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のらのら

男性 - 東京都

はじめまして。レビュー開始から一年が経ち、二年目の目標を全国制覇にしました。一杯のラーメンに出会うまでの経緯も書き記しているので、前置き等が長くなりがちですがお許しください。しかし採点に関しては立地 接客 衛生面 価格設定などは考慮せずに、ラーメン一杯に対しての評価にしています。自分の好みだけで評価しているので不快な文面もあると思いますが、何卒宜しくお願いします。

平均点 73.435点
最終レビュー日 2019年7月19日
568 460 14 1,850
レビュー 店舗 スキ いいね

「特製什景湯麺 (王さんの特上ちゃんぽん) ¥1620」@江山楼 中華街本店の写真土曜日 晴天 10:40 先待ち15名 後待ち10名以上

〝諸国麺遊記 九州編〟

レビュー二年目の目標を全国制覇と決めてから先月に引き続いて西日本に足を伸ばしてみる。テレビでは九州地方の梅雨入りのニュースが流れているが、そんな事には耳も傾けずに強行スケジュールを敢行する。

出発時に手元にあるのは行きの飛行機チケット一枚だけで、帰りのチケットも今夜の宿さえも決まっていないノープランなラーメン旅なのだ。そんな中で唯一チケットを持っている長崎空港行きの飛行機に乗るために午前6時に自宅を出た。山手線を品川で京急線に乗り換えると1時間で羽田空港第1ターミナルに着いた。

空港内のラウンジで軽い朝食を摂ってから、JAL 605便 7:40発 長崎行きにて東京を離陸した。快適な空の旅を楽しむつもりでクラスJシートにしたのだが隣客のイビキのせいで、とんだ旅のスタートとなってしまった。飛行機のエンジン音よりも大きなイビキに耐えながら1時間40分で定刻通りに長崎空港に着陸した。梅雨入りで心配された天候も良かったので、何とか気分を取り戻せた。

機内で今回の九州遠征の一発目を探していたのだが、地方遠征恒例のRDB総合ランキング第1位は長崎市ではなく佐世保市のラーメン店だった。せっかく長崎に来たので中華街へは行ってみたいと思い、出足からセオリーを無視して中華街にある総合ランキング第2位の店への初訪問を決めた。この行き当たりばったりもノープランなラーメン旅の良さでもある。

そこで長崎空港からは中華街へと向かうリムジンバスで長崎自動車道に入ると40分ほどで最寄りの長崎新地ターミナルに着いた。するとバス停の目の前には新地中華街への入口が見え、チャイナタウンを真っ直ぐに歩いて行くと目的地の大きな赤い看板が目に入った。11時開店の20分前でも15名の行列が出来ており、慌てて最後尾に続いてオープンを待った。

いかにも中華街らしい外観の店構えだが、周辺の店と比べても圧倒的に大きく只ならぬオーラがある。店先の池には錦鯉が優雅に泳ぎ、清く澄んだ池の水からは手入れの良さも伝わってくる。梅雨入りが嘘のような初夏の日差しなので涼しげな池の中にダイブしたい気持ちを抑えながら待っていると、定刻より10分も早く開店を告げる場外アナウンスが店先に鳴り響いた。

それと同時に電動シャッターが上がり始めると、中から和装に割烹着姿の女将が現れて入店の合図となった。入口と言うよりはエントランスとでも言うべきのレジカウンターで女将さんに人数を伝えると二名テーブルの11番席に案内された。お冷と紙おしぼりと一緒に配られた菜譜の中から長崎に来たならば食べずには帰られない長崎ちゃんぽんを見つけ出し、すぐさま店員さんにお願いした。せっかくの九州遠征の一食目なので特製にしてみた。

一番隅の席ながら客席全体を見渡せる絶好のポジションから店内観察を始める。一階に何席あるか分からないが見える範囲は開店直後に満席になり、中待ちベンチも埋まり外待ちまでも発生している。休日という事もあってか観光客が多く見受けられるが、私のようなお一人客の姿は見られない。ホールスタッフも何人体制かも数えられないほどで、中華料理店なので厨房の様子も全く見えず中華鍋の音すら聞こえてこない。ホールスタッフも和装なので中華調の店内とミスマッチに思えるが、これが長崎ならではの異文化の融合なのだろうと歴史の重みを感じながら待っていると10分ほどで我が杯が到着した。

その姿は白磁に朝顔柄の反高台丼の中で特製ならではの〝これでもか〟と言わんとばかりの景色を見せつけている。それは何と言っても具材の頂点に君臨する〝フカヒレ〟の姿が思わせるのだろう。実は昔から無類のちゃんぽん好きなのだが、フカヒレが入ったものにはお目にかかった事がない。それ以外は如何にも長崎ちゃんぽんらしい表情を眺めながらレンゲを手にした。

まずは鳥の子色のスープをひとくち。パーフェクトエマルジョンと言うべき完全乳化を果たして、表層には微塵の油膜も見られないスープにレンゲを沈めてみる。そこからの香りには甘みの要素を多く含んだ長崎ちゃんぽんならではの香りが立ち昇った。これが本場の香りなのかと記憶に刷り込みながらスープを口に含んでみると、先行した甘みは具材の野菜を炒めた甘みだった。また外交貿易が盛んだった長崎ならではの砂糖の使い方にも贅沢な地域性が表れている。清湯ラーメンに砂糖を使う事に抵抗があるのだが、ちゃんぽんには欠かせない調味料なのだ。しかし砂糖の甘みだけではない野菜由来の自然な甘みがあればこその優しい旨みなのだろう。その甘みの土台には白濁していながらも灰汁の気配を全く感じない鶏ガラスープには、臭みひとつない丁寧な仕込みを思わせてくれる。カエシという概念は無いのかもしれないが、合わせる塩気も穏やかでスープをボヤけさせない最低限に抑えてある。

麺は俗に言う、ちゃんぽん玉だ。断面が長方形のような太麺が〝らしさ〟をアピールしている。持ち上げた箸先には加水率の高さが重みとなって伝わってくる。程よく溶け始めたグルテンが麺肌に浮かび上がった麺を一気に啜ってみると、儚く思えるほどのスープの香りを微かにまとった太麺が滑り込んできた。それと同時に小麦の香りも少しだが感じられて、スープと麺が互いに引き立て合っているように思えた。白濁したスープの印象からは想像もしてなかった、清らかな世界がそこには待っていたのだ。このままスープと麺だけを食べ続けると物足りなくなるような組み合わせなのだがバラエティに富んだ具材たちが加わる事で、豊かな食感や個性的なアクセントを付けてくれる。

その優秀な具材たちのラインナップは、春キャベツ、もやし、タケノコ、しめじ、キクラゲの野菜陣。いずれも強火であおってあるので食感は生きたまま野菜の持つ甘みを発揮している。そこに豚肉、揚げた鶏団子、白身魚の練り物に包まれた豚ひき肉、長崎かまぼこ、素揚げのウズラの卵が入る。特製の目玉である海産物は、王者のフカヒレ、アサリのむき身、甲イカ、むきエビと旨みの他にも見た目の鮮やかさでも役割を果たしている。細かな点を取り上げれば、むきエビの背ワタが残って臭みがあったり、フカヒレにはスープの旨みが乗っていなかったりと不満点はいくつかあった。しかしそんな事を忘れさせてくれたのが、目立たない存在のはずの春キャベツとモヤシと甘さだった。それには鮮度の良さだけではない調理技術の高さも大いに関係していると感じた。大箱の店内の割には提供スピードが早くはなかった。一度に二杯までの配膳だったように思われ、少ロットで作られているのだと確信した。そんなちゃんぽんに対するこだわりも本場ならではだろうと感心した。そんな丁寧な調理人の作り出した具材との共演で麺は幾多にも表情を変えて食べ手を飽きさせずに最後まで楽しませてくれた。

かなりの麺量とスープだったので飲み干す事は出来なかったが一つの具材も残したくはないと思い白濁したスープの底を探っていると、小柱が丼の底に沈んでいた。それが最後の具材となって箸とレンゲを置いた。

満足で食べ終えて周囲を見ると中華料理店だけに、ちゃんぽんだけを食べている客は半数くらいだった。やはり大勢で来ている家族連れは前菜や炒め物を楽しんでから名物の皿うどんやちゃんぽんを分け合って食べているようだ。そんな和やかな風景を後にして店を出ると、すでに次の目的地探しのためにRDBを開いていた。

このまま本日は何処へ向かうのかも分からないラーメン旅だが、九州遠征の第一歩としては地方色も十分に感じられた幸先の良いスタートを切れたと思える一杯でした。

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「辛麺(中華麺 5辛)¥850+ナンコツ ¥250」@辛麺屋 一輪の写真平日 晴天 19:45 先客6名 後客2名

〝花のお江戸で錦を飾ろうツアー〟

今週は一週間をかけて東京初出店を果たした地方の人気店を巡ってきた。滋賀から始まり山形、埼玉、青森、大阪と続いてきたが、未訪問店となると候補店探しに限界が見えてきた。そんな中、RDBたよりに検索していると宮崎発祥のコチラがヒットした。

お店情報を見ると、すでに3店舗を東京で展開されているようだが初出店はクラウドファンディングによる目黒店が東京初進出のようだ。メニューを見ると宮崎では当たり前らしい〝辛麺〟が主体の店だが、辛いものが嫌いでない私は異ジャンルを楽しみに初訪問を決意した。

所用が重なり19時すぎに品川で解放された身となった私は、そのまま山手線で一路目黒を目指す。この時間帯に目黒駅周辺に来ることはほとんどないが、夜の権之助坂は若者から中年層までが街を闊歩する渋谷や恵比須にはない落ち着いた雰囲気だ。

駅前の三角地帯の一片にある店には歩いても3分ほどでシンプルな看板が見えてきた。店先にあるSuica対応の券売機の前で基本らしきお題を発券する。何かトッピングしようと思い探しているとラーメンでは見る事の無い〝ナンコツ〟のボタンを見つけて訳もわからず興味本位で追加発券した。

店内に入ると客層の8割以上が女性客なのに驚いた。たしかに女性受けしそうな清潔感のある洒落た内装だ。そんな店内を本日は二人体制で回している。両サイドの壁側のカウンター式なので人目を気にせず食べられるのも女性人気の理由だろうか。

カウンターに座り壁に貼られた説明を見ると、券売機で選んだメニューの辛さを選べるらしい。0〜5辛までは無料サービスのようなので最大の5辛をチョイス。それ以上は追加の食券で25辛、さらに上のマグマまで調整できるらしいが初見なので5辛にしておいた。次に麺を三種類の中から選ぶ。「こんにゃく麺」「中華麺」「うどん」とあるが、もちろん気になるのはイチオシらしき「こんにゃく麺」だったが、保守派で奥手な私は馴染みのある「中華麺」を選びホールの女性スタッフさんに告げる。奥の厨房ではすぐに調理が始まった。茹で麺機がなく、ガス台にかけられた大型の両手鍋の役を担う。他の工程は見えなかったが着席して3分もせずに我が杯が到着した。

その姿はシャープなデザインの切立丼の中で〝アレ〟を思わせる景色を見せる。〝アレ〟を思わせるのは見た目だけでなく、熱々の湯気から立ち上ってくる香りからも〝アレ〟を感じる。真っ赤なスープを覆った黄色い溶き卵が緑のニラを包み込んだ姿はまさに〝アレ〟を彷彿とさせる。アレとは韓国料理のユッケジャンスープの事で初対面ながら馴染みのある姿には、さして驚きはしなかった。

まずは大小の粉唐辛子が浮かんだ紅海老茶色のスープをひとくち。5辛の辛さを心配しながら口に含むと思ったほどの辛さはない。むしろ唐辛子の甘さすら感じるのは、やはり韓国産粗挽き唐辛子を使っているからだろう。まろやかな甘みを持った粗挽き唐辛子を使用する事で、辛さにも奥行きと複雑味が加わっている。初動で感じた辛味が舌から引いて行くとスープの本質の旨みが現れてきた。しつこさやクドさのない動物系スープなので牛骨や牛脂由来かとも思ったが、九州の土地柄なので豚骨ベースなのだろうか。だとすれは豚骨スープのように沸かさずに炊かれた豚清湯スープだろう。カエシといういうよりはスープ自体に味を調合してあるようで醤油感はさほど感じなかったので塩で味付けしてあるのか。さらにスープの旨みが引いて行くとニンニクの香りが鼻へと抜けてくる。すりおろしたニンニクのような強い臭気や刺激は全くないのはニンニクの粒を丸ごと煮込んでいるからではないだろうか。この穏やかなニンニクが〝匂い〟ではなく〝香り〟なのも女性客に受ける理由な気がする。

今回は馴染みのある中華麺をチョイスしたが、こんにゃく麺にすれば良かったかなと思うほどに特徴がなかった。麺上げまで45秒の早茹で麺なのだが、コシも弱く小麦の甘みも乏しくスープの旨みに完全に負けてしまっていた。ちぢれ麺が中華麺らしくはあるが、ちぢれにも力がなく食感としても物足りない。やはりこのスープには弾力のある韓国風のこんにゃく麺が合っているように思える。保守派を露呈してしまったことを後悔した。

具材と言うべきかスープの一部と言うべきか分からないが、卵でとじられたニラの特徴を十分に楽しめた。スープの辛味を強く感じたら卵をの甘みで中和し、麺の食感が足りない時はニラがサポートしてくれる。これがまた大量に入っているので食べ飽きることなく食べ進められた。ときおり感じる肉片があったが豚ひき肉なのか別の肉片なのかも分からないような少量だったのが謎だった。

具材で追加した〝ナンコツ〟は口にするまで得体の知れない姿が不気味だったが、口にしてみて初めて正体が分かった。東京ではもつ焼き屋でしか見かける事のない豚軟骨を煮込んだものだった。見た目も、もつ焼き屋で見かけるノドの軟骨は硬くても食べやすいように細かく切られて元の形が分からないが、このノド軟骨はゴロッとした大きさのまま煮込まれているので見た事のない形をしたいた。また煮込んだノド軟骨を食べた事がなかったので食感の不思議さにも驚いてしまった。本来なら硬いはずの軟骨部分もアキレス腱の牛スジのようにトロトロに仕上がっている。またそれを覆う肉や脂身も更に柔らかいので歯を立てずとも口の中に消えていく。味付けはスープに対しては薄味に感じられるので、単体で食べるには少し苦労しそうな豚臭さも潜んでたのが残念。

スープの辛さに引っ張られて麺と具材は完食していたが、舌先を痺れさせる謎の旨味を感じてきたのでレンゲを置いた。辛味の陰に隠れているので最初は感じなかったが間違いなく含まれているのが後半には判断できた。

周囲を見ると若い女性客が麺を食べ終えた後のスープにご飯を入れて食べていた。これもまたユッケジャンクッパを思わせ韓流っぽく見えた。食べ終えて店を後にする時に次の候補店の事を考えていたが、そろそろ行き詰まってきたので今回のツアーも終わりを告げそうな気がする一杯でした。

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「【寿製麺 よしかわ】牡蠣そば ¥900+味玉 ¥100」@むぎくらべの写真平日 晴天 9:40 先待ち1名 後待ち1名

今年も残り少なくなってきた師走の空の下、のんびりとした毎日に刺激を与えようと

〝今年の店は今年のうちに〟

と言うことで平成最後の歳末総決算として今年オープンした新店限定で未訪問の店を年内にどれだけ多く廻れるかを実行中なのだ。それによって師走の慌ただしさを少しは感じられるのではないかと店探しを始める。

候補店はいくらでもあるがRDBの皆さんの写真などを参考にして本日の目的地に選んだのが7月13日オープンのこちらだ。何でも情報によると〝内麦〟に特化したアンテナショップのようで週替わりで料理のジャンルを問わずイートインが開催されているようだ。以前にもこちらの情報は入っていて余りに気になっていなかったのだが今回は埼玉の雄である「寿製麺 よしかわ」さんが出店されているとなれば何としても行かねばならぬと開店前の現着を目指して銀座線 渋谷駅に向かった。

日中の銀座線 渋谷駅とは全く違う朝のラッシュの光景を初めて見た。三階に上がる階段は一階にまで人が溢れている。事故でもあったのかと思ったが周囲は平然と当たり前のように一歩ずつ進んで行く。10分以上かけて三階の改札にたどり着き人混みのホームに押し出された。6両編成の短い銀座線は短い間隔で乗客を必死で吐き出していく。少しだけ師走の慌ただしさを味わえた。銀座で丸ノ内線に乗り換えると目的地の淡路町に着いた。地上に出て靖国通りを進むと小川町交差点名物の顔のYシャツのユニークな看板の脇にこちらがあった。

10時開店の20分も前の現着だったがすでに並んでいる人がいた。その方に続いて二番手をキープし本日のお題を品定めする。店頭には牡蠣100%らーめんの幟が立っているのでオススメなのだろうが貝出汁耐性が弱く午前10時の胃袋には刺激が強すぎるのではないかと躊躇してしまう。

定刻通りに開店となり入店。入口レジでのデポジット方式でレジ上のメニューを見ると「牡蠣」「しじみ」「濃厚煮干し」と耐性のないメニューばかりが並んでいる。こうなれば朝の胃袋に無理をさせるのを承知で牡蠣そばを選択し味玉を追加した。リプライコール用のベルを手渡されテーブル席にて待機する。

店内は広めのカフェのような空間でピーク時には近場のOLさんで賑わっている様子が想像できるオシャレな装い。コンパクトにまとまった厨房を見るとご夫妻直々のツーオペで切り盛りされている。アンテナショップだが厨房設備は整っているように見えた。全てがセルフ方式なのでホールスタッフはレジの女性だけのようだ。内麦の店だけに麦茶にもこだわっていて麦茶の種類も週替わりのようだ。本日の麦茶も派手さはないがほんのりとした甘みがあり胃袋を少し目覚めさせてくれた。

着席して4分ほどでリプライコールが鳴った。キッチン前のカウンターで商品を受け取り再び席に戻り我が杯を眺める。よしかわさんの丼ではなくアンテナショップオリジナルの白磁の鳴門丼の中の姿はノーブルな色彩のグラデーションにパステルな焼豚とボタニカルな三つ葉のアクセントカラーが目を惹く悩ましき造形美。普段はあまり目にしないタイプの容姿だが思わず一目惚れしてしまった。

まずは牡蠣由来のコハク酸が濁りを与える薄香色のスープをひとくち。一瞬で海の中に引きずり込まれたような海底の景色が口中に描かれる。口内だけでなく朝の寝ぼけた細胞のひとつひとつに染み渡っていくのを感じられる。貝類の出汁に見られがちな塩気の強さも感じないのはカエシの塩分をほとんど足していないのではないかと思うほどに抑えてある。このスープならば朝イチの身体にも受け入れられる上品な吸い地でホッとした。薄っすらとした香味油も植物性なのか過度なコクは出さずにオイル感も少ないのでサッパリとしている。

こちらの麺は強いハリとコシが持ち味なのだが牡蠣そばに適用された麺はひとあじ違った中細ストレート麺だった。透明感の中にフスマの粒が見られる麺はハリとコシを抑えた仕上がりで小麦のグルテンを感じやすい柔らかめな茹で加減だった。口当たりや喉ごしよりも優先しているのは小麦の香りと甘みを引き出す事のように思えた。噛むたびに溢れる甘みは内麦の良さを発信するのに相応しい麺だ。この内麦の自然な甘さを引き出しているのはスープの自然な塩気で、この方程式に気が付いた後は箸が止まらなくなっていた。

具材は定番の豚肩ロースの低温焼豚はお決まりの二段重ねで盛られてある。先にスープに浸されず美しいロゼ色を保つレアチャーシューは安定感のあるマリネ液が浸透しているのでレアだが生っぽさは感じない。そのロゼ色を守るために下で支えていたもう一枚の焼豚はスープの熱で変色してレアではなくなっているが赤身の繊維質がハッキリと分断して新たなテクスチャーを生んでいる。タンパク質が熱変化した豚肉ならではの旨みがあり、これまた素晴らしいが牡蠣スープとの相性は抜群と言うほどではないかなと思う。

今回のスープとともに最大の特徴である具材の牡蠣は大ぶりとまではいかないが中々のサイズの物が四個も添えてある。やはり牡蠣自体の旨みはスープに奪われてしまって具材としての価値は下がってしょうがないが牡蠣を噛んで中の内臓の色を見た時に良質な漁場で育てられた牡蠣なのが分かった。腸の中には深緑の内容物が大量に詰まっていた。これは牡蠣のエサである海藻が豊富な証であり、さらにたどれば良質なプランクトンが繁殖するミネラル豊かな海と言える。そんな中で育った牡蠣ならではのエキスがスープに溶け出した後なので旨みが残ってなくて当然なのかも。その物足りなさを薬味の三つ葉と合わせて食べる事で少し解消できた。

メンマはお得意の太メンマではなく麺の柔らかさに合わせた細切りタイプ。繊維を感じるも柔らかくほどけていくメンマは麺の食感の邪魔をせず寄り添うように消えていく。このあたりの計算が感動させられる理由のひとつだ。

追加した味玉は通常のものよりも熟成が増しているように思えた。白身にまで浸透した唯一の醤油味がアクセントになり黄身の熟れた甘みが口の中にまとわりつく。そこにスープの塩気を注ぐと更に甘みが増す幸福のルフランが生まれる。

薬味は先ほどの具材の牡蠣を食べる時に好演してくれた三つ葉と海苔が大きく添えてある。海苔の風味とスープの相性は疑う余地がない。この磯の風味の中に溺れてしまいそうだ。

私の生活リズムの中では早朝に位置する時間帯なのに一気にスープも残さず平らげた。貝類のコハク酸特有の喉に張り付く執拗な塩分も旨味も感じずに丼を置いた。

深海のような旨みはあるのに後味がサッパリするように書かれた設計図には感動すら覚えた。本当に欲を言うなら具材の牡蠣にプリッとした食感が欲しいので別トッピングでもいいから殻付きで焼いた焼き牡蠣ひとつ添えてあったら更に極上の至福が待っていそうだと想像した一杯でした。

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