点に関しては立地 接客 衛生面 価格設定などは考慮せずに、ラーメン一杯に対しての評価にしています。自分の好みだけで評価しているので不快な文面もあると思いますが、何卒宜しくお願いします。

平均点 73.429点
最終レビュー日 2019年7月18日
567 459 14 1,844
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「味玉ワンタン麺 ¥950」@麺屋かなでの写真日曜日 小雨 17:45 先客2名 後客なし

〝ニューオープン パトロール〟

昨日あいにくの雨の中を初訪問した際に突然の昼営業中止の貼り紙を見て愕然としたコチラへのリベンジの為に、二日ぶりに立川駅まで戻ってきた。

本日は赤坂の劇場にて知人の舞台を観劇したあと普段は出来るだけ夜ラーを避けているのだがコチラの新店が当分の間は夜営業だけとの事なので、やむを得ず夜の部を目指してやって来たのだ。前回と同じく小雨がそぼ降る中で、まだ道順の記憶も新しいので道に迷う事もなく変則的な五叉路の交差点の脇に佇む店先が見えてきた。

前回と明らかに違うのは三角地帯の建物の側面にある看板が明るく照らされているのと、ガラスの扉が全開になっていて暖簾も掛けられている点だ。遠くからでも営業している事が分かり、ひとまずはリベンジの態勢は整った。

店内に入ると左手の券売機の中から品定めをするが、せっかくなので味玉とワンタンが入った贅沢メニューを発券してカウンターに腰を下ろした。店内を見渡すと飲食店の居抜き物件なのだろうか、現時点では使用されてないが二階への階段があり厨房内には配膳用エレベーターの名残りもあるので中華料理店の跡地にも思える。そんな調理場内のガス台では、沸騰させないように一定の温度を保ちながら寸胴鍋でスープが炊かれている。店の看板には鶏のスープと書かれていたので鶏出汁と思われるが、寸胴鍋の小ささが不思議に思った。本日はお二人で切り盛りしているが調理工程の全てを店主さんが担っていて、女性スタッフはカウンターを丁寧に拭いたりと片付けを中心に行っていた。カウンターの壁が高いので調理の手元は見えないが、期待に胸を膨らませて待っていると着席して5分で我が杯が到着した。

その姿は白磁の高台丼の中で、素朴な店の雰囲気とは違ったトレンドのド真ん中の姿を見せていた。それは悪く言えば〝またおま系〟にも見える景色ではあるが、どことなく野暮ったさがあり親しみやすくも感じられた。見た目からは、ある程度の味を想像が付きながらレンゲを手にした。

まずはスープをひとくち。液面には大量の鶏油が覆っていて、その下に閉じ込められたスープは清湯と呼ぶには少し曇りがかっている。そんな油膜を破るようにレンゲを沈めてみると、目に見えるほどの白い熱々の湯気が立ち昇ってきた。その中には丸鶏由来の香りがふくまれていて、まずはビジュアルと香りが一致した。その香りはレンゲが口元に近づく距離に比例して大きくなってくると、口に含んだ瞬間に鶏主体の味わいとなってビジュアルと香りがと旨みの全てが脳内で合致した。そんな中に独特の野趣も感じるのは鴨も使われているのだろうか、鶏だけではない厚みも出ている。かなり甘みとコクを際立たせた設計図となっているが、合わせた醤油ダレが酸味を持っているので飲み込んだ後は意外とさっぱりしていて飲み心地のとても良いスープだ。

続いて麺を持ち上げでみると、麺上げまでジャスト60秒の中細ストレート麺が現れた。箸先からも強いハリを感じられ、麺肌には多めの鶏油をまとって光り輝いている。そんな美しい麺を一気にすすり上げると、麺自体は軽やかな口当たりではあるが、鶏油が潤滑油となっているのでスピード感がある。やや低めの加水率と思われるが、淡白な印象の舌触りをサポートするように鶏油が潤いを与えてくれる。この組み合わせが功を奏して順調に箸が進んで食べ飽きさせないが、どこかで似たようなラーメンを食べた事を思い出した。それは都内はもとより、最近では横浜にもオープンした出店ラッシュが続いている「らぁ麺 はやし田」のラーメンだった。思い返せば初見のビジュアルもワンタンがなければ瓜二つだったので、何らかの関係性でもあるのだろうかと思ったが定かではない。

次にそのワンタンを口にしてみると鶏に特化しているかと思いきや、豚ひき肉で仕込まれていた。生姜などの香味野菜は控えめにして豚ひき肉の旨みで勝負してある。ワンタン皮から透けて見える赤身の強い肉質は、鮮度が良いので豚肉本来の旨みだけで十分に味わい深いワンタンとなっている。包んだ皮の滑らかな舌触りとパワフルな肉餡のコントラストが食感の面でもインパクトを残してくれた。

それに比べると二種類のチャーシューは好みから外れていた。まずは鶏ムネ肉の方だが、低温調理なのだろうがパサついてしまっている。温度設定か加熱時間の長さなのか分からないが、鶏ムネ肉のタンパク質が固まってしまっていた。下味の希薄さも手伝って味気なさばかりが目立っていた。一方の豚肩ロースも同じ低温調理と思われるが、こちらもしっかりと加熱されていた。もしかしたらレアチャーシューだったのかもしれないが、盛り付け方がスープに浸されているので熱々のスープで加熱が進んでしまったとも思えたが確かめる術はない。味も薄いので両者ともに物足りなさが残ってしまうチャーシューだった。

また味玉にも「はやし田」を思い起こさせる要素があったのだ。それは黄身の色の濃さがパプリカ色素による卵だったので、グループ店でも使われている〝マキシマムこいたまご〟だと思われる。そんな共通点からも、ついつい修行先を想像してしまった。そんな味玉は非常に柔らかい白身と、とても大きな黄身が印象的だ。歯を立てずとも唇の圧力だけで割れるような味玉は、漬けダレはしっかり浸透しているが不思議と浸透圧による硬化をしていない。好みの熟成感はなかったが面白い仕上がりを見せる味玉だった。

メンマも見慣れた感の拭えない穂先メンマで仕込まれていて、薄味ならではの発酵臭が残してあるタイプだった。香りと食感の両面で程よいアクセントとなっていた。

薬味は青ネギを使われているが券売機のメニューにある九条ねぎが販売中止になっていたので仕入れが不足していたのだろうか、残念ながら少なめに添えてあるだけだった。さすがに香りも高く舌触りも繊細だったので、次回は追加したいと思える抜群の薬味だった。

中盤からも慣れ親しんだと言っても良いような確立された味わいのままにスープと麺には満足だったが、チャーシューのコンディションか今回分だけかもしれないが好みと違っていたのが採点が下がった理由だと思いながら箸を置いた。

店を出る時にもう一度券売機を見直してみると試作中のメニューなどもあるようなので、多彩なジャンルのメニューで地元ファンに根付く事を想像する一杯でした。

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「特製醤油ラーメン ¥1120」@麺屋 武嶋屋の写真土曜日 曇天 11:20 先待ち7名 後客12名

〝ニューオープン パトロール〟

本日は難攻不落と思われた秩父で産声を上げた新店攻略のために所沢に前泊している。RDBの新店情報で見つけたこちらへの初訪問するには自宅からでは移動時間がかかるので、昨夜は深夜1時を越えた頃に所沢に乗り込んできた。

日本国内で二ヶ所しかないらしいサウナの聖地フィンランド産の木材で造られたサウナと、埼玉屈指の冷たさを誇る水風呂を有する宿泊施設で朝を迎えた。水風呂の冷たさは良かったが肝心のサウナの温度が今ひとつ熱さが足りずで肉体的は整いきれずで残念だったが、食事処の生ビールは裏切る事なく精神的には完璧に整った。

翌朝は西武秩父駅までの最短ルートとなっている所沢 9:52発 西武池袋線特急 ちちぶ9号にて向かう予定でホテルをチェックアウトしたのだが、三連休の初日なので有料特急は満席でチケットを予約してない事を悔やんだ。仕方なく小刻みに各停電車を小手指と飯能で乗り継いで向かう事になった。

休日の西武秩父線の車内は行楽を楽しむ家族づれや女子大生の仲良しグループの日帰り旅行でワイワイと賑わっている。そんな車内でラーメン一杯のためだけに秩父を目指しているのは私だけだろうなと思うと切なくなってきた。

少しセンチメンタルになりながら変わりゆく車窓の景色を眺めていると、最寄りの西武秩父駅に所沢駅を出てから1時間半程かけてたどり着いた。トレッキングシューズを履かずに秩父駅に降りたのは初めてかもしれないと思いながら、開店まで時間に余裕があったので久しぶりの秩父駅を見て回った。かなり立派にリニューアルされて食事も楽しめる温泉施設が併設されていて、以前のイメージとは全く違う風景になっていて驚いた。そんな施設内の食事処は昼時を前に多くの観光客で賑わっている。中には味噌ラーメン店も出店しているので、もしも目的の新店が臨時休業であってもリカバー出来ると妙な安心感が生まれた。

定刻の10分前になる頃に、いよいよ目指している店へと向かってみた。駅からはほんの数分歩くとパチンコ店の新装開店かと思うような、都内の開店祝いでは見かけなくなった大きな花輪がすごい数で出迎えてくれた。出迎えてくれたのは花輪だけでなく、大勢の開店待ちの行列もあった。失礼ながら、こんな所に開店待ちが出来ているとは目を疑ってしまった。待っている方々は偶然にもお知り合い同士のようで、会話の内容などから地元の方と思われる。そんな地元客の期待を一身に集めている新店なのだろうと、よそ者ながら私も期待を込めて最後尾を探した。

店頭には外待ち用の受付シートが置かれているが誰も記入せずに整列するでもなくバラバラに待機しているので最後尾が分からずに、少し間隔をあけてそれらしく開店を待つことにした。すると定刻よりも5分も早く暖簾が掛けられオープンとなった。

後待ちがなかったので先客が入店するのを見届けてから八番目で店内に入った。入口右手に設置された券売機の中から最上段に位置するのが醤油系だったのでためらう事なくメニューは決まったが、せっかく秩父まで来たので贅を尽くした特製のボタンを迷わず押した。ホールスタッフさんから「お好きなカウンター席へどうぞ」との事なので少しでも調理風景が見えそうな席を選んで腰を下ろした。

カウンター越しに店内を見渡すと新店舗らしく新しい木の匂いが残る客席は、カウンターよりもテーブル席を多く設けた複数人向けのレイアウトとなっている。所々に焼杉板を使われた内装はシックな落ち着きを感じさせてくれるが、打ちっ放しのコンクリート床と椅子の脚が擦れる音が大きく響くのが居心地の良さを半減させてしまっている。そんな店内を本日はオープン直後の週末なので、万全の六人体制の強化布陣をとっている。本日は土曜日という事でホールスタッフには初々しい学生バイトさんが実践を交えながら研修中のようで、慣れないオペレーションながらも着実に配膳が進む様子を眺めていると着席して20分で我が杯が到着した。

その姿は白粉引の八角丼の中で特製ならでは豪華布陣で出迎えてくれたが、少しやり過ぎではと思ってしまうような要素も含んで見えた。それだけお客様に喜んでもらおうという、店主さんの思いの表れでもあるとも感じながらレンゲを手にした。

まずは赭色のスープをひとくち。液面の油膜には細かな豚背脂と思われる脂片が浮かんでいて、強めの動物性を感じ取った。レンゲを落とし込んだ指先の感覚からは濃度の低さを感じるが、レンゲに注がれたスープには多めの香味油が伴ってきた。そんな四つ足系に思われるスープを口に含んでみると、意表をついて魚介系の香りが先行してきた。魚介系の中でも鰹節の香りが主で、節粉ではなく削りがつお由来のものと思われる。和出汁感の強いスープを支えているのはオーソドックスな鶏や豚主体の動物系清湯スープで、土台はしっかりとしているがクセにも感じる獣特有の臭みも潜んでいた。合わせる醤油ダレも少し強めに思われたが、塩っぱいほどではなくスープを引き締める役割を担っている。旨味の底上げも感じてしまったが、動物系と魚介系の基本的なWスープに仕上げてあった。

スープによって様々な麺を使い分けられているが醤油系には中細ストレート麺が採用されていた。麺上げまで60秒の中細麺を箸で持ち上げてみると、少しウェーブがあり透明感を見せる麺肌は丸みを帯びてグルテンが詰まっていそうに感じた。そんな麺を啜ってみると想像した通りの滑らかな口当たりで滑り込んできて、昔の中華麺にも共通するような啜り心地を思い出した。本日の客層が高齢だったので、皆さんにも馴染みのある麺質なのではと想像した。とりわけ小麦の香りが高いとか素材の甘みを感じるといった麺ではないが、幅広い年齢層に受け入れられるタイプの麺を採用されていた。オイリーな油膜の力を借りて口の中に飛び込んできた麺を噛みつぶすと、もっちりとした跳ね返りが食べ応えを強くしている。特別な個性がないのがかえって個性的にも感じるような麺だと思った。

具材のチャーシューは部位違いで二種類三枚が盛り付けてあった。いちばん手前には豚肩ロース焼豚が煮豚ながらも赤身がパサつくような事なくしっとりと仕上げてあり、味付けも適度に乗っており存在感のあるチャーシューだった。残る二枚は豚バラの煮豚型だったが、煮汁の味の薄さなのか豚バラ自体の質の悪さなのか獣臭が出てしまったいた。部位的には赤身と脂身のバランスの良い部分だったが、チャーシューとしての出来映えとしては私には残念な仕上がりだった。

初見で少しやり過ぎと思えた具材の味玉は、特製なのでだろうが一個半も盛り付けてあった、
きっと基本の醤油ラーメンでも半個入りなのだろうが、特製だからといって更に一個追加する事はないのではなかろうか。決して量が多くて文句を言っている訳ではないが、好みと違った固茹でたまごだったので不必要に思ってしまったのだ。

メンマは極太タイプを使われていたが手仕込み感はなく一般的な甘みを利かせた味付けは安定感はあるが、ここならではのメンマと言った仕上がりでなく残念だった。

薬味の白ネギは粗々しい切り口が素朴さを感じさせて、食感や辛味の面でも良い意味で〝洗練された〟とは真逆の野趣を味わえた。また清涼感を付け加えてくれる黄柚子の皮も彩りと共に爽やかな香りを中盤から与えてくれたが、この時期には黄柚子は珍しいのでハウス栽培の柚子だろうか。栽培方法や品種の改良で、食べ物の旬が曖昧になってきた事を実感する。

青みにはカイワレが少し添えてあったが、気が付けば食べていた程度の存在感しかなかった。提供時にはすでに丼に張り付いてしまっていた海苔は、ばら海苔のように溶けが早く香りも無かったので質の高さは感じられなかった。ナルトに関しては今回も口にする事はなかった。

中盤と言わず序盤から不要な旨味が箸の動きを妨げてきたが、なんとか戦いながら麺は大方食べきったがスープは残してしまった。

周囲を見ると極太のつけ麺や、中太麺の味噌ラーメンなどを楽しんでいる地元客で賑わっていた。こちらの店のもう一つのウリでもあり、屋号の由来と思われる有名店で修行された〝いなり寿司〟を食べている客がいなかったのが不思議に思いながら席を立った。関西ではうどんにおいなりさんの組み合わせをよく目にするが、ラーメンにいなり寿司のコンビが早く地元に根付いて欲しいと思いながら店を後にした。

今回は秩父観光をするでもなく次発のレッドアロー号にて帰路に就いたが、途中駅の飯能までを後ろ向きで走ると初めて知って驚きと戸惑いを感じる事になった一杯でした。

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「ラーメン 並 ¥600 +半熟味玉 ¥100」@中華そば つけ麺 音七の写真平日 小雨 10:55 待ちなし 後客7名

〝ニューオープン パトロール〟

久しぶりの八王子界隈での新店情報を元に昨夜から連食計画を実行している。もはや中央線遠征時の西の拠点として大活躍してくれている荻窪の宿に前泊して乗り込んできた。

昨晩はチェックインが深夜を回っていたので、大浴場でひとっ風呂浴びると大人しくベッドに入った。翌朝は少し早く目が覚めたので長めに朝風呂を楽しもうと思ったのだが、今朝の大浴場は塩素系の刺激臭が漂っていて目が痛いと感じるほどだった。仕方なく早々に風呂を上がり館内でコーヒーを飲みながら新店の予習を兼ねてRDBを開いてみる。

お店情報では武蔵境に半年ほど前にオープンしたばかり店ののグループ店となっているが、半年で二軒目とは勢いの良さを感じずにはいられない。武蔵境の方は存在は知っていたが未だに行けずの課題店なのだが先に2号店に伺う事になるとは、たった今気づいたのだ。しかし当初の計画は変えられずに初訪問を決めたのだ。

11時開店前の現着を目指すとしても前泊した荻窪からだと30分ほどで着く計算だが、本日は中央線の遅延情報が入ってきたので早めにホテルをチェックアウトして向かう事にした。10時前にホテルを出て荻窪駅に向かうと10分ほどの遅れが上下線ともに出ていた。とりあえず先へと進もうと最初に来た各停の高尾行きに乗り込んだ。途中駅で特急の待ち合わせなどのアナウンスもあったが、快速などの仕組みが今ひとつ分かっていないので多少の時間がかかったとしても各停で確実に先へと進んだ。

荻窪駅を出てから予定よりも時間はかかったが50分程で最寄りの八王子駅まで来た。この時点で定刻の10分前だったので慌ててナビを片手に店を目指した。大きなマンションに阻まれて最短ルートが分からずに迂回を強いられたが、何とか定刻5分前にたどり着けた。運良く並びも出来てなかったので先頭にて待機をはじめる。

ここがビッグターミナル八王子駅のそばとは思えないような味わいのある裏通りの中に、より一層に味わい深い佇まいの店構えを見てるだけで気持ちが落ち着くようだ。敷地面積を最大限に活かしたい極薄のかまぼこ板のような建物の中には、窓ガラス越しに小綺麗なカウンター席が見られる。店先に貼られたメニューを見ながら待っていると2分早くオープンしてもらった。

真っ白な暖簾をくぐり店内に入ると目の前に小型の券売機が置かれてあり、迷う事なくマイスタンダードのラーメンのボタンを押して好物の味玉のボタンを探してみる。一度最下部まで目線を落としたが味玉ボタンが見つけられず、もう一度よく見直してみると他のトッピングと共通になっているボタンを見つけた。その横には味玉半分50円のボタンもあったが、ここは100円で一個の方を選んだ。

自由着席でカウンターに腰を下ろして店内を見回してみる。やはり客席のカウンターは狭小で、背後のスペースは配膳するのに人が通れる最低限の間隔しかない。目の前の壁紙には石積みのクロスが貼られて、不思議な重厚感も醸し出している。新店舗の改装に伴って設えられたカウンターには清潔感があり居心地よく待つ事ができる。そんな店内を本日は二人で切り盛りされている。

店内左手奥には独立した厨房スペースがあり店主さんが腕をふるっている。一番奥には業務用の茹で麺機が設置されているが、なぜかガス台の上には三台の両手鍋で常にお湯が沸かされている。初めはスープを炊いているのかと思っていたが調理が始まると、その理由がすぐに理解できた。屋号にもあるようにメニューの二大看板であるラーメンとつけ麺に使われる麺の太さが随分と違うようで、卓上の説明書きにも茹で時間の違いが記されてあった。ラーメンの細麺は2分、つけ麺の極太麺はなんと14分となっている。東海道新幹線ならば、品川から新横浜を過ぎたくらいまでの茹で時間が書かれていた。それならば客席が少ないといっても麺上げのタイムロスを防ぐ為には必要な鍋なのだった。

厨房の全貌は見えないまでも、そんな創意工夫された調理工程を想像しながら待っていると着席して6分の第1ロットにて我が杯が到着した。その姿は初めてお目にかかるタマネギをモチーフにしたデザインの切立丼で登場した。輪切りや、くし切りにカットされたタマネギが描かれた器は、八王子ラーメンにお似合いのコンビで面白くも新鮮に映った。絵柄の中にみじん切りがあれば更にマッチしたのにと、余計な事を思いながらレンゲを手にした。

まずは唐茶色のスープをひとくち。液面には非常にドットのきめ細やかな香味油が浮かんでいて、店内の光を跳ね返している。油膜は多く見られるが粒子の細かさからオイリーな印象はないままにレンゲをスープに沈めてみる。表層が波打ったと同時に薬味のタマネギの香りが湯気に交じって先行して鼻先に届くと、自分が八王子にいる事を再認識させられる。視覚 嗅覚 味覚の全ての受け入れ態勢が整ったところでスープを口に含んでみると、ゆっくりとした助走のような始まり方が印象に残る。動物系のスープや魚介出汁の旨みが穏やかに感じられるが、何一つとして強要してくるような旨みではない。カエシの塩分もかなり抑えてあるので、物足りなさを感じる人もいるのではと思ってしまうくらいのスロースタートだ。過度な初動のインパクトを求めない私ですら味を探ってしまうような優しい味わいと思ったのも束の間、次なる旨味が潜んでいたのだ。ある程度は覚悟してきたのと、過剰な使用量ではなかったのが幸いだった。

続いて麺を持ち上げてみると、全粒粉のフスマを配合された色づきの良いストレート細麺が現れた。箸先に見えるのは切刃のエッジが微かに残った角のある麺肌と、あまりハリやコシの強さを感じない柔らかそうな麺質だ。この麺の形状で麺上げまで120秒なら茹で過ぎではと思ってしまうような箸を持つ指先の感覚だった。やや不安になりながら麺をすすり上げると、麺肌のグルテンが滑らかさを与えて勢いよく滑り込んでくる。懸念された柔らかさは、ひとくち目でもピークを少し過ぎているのではと思うような柔らかさだが、これが店主さんの狙った茹で加減なのだろう。個人的な好みとは違っているがスープの相性を考えると、柔らかに溶け出したグルテンがスープを良く吸っているので一体感は確かに素晴らしい。あまり見かけない製麺所の麺箱が積まれていたので、地元八王子ならではの麺質なのかもしれないと思った。

具材のチャーシューは豚肩ロースの煮豚型が大判のままで一枚盛り付けてある。赤身中心の部位なので柔らかく仕込まれているが、肉質の繊維を感じられる歯応えも残してあり食べ応えは十分ある。味付けも派手さはないが堅実に、スープや麺に寄り添った醤油の風味と豚肉本来の旨みでサポートしている。

追加した味玉は別皿で提供されたが記念撮影用にオリジナルで盛り付けてみたので、これはあくまで撮影上の演出です。最初から半カットされているので食べた時の驚きは半減するが、半カットならではの利点も感じられた。それは冷たいままで出てきた味玉だったが、ラーメンの中に盛り付けるとスープの熱を借りてすぐに温め直されいた点だ。ひと通り麺や具材を味わっているうちに味玉を食べる頃には適温まで温まっていたので、ノーカットの味玉ではこうはいかなかっただろうと半カットに感謝した。それほどに味付けもゲル化した黄身の熟成感が味わえて、追加して良かったと思える味玉だった。

メンマは不揃いな大きさが食感の違いを生んでいたのと、手作り感のあふれる味付けがうれしい。味付けの好みは多様にあるとしても、この手仕事感は業務用では味わえない最高の調味料だと思えた。

大変小さくはあるが良質の海苔も添えてあり、口溶けは良いが、スープに浮かんでも溶け出すような粗悪海苔とは違って素晴らしい。

薬味は〝ならでは〟のタマネギのみじん切りが分量も程よく添えてある。生タマネギ特有の辛味や刺激を残しつつも、鮮度の良い細やかな切り口が舌触りを穏やかに抑えている。またタマネギファンのために穴あきレンゲが用意してあり、丼底に沈んだ一片のタマネギまで見逃さないように配慮してある点もありがたい。スープを飲む事を諦めた私にも大変重宝した穴あきレンゲだった。

最後まで穏やかさの中に見える不自然な旨味とせめぎ合いながら麺と具材は完食できたが、スープだけは残してしまいレンゲを置いた。

後続の客人の中にはつけ麺をオーダーしている方も多くいたが、私が食べ終える頃でもまだ配膳されていなかった。さすがに14分の茹で時間となると回転率は必然的に悪くなりそうだと思った。一番客の私が席を立つ時には外待ちが発生していたが、これから夏場に向けてつけ麺需要が更に増えてくると回転率の悪さが店の存続に影響しないかと思ってしまった。

このあと連食計画を立てていた立川の新店を訪ねると、まさかの夜営業のみとの案内があり前泊してまでの中央線遠征は失敗のまま幕を下ろす事になってしまった一杯でした。

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「味玉 鯛コク正油らぁ麺 ¥850」@麺処いっ歩の写真平日 曇天 13:30 先客8名 後客3名

〝ニューオープン パトロール〟

午前中に浅草は国際通りに移転オープンされた新店での一食目を終えるとすぐに、前泊してまでの連食計画を立てておいた二軒目のコチラに向かった。

先程と逆ルートのバスで上野駅まで戻ってくると、京成線にて最寄りの堀切菖蒲園駅に着いた。しかし前食の浅草からの移動時間も30分ほどだったので連食スペースがなく駅前で時間をつぶす事にした。人生初の駅前には大手コーヒーチェーン店がなく個人経営の喫茶店すらも見つけられなかったので、仕方なくハンバーガー屋でコーヒーだけを注文して時が経つのを待ちながら新店情報を予習しておく。

RDBのお店情報によると、レビューは少し挙がってはいるがメニューなどの情報がなく謎めいた新店なのだ。それならば、何の予備知識も持たない丸腰のままで初訪問するのも面白いと思い情報収集を諦めた。前食から二時間を経過すると、ようやく小腹も空いてきたので駅前を離れて店を目指した。

すると1分も歩かないうちに開店祝いの花が賑やかに並んだ店先が見えてきた。大きな看板にはデザインされた屋号が描かれ、白ちょうちんや緑の半のれんが目立つ派手な店構えが出迎えてくれた。昼ピークは外して来店したので行列はないが、ガラス越しに見える店内には多くの客人が見られる。とりあえず入店してみるとバッシング待ちの席があるが、ひとまずは外待ち席での待機となった。

屋外のお茶会などで使われる赤い毛氈の敷かれた長椅子に座り待っているが、歩道に置かれているのでバイクや自転車が邪魔をして歩行者の通行の妨げとなっているのが気になった。すぐに片付けが終わり入店の案内がホールスタッフからあると入口左手の券売機の前で、初めてメニュー構成を知ることになった。複数のスープがある中で一番上に設定されていた醤油系の味玉入りのお題をみつけると、他のメニューには目もくれず発券ボタンを押していた。

店内にはカウンターは設けられておらず、一人客でもテーブル席へと案内されると店内を見渡してみる。調理場は奥に独立しているので調理工程が全く見えないので客席を物色してみると、ラーメン屋らしくないバリ風のアジアンテイストの内装が不思議に映るが居抜き物件なのだろうか。新店舗ではあるが真新しさは皆無で、テーブルの天板も汚れが染み込んでいて油っぽく清潔感はない。一階だけの客席かと思ったら二階に上がる階段脇にはカウンター8席との案内があった。しかし本日は稼働している様子がないので、オペレーションが落ち着いてきたら使用されるのだろうか。そんな新店らしくない店内をホールひとりと調理場二人の三人体制で本日は回している。お揃いではないが黒のTシャツを着た男性三人のオペレーションだ。本日の客層は女子高生と母親や、ご近所感のあるカップルなどと複数客が多く見られる。そんな中で広いテーブルで一人待っていると、着席して8分ほどで我が杯が到着した。

その姿は黒釉薬のシャープな鳴門丼の中で、器の形状からタイトになっている液面で窮屈そうに盛り付けられた景色が印象的である。所狭しと並べられた具材たちはバラエティに富んでいて、やや渋滞気味にも思える姿で待ち構えている。そんな液面にレンゲの落とし所を探しながらレンゲを手にした。

まずは器の色調から本来の色みが判断しづらいスープをひとくち。表層にはフライドガーリックのような謎の浮遊物が見られるので、出来るだけ避けた部分にレンゲを沈めた。狙い通りに純粋なスープだけを注ぎ入れる事ができたので、舌と脳をフル回転させて分析しようと試みた。頭の中にはメニューのタイトルに引っ張られて〝鯛〟のイメージがふくらんでいたが、初見では全くと言っていいほどに感じられなかった。代わりに先行してきたのは鶏ガラ由来の動物系スープの香りと旨みで、その他にも四つ足系の動物由来のコクも追いかけてきた。スープがかなりぬるいので味覚は敏感になっているはずだが、本当に微かに感じるとすれば鮮魚系の鯛の風味である。それでも全体の割合からすれば少しだけなので、加えられているとしても極少量の鯛だと思った。その分の魚介の香りをプラスしていたのがスープに浮かんでいた浮遊物で実際にはフライドガーリックではなく、鰹節か鯛節を砕いた欠片だった。確かにこの欠片を噛むと一瞬にして魚介ワールドに引き込まれるが噛んだ時の食感が悪く、その歯応えは卵の殻を噛んでしまった時や、アサリの砂を噛んだ時の感覚によく似ていて不快で仕方なかった。その後は二度と噛まないように注意しながら食べ進める事になった。

麺を持ち上げてみると、箸先にしなだれかかるような柔らかな感覚が伝わってくる。器の形状のせいもあるだろうがスープの量が相当少ないので、スープの中で柔らかい麺が絡み合ってしまっているのは再考の余地がありそうだ。持ち上げた箸先からも真っ直ぐに垂れるのではなく複雑に入り組んで垂れている麺をすすり込んだが、案の定もたつきながら唇を通過するので期待したすすり心地の良さは感じられなかった。それでも必死にすすり甲斐を求めようと何度もすすってはみたが、現れて来たのは麺からのカンスイ臭だった。もはや口当たりの心地良さは諦めて何かしらの個性を探してみると、思いもよらない組み合わせが口の中でさく裂した。それはカエシの利いたスープの塩気と、柔らかい麺が生み出す小麦の甘みが織りなすハーモニーの奇跡だった。すすり心地は悪くても、スープと麺の相性は申し分なかった。

具材のチャーシューは豚肩ロースで仕込まれた煮豚が盛り付けてある。半カットされているので大判ではないが厚みも残した切り方なので食べ応えもあり、味付けもしっかりしているので食べ応えと味わいの両面で存在感をアピールしようとしていた。

追加具材の味玉は全てにおいて私の中では平均以上の仕上がりを見せていたが、提供温度の冷たさだけは好みに反して不本意だった。スープ自体が熱くないので味玉以外の具材たちも冷たいままに添えられているのは、店側の狙いがあったとしても残念であった。

板メンマは無表情と言いますか、ありきたりな味付けなので業務用味付けメンマの袋を開けただけの気がしてならない。この店でないと食べられないといった代物ではなかった。

醤油系には珍しく茹でモヤシが添えてあったが、物足りない麺の食感に時おり交じるモヤシの食感が変化を与えてくれていた。

薬味陣もバラエティに富んだでいて青ネギと白ネギの両者が小口切りにて入っている。青ネギからは清涼感と白ネギからは適度な辛味を感じられて大きな主張はしてこないが、白ネギの食感はモヤシ同様に麺の歯応えの寂しさを補ってくれた。微量に添えられた糸唐辛子は彩り担当だけなので印象的には薄かった。

海苔もあったが後半にはスープに溶け出してしまうような繊細なタイプだった。板海苔は好きだが、ばら海苔は今ひとつの私には溶けた板海苔は、ばら海苔と変わらない姿になっていて終盤のスープの味を変えてしまった。

ナルトは諸事情により今回も口にしなかった。

最終的には麺は大方食べられたが完食とはいかなかった。ラーメンにインパクトを求める事はないが、もう少し麺の茹で加減でメリハリがあれば食べ飽きる事がなかったように思われる。

今回は序盤での不快なガリっとした食感のせいで食欲を欠いてしまったが、たまたまのイレギュラーだったのかもしれない。夜の部では餃子などのサイドメニューとお酒を楽しめる店のようなので、ご近所さんで活気付く光景が目に浮かんでくるような一杯でした。

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「会津山塩物語 (味玉付き) ¥900」@麺処若武者 ASAKUSA 〜FUKUSHIMA NOODLE STYLE〜の写真平日 晴天 10:45 待ちなし 後待ちなし 後客なし

〝ニューオープン パトロール〟

上野を起点とした二日間を股にかけた壮大な新店めぐりの計画だったが、初日から見事に頓挫してしまった。

昨日から上野駅前に宿をかまえて浅草での一食目を済ませて草加にまで出向いたのだが、まさかの設備工事による臨時休業に見舞われてしまったのだった。そこで本日も草加への再チャレンジしようかとも考えたが、臨時休業の店内では床をはつる様な大掛かりな工事だったので連日の休業があるかも知れず断念せざるを得なくなった。そこで本日は連泊した上野から違うルートの新店めぐりを計画し直したのだ。

昨夜も大人しく上野のネオン街には足を向けずに、老いが進んでいる身体をサウナで整えた。この上野駅前のサウナの特徴は高温サウナと低温水風呂の落差だけではなく、併設された外風呂に置かれたリクライニングチェアに横たわり自然の風で外気浴ができる事である。また夏場のサウナには欠かせない〝冷シャンプー〟と〝冷ボディシャンプー〟も用意されている点もありがたいアメニティのひとつだ。それだけでなく最大限の利点は、毎回チェックアウトの際にもらえるドリンク一杯無料券を使って楽しむ食事処で呑む冷えた生ビールである。昨夜も無料ビールを含めて中ジョッキで5杯ばかり喉を潤すと、時計の日付が変わるのを待たずにベッドに入った。

今朝もサウナとビールで心身ともに整った抜群の体調で目が覚めると10時のチェックアウトよりも少し早めに、本日は路線バスを利用して上野駅前から都バス 上46系統 南千住駅東口行きにて向かう事にした。乗車時間わずか10分程で最寄りの浅草六区バス停に着くと、すぐ目の前に目的の店を見つけた。ちなみに隣は一万円札で汗を拭うお笑い芸人さんの経営するもんじゃ焼き屋なので立地としては申し分ない場所だ。チェックアウトして15分で現着できた移動時間の短さは、前泊しなければあり得ない時短なので前乗りした恩恵を十分に感じた。

定刻50分も前の現着になったので、まだ並びもなく時間もあったので向かいのROXでコーヒーを飲みながら新店の予習を兼ねてRDBを開いてみる。お店情報によると福島二本松の人気店が埼玉川口にて関東進出を果たして一年余りで東京浅草に移転して来たという、何ともややこしくも目まぐるしい経緯をたどっての花のお江戸初出店となるようだ。当日はグランドオープンして四日目ではあるがレビュー数はうなぎのぼりに増えているので、場所柄の利便性と話題性が見事に一致したようだ。そんな話題店に大きな期待を寄せて再び店へと向かってみた。

定刻15分前に戻ってきたが行列はなく先頭にて待機開始となった。店頭にはすでに開店祝いの花はなく通常営業の雰囲気だ。観光地の浅草なので外国人観光客にも分かりやすいように写真付きのメニューがあるのは、系列店を含めて初訪問の私には非常にありがたい。豊富なメニューの字面だけでは分かりずらかったので、ようやくメニュー名と商品が一致して本日のお題を待ち時間に決められた。

定刻の10分前になっても並びは一向に増えないが、店内からスタッフさんが電子タバコをふかしに出て来たので開店準備は万端なのを確信しながら待っていると、定刻になっても店先の様子は変わらないままだ。仕込み中の看板のままなので何かのトラブルかと心配になっていると、3分過ぎて真白い暖簾が掛けられると無事にオープンとなった。

二段式のスライド扉を開けて店内に入ると、入口左手の券売機から決めておいたイチオシであろう塩系の味玉入りを発券してカウンターに腰を下ろした。「お好きな席にどうぞ」という事だったので中央に陣取り食券を手渡すと店内を物色し始める。客席はカウンターだけの造りとなっていて、木目の天板と墨色のタイルが貼られたカウンターがシックな印象を与えてくれる。落ち着いた雰囲気に見える店内だが、背後の壁には地元ふくしまの特産品をアピールするポスターや旧店舗から受け継がれたサイン色紙と並んで新店舗でのサインも一緒に飾られている。そんな落ち着きと賑やかさの両面がある店内を、本日は二人体制で回している。お揃いのユニホームには〝唯一無二の味 極みの一杯〟と刻まれているので、オリジナリティあふれるラーメンとの出会いを期待して待っていると着席して4分で我が杯が到着した。

その姿はプラスチック製の朱赤色の受け皿に乗せられた白磁の切立丼で現れた。切立丼の口縁には古染雲と雷紋が描かれておりシンプルな丼か懐かしさを感じさせる。そんな昔ながらの器の中には、それに見合った清々しいラーメンの景色が収まっている。初対麺なのに昔から知っていたような素朴な表情が、気持ちを自然と落ち着かせてくれてレンゲを手に取った。

まずは女郎花色のスープをひとくち。微かな陰りを持つ独特の透明感を放つスープの液面には、香味油の粒子は全く見られずに豚背脂の脂片がわずかに浮かんでいる。見るからに山あいの清流のようなスープにレンゲを沈めてみると、粘度をみじんも感じさせない軽やかな抵抗がレンゲから伝わってくる。レンゲに注がれたスープにも油膜は見られず香りもほとんど感じない。香りからは味の想像ができないままに口に含んでみると、まさに淡麗とはこの事と言わんばかりの穏やかな味わいだ。ウンチクにもあるように地鶏ベースに貝出汁を合わせて、会津特産の山塩で味を整えたスープである。やはり第一印象で幅を利かせているのは会津地鶏主体の動物系清湯の旨みだと分かるが、六種類もの貝を使った出汁感をそれほど感じられないのが正直な印象だった。貝出汁特有のコハク酸の鮮明に舌に残るような旨みを感じないのは、もしかしたらフレッシュな貝から取った出汁ではなくて干し貝柱のような乾物から取られた貝出汁なのかもしれないと思った。それならばインパクトは少ないにしろ、落ち着いた深みのある貝出汁に仕上がっていても不思議ではないと思った。そんな優しい鶏と貝のWスープに輪郭を与える塩ダレには、岩塩や海塩ではなく山塩をあわすことで唯一無二の個性を発揮させている。舌先や喉に対する刺激が少ないのが山塩の大きな特徴なのだろうか、スープ全体的に角がなく非常にまろやかな印象でスタートを切った。幸先の良いはじまりを迎えたと思ったが、このスープの穏やかさも長くは続かなかった。

調理場内に積まれた麺箱には都内ではあまり見かけない製麺所の名前が入っているが地元福島の製麺所なのだろうか。定かではないが同じ麺箱を中目黒の「中華そば むら田」でも見た記憶がある。本日も段ボールにて配送された麺を木製の麺箱に移し替える作業も見られたので直送麺で間違いはなさそうだ。そんな福島を感じられる麺を箸で持ち上げてみると、茹でる直前にまな板の上で手揉みを施されていたので麺のちぢれた形状は複雑に変化している。どれ一本として同じ姿をしていない中太平打ち麺は、スープの透明感にも負けない澄んだ麺肌が光り輝いている。箸先からは加水率の高さを感じる重みがある。さらには加水率の高さを示していたのは80秒という茹で時間で、中太平打ち麺としてはかなり短いのは高加水麺ゆえの早茹でと思われる。そんな麺を一気にすすり上げるが、スープの濃度が低いので飛び散りなど気にせずにすする事が出来るので非常に心地よい。ランダムに波打った麺肌が唇を無造作にくすぐりながら飛び込んでくると麺肌には溶け出したグルテンの柔らかさもあるが、芯にはしっかりとコシを残してあり食べ応えも強く楽しめる。また塩気の少ないスープの中で麺の小麦の香りが存分に発揮されている。自家製麺ではなくても十分に個性的な良麺を採用されている。

具材のチャーシューは豚バラ煮豚が三枚入っている。赤身がしっかりした部位が本日は切り当てられたのが赤身好きの私には幸いだった。最初の一枚はそのまま頬張ってみたが、脂身の甘みを引き出して柔らかく仕上げてあるが過剰にとろけるのではなく歯応えも残してある。味付けもちゃんと乗っているので噛んでいても獣臭さは出てこずに食べ進められる。二枚目は薬味のネギを巻き込む事でネギチャーシューとして楽しんだ。最後は麺を巻いて食べたが、どんな具材や麺でも巻きやすい厚みや形状がチャーシューの活躍の場を広げていた。

追加した味玉は賛否があるとは思うが、塩スープの中で味わえる醤油感のある漬けダレがうれしい味玉だった。塩ダレではこの黄身の熟成感は生まれないだろうと思うような、濃厚でネットリとした舌触りが味覚に変化を付けてくれた。欲を言えば、せめて提供温度が常温ならばゲル化した黄身の旨みがより感じられた気がして残念だった。

太メンマはもはや定番のどこでも味わえる既製品のような安定感のある味付けだったので、もう少し手仕事感のある自家製メンマを望んでしまった。

薬味は青ネギの小口切りだが、先程のチャーシューと共演で十分に存在感をアピールしてくれたので感謝すべき脇役だった。

中盤からと言わず、序盤早々に不自然な旨味を強く感じてしまっていたのだ。穏やかな塩気の陰に隠れた強い旨味は、塩分以上に喉の渇きを誘発してきたので麺と具材は食べられたがスープは飲めずにレンゲを置いた。

これほど第一印象と最後のイメージが違うラーメンは珍しく思うが、不要な旨味を足さなくても十分に味わい深いと思えるスープだけに残念に思える一杯でした。

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「中華ソバ 味玉入り ¥950」@中華ソバ ビリケンの写真平日 曇天 10:30 待ちなし 後待ち15名

〝ニューオープン パトロール〟

ほんの一部ではあったが群馬めぐりを楽しんで帰京すると、相次いで新店がオープンしているエリアがあった。それは自宅からでは移動がスムーズとは言えないエリアなのだが上野を拠点とすれば難なく迎えるので、昨晩から上野駅前の定宿サウナに前乗りしていた。

いつもならば上野仲町ナイトを楽しむのだが数々の地方都市の夜のネオン街の魅力にハマってしまい、ありきたりな上野の夜に面白さを見出せない身体になってしまったのだ。なので外出する事もなく館内でサウナライフを満喫することにした。

昨晩のサウナは最近の中では中々の高温で室内の温度計は常に108℃をキープしていた。週の前半という事もありサウナの利用客も少なく、人の出入りが少ないのも理由の一つだろうか。更にこちらの水風呂は15℃と平均的な水温よりも少し低くなっているのも特徴で、たった1°Cの違いでも肉体には大きく影響を与えてくるのだ。昨晩のサウナの場合は高低差 93°Cと後藤さん風にツッコミすれば「心臓キーンなるわ!」的な温度差だった。恒例の水風呂と外気浴休憩を交えながらの10分× 3セットをこなすと、お待ちかねの食事処での生ビール無料券を利用したクールダウン晩酌を始める。ひとり宴なのは寂しくもあるが、気が付けば宿泊代よりも高いビール代となっていた。翌朝も再び軽めにサウナで整えると10時のチェックアウトと共に新店めぐりの為に移動を開始した。

本日の一食目に選んだのはRDBの新店情報の中に見つけていた浅草にオープンしたコチラなのだ。お店情報によると私も訪問した事のある人気店の2号店のようで、訪問日の時点ではオープン1週間足らずのようだ。本店扱いと言って良いのか分からないが1号店とは違ったスタイルのラーメンを提供しているように書かれてあり、また新たな出会いが待っているかもと期待を寄せて初訪問を決めたのだ。

そこで11時開店前の現着を目指して上野駅から銀座線に乗り込むと、わずか5分で最寄りの浅草駅に着いた。やはり前乗りした甲斐があったと思える移動時間の少なさに、昨晩の前泊計画を自画自賛した。午前中から外国人観光客で賑わう駅構内の雑踏を抜けて3番出口を上がると大きな駒形橋西詰交差点に出た。そこからは目印としていた大手ラーメンチェーン店を目指して信号を渡ると、チェーン店の間口と比較にならない程のコチラを見つけた。店先には開店祝いの花が少し残っていたが、そろそろ開店特需やオペレーションも落ち着いてきた頃ではないだろうかと思いながら先頭にて待機を始める。

定刻の15分前になると後列も増え始めるが、並び方のルールが歩道の立て看板に書かれてあった。6番手以降は隣の台湾屋台料理店の店先に並ばないように、間を空けて並ばなくてはいけないようなので注意が必要だ。開店直前には10名以上の行列となっているので開店特需はまだまだ続いているようだ。

外観の感じは無垢板を張った外壁に屋号のロゴをあしらった下町らしからぬオシャレでポップな店構えとなっていて周辺の中でも一際明るく見える。浅草という観光地の場所柄か外国語の注意書きも貼り出されている。しかし海外版ガイドブックにはまだ掲載されていないはずなので、店先の行列は全員が日本人と思われる。逆に隣のチェーン店の前の方が外国人観光客で賑わっていた。観光地ではあるが地元の方に根付いて欲しい願いを望みながら待っていると、定刻を少し過ぎてオープンとなった。

店内に入ると入口左手の券売機の中から品定めをするが、本日もメニューを絞り込んでの営業のようで有効なボタンは数少ない。しかしマイスタンダードの味玉入りの醤油系が最上段を飾っていたので、迷う事なくボタンを押した。必然的に奥へと押し込まれるようにカウンターの一番端の席に座り、食券を手渡すと店内観察を開始する。

もはやレビュー上で書き飽きた感のある〝白と木目を基調としたカフェ風の内装〟の店内を本日はご夫妻お二人で切り盛りしている。たしか店主さんは「らーめん 改」でお見かけした方だと、おぼろげな記憶が思い出された。新店舗ならではの清潔感が内壁の白タイルや厨房内のステンレスから溢れている。客席は段違いの二連式カウンターだけだが、背後の通路スペースも広く設けてあるので窮屈な感じはしない。もうすでに 1st ロットの調理が始まっているが、抜群に安定感のあるお二人の超絶コンビネーションに見とれていると着席して5分で我が杯が到着した。

その姿は白磁の切立丼の中で多彩ながらも美しい景色を見せている。それは盛り付けの早さからは想像できないくらいの丁寧さに溢れている。調理工程を見ていて思ったのがワンロット3杯で仕上げられていくのだが必要な具材を全てバットに事前に準備をして、麺上げと同時に二人の連携で素早く提供されるオペレーションの素早さでも丁寧さを欠かない見事な盛り付けである。それを見た時に盛り付けのタイムロスとは無縁の安心感が伝わってきた。そんな新店ながらも落ち着いた安定感に包まれながらレンゲを手に取った。

まずは栗皮茶色のスープをひとくち。醤油の色素が色濃く打ち出されたスープの液面には、やや黄色みを帯びた鶏油の不揃いな粒子が浮かんでいる。そんな液面を隠すように盛り付けられた多くの具材をかき分けてレンゲをスープに沈めてみると、明らかな鶏主体の動物系スープの香りが湯気の中に感じられた。香りだけだとありがちな鶏清湯スープに思われたが、スープで満ちたレンゲが口元に近づくごとに印象が変わっていった。それは鴨の野性味溢れる香りが強く感じられるようになってきた事で初見の印象とは一変した。丸鶏の野趣とは違った鴨ならではの独特の風味がスープの大半を占めていた。そこで不思議に思ったのが、本日は販売中止になっているメニューの中にあった「鴨ソバ」の存在である。レギュラーの「中華ソバ」がこれだけ鴨出汁をアピールしているなら「鴨ソバ」はどれだけ鴨を打ち出しているラーメンなのか興味が湧いて仕方ない。私の中ではすでに鴨を十分に感じられるスープなので、これ以上の鴨特有の野性味は不必要なクセにもなり兼ねない心配の方も強くなってきたのが本音だ。そんな野趣も感じる鶏出汁に合わせるカエシは、やはり濃いめにアジャストされている。日本蕎麦のカエシにも似たキリッとした醤油ダレの中には干し椎茸のような旨みも潜んでいる。調理場内には兵庫県の龍野醤油が置かれていたが龍野醤油といえば薄口醤油が代表的なので、こちらのスープの色調を見る限りでは他の用途で使われている醤油なのだろうか。色調の見た目通りにスープだけを飲むには強めの塩分濃度に思えるが、麺や具材との相性を考えられての組み立て図なのだろうと思い麺へと移行した。

ロットによって若干の誤差があったが、麺上げまで45秒から50秒の中細ストレート麺は切刃の角が微かに残った形状が特徴的だ。すでにグルテンが溶け出しており半透明な麺肌が店内のライトの光を跳ね返して輝いている。持ち上げた箸先からは少し柔らかそうな手応えを感じると同時に、しっかりとした重みも伝わってくる。しなやかそうな中細麺を一気にすすってみると、鶏油が潤滑油の役目も果たすと麺肌のグルテンと相まって滑らかな口当たりで飛び込んできた。すすり込んだ吸気に伴う鴨油の香りが更にふくらみ、流行りの鶏清湯とは一線を画すオリジナリティのあるスープと麺の組み合わせが新しい出会いとなった。好みの違いだとは思うが少し柔らかく感じる麺には力強い歯応えを求めてしまった。スープの印象が強いだけに麺が押され気味のまま食べ進めていくうちに、物足りなさを感じてきてしまい麺の印象が次第に薄くなっていった。

具材のチャーシューにも鴨が使われていて、合鴨ロースの低温調理が盛り付けられてある。皮目には隠し包丁を入れて焼き目も付けてあり、細やかな仕事が施されている。まずはロゼ色が美しいレア状態のままで口に含んでみると、さすがはレアチャーシューのしっとりとした舌触りはあるが限りなく半ナマに近い仕上がりなので噛み切れないような不快な歯切れの悪さも残っている。それでも下味のスパイスがしっかりしているのと、素材の鴨ロースの品質と鮮度の良さのおかげで生臭さとはならなかったのが救いだった。その時点で残りの二枚はスープに沈めて加熱して薬味の白ネギと食べ合わせで難を逃れた。

追加した味玉は適度な浸けダレの浸透と熟成感のある黄身が好みには近かったのたが、盛り付け直前まで温めてある割には黄身の芯温が冷たいのが残念だった。これは以前の「らーめん 改」でも同じ事を思ったのを思い出したが、提供温度以外は追加して良かったと思える味玉だった。

それに反してメンマの仕上がりには難が大有りだった。らーめん改ではタケノコを使用していた記憶があるが、こちらでは麻竹のメンマが仕込まれていた。

薬味の白髪ねぎは穏やかに辛味が抜けていて香りも食感も繊細にアクセントとなっていた。先程の鴨チャーシューとの共演では見事に大役を果たしてくれた名脇役だった。紫色のスプラウトは存在感は彩りだけに感じたが、その分を青みのホウレン草がリカバーしていた。最近ではラーメンの青みとして絶滅危惧種となりつつある茹でホウレン草だが、家系でよく見かける業務用のカットホウレン草とは違って店でちゃんと仕込まれたホウレン草が添えてあった。やはり生のホウレン草を茹でただけなのに独特の香りと食感は他の青みでは代用できない逸品だと再認識した。

終わり良ければ全て良しではないが、ホウレン草の軽やかな苦味を口に残して箸とレンゲを置いた。インパクトのあるスタートだったが次第に麺の食べ応えのなさと、スープの塩気の強さを感じてしまい麺を少しとスープとメンマは全て残してしまった。

あくまでも個人的な趣向で清湯野郎は自負しているのだが、そこに独特の個性をあまり必要としないのが私の好みであると再確認した。それは今回の鴨出汁であったり、流行りの貝出汁などもそうである。非常に偏った保守派の意見なので参考にはならないと思いますが、好みとしては採点が低くなってしまった一杯でした。

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「白豚骨ラーメン (ベーシック豚骨) ¥750+味玉 ¥100」@豚骨ラーメン 色彩の写真平日 曇天 13:30 先客9名 後客1名

〝ニューオープン パトロール〟

本日の連食先に見つけておいたのが秋葉原に程近い末広町に、先日オープンして二日目のこちらなのだ。前食の渋谷から銀座線で20分程で乗り込んできたのだが、あまりの移動時間の少なさから連食できる余裕もなきので久しぶりのアキバ観光を楽しんでから向かう事にした。

時代の移り変わりの激しい東京の中でも目まぐるしく変化し続けている秋葉原なのだが、半年も来てないと街の変貌ぶりに驚かされてしまう。ひと昔前には宿泊施設など数えるほどしか無かったのに、外国人観光客をターゲットにした簡易ホテルなどが裏通りにまで乱立している。街中に外国語表記が増え続けて、今では日本語を探す方が難しく思ってしまうほどだ。そんな変わりゆく秋葉原を二時間ほど散策していると、随分と消化も進んで胃袋に空きスペースが出来たので新店への初訪問を目指してみた。

最寄駅は末広町となっているが、所在地は秋葉原と言っても良いくらいの目抜き通り沿いにあった。以前はサラリーマンの味方の蕎麦チェーン店があった場所に、突如としてド派手な店構えのラーメン店がお目見えした。屋号とリンクするカラフルな外観が目を惹く造りとなっていて、店頭のサンプルショーケースからも外国人観光客向けのインバウンド需要を狙った意図が汲み取れる造作となっている。

ガラス越しに見える店内は、ほぼ満席のようなので入口付近で呼び込みをしていたスタッフさんに中の様子を見てもらうと幸運にも空席が一つだけあったので並びなく入店となった。店内には券売機は設置されておらず POSシステムが採用されていた。しっかりと作り込まれた卓上メニューにも英語と中国語表記もされてあり、好条件な立地も含めて大手資本の後ろ盾を感じてしまう。来店前から不得手な豚骨系とは承知していたの卓上メニューの中から迷う事なく、基本と思われるお題と味玉追加をホールスタッフさんに告げてからカウンター越しに店内を物色してみる。

いかにも外国人観光客を意識した試みが随所に見られる。それは和紙をイメージさせる内装やスタッフの制服にも和柄の作務衣が採用されている点で、調理場内の什器などにも花柄の器も使われていてナントカ映えも良さそうである。ネオモダンな和風の店内を本日は四人体制で回している。調理場二名とホール二名に配置されているが、店長らしき男性が調理の全行程を担っている。まだオープン二日目なのでオペレーションも定まってない状況で、満席となった人数分のオーダーをこなすのは困難なようで POSシステムの伝票が長い帯となって繋がっている。替え玉1玉が無料なのでマー油を中華鍋であおっている最中にも替え玉の追加注文が飛び交って対応に追われている。もちろん無料なので追加伝票はなく注文した卓番が分からずに出来上がった替え玉が右往左往していた。そんなオペレーション不足に店長さんの焦りもピークに達して、イライラする様子が他のスタッフだけでなく客席にも伝わってくる。私以外のほとんどが外国人客だったのでその緊張感は伝わってないだろうが、日本人の私にはBGMのない無音の店内と重なって只ならぬ緊迫感が押し寄せていた。

そんな息苦しい店内ではあったが不思議な要素も感じていた。それは店内の空気のキレイさで独特の豚骨臭が一切しない事だ。いくら新店舗で換気能力が高いと言っても豚骨スープを炊いていれば否応なしに付きまとってくるはずの匂いがしないのには、驚くと同時にスープは別場所で仕込まれているのだと直感した。確信は持てないが工場を有する母体があるのだろう。しかし目の前のラーメンが美味ければ大手も個人店も関係ないので、心を無にして待っていると着席して15分で我が杯が到着した。

その姿は黒塗り盆の上に置かれた切立丼の中で、黒釉薬の器とスープの白がコントラストを生んで器選びのセンスの良さを感じられる。盛り付けのスピードの早さが麺にも影響しやすい豚骨ラーメンなので急がれたと思われる盛り付けには、やはり丁寧さは感じずに口縁にはみ出したキクラゲなどからも盛り付けの美しさは感じられなかった。しかしその急いだ盛り付けがラーメンの出来を左右するのも理解できるので、見た目の美しさは考慮せずにレンゲを手にした。

まずは乳白色のスープをひとくち。厚みのある陶器製のレンゲは重みがあり、液面に置いただけでも自然と沈んでいく程にスープの濃度は軽やかだった。表層には油膜も張っているので乳化加減も控えめに思われ、苦手なトンコツ感は少なく感じられた。レンゲに溜まったスープを口元に近づけてみるが、トンコツ特有の匂いが寄り添ってこないのも幸いして臆する事なく口に含んでみた。するとトンコツ由来の旨みもあるがサッパリとしていて、表層に浮かんだ香味油からかもしれないが鶏由来のコクも強く感じた。それはスープの分類を〝豚骨〟にしても良いものなのか悩んでしまうくらいに鮮明だった。周囲では赤や緑や黒いスープを楽しんでいるが、ベーシックな白に合わせてあるカエシには砂糖の甘味を強めに感じる仕上がりとなっている。全体的に甘みを中心とした動物系スープは臭みを感じさせず、トンコツマニアよりも外国人観光客を含めた万人向けと想像した。

続いて麺上げまで50秒ほどの麺を持ち上げてみると、極端な細さではない中細ストレート麺が現れた。〝豚骨ラーメン=低加水細麺〟を覆すような柔らかさが箸先から伝わってくる。見た目にも切刃の角を見せない丸い形状が予想を裏切ると、麺の重みからも低加水とは思えない手応えがある。この時は今回のロット分の茹で時間を間違えただけかとも思ったが、後のロットでも同じ茹で時間だったので基本の麺ディションで間違いないだろう。たしかに豚骨ラーメン店によくある〝カタメン〟や〝バリカタ〟などの説明書きがなかったので、王道の豚骨ラーメンとは別物のジャンルなのだろう。これが新世界への扉だと思いながら麺を一気にすすり上げると、やはり口当たりに鋭さは全くなく優しく滑りながら唇を通過して入ってきた。もちろん粉っぽさもなく、逆にグルテンの反発力をも感じさせてくれる麺だった。噛めば適度な弾力はあるが、小麦の香りや甘みはスープに負けて消されているようだ。あまり出会った事のないスープと麺の組み合わせに少し戸惑いはあったが食べ進める事は出来た。

具材はキレイに成形された豚バラ煮豚の巻き型が盛り付けてあり、見た目の美しさは表現していた。調理場内ではガスバーナーで炙る作業も見られたが、白豚骨に関しては炙られてないチャーシューが使われていた。スープによって香ばしさを加えるなどの差別化を図っているのだろうか。味付け自体は個性を抑えた平均的なチャーシューだが、目立ち過ぎずクセもない脇役的な存在となっていた。

キクラゲは細切りタイプが添えてあり、細身ながらも確かな食感がアクセントとなっていた。乾燥キクラゲに味の違いを見出せないので大きな特徴はないが、麺の歯応えの弱さをサポートしてくれて存在感はあった。

それに引き換え追加までした味玉は、薄っすらと白身に浸けダレの色素が移ってはいるが味の浸透は為されておらず私にとっては残念な味玉だった。唯一黄身に浸み込んでいたのは煮切り不足の料理酒の香りで、醤油感のない味付けはアルコール臭ばかりが際立ってしまっていた。

薬味の青ネギは粗めに刻まれているが切り口には潤いもあり、切り立てとはいかないまでも香りも感じられた。豚骨ラーメンの中では彩り要員とばかり思っていた青ネギだったが、香りとしてのアクセントとなっていたのはスープが穏やかだったせいもあるのだろうか。

中盤からは豚骨とは別ジャンルのラーメンを食べている感覚の方が大きくなってきたが、豚骨ラーメンが不慣れな私にも違和感ばかりが募ってきた一杯でした。

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「醤油ラーメン ¥750」@Renge no Gotokuの写真平日 曇天 10:50 先待ち1名 後待ち6名 後客15名

〝ニューオープン パトロール〟

都内を離れて高崎めぐりを楽しんでいる間に、続々とRDBの新店情報が飛び込んできた。そんな中で本日の連食計画を考えてみるが、最初に候補に挙がってきたのがコチラだった。

お店情報では昨年に諸処の事情で閉店した渋谷の人気店の形態を変えた再始動店となっている。以前の店には私がレビューをはじめる前に何度か訪れたことがあり、今回の移転先も大通りからは一本入った辺りのようだ。幸いにも自宅から徒歩圏内という事もあり、本日の一食目に決定した。

11時開店前の現着を目指して20分前に家を出て再開発の進むエリアを抜けて進んで行くと、渋谷と言えど雑踏とはかけ離れたイメージの桜坂を下ってきた。急坂の途中を脇道に入ると、開店祝いの花やバルーンで賑わう店先が目に飛び込んできた。定刻の10分前だったが、すでに並びがあり二番手に続いて待機をはじめる。新店舗の目の前には偶然にも私のレビューデビューとなったラーメン店があり、それからの14ヶ月間があっと言う間に思えてしまった。

店頭の立て看板には「渋谷のソウルフードがここにある」と書かれてあり、新店舗ながらも渋谷に根付いていた歴史の長さを思わせる。定刻の5分前には製麺所からの黄色い麺箱が届けられると開店準備が着々と進んでいくと、店頭の行列の方も着々と伸び始めていた。定刻ちょうどを迎えるとガラスの扉が開けられてオープンとなった。

店内に入ると入口左手の券売機にて本日のお題を品定めする。移転前から周知の通り〝排骨担々麺〟がイチオシなのは分かっているが、セオリーを無視してマイスタンダードの醤油系のボタンを探した。券売機の上位部に位置する大きなボタンはいずれも排骨関連なので、目線を下の方に落とすと小さなボタンの醤油ラーメンを見つけた。せめてもと味玉のボタンを探してみたが見当たらず、残念ながらラーメン単品だけを発券した。この選択がそもそもの間違いだと後で気付く事になった。

ホールの女性スタッフさんは「お好きな席にどうぞ」と言ってくれたが、後列が大勢並んでいたので先頭客に続いてカウンターの奥席から詰めて座った。良かれと思って詰めて座ったのだが、これが更なる悲劇を呼ぶのだ。食券を手渡す際に無料ライスを薦められたが、ラーメンに集中するために丁重にお断りをして店内観察を開始した。

背中合わせに並んだカウンターだけの店内だが四人客にも対応可能なコーナー席も設けてあり、移転前よりも手狭になったが客席数は十分に確保していて設計者のセンスが感じられる。見事に導線も確保してあり三人体制がベストと思われるレイアウトの店内を、本日は開店特需に備えた万全の四人体制で回している。右側の壁一面には屋号にも使われている蓮の花が描かれていて、さらには屋号の「Renge no Gotoku」をもじった「蓮華の五徳」と大きく書かれてある。「蓮華の如く」とも読めるのには深い意味がありそうで、中華料理を想像させる〝レンゲ〟と中華鍋には欠かせない調理具の〝五徳〟の意味も含めたトリプルミーニング的なネーミングセンスも面白い。そんな渋谷でのリスタートに賭ける思いを感じながら待っていると、着席して6分でワンロット3杯の中のひとつとして我が杯が到着した。

その姿は白磁の高台丼の中で両隣り客の排骨担々麺に比べると迫力はないが、丁寧さを欠いた雑にも見える盛り付けがワイルドに映った。器の口縁に飛び散ったままのカエシや、まとまりを得ない水菜の盛り付け方には作り手の魂が込められてないと感じてしまう。1st ロットの提供順序も後客の排骨担々麺が優先されて、二番手の私のラーメンは時間を置いた三番目の配膳だった点にも排骨担々麺に対するこだわりは強く感じたが基本のラーメン愛は感じなかった。

それでも目の前のラーメンには罪はないので、心を落ち着かせてレンゲを手に取った瞬間に次の悲劇に襲われたのだった。それは座った席の目の前には食洗機と並んで洗い場が併設されているのだが、カウンターの壁が低いので洗い物をした濯ぎ水がカウンターを越えて我が杯の中に入ったのだ。もちろん大量だったならば作り直しをお願いしたが、ほんの数滴だったのと私以外は誰一人と気が付かないような微量だったので店側に告げる事なく食べ始めた。

まずは赤褐色のスープをひとくち。あくまでもオーソドックスな色調のスープは、清湯醤油系の王道を行くような景色を見せている。透明感もあるが微かな陰りも感じられるスープには、ドットのまばらな香味油が散りばめられている。そんな液面にレンゲをそっと沈めてみると、良い意味での平凡な香りが立ち昇った。そこには奇をてらったような香り付けをされる事もない、昔ながらの基本を貫いた潔さで満ちている。いざ口に含むと、鶏ガラ主体と思われる動物系スープには野菜の甘味が溶け込んでいて、カエシの利かせ方もシンプルでシャープではあるが過度な醤油感を与えていない。醤油ダレの香りも穏やかなので全体的な香りを一番主張しているのは、香味油に含まれるネギ油の香ばしさと思える。やはりバランス感覚に優れた清湯醤油系スープではあるが旨味のベースアップもなかなかで、課長を通り越して部長クラスに昇進を果たしていた。

スープを断念して麺へと取り掛かってみる。麺上げまでジャスト90秒の中細ストレート麺を箸で持ち上げてみると、切刃のエッジが全く見られない丸い形状の麺が現れた。麺肌は少し黄色味を帯びて見え、物腰の柔らかさが箸先から伝わってくる。そんな女性的に見える中細麺を一気にすすり込むと、スープ単体では感じなかった香味油のオイル感が手伝って口当たりの良さを増長させている。麺肌にも適度にグルテンが膜を作っているので、滑らかな舌触りが更に特徴的な印象を受ける。見た目通りに柔らか仕上げなので歯応えは強く感じられず食べ応えの面では好みとは違っていたが、同じ麺を同じ茹で時間で使用している排骨担々麺ならば、サクッとした排骨の揚げ衣と柔らか麺の相性の良さは間違いないであろう。この時に自身のメニューがミスチョイスだったのだろうかと感じ始めていた。

具材のセンターを陣取るチャーシューは豚バラの巻き煮豚型が薄切りで二枚盛り付けられている。つかんだ箸でも切れるくらいに柔らかく仕込まれているが、スライスされてからは時間が経っているのか切り口がパサついていた。柔らかくはあったが肉汁のジューシー感のないチャーシューはスープに浸してから食べる事で難を逃れた。味付けが程良かっただけに切り置きの長さが残念に思える。

基本でも大量に添えてあるメンマは大きさや太さが不揃いで食感の違いが様々なアクセントとなってくれるが、味付けは汎用品のように無難な味付けとなっていた。少し滑りのある舌触りも、どこかで食べた事のあるように思えた。

薬味の白ネギのみじん切りは、香味油の香ばしいネギの香りに加えてフレッシュな白ネギの香味をプラスしている。細かく刻まれる事で食感のアクセントよりも香りでサポートしていて名脇役となっていた。それに反して青み役の水菜にはどうしても〝薬味愛〟を感じられない。水洗いして切っただけの青みの水菜には手間のかかった茹で青菜には遠く及ばない、やっつけ感ばかりが裏側に見えてしまうのだ。

中盤からも不自然な旨味に追いかけられながらも、麺は8割程度は食べ終えてレンゲと箸を置いた。個性を押し付けないスープだっただけに旨味の足し算が際立ってしまったようだ。もしイチオシの排骨担々麺であったなら様々な香辛料の陰に隠れて感じ方が違っていただろうと、メニューのミスチョイスを悔やんだ。

誰よりも早く食べ終えて席を立た時に見回した店内には、誰一人として醤油系のメニューを食べている客がいなかったのを見て改めて〝郷に入れば郷に従え〟の意味を噛み締めた一杯でした。

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「醤油らーめん ¥770+味玉 ¥110」@らーめんDINING れんげの写真平日 曇天 12:40 先客6名 後客なし

〝上州高崎 二泊三日ラーメンめぐり〟番外編 拡大版

トータル三泊四日となった群馬遠征も、いよいよ最後のラーメンとなる時間帯が迫ってきた。それは昨晩キャンセルとなった都内での会食が今晩にスライドされて、急遽ラーメン旅を終えなければならなくなってしまったのだ。何よりも残念なのは本来ならば太田で延泊をして、人生初の太田ナイトを楽しもうと目論んでいたのが実行できずに終わってしまう事だ。後ろ髪を引かれる思いで太田駅近くでラストラーメンの候補店を調べてみる。

伊勢崎で朝ラーを食べて、午前中には二杯目を太田の人気店でいただいた。そこからとりあえずバスで太田駅まで戻ってきて美術館に併設されたカフェで満腹の胃袋の調子を整える事にした。帰りの電車の時間を14:32発の東武線りょうもう26号に乗車しなければ都内での予定に間に合わないので、前食から1時間しか経っていないが作戦を強行しなければならなかった。

そこで駅前北口から再びシティライナーおおた 市内循環バスにて15分ほど揺られて、最寄りの浜町三区バス停に着いた。最寄りと言ってもそこから少し歩かなくてはならないが、大手そばチェーン店や中華料理店を含めると麺料理を扱う店が非常に多い麺ストリートである事に驚いた。そんな大通り沿いを歩いて向かうと、真っ赤な看板が目に入った。

店先には坦々麺の幟旗が置かれているが、先程の店もそうだったが太田では坦々麺が人気なのだろうかと思った。玄関にはえんじ色の半のれんと同色の日除けのれんが掛けられてあり、数台の駐車場も完備されている。看板には「洋食屋さんの本格らーめん」と書かれてあり、お店情報からも知っての通り洋食出身のシェフが手がけるラーメンのようだ。昼どきのピークタイムの訪問となったが、店頭に行列がなかったので幸いにもすんなりと入店できた。

しかし店内に入ると目の前のテーブル席には食べ終えた器が置いてあり、バッシング待ちのようなので入口左手に設置された券売機にて食券を購入してから様子を伺う。すると運良くカウンターには片付けが終わった空席があり、すぐに着席となった。購入したマイスタンダードの醤油系に味玉を追加した食券を女性のホールスタッフさんに手渡してから店内観察をはじめる。

テーブル席とカウンターだけの店内かと思ったが、後ろを振り返ると小上がり席も多く設けてあった。イメージしていた洋風とは違った印象の店内で、夜の部は宴会にも対応できそうな客席の造りである。そんな広めの店内を、ご夫婦らしきお二人で切り盛りされている。ご主人の趣味なのだろうかバイクに関するグッズや写真などが飾られている。カウンターの棚上に置かれた観葉植物の隙間から調理工程を覗き見しながら待っていると、着席して4分で我が杯が到着した。

その姿はメラミンの受け皿に置かれた白磁の高台丼の中で、穏やかに見えるが不思議な要素も見受けられる興味深い表情で登場した。さすがは洋食出身シェフならではの盛り付けのレイアウトの美しさや、ひと味違った薬味の使い方が特徴的だ。そんな得体は知れないが不思議と異質に思えない姿に引き込まれるようにレンゲを手にしていた。

まずは黄朽葉色のスープをひとくち。液面には大理石のようなマーブル模様の香味油が浮遊するスープにレンゲを落とすと、必然なのか不思議なのか分からないが〝和〟でも〝中〟でもない〝洋〟の香りが押し寄せてきた。それは明らかにスパイシーな香りで、初動としてはかなり刺激的な風味が伝わってきた。レンゲの中に注がれたスープを口に含むと昆布が主体のような前置きのあるスープだが、実際には鶏主体の旨みが先導するスープに感じた。その旨みの他には、見た目こそ香辛料の粒は見えないが胡椒系由来の香りが大きく幅を利かせている。それはスープを炊く段階でミル挽きされたペッパーでなくホールペッパーが使われていると思われる。そんな個性的な鶏昆布出汁に合わせるカエシも、キリッと輪郭のハッキリした醤油ダレを加えているので全体的にパンチのあるスープ構成となっている。

そんな独特なスープに合わせる麺は中細ストレートの外注麺を採用されていて、麺上げまではジャスト120秒と中細麺としては長めに茹でられていた。それだけに見た目は非常に穏やかで、切刃の後も丸みを帯びて見える。スープの中で丁寧に折りたたまれた麺を箸で持ち上げてみると、黄色い色素の強い麺があらわれた。箸先の重みからは多くも低くもない加水の程度が伝わってきて、香味油をまとった麺肌がキラキラと輝いている。ストレートの形状からもスープの飛散を気にする事なく一気にすすり込むと、スープに感じたスパイス香がより強くなって感じられた。しかし間髪入れずに麺の甘い香りも追いかけてくる。適度に溶け出した麺肌のグルテンが口当たりを良くしているが、提供時がベストと思われる麺の茹で加減だ。120秒の茹で時間にもダレる事なく、しっかりとした舌触りを保っていた。噛めば更に麺の甘みが引き出されて、スープから感じるスパイスの刺激を麺の甘みが和らげてくれる。もしかしたらスープのスパイスが利いているからこそ感じられる麺の甘みとも思えてきた。そんなお互いを引き立てる組み合わせの妙に食べ飽きる事なく箸は動き続けた。

具材のチャーシューは豚バラの煮豚型が大判の厚切りで入っている。箸が触れただけでも柔らかさが伝わってくる程に、じっくりと仕上げられているのが分かるチャーシューを頬張ってみる。脂身は勿論のこと赤身の繊維質までも解けていくような食感が素晴らしいが、柔らかすぎる訳ではなく歯応えもしっかりと味わえる。また盛り付け直前に炙りの工程を挟んでいて、香ばしさを加えると言うよりは、脂身の融点まで温度を引き上げる作業に思えた。その結果として脂身は口溶けよく、赤身は食べ応えよく仕上がっていた。味付けは強くはないが豚肉本来の品質が良いと思われ、臭みなどの不快な要素が一切なく豚肉の旨みだけが詰まっている。

中太タイプのメンマには非常に甘い味付けが施されている。スパイシーなスープに合わせてなのだろうか、果実を思わせるような胡麻油の甘みがメンマの芯部にまで浸み込んでいる。かなりの柔らか仕立てなので噛む必要がないくらいの食感だが、メンマがほどけた瞬間に胡麻油の甘い香りが舌の上で花開く。先程の麺と同じくスープとの振り幅の大きさが独創的でクセになる人も多いのかもしれないが、初めて食べる私はギャップの大きさに戸惑ってしまったのが本音だ。

追加した味玉は程よく味も乗っていて好みの熟成度合いも出ていたが、提供温度の冷たさばかりは気になってしまった。冷蔵庫から取り出してすぐに盛り付けるのではなく、せめて常温にまで戻してあればゲル化した黄身の甘みや漬けダレの旨みも感じやすくなるように思えて残念だった。

薬味の白ネギは丁寧に水にさらされていたので、余計な辛味や苦味を与えてこずに軽やかな舌触りと香りをアクセントに加えていた。青みの小松菜は茎の部分だけを集めて添えてあり軽い苦味とシャキッとした食感を与えているが、どこにも使われていない葉先の行方が気になってしまった。

またラーメンに関して保守派な私にとっては挑戦状ともとれる青みが、見た目にも個性を発揮しながらセンターに添えてあった。その青みとはイタリアンパセリの事で、同じセリ科の三つ葉ではなく洋食材を使われていた。ラーメンの中に洋風のテイストを必要としない私だったが、このイタパセを口にしてみて思いが少し変わった。一般的なパセリよりも香りが穏やかなので大きく個性を主張する訳ではなく、逆に口の中をサッパリさせてくれる役目を果たしてくれた。考えてみれば日本料理の中でも秋田名物 きりたんぽの具材にはセリが欠かせないように、鶏と昆布主体のスープにセリ科のイタパセが合わないわけがないのだ。それを思った時には見た目のインパクトだけを狙った薬味ではない事を初めて理解できた。

中盤からもスパイシーなスープが醸し出す不思議な感覚に慣れないままに食べ進んできたが、結果としては完食完飲していた。食べ終えたあとも何とも言えない違和感を残しながら席を立ったが、これが洋食シェフの作り出すラーメンの狙いなのだろうと考え直した。ならば次回は洋食シェフによる担々麺にも挑戦してみたいと、新たな好奇心が湧いてきた。

これにて高崎から始まった群馬の一部だけめぐりのラーメン旅も終わりを迎えた。しかしどうしても心残りなのは高崎ナイト 伊勢崎ナイトに続いての、太田ナイトを満喫する事なく太田を後にしなければならない事だ。三泊四日くらいではまだまだ出会っていないラーメンも多くあるので、次回は必ずや太田の夜のネオン街に戻ってくる事を前提に計画を立てると心に深く刻んだ一杯でした。

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「塩らーめん ¥680+煮玉子 ¥100」@塩らーめん 千茶屋の写真平日 曇天 10:35 待ちなし 後待ち2名 後客6名

〝上州高崎 二泊三日ラーメンめぐり〟番外編 拡大版

ちょっとした高崎遠征のつもりだったが、気が付けば群馬滞在もすでに四日目を迎えている。

前食は群馬に来たならぜひ行ってみたいと思っていた朝ラーの人気店で、やや出遅れはしたが満足の一杯をいただいて伊勢崎を後にした。コミュニティバスの一日乗車券のおかげで新伊勢崎駅までは無料で30分程で戻って来られた。


そこで次なる目的地に決めたのがコチラで、高崎から伊勢崎を経由して太田まで足を伸ばそうとRDBのお店情報と移動ルートを調べてみた。運良く本日も営業日のようで、電車とバスを乗り継げば1時間もかからずにたどり着けそうだ。空模様が怪しくなってきた中で、徒歩移動が少なくて済む事も歩兵民にはありがたく初訪問へを目指した。

東武伊勢崎線に揺られて25分程で太田駅に着くと、そこららは運良く運行本数の少ないシティライナーおおた 市内循環バスに間に合い15分で最寄りの太田記念病院南バス停に着いた。そこは大きな総合病院のそばだけあって、処方箋薬局の密集地帯となっている。こんな薬局天国を見た事がないくらいの多さに驚いた。

そんな中に大きな駐車場に囲まれたコチラの看板を見つけると、定刻の25分前で先頭をキープした。店頭に置かれたイームズのエッフェルベースチェアに腰を下ろして待機をはじめる。定刻の5分前になると後列が増え始めたが、外待ち3名だけで1分前に早開けオープンを迎えた。

店内に入ると右手の券売機から品定めをするが、豊富なメニューに戸惑いそうにならながらも屋号にも掲げられ券売機のヘッドライナーを飾っている塩系に煮玉子を追加発券してカウンターに座った。カウンターから見渡す店内はテーブル席もありカウンターも多く設けてあるが、ご夫妻と思われるお二人で切り盛りするには広すぎるとも思ってしまう。しかし二人の見事な連携で調理は淀みなく進んでいる。ふと調理場の奥を見るとブルーシートで覆われた製麺機があるが、品川麺機のマイティ50だろうか。やはりこちらも自家製麺なのだろうか、どこにも謳われてはないが群馬の自家製麺率の高さを実感する。

開店待ちこそ少なかったがオープンすると同時に来客が続くが、ワンロット1杯か2杯までの少ロットで着実に注文をこなしていく店主さんの手さばきに見とれていると着席して3分の早さで我が杯が到着した。その姿は同じ白磁の受け皿に乗せられた反高台丼の中で、息を飲むような美しい景色を見せてくれる。それは黄金卿のような輝きを映し出し、まぶしいばかりに光を放っている。そんな景色に気が付けばレンゲを手にしていた。

まずは薄香色のスープをひとくち。液面にレンゲを落とし込まなくても立ち昇っているのは鶏ガラ由来の香りで、クセとまでは言わないまでも独特の個性を感じる香りである。中型の寸胴鍋の中ではスープが炊かれ続けていて、スープ用の濾し器が常に寸胴鍋の中に入れている。その濾し器で不純物がスープに入らないように工夫された独特の炊き方が印象に残る。丁寧に灰汁を取りながら炊かれているスープにレンゲを沈めると、見た目同様に粘度を全く感じない清湯スープが注がれた。そのレンゲを口元に近づけるごとに鶏出汁の個性をより強く感じてくる。本当にクセの一歩手前なので臭みではないが、かなり鶏を強く感じさせる仕上がりと思える。常にスープは火にかけられているので、午前中と午後のスープには若干の違いもあるのではないだろうか。そうなると現時点でのスープはあっさりタイプで、時間が経つにつれて濃いスープへと変化するように思われる。私にとっては、これ以上に鶏感が強くなると臭みに変わってしまうかもしれないので早い時間帯で良かったと思った。そんな鶏出汁に合わせる塩ダレは、白醤油も含まれているような熟成した深い旨みをもたらしている。強い出汁に負けないようにハッキリと輪郭を与えているが、決して塩っぱいような事はなく見事な塩梅を付けている。

続いて自家製麺かは定かではないが澄み切ったスープの中から麺を引き上げてみると、シャープな切刃のエッジが残ったストレート細麺が現れた。麺上げまでジャスト60秒の茹で時間だが、ご主人はタイマーのスタートボタンは押すけれどストップボタンは奥様が押していた。それはストップボタンを押す間のタイムロスをなくして、麺の茹で時間を正確に守っているという事なのだろう。そんな緻密な工程から生み出された麺を一気にすすり込んでみると、細麺ならではの鋭い口当たりで飛び込んでくる。固すぎない程度にハリを残した茹で加減がキレを与えると、口の中では程良いコシも感じられる。シルクタッチな歯触りかと思ったが、しっかりと奥歯の咀嚼に呼応した歯応えも与えてくれる良麺だ。さらには喉越しも滑らかなので、口元から喉の奥まで心地よく食べ進められた。結果としてオリジナリティのある麺質だったので自家製麺であると信じたい。

具材のチャーシューはラーメン店では使われている事が珍しいと思われる豚ロース肉が使われていた。いわゆる、とんかつ屋のロースカツに使われる部位である。また大判のまま仕込まれていて、脂身の部分も厚めに残してある。トンカツ屋でもそうだが豚肉の質が悪いと、脂身がしつこかったり臭みがあったりするので自信がないとこの切り方は出来ないと思った。実際に食べてみても赤身の旨みは勿論だが、脂身の甘みが抜群に引き出されていて豚肉本来の質の良さと調理の技術の高さが表れている。また厚切りとは言えないが、かなり厚みを持たせてスライスされているので食べ応えも十分にある。

追加した煮玉子は塩系のスープに合わせた仕込みなのかもしれないが、私にとっては寂しさが残る具材だった。それは煮玉子と呼ばれてはいるが、塩味の効いたゆでたまごだった。あえて醤油感を出さないように仕込まれているのだろうが、浸透圧によってゲル化した黄身の熟成感が好きな私には物足りなく思えた。しかし周囲の客のほとんどが煮玉子トッピングをされていたので人気商品なのだろう。

そんな極めて薄味の煮玉子に対してメンマは醤油で味付けされた極太タイプを使われていたが、最近よく口にする機会の多い安定感のある味付けと食感からは業務用無添加メンマではないかと思ってしまうくらいに良くあるタイプだった。

薬味は二種類のネギが切り方も変えて添えてあったが、青ネギの小口切りは切り口が乾いており切り置きしてからの時間経過と保存状態の悪さを感じる。パサついた切り口からは舌触りの悪さが出てしまい、香り自体もほとんど出ていなかった。一方の白ネギは大きめの角切りでスープに浮かんでいたが、白ネギ本来の甘みを味わうには火の通りが弱く辛さが目立っていた。しかし生ならではのシャキッとした食感は良いアクセントとなっていた。

気が付けばスープ以外は完食していたほどに順調に食べ進められたが、周囲の客人が食べていた限定メニューや担々麺の方が美味そうに見えてしまったのも本音だ。次回は煮玉子なしで限定メニューに挑戦するために、太田に前泊して再チャレンジを果たそうと誓った。その際は絶対に夜のネオン街での太田ナイトを楽しもうと心に刻んだ一杯でした。

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