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のらのら

男性 - 東京都

はじめまして。レビュー開始から一年が経ち、二年目の目標を全国制覇にしました。一杯のラーメンに出会うまでの経緯も書き記しているので、前置き等が長くなりがちですがお許しください。しかし採点に関しては立地 接客 衛生面 価格設定などは考慮せずに、ラーメン一杯に対しての評価にしています。自分の好みだけで評価しているので不快な文面もあると思いますが、何卒宜しくお願いします。

平均点 73.435点
最終レビュー日 2019年7月19日
568 460 14 1,850
レビュー 店舗 スキ いいね

「特製鶏中華そば ¥1100」@中華そば 馨の写真平日 小雨 11:30 店内満席 中待ち1名

〝ニューオープン パトロール〟

また新たな新店情報をRDB内で見つけると、居ても立っても居られずに品川駅に向かっていた。

これは昨晩の事で、入手した新店情報が小田原とあっては前泊して初訪問しようと思い立ったのだ。そこで 19:34 品川発 こだま683号 新大阪行きに乗り込むと30分もかからずに小田原駅に降り立った。とりあえずは新幹線の車内で見つけておいた温泉付きの宿泊施設に向かい寝床の確保には成功した。

都内の温泉施設とはスケールが違う屋上露天風呂と大浴場やサウナで汗を流した後は深夜を過ぎても利用可能な食事処で、神奈川ならではの工場直送の生ビールを楽しんだ。黒ビールの生が飲めるのは珍しいのでハーフ&ハーフにして飲んだり、そのままの黒ビールを日付が変わるまで楽しんだ。深夜のフードメニューにもラーメンがあったが、ここは自粛して仮眠室で眠りに就いた。

翌朝は快適に目覚めると小田原観光には目もくれず、11時半オープン前の現着を目指して温泉施設を出発した。歩いて向かうと20分近くかかるようなので、小雨が降っている事もありバスルートを利用する事にした。観光客で賑わいのある東口とは違い、地元の方の利用が多そうな西口から伊豆箱根バス 佐伯眼科行きという個人病院の名前が終点となっているローカルバスにて揺られること3分で最寄りの荻窪西バス停に着いた。このとき小田原にも荻窪がある事を初めて知ったが本当にバスに乗る意味があったのだろうかとルート検索を疑った。そこからは歩いて店を目指したが、より近いバス停もあったので別ルートの方が良かったみたいだ。バス停からは小田原市役所を大きく迂回するように歩いて行くと「ラーメン」とだけ赤文字で書かれた以前の店のものと思われる看板が見えてきた。明らかに観光地の小田原でなく、地元客優先の立地にも店主さんの強いこだわりが見られる。店先に近づくと開店祝いの花が雨に打たれて並んでいて、すでに店はオープンしており店内は満席となっていた。雨の中だったので少し早開けだったのだろうと思うと、店の心づかいが伝わってきた。

店内に入ると入口左手の券売機にて本日のお題を決めるが、開店しばらくは中華そばだけに絞ったメニューとなっていた。せっかく小田原まで足を伸ばしたのでハイエンドメニューの特製を発券して、三席だけある中待ちイスの二番目に座り店内を見渡してみる。外看板などからも居抜き物件と思われるが、新しく改装されていて清潔感があり居心地は良さそうだ。一直線ではなく構造上の都合で段違いに設置されたカウンターだけの店内を店主さんお一人で切り盛りされており、お冷などはセルフスタイルとなっている。調理場内に目を向けると新しい厨房機器や使い込まれた中古品などが入り混じった、開店資金を節約されているのが分かる。しかし直接客の口に入る食材を扱う電動スライサーなどの機材には新品が使われている辺りにも、ご主人のこだわりが表れている。それとは逆にガス台などには中古品で揃えてあり、その上に置かれた寸胴鍋の中では丸鶏や胴ガラなどが温度計で一定温度を守られて沸騰する事なくじっくりとスープが炊かれている。ご主人のこだわりは提供する器にも表れていた。今や器を温めるのは常識ともなってきたが茹で麺機の蒸気で温める店が多い中で、わざわざ大鍋で湯を沸かして器専用の湯煎で温めているのだ。これならば器がベタつくような事がないので最善の方法だと思った。そんな細やかな気配りに期待を大きくしていると、20分の中待ち待機を経てカウンターに昇格した。

セルフで水を汲んでから、卓台に食券を置くと店主さん渾身の調理が始まった。一度に大量生産をせずワンロット2杯を確実に仕上げていくスタイルで出来上がった我が杯が、着席して6分で到着した。その姿はシャープな切立丼の中で、最近よく見かける流行りの容姿でお目見えした。その姿を見た時に直感的に味の想像がついてしまい、初対面の楽しみを半減させてしまっているのが少し残念でもある。言い換えれば、それだけ鶏清湯のジャンルが広まった証でもあるのだ。もしかしたら見た目の予想を裏切ってくれるかもと期待しながらレンゲを手にした。

まずは赤銅色のスープをひとくち。醤油の色素を強く打ち出してはいるが、さすがに丁寧に炊かれたスープの透明感は美しく澄み切っている。そんなクリアなスープの液面には 20cc程と多めの鶏油が覆い隠していて、香りや湯気を閉じ込めている。そんな厚手な油膜をレンゲで破ると、醤油のキレのある香りが立ち昇ってきた。シャープにも感じる香りの中でスープを口に含むと、予想していた味わいとは少しだけ違った印象を受けた。鶏出汁の甘みやコクが先行する鶏清湯スープかと思ったが、どちらかといえば醤油ダレがキレと酸味を主張している。確かに丸鶏の旨みも強いがカエシが絶妙なバランスをとっているのでクドくない味わいに仕上がっている。甘みと酸味が折り重なる事で、スープが一辺倒にならずに複雑に感じられる。

多くの鶏油で口内に油膜が張り巡らされた所に麺を追いかけてみようと箸で持ち上げてみると、黄色みを帯びた切刃のエッジが微かに残る中細ストレート麺が現れた。麺上げまで100秒の麺を持つ箸先からは適度な重みが伝わってくるので、加水率は高くもなく低くもない平均的と感じとった。そんな麺を一気にすすり上げると麺肌にはグルテンが溶け始めて柔らかさを表現して、芯の部分にはコシの強さも感じられる二層構造的な麺質が特徴的だ。鶏油が潤滑油となって勢いよく滑り込んできた麺を噛みつぶすと、小麦の甘みが弾けてスープの塩気と酸味がスパイラルとなって昇天する。良くあると言ってしまえばそうではあるが、この安定感のある組み合わせは認めざるを得ないのも確かだ。

具材のチャーシューは二種類が切り立てにこだわって盛り付けてあった。一切の切り置きをせずにロット毎にスライスされた豚肩ロースの低温調理は、あまりの大判にも驚いたが厚みを持たせたスライスには更に驚いた。惜しげも無く分厚くスライスされたチャーシューを思い切り頬張ってみると、圧倒的な食べ応えとなってチャーシューではなく別の豚肉料理を食べているようだった。味付けは控えめなので物足りなさもあったが、豚肉本来の質が良いので獣臭さは出ておらず食べる事ができた。低温調理と言ってもレア感はなく、きちんと温度管理された安心できる仕上がりでもあった。一方の鶏ムネ肉も低温調理が施されていて、こちらは少しレア感があったが下味のソミュール液に使われたローズマリーなどの香辛料の香りが生っぽさを軽減して生ハムのような作りとなっていた。レアチャーシューならではのしっとりした舌触りが上手く引き出されていて、厚切りのカットも歯応えを良くしていた。

ワンタンは鶏肉餡が柔らかさが特徴的ではあったが、肉餡の劣化を避ける為に仕込んでから冷凍管理して保存されているようだ。なので今回分のワンタンは肉餡にギリギリ火が入ってない半生の状態で提供されていたのが残念だった。すぐに口から出してスープの中で再加熱して難を逃れたが、これには伏線とも言える理由があったのだ。実は写真からも分かるようにワンタンが最初は一個しか入っておらず、後から別皿で提供されたものが二つあったのだ。その後から追加されたワンタンを先に食べたのでオペレーションの手違いで店主さんが慌てて茹でられたのだと思うが、少し茹で時間が足りずにこの結果となってしまったのだろう。オペレーションのミスと言うよりは、もしかしたら冷凍によってワンタン皮のコシが弱くなって破けてしまったのだと思うが今回はイレギュラーなワンタンに当たってしまったようだ。それでもしっかりと熱を通したワンタンからは適度な香味野菜や中華香辛料の香りが個性的な肉餡となって支えている。やはりワンタン皮は溶けるほどに柔らかすぎたので喉越しとしては良いとは言えないのが本音だ。

味玉は黄身の半熟具合は平均的だが、白身の柔らかさには驚いた。もしや黄身よりも柔らかな白身の味玉には出会った事がなく、どんな調理方法で仕込まれた味玉なのか大変気になった。柔らかさでは申し分ないが、食べやすさの面では箸で割った瞬間に白身が崩れてしまいスープの中でバラバラになったのには困ってしまった。

メンマは穂先メンマで仕込まれていてスープの醤油感の強さに反して薄味となっていた。適度な発酵臭を残しながら、柔らかくも麻竹の繊維を感じさせては消えていく食感は面白いアクセント役を演じてくれた。

薬味は潔く青ネギの小口切りだけどシンプルになっている。不思議と香りを感じられず青ネギらしさは出てなかった。また舌触りも乾燥気味で違和感が残った。

中盤からも麺の食べ心地の良さで完食したが、ワンタンの不具合などがあったので採点は下がってしまった。もし全てがベストの状態だったならば80点オーバーは間違いないはずだった。食べ終えて席を立つ時にも、雨の中でも客入りが続いていたので地元の期待の大きさを感じながら店を後にした。

ちょうど良い帰りのバスがなくて、小田原駅まで歩いて帰る道の途中でも、観光地の海側の顔とは違った生活感のある山側の雰囲気を味わいながら20分かけて歩いて帰る事になった一杯でした。

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「味玉ワンタン麺 ¥950」@麺屋かなでの写真日曜日 小雨 17:45 先客2名 後客なし

〝ニューオープン パトロール〟

昨日あいにくの雨の中を初訪問した際に突然の昼営業中止の貼り紙を見て愕然としたコチラへのリベンジの為に、二日ぶりに立川駅まで戻ってきた。

本日は赤坂の劇場にて知人の舞台を観劇したあと普段は出来るだけ夜ラーを避けているのだがコチラの新店が当分の間は夜営業だけとの事なので、やむを得ず夜の部を目指してやって来たのだ。前回と同じく小雨がそぼ降る中で、まだ道順の記憶も新しいので道に迷う事もなく変則的な五叉路の交差点の脇に佇む店先が見えてきた。

前回と明らかに違うのは三角地帯の建物の側面にある看板が明るく照らされているのと、ガラスの扉が全開になっていて暖簾も掛けられている点だ。遠くからでも営業している事が分かり、ひとまずはリベンジの態勢は整った。

店内に入ると左手の券売機の中から品定めをするが、せっかくなので味玉とワンタンが入った贅沢メニューを発券してカウンターに腰を下ろした。店内を見渡すと飲食店の居抜き物件なのだろうか、現時点では使用されてないが二階への階段があり厨房内には配膳用エレベーターの名残りもあるので中華料理店の跡地にも思える。そんな調理場内のガス台では、沸騰させないように一定の温度を保ちながら寸胴鍋でスープが炊かれている。店の看板には鶏のスープと書かれていたので鶏出汁と思われるが、寸胴鍋の小ささが不思議に思った。本日はお二人で切り盛りしているが調理工程の全てを店主さんが担っていて、女性スタッフはカウンターを丁寧に拭いたりと片付けを中心に行っていた。カウンターの壁が高いので調理の手元は見えないが、期待に胸を膨らませて待っていると着席して5分で我が杯が到着した。

その姿は白磁の高台丼の中で、素朴な店の雰囲気とは違ったトレンドのド真ん中の姿を見せていた。それは悪く言えば〝またおま系〟にも見える景色ではあるが、どことなく野暮ったさがあり親しみやすくも感じられた。見た目からは、ある程度の味を想像が付きながらレンゲを手にした。

まずはスープをひとくち。液面には大量の鶏油が覆っていて、その下に閉じ込められたスープは清湯と呼ぶには少し曇りがかっている。そんな油膜を破るようにレンゲを沈めてみると、目に見えるほどの白い熱々の湯気が立ち昇ってきた。その中には丸鶏由来の香りがふくまれていて、まずはビジュアルと香りが一致した。その香りはレンゲが口元に近づく距離に比例して大きくなってくると、口に含んだ瞬間に鶏主体の味わいとなってビジュアルと香りがと旨みの全てが脳内で合致した。そんな中に独特の野趣も感じるのは鴨も使われているのだろうか、鶏だけではない厚みも出ている。かなり甘みとコクを際立たせた設計図となっているが、合わせた醤油ダレが酸味を持っているので飲み込んだ後は意外とさっぱりしていて飲み心地のとても良いスープだ。

続いて麺を持ち上げでみると、麺上げまでジャスト60秒の中細ストレート麺が現れた。箸先からも強いハリを感じられ、麺肌には多めの鶏油をまとって光り輝いている。そんな美しい麺を一気にすすり上げると、麺自体は軽やかな口当たりではあるが、鶏油が潤滑油となっているのでスピード感がある。やや低めの加水率と思われるが、淡白な印象の舌触りをサポートするように鶏油が潤いを与えてくれる。この組み合わせが功を奏して順調に箸が進んで食べ飽きさせないが、どこかで似たようなラーメンを食べた事を思い出した。それは都内はもとより、最近では横浜にもオープンした出店ラッシュが続いている「らぁ麺 はやし田」のラーメンだった。思い返せば初見のビジュアルもワンタンがなければ瓜二つだったので、何らかの関係性でもあるのだろうかと思ったが定かではない。

次にそのワンタンを口にしてみると鶏に特化しているかと思いきや、豚ひき肉で仕込まれていた。生姜などの香味野菜は控えめにして豚ひき肉の旨みで勝負してある。ワンタン皮から透けて見える赤身の強い肉質は、鮮度が良いので豚肉本来の旨みだけで十分に味わい深いワンタンとなっている。包んだ皮の滑らかな舌触りとパワフルな肉餡のコントラストが食感の面でもインパクトを残してくれた。

それに比べると二種類のチャーシューは好みから外れていた。まずは鶏ムネ肉の方だが、低温調理なのだろうがパサついてしまっている。温度設定か加熱時間の長さなのか分からないが、鶏ムネ肉のタンパク質が固まってしまっていた。下味の希薄さも手伝って味気なさばかりが目立っていた。一方の豚肩ロースも同じ低温調理と思われるが、こちらもしっかりと加熱されていた。もしかしたらレアチャーシューだったのかもしれないが、盛り付け方がスープに浸されているので熱々のスープで加熱が進んでしまったとも思えたが確かめる術はない。味も薄いので両者ともに物足りなさが残ってしまうチャーシューだった。

また味玉にも「はやし田」を思い起こさせる要素があったのだ。それは黄身の色の濃さがパプリカ色素による卵だったので、グループ店でも使われている〝マキシマムこいたまご〟だと思われる。そんな共通点からも、ついつい修行先を想像してしまった。そんな味玉は非常に柔らかい白身と、とても大きな黄身が印象的だ。歯を立てずとも唇の圧力だけで割れるような味玉は、漬けダレはしっかり浸透しているが不思議と浸透圧による硬化をしていない。好みの熟成感はなかったが面白い仕上がりを見せる味玉だった。

メンマも見慣れた感の拭えない穂先メンマで仕込まれていて、薄味ならではの発酵臭が残してあるタイプだった。香りと食感の両面で程よいアクセントとなっていた。

薬味は青ネギを使われているが券売機のメニューにある九条ねぎが販売中止になっていたので仕入れが不足していたのだろうか、残念ながら少なめに添えてあるだけだった。さすがに香りも高く舌触りも繊細だったので、次回は追加したいと思える抜群の薬味だった。

中盤からも慣れ親しんだと言っても良いような確立された味わいのままにスープと麺には満足だったが、チャーシューのコンディションか今回分だけかもしれないが好みと違っていたのが採点が下がった理由だと思いながら箸を置いた。

店を出る時にもう一度券売機を見直してみると試作中のメニューなどもあるようなので、多彩なジャンルのメニューで地元ファンに根付く事を想像する一杯でした。

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「特製醤油ラーメン ¥1120」@麺屋 武嶋屋の写真土曜日 曇天 11:20 先待ち7名 後客12名

〝ニューオープン パトロール〟

本日は難攻不落と思われた秩父で産声を上げた新店攻略のために所沢に前泊している。RDBの新店情報で見つけたこちらへの初訪問するには自宅からでは移動時間がかかるので、昨夜は深夜1時を越えた頃に所沢に乗り込んできた。

日本国内で二ヶ所しかないらしいサウナの聖地フィンランド産の木材で造られたサウナと、埼玉屈指の冷たさを誇る水風呂を有する宿泊施設で朝を迎えた。水風呂の冷たさは良かったが肝心のサウナの温度が今ひとつ熱さが足りずで肉体的は整いきれずで残念だったが、食事処の生ビールは裏切る事なく精神的には完璧に整った。

翌朝は西武秩父駅までの最短ルートとなっている所沢 9:52発 西武池袋線特急 ちちぶ9号にて向かう予定でホテルをチェックアウトしたのだが、三連休の初日なので有料特急は満席でチケットを予約してない事を悔やんだ。仕方なく小刻みに各停電車を小手指と飯能で乗り継いで向かう事になった。

休日の西武秩父線の車内は行楽を楽しむ家族づれや女子大生の仲良しグループの日帰り旅行でワイワイと賑わっている。そんな車内でラーメン一杯のためだけに秩父を目指しているのは私だけだろうなと思うと切なくなってきた。

少しセンチメンタルになりながら変わりゆく車窓の景色を眺めていると、最寄りの西武秩父駅に所沢駅を出てから1時間半程かけてたどり着いた。トレッキングシューズを履かずに秩父駅に降りたのは初めてかもしれないと思いながら、開店まで時間に余裕があったので久しぶりの秩父駅を見て回った。かなり立派にリニューアルされて食事も楽しめる温泉施設が併設されていて、以前のイメージとは全く違う風景になっていて驚いた。そんな施設内の食事処は昼時を前に多くの観光客で賑わっている。中には味噌ラーメン店も出店しているので、もしも目的の新店が臨時休業であってもリカバー出来ると妙な安心感が生まれた。

定刻の10分前になる頃に、いよいよ目指している店へと向かってみた。駅からはほんの数分歩くとパチンコ店の新装開店かと思うような、都内の開店祝いでは見かけなくなった大きな花輪がすごい数で出迎えてくれた。出迎えてくれたのは花輪だけでなく、大勢の開店待ちの行列もあった。失礼ながら、こんな所に開店待ちが出来ているとは目を疑ってしまった。待っている方々は偶然にもお知り合い同士のようで、会話の内容などから地元の方と思われる。そんな地元客の期待を一身に集めている新店なのだろうと、よそ者ながら私も期待を込めて最後尾を探した。

店頭には外待ち用の受付シートが置かれているが誰も記入せずに整列するでもなくバラバラに待機しているので最後尾が分からずに、少し間隔をあけてそれらしく開店を待つことにした。すると定刻よりも5分も早く暖簾が掛けられオープンとなった。

後待ちがなかったので先客が入店するのを見届けてから八番目で店内に入った。入口右手に設置された券売機の中から最上段に位置するのが醤油系だったのでためらう事なくメニューは決まったが、せっかく秩父まで来たので贅を尽くした特製のボタンを迷わず押した。ホールスタッフさんから「お好きなカウンター席へどうぞ」との事なので少しでも調理風景が見えそうな席を選んで腰を下ろした。

カウンター越しに店内を見渡すと新店舗らしく新しい木の匂いが残る客席は、カウンターよりもテーブル席を多く設けた複数人向けのレイアウトとなっている。所々に焼杉板を使われた内装はシックな落ち着きを感じさせてくれるが、打ちっ放しのコンクリート床と椅子の脚が擦れる音が大きく響くのが居心地の良さを半減させてしまっている。そんな店内を本日はオープン直後の週末なので、万全の六人体制の強化布陣をとっている。本日は土曜日という事でホールスタッフには初々しい学生バイトさんが実践を交えながら研修中のようで、慣れないオペレーションながらも着実に配膳が進む様子を眺めていると着席して20分で我が杯が到着した。

その姿は白粉引の八角丼の中で特製ならでは豪華布陣で出迎えてくれたが、少しやり過ぎではと思ってしまうような要素も含んで見えた。それだけお客様に喜んでもらおうという、店主さんの思いの表れでもあるとも感じながらレンゲを手にした。

まずは赭色のスープをひとくち。液面の油膜には細かな豚背脂と思われる脂片が浮かんでいて、強めの動物性を感じ取った。レンゲを落とし込んだ指先の感覚からは濃度の低さを感じるが、レンゲに注がれたスープには多めの香味油が伴ってきた。そんな四つ足系に思われるスープを口に含んでみると、意表をついて魚介系の香りが先行してきた。魚介系の中でも鰹節の香りが主で、節粉ではなく削りがつお由来のものと思われる。和出汁感の強いスープを支えているのはオーソドックスな鶏や豚主体の動物系清湯スープで、土台はしっかりとしているがクセにも感じる獣特有の臭みも潜んでいた。合わせる醤油ダレも少し強めに思われたが、塩っぱいほどではなくスープを引き締める役割を担っている。旨味の底上げも感じてしまったが、動物系と魚介系の基本的なWスープに仕上げてあった。

スープによって様々な麺を使い分けられているが醤油系には中細ストレート麺が採用されていた。麺上げまで60秒の中細麺を箸で持ち上げてみると、少しウェーブがあり透明感を見せる麺肌は丸みを帯びてグルテンが詰まっていそうに感じた。そんな麺を啜ってみると想像した通りの滑らかな口当たりで滑り込んできて、昔の中華麺にも共通するような啜り心地を思い出した。本日の客層が高齢だったので、皆さんにも馴染みのある麺質なのではと想像した。とりわけ小麦の香りが高いとか素材の甘みを感じるといった麺ではないが、幅広い年齢層に受け入れられるタイプの麺を採用されていた。オイリーな油膜の力を借りて口の中に飛び込んできた麺を噛みつぶすと、もっちりとした跳ね返りが食べ応えを強くしている。特別な個性がないのがかえって個性的にも感じるような麺だと思った。

具材のチャーシューは部位違いで二種類三枚が盛り付けてあった。いちばん手前には豚肩ロース焼豚が煮豚ながらも赤身がパサつくような事なくしっとりと仕上げてあり、味付けも適度に乗っており存在感のあるチャーシューだった。残る二枚は豚バラの煮豚型だったが、煮汁の味の薄さなのか豚バラ自体の質の悪さなのか獣臭が出てしまったいた。部位的には赤身と脂身のバランスの良い部分だったが、チャーシューとしての出来映えとしては私には残念な仕上がりだった。

初見で少しやり過ぎと思えた具材の味玉は、特製なのでだろうが一個半も盛り付けてあった、
きっと基本の醤油ラーメンでも半個入りなのだろうが、特製だからといって更に一個追加する事はないのではなかろうか。決して量が多くて文句を言っている訳ではないが、好みと違った固茹でたまごだったので不必要に思ってしまったのだ。

メンマは極太タイプを使われていたが手仕込み感はなく一般的な甘みを利かせた味付けは安定感はあるが、ここならではのメンマと言った仕上がりでなく残念だった。

薬味の白ネギは粗々しい切り口が素朴さを感じさせて、食感や辛味の面でも良い意味で〝洗練された〟とは真逆の野趣を味わえた。また清涼感を付け加えてくれる黄柚子の皮も彩りと共に爽やかな香りを中盤から与えてくれたが、この時期には黄柚子は珍しいのでハウス栽培の柚子だろうか。栽培方法や品種の改良で、食べ物の旬が曖昧になってきた事を実感する。

青みにはカイワレが少し添えてあったが、気が付けば食べていた程度の存在感しかなかった。提供時にはすでに丼に張り付いてしまっていた海苔は、ばら海苔のように溶けが早く香りも無かったので質の高さは感じられなかった。ナルトに関しては今回も口にする事はなかった。

中盤と言わず序盤から不要な旨味が箸の動きを妨げてきたが、なんとか戦いながら麺は大方食べきったがスープは残してしまった。

周囲を見ると極太のつけ麺や、中太麺の味噌ラーメンなどを楽しんでいる地元客で賑わっていた。こちらの店のもう一つのウリでもあり、屋号の由来と思われる有名店で修行された〝いなり寿司〟を食べている客がいなかったのが不思議に思いながら席を立った。関西ではうどんにおいなりさんの組み合わせをよく目にするが、ラーメンにいなり寿司のコンビが早く地元に根付いて欲しいと思いながら店を後にした。

今回は秩父観光をするでもなく次発のレッドアロー号にて帰路に就いたが、途中駅の飯能までを後ろ向きで走ると初めて知って驚きと戸惑いを感じる事になった一杯でした。

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「ラーメン 並 ¥600 +半熟味玉 ¥100」@中華そば つけ麺 音七の写真平日 小雨 10:55 待ちなし 後客7名

〝ニューオープン パトロール〟

久しぶりの八王子界隈での新店情報を元に昨夜から連食計画を実行している。もはや中央線遠征時の西の拠点として大活躍してくれている荻窪の宿に前泊して乗り込んできた。

昨晩はチェックインが深夜を回っていたので、大浴場でひとっ風呂浴びると大人しくベッドに入った。翌朝は少し早く目が覚めたので長めに朝風呂を楽しもうと思ったのだが、今朝の大浴場は塩素系の刺激臭が漂っていて目が痛いと感じるほどだった。仕方なく早々に風呂を上がり館内でコーヒーを飲みながら新店の予習を兼ねてRDBを開いてみる。

お店情報では武蔵境に半年ほど前にオープンしたばかり店ののグループ店となっているが、半年で二軒目とは勢いの良さを感じずにはいられない。武蔵境の方は存在は知っていたが未だに行けずの課題店なのだが先に2号店に伺う事になるとは、たった今気づいたのだ。しかし当初の計画は変えられずに初訪問を決めたのだ。

11時開店前の現着を目指すとしても前泊した荻窪からだと30分ほどで着く計算だが、本日は中央線の遅延情報が入ってきたので早めにホテルをチェックアウトして向かう事にした。10時前にホテルを出て荻窪駅に向かうと10分ほどの遅れが上下線ともに出ていた。とりあえず先へと進もうと最初に来た各停の高尾行きに乗り込んだ。途中駅で特急の待ち合わせなどのアナウンスもあったが、快速などの仕組みが今ひとつ分かっていないので多少の時間がかかったとしても各停で確実に先へと進んだ。

荻窪駅を出てから予定よりも時間はかかったが50分程で最寄りの八王子駅まで来た。この時点で定刻の10分前だったので慌ててナビを片手に店を目指した。大きなマンションに阻まれて最短ルートが分からずに迂回を強いられたが、何とか定刻5分前にたどり着けた。運良く並びも出来てなかったので先頭にて待機をはじめる。

ここがビッグターミナル八王子駅のそばとは思えないような味わいのある裏通りの中に、より一層に味わい深い佇まいの店構えを見てるだけで気持ちが落ち着くようだ。敷地面積を最大限に活かしたい極薄のかまぼこ板のような建物の中には、窓ガラス越しに小綺麗なカウンター席が見られる。店先に貼られたメニューを見ながら待っていると2分早くオープンしてもらった。

真っ白な暖簾をくぐり店内に入ると目の前に小型の券売機が置かれてあり、迷う事なくマイスタンダードのラーメンのボタンを押して好物の味玉のボタンを探してみる。一度最下部まで目線を落としたが味玉ボタンが見つけられず、もう一度よく見直してみると他のトッピングと共通になっているボタンを見つけた。その横には味玉半分50円のボタンもあったが、ここは100円で一個の方を選んだ。

自由着席でカウンターに腰を下ろして店内を見回してみる。やはり客席のカウンターは狭小で、背後のスペースは配膳するのに人が通れる最低限の間隔しかない。目の前の壁紙には石積みのクロスが貼られて、不思議な重厚感も醸し出している。新店舗の改装に伴って設えられたカウンターには清潔感があり居心地よく待つ事ができる。そんな店内を本日は二人で切り盛りされている。

店内左手奥には独立した厨房スペースがあり店主さんが腕をふるっている。一番奥には業務用の茹で麺機が設置されているが、なぜかガス台の上には三台の両手鍋で常にお湯が沸かされている。初めはスープを炊いているのかと思っていたが調理が始まると、その理由がすぐに理解できた。屋号にもあるようにメニューの二大看板であるラーメンとつけ麺に使われる麺の太さが随分と違うようで、卓上の説明書きにも茹で時間の違いが記されてあった。ラーメンの細麺は2分、つけ麺の極太麺はなんと14分となっている。東海道新幹線ならば、品川から新横浜を過ぎたくらいまでの茹で時間が書かれていた。それならば客席が少ないといっても麺上げのタイムロスを防ぐ為には必要な鍋なのだった。

厨房の全貌は見えないまでも、そんな創意工夫された調理工程を想像しながら待っていると着席して6分の第1ロットにて我が杯が到着した。その姿は初めてお目にかかるタマネギをモチーフにしたデザインの切立丼で登場した。輪切りや、くし切りにカットされたタマネギが描かれた器は、八王子ラーメンにお似合いのコンビで面白くも新鮮に映った。絵柄の中にみじん切りがあれば更にマッチしたのにと、余計な事を思いながらレンゲを手にした。

まずは唐茶色のスープをひとくち。液面には非常にドットのきめ細やかな香味油が浮かんでいて、店内の光を跳ね返している。油膜は多く見られるが粒子の細かさからオイリーな印象はないままにレンゲをスープに沈めてみる。表層が波打ったと同時に薬味のタマネギの香りが湯気に交じって先行して鼻先に届くと、自分が八王子にいる事を再認識させられる。視覚 嗅覚 味覚の全ての受け入れ態勢が整ったところでスープを口に含んでみると、ゆっくりとした助走のような始まり方が印象に残る。動物系のスープや魚介出汁の旨みが穏やかに感じられるが、何一つとして強要してくるような旨みではない。カエシの塩分もかなり抑えてあるので、物足りなさを感じる人もいるのではと思ってしまうくらいのスロースタートだ。過度な初動のインパクトを求めない私ですら味を探ってしまうような優しい味わいと思ったのも束の間、次なる旨味が潜んでいたのだ。ある程度は覚悟してきたのと、過剰な使用量ではなかったのが幸いだった。

続いて麺を持ち上げてみると、全粒粉のフスマを配合された色づきの良いストレート細麺が現れた。箸先に見えるのは切刃のエッジが微かに残った角のある麺肌と、あまりハリやコシの強さを感じない柔らかそうな麺質だ。この麺の形状で麺上げまで120秒なら茹で過ぎではと思ってしまうような箸を持つ指先の感覚だった。やや不安になりながら麺をすすり上げると、麺肌のグルテンが滑らかさを与えて勢いよく滑り込んでくる。懸念された柔らかさは、ひとくち目でもピークを少し過ぎているのではと思うような柔らかさだが、これが店主さんの狙った茹で加減なのだろう。個人的な好みとは違っているがスープの相性を考えると、柔らかに溶け出したグルテンがスープを良く吸っているので一体感は確かに素晴らしい。あまり見かけない製麺所の麺箱が積まれていたので、地元八王子ならではの麺質なのかもしれないと思った。

具材のチャーシューは豚肩ロースの煮豚型が大判のままで一枚盛り付けてある。赤身中心の部位なので柔らかく仕込まれているが、肉質の繊維を感じられる歯応えも残してあり食べ応えは十分ある。味付けも派手さはないが堅実に、スープや麺に寄り添った醤油の風味と豚肉本来の旨みでサポートしている。

追加した味玉は別皿で提供されたが記念撮影用にオリジナルで盛り付けてみたので、これはあくまで撮影上の演出です。最初から半カットされているので食べた時の驚きは半減するが、半カットならではの利点も感じられた。それは冷たいままで出てきた味玉だったが、ラーメンの中に盛り付けるとスープの熱を借りてすぐに温め直されいた点だ。ひと通り麺や具材を味わっているうちに味玉を食べる頃には適温まで温まっていたので、ノーカットの味玉ではこうはいかなかっただろうと半カットに感謝した。それほどに味付けもゲル化した黄身の熟成感が味わえて、追加して良かったと思える味玉だった。

メンマは不揃いな大きさが食感の違いを生んでいたのと、手作り感のあふれる味付けがうれしい。味付けの好みは多様にあるとしても、この手仕事感は業務用では味わえない最高の調味料だと思えた。

大変小さくはあるが良質の海苔も添えてあり、口溶けは良いが、スープに浮かんでも溶け出すような粗悪海苔とは違って素晴らしい。

薬味は〝ならでは〟のタマネギのみじん切りが分量も程よく添えてある。生タマネギ特有の辛味や刺激を残しつつも、鮮度の良い細やかな切り口が舌触りを穏やかに抑えている。またタマネギファンのために穴あきレンゲが用意してあり、丼底に沈んだ一片のタマネギまで見逃さないように配慮してある点もありがたい。スープを飲む事を諦めた私にも大変重宝した穴あきレンゲだった。

最後まで穏やかさの中に見える不自然な旨味とせめぎ合いながら麺と具材は完食できたが、スープだけは残してしまいレンゲを置いた。

後続の客人の中にはつけ麺をオーダーしている方も多くいたが、私が食べ終える頃でもまだ配膳されていなかった。さすがに14分の茹で時間となると回転率は必然的に悪くなりそうだと思った。一番客の私が席を立つ時には外待ちが発生していたが、これから夏場に向けてつけ麺需要が更に増えてくると回転率の悪さが店の存続に影響しないかと思ってしまった。

このあと連食計画を立てていた立川の新店を訪ねると、まさかの夜営業のみとの案内があり前泊してまでの中央線遠征は失敗のまま幕を下ろす事になってしまった一杯でした。

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「味玉 鯛コク正油らぁ麺 ¥850」@麺処いっ歩の写真平日 曇天 13:30 先客8名 後客3名

〝ニューオープン パトロール〟

午前中に浅草は国際通りに移転オープンされた新店での一食目を終えるとすぐに、前泊してまでの連食計画を立てておいた二軒目のコチラに向かった。

先程と逆ルートのバスで上野駅まで戻ってくると、京成線にて最寄りの堀切菖蒲園駅に着いた。しかし前食の浅草からの移動時間も30分ほどだったので連食スペースがなく駅前で時間をつぶす事にした。人生初の駅前には大手コーヒーチェーン店がなく個人経営の喫茶店すらも見つけられなかったので、仕方なくハンバーガー屋でコーヒーだけを注文して時が経つのを待ちながら新店情報を予習しておく。

RDBのお店情報によると、レビューは少し挙がってはいるがメニューなどの情報がなく謎めいた新店なのだ。それならば、何の予備知識も持たない丸腰のままで初訪問するのも面白いと思い情報収集を諦めた。前食から二時間を経過すると、ようやく小腹も空いてきたので駅前を離れて店を目指した。

すると1分も歩かないうちに開店祝いの花が賑やかに並んだ店先が見えてきた。大きな看板にはデザインされた屋号が描かれ、白ちょうちんや緑の半のれんが目立つ派手な店構えが出迎えてくれた。昼ピークは外して来店したので行列はないが、ガラス越しに見える店内には多くの客人が見られる。とりあえず入店してみるとバッシング待ちの席があるが、ひとまずは外待ち席での待機となった。

屋外のお茶会などで使われる赤い毛氈の敷かれた長椅子に座り待っているが、歩道に置かれているのでバイクや自転車が邪魔をして歩行者の通行の妨げとなっているのが気になった。すぐに片付けが終わり入店の案内がホールスタッフからあると入口左手の券売機の前で、初めてメニュー構成を知ることになった。複数のスープがある中で一番上に設定されていた醤油系の味玉入りのお題をみつけると、他のメニューには目もくれず発券ボタンを押していた。

店内にはカウンターは設けられておらず、一人客でもテーブル席へと案内されると店内を見渡してみる。調理場は奥に独立しているので調理工程が全く見えないので客席を物色してみると、ラーメン屋らしくないバリ風のアジアンテイストの内装が不思議に映るが居抜き物件なのだろうか。新店舗ではあるが真新しさは皆無で、テーブルの天板も汚れが染み込んでいて油っぽく清潔感はない。一階だけの客席かと思ったら二階に上がる階段脇にはカウンター8席との案内があった。しかし本日は稼働している様子がないので、オペレーションが落ち着いてきたら使用されるのだろうか。そんな新店らしくない店内をホールひとりと調理場二人の三人体制で本日は回している。お揃いではないが黒のTシャツを着た男性三人のオペレーションだ。本日の客層は女子高生と母親や、ご近所感のあるカップルなどと複数客が多く見られる。そんな中で広いテーブルで一人待っていると、着席して8分ほどで我が杯が到着した。

その姿は黒釉薬のシャープな鳴門丼の中で、器の形状からタイトになっている液面で窮屈そうに盛り付けられた景色が印象的である。所狭しと並べられた具材たちはバラエティに富んでいて、やや渋滞気味にも思える姿で待ち構えている。そんな液面にレンゲの落とし所を探しながらレンゲを手にした。

まずは器の色調から本来の色みが判断しづらいスープをひとくち。表層にはフライドガーリックのような謎の浮遊物が見られるので、出来るだけ避けた部分にレンゲを沈めた。狙い通りに純粋なスープだけを注ぎ入れる事ができたので、舌と脳をフル回転させて分析しようと試みた。頭の中にはメニューのタイトルに引っ張られて〝鯛〟のイメージがふくらんでいたが、初見では全くと言っていいほどに感じられなかった。代わりに先行してきたのは鶏ガラ由来の動物系スープの香りと旨みで、その他にも四つ足系の動物由来のコクも追いかけてきた。スープがかなりぬるいので味覚は敏感になっているはずだが、本当に微かに感じるとすれば鮮魚系の鯛の風味である。それでも全体の割合からすれば少しだけなので、加えられているとしても極少量の鯛だと思った。その分の魚介の香りをプラスしていたのがスープに浮かんでいた浮遊物で実際にはフライドガーリックではなく、鰹節か鯛節を砕いた欠片だった。確かにこの欠片を噛むと一瞬にして魚介ワールドに引き込まれるが噛んだ時の食感が悪く、その歯応えは卵の殻を噛んでしまった時や、アサリの砂を噛んだ時の感覚によく似ていて不快で仕方なかった。その後は二度と噛まないように注意しながら食べ進める事になった。

麺を持ち上げてみると、箸先にしなだれかかるような柔らかな感覚が伝わってくる。器の形状のせいもあるだろうがスープの量が相当少ないので、スープの中で柔らかい麺が絡み合ってしまっているのは再考の余地がありそうだ。持ち上げた箸先からも真っ直ぐに垂れるのではなく複雑に入り組んで垂れている麺をすすり込んだが、案の定もたつきながら唇を通過するので期待したすすり心地の良さは感じられなかった。それでも必死にすすり甲斐を求めようと何度もすすってはみたが、現れて来たのは麺からのカンスイ臭だった。もはや口当たりの心地良さは諦めて何かしらの個性を探してみると、思いもよらない組み合わせが口の中でさく裂した。それはカエシの利いたスープの塩気と、柔らかい麺が生み出す小麦の甘みが織りなすハーモニーの奇跡だった。すすり心地は悪くても、スープと麺の相性は申し分なかった。

具材のチャーシューは豚肩ロースで仕込まれた煮豚が盛り付けてある。半カットされているので大判ではないが厚みも残した切り方なので食べ応えもあり、味付けもしっかりしているので食べ応えと味わいの両面で存在感をアピールしようとしていた。

追加具材の味玉は全てにおいて私の中では平均以上の仕上がりを見せていたが、提供温度の冷たさだけは好みに反して不本意だった。スープ自体が熱くないので味玉以外の具材たちも冷たいままに添えられているのは、店側の狙いがあったとしても残念であった。

板メンマは無表情と言いますか、ありきたりな味付けなので業務用味付けメンマの袋を開けただけの気がしてならない。この店でないと食べられないといった代物ではなかった。

醤油系には珍しく茹でモヤシが添えてあったが、物足りない麺の食感に時おり交じるモヤシの食感が変化を与えてくれていた。

薬味陣もバラエティに富んだでいて青ネギと白ネギの両者が小口切りにて入っている。青ネギからは清涼感と白ネギからは適度な辛味を感じられて大きな主張はしてこないが、白ネギの食感はモヤシ同様に麺の歯応えの寂しさを補ってくれた。微量に添えられた糸唐辛子は彩り担当だけなので印象的には薄かった。

海苔もあったが後半にはスープに溶け出してしまうような繊細なタイプだった。板海苔は好きだが、ばら海苔は今ひとつの私には溶けた板海苔は、ばら海苔と変わらない姿になっていて終盤のスープの味を変えてしまった。

ナルトは諸事情により今回も口にしなかった。

最終的には麺は大方食べられたが完食とはいかなかった。ラーメンにインパクトを求める事はないが、もう少し麺の茹で加減でメリハリがあれば食べ飽きる事がなかったように思われる。

今回は序盤での不快なガリっとした食感のせいで食欲を欠いてしまったが、たまたまのイレギュラーだったのかもしれない。夜の部では餃子などのサイドメニューとお酒を楽しめる店のようなので、ご近所さんで活気付く光景が目に浮かんでくるような一杯でした。

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「中華ソバ 味玉入り ¥950」@中華ソバ ビリケンの写真平日 曇天 10:30 待ちなし 後待ち15名

〝ニューオープン パトロール〟

ほんの一部ではあったが群馬めぐりを楽しんで帰京すると、相次いで新店がオープンしているエリアがあった。それは自宅からでは移動がスムーズとは言えないエリアなのだが上野を拠点とすれば難なく迎えるので、昨晩から上野駅前の定宿サウナに前乗りしていた。

いつもならば上野仲町ナイトを楽しむのだが数々の地方都市の夜のネオン街の魅力にハマってしまい、ありきたりな上野の夜に面白さを見出せない身体になってしまったのだ。なので外出する事もなく館内でサウナライフを満喫することにした。

昨晩のサウナは最近の中では中々の高温で室内の温度計は常に108℃をキープしていた。週の前半という事もありサウナの利用客も少なく、人の出入りが少ないのも理由の一つだろうか。更にこちらの水風呂は15℃と平均的な水温よりも少し低くなっているのも特徴で、たった1°Cの違いでも肉体には大きく影響を与えてくるのだ。昨晩のサウナの場合は高低差 93°Cと後藤さん風にツッコミすれば「心臓キーンなるわ!」的な温度差だった。恒例の水風呂と外気浴休憩を交えながらの10分× 3セットをこなすと、お待ちかねの食事処での生ビール無料券を利用したクールダウン晩酌を始める。ひとり宴なのは寂しくもあるが、気が付けば宿泊代よりも高いビール代となっていた。翌朝も再び軽めにサウナで整えると10時のチェックアウトと共に新店めぐりの為に移動を開始した。

本日の一食目に選んだのはRDBの新店情報の中に見つけていた浅草にオープンしたコチラなのだ。お店情報によると私も訪問した事のある人気店の2号店のようで、訪問日の時点ではオープン1週間足らずのようだ。本店扱いと言って良いのか分からないが1号店とは違ったスタイルのラーメンを提供しているように書かれてあり、また新たな出会いが待っているかもと期待を寄せて初訪問を決めたのだ。

そこで11時開店前の現着を目指して上野駅から銀座線に乗り込むと、わずか5分で最寄りの浅草駅に着いた。やはり前乗りした甲斐があったと思える移動時間の少なさに、昨晩の前泊計画を自画自賛した。午前中から外国人観光客で賑わう駅構内の雑踏を抜けて3番出口を上がると大きな駒形橋西詰交差点に出た。そこからは目印としていた大手ラーメンチェーン店を目指して信号を渡ると、チェーン店の間口と比較にならない程のコチラを見つけた。店先には開店祝いの花が少し残っていたが、そろそろ開店特需やオペレーションも落ち着いてきた頃ではないだろうかと思いながら先頭にて待機を始める。

定刻の15分前になると後列も増え始めるが、並び方のルールが歩道の立て看板に書かれてあった。6番手以降は隣の台湾屋台料理店の店先に並ばないように、間を空けて並ばなくてはいけないようなので注意が必要だ。開店直前には10名以上の行列となっているので開店特需はまだまだ続いているようだ。

外観の感じは無垢板を張った外壁に屋号のロゴをあしらった下町らしからぬオシャレでポップな店構えとなっていて周辺の中でも一際明るく見える。浅草という観光地の場所柄か外国語の注意書きも貼り出されている。しかし海外版ガイドブックにはまだ掲載されていないはずなので、店先の行列は全員が日本人と思われる。逆に隣のチェーン店の前の方が外国人観光客で賑わっていた。観光地ではあるが地元の方に根付いて欲しい願いを望みながら待っていると、定刻を少し過ぎてオープンとなった。

店内に入ると入口左手の券売機の中から品定めをするが、本日もメニューを絞り込んでの営業のようで有効なボタンは数少ない。しかしマイスタンダードの味玉入りの醤油系が最上段を飾っていたので、迷う事なくボタンを押した。必然的に奥へと押し込まれるようにカウンターの一番端の席に座り、食券を手渡すと店内観察を開始する。

もはやレビュー上で書き飽きた感のある〝白と木目を基調としたカフェ風の内装〟の店内を本日はご夫妻お二人で切り盛りしている。たしか店主さんは「らーめん 改」でお見かけした方だと、おぼろげな記憶が思い出された。新店舗ならではの清潔感が内壁の白タイルや厨房内のステンレスから溢れている。客席は段違いの二連式カウンターだけだが、背後の通路スペースも広く設けてあるので窮屈な感じはしない。もうすでに 1st ロットの調理が始まっているが、抜群に安定感のあるお二人の超絶コンビネーションに見とれていると着席して5分で我が杯が到着した。

その姿は白磁の切立丼の中で多彩ながらも美しい景色を見せている。それは盛り付けの早さからは想像できないくらいの丁寧さに溢れている。調理工程を見ていて思ったのがワンロット3杯で仕上げられていくのだが必要な具材を全てバットに事前に準備をして、麺上げと同時に二人の連携で素早く提供されるオペレーションの素早さでも丁寧さを欠かない見事な盛り付けである。それを見た時に盛り付けのタイムロスとは無縁の安心感が伝わってきた。そんな新店ながらも落ち着いた安定感に包まれながらレンゲを手に取った。

まずは栗皮茶色のスープをひとくち。醤油の色素が色濃く打ち出されたスープの液面には、やや黄色みを帯びた鶏油の不揃いな粒子が浮かんでいる。そんな液面を隠すように盛り付けられた多くの具材をかき分けてレンゲをスープに沈めてみると、明らかな鶏主体の動物系スープの香りが湯気の中に感じられた。香りだけだとありがちな鶏清湯スープに思われたが、スープで満ちたレンゲが口元に近づくごとに印象が変わっていった。それは鴨の野性味溢れる香りが強く感じられるようになってきた事で初見の印象とは一変した。丸鶏の野趣とは違った鴨ならではの独特の風味がスープの大半を占めていた。そこで不思議に思ったのが、本日は販売中止になっているメニューの中にあった「鴨ソバ」の存在である。レギュラーの「中華ソバ」がこれだけ鴨出汁をアピールしているなら「鴨ソバ」はどれだけ鴨を打ち出しているラーメンなのか興味が湧いて仕方ない。私の中ではすでに鴨を十分に感じられるスープなので、これ以上の鴨特有の野性味は不必要なクセにもなり兼ねない心配の方も強くなってきたのが本音だ。そんな野趣も感じる鶏出汁に合わせるカエシは、やはり濃いめにアジャストされている。日本蕎麦のカエシにも似たキリッとした醤油ダレの中には干し椎茸のような旨みも潜んでいる。調理場内には兵庫県の龍野醤油が置かれていたが龍野醤油といえば薄口醤油が代表的なので、こちらのスープの色調を見る限りでは他の用途で使われている醤油なのだろうか。色調の見た目通りにスープだけを飲むには強めの塩分濃度に思えるが、麺や具材との相性を考えられての組み立て図なのだろうと思い麺へと移行した。

ロットによって若干の誤差があったが、麺上げまで45秒から50秒の中細ストレート麺は切刃の角が微かに残った形状が特徴的だ。すでにグルテンが溶け出しており半透明な麺肌が店内のライトの光を跳ね返して輝いている。持ち上げた箸先からは少し柔らかそうな手応えを感じると同時に、しっかりとした重みも伝わってくる。しなやかそうな中細麺を一気にすすってみると、鶏油が潤滑油の役目も果たすと麺肌のグルテンと相まって滑らかな口当たりで飛び込んできた。すすり込んだ吸気に伴う鴨油の香りが更にふくらみ、流行りの鶏清湯とは一線を画すオリジナリティのあるスープと麺の組み合わせが新しい出会いとなった。好みの違いだとは思うが少し柔らかく感じる麺には力強い歯応えを求めてしまった。スープの印象が強いだけに麺が押され気味のまま食べ進めていくうちに、物足りなさを感じてきてしまい麺の印象が次第に薄くなっていった。

具材のチャーシューにも鴨が使われていて、合鴨ロースの低温調理が盛り付けられてある。皮目には隠し包丁を入れて焼き目も付けてあり、細やかな仕事が施されている。まずはロゼ色が美しいレア状態のままで口に含んでみると、さすがはレアチャーシューのしっとりとした舌触りはあるが限りなく半ナマに近い仕上がりなので噛み切れないような不快な歯切れの悪さも残っている。それでも下味のスパイスがしっかりしているのと、素材の鴨ロースの品質と鮮度の良さのおかげで生臭さとはならなかったのが救いだった。その時点で残りの二枚はスープに沈めて加熱して薬味の白ネギと食べ合わせで難を逃れた。

追加した味玉は適度な浸けダレの浸透と熟成感のある黄身が好みには近かったのたが、盛り付け直前まで温めてある割には黄身の芯温が冷たいのが残念だった。これは以前の「らーめん 改」でも同じ事を思ったのを思い出したが、提供温度以外は追加して良かったと思える味玉だった。

それに反してメンマの仕上がりには難が大有りだった。らーめん改ではタケノコを使用していた記憶があるが、こちらでは麻竹のメンマが仕込まれていた。

薬味の白髪ねぎは穏やかに辛味が抜けていて香りも食感も繊細にアクセントとなっていた。先程の鴨チャーシューとの共演では見事に大役を果たしてくれた名脇役だった。紫色のスプラウトは存在感は彩りだけに感じたが、その分を青みのホウレン草がリカバーしていた。最近ではラーメンの青みとして絶滅危惧種となりつつある茹でホウレン草だが、家系でよく見かける業務用のカットホウレン草とは違って店でちゃんと仕込まれたホウレン草が添えてあった。やはり生のホウレン草を茹でただけなのに独特の香りと食感は他の青みでは代用できない逸品だと再認識した。

終わり良ければ全て良しではないが、ホウレン草の軽やかな苦味を口に残して箸とレンゲを置いた。インパクトのあるスタートだったが次第に麺の食べ応えのなさと、スープの塩気の強さを感じてしまい麺を少しとスープとメンマは全て残してしまった。

あくまでも個人的な趣向で清湯野郎は自負しているのだが、そこに独特の個性をあまり必要としないのが私の好みであると再確認した。それは今回の鴨出汁であったり、流行りの貝出汁などもそうである。非常に偏った保守派の意見なので参考にはならないと思いますが、好みとしては採点が低くなってしまった一杯でした。

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「醤油ラーメン ¥750」@Renge no Gotokuの写真平日 曇天 10:50 先待ち1名 後待ち6名 後客15名

〝ニューオープン パトロール〟

都内を離れて高崎めぐりを楽しんでいる間に、続々とRDBの新店情報が飛び込んできた。そんな中で本日の連食計画を考えてみるが、最初に候補に挙がってきたのがコチラだった。

お店情報では昨年に諸処の事情で閉店した渋谷の人気店の形態を変えた再始動店となっている。以前の店には私がレビューをはじめる前に何度か訪れたことがあり、今回の移転先も大通りからは一本入った辺りのようだ。幸いにも自宅から徒歩圏内という事もあり、本日の一食目に決定した。

11時開店前の現着を目指して20分前に家を出て再開発の進むエリアを抜けて進んで行くと、渋谷と言えど雑踏とはかけ離れたイメージの桜坂を下ってきた。急坂の途中を脇道に入ると、開店祝いの花やバルーンで賑わう店先が目に飛び込んできた。定刻の10分前だったが、すでに並びがあり二番手に続いて待機をはじめる。新店舗の目の前には偶然にも私のレビューデビューとなったラーメン店があり、それからの14ヶ月間があっと言う間に思えてしまった。

店頭の立て看板には「渋谷のソウルフードがここにある」と書かれてあり、新店舗ながらも渋谷に根付いていた歴史の長さを思わせる。定刻の5分前には製麺所からの黄色い麺箱が届けられると開店準備が着々と進んでいくと、店頭の行列の方も着々と伸び始めていた。定刻ちょうどを迎えるとガラスの扉が開けられてオープンとなった。

店内に入ると入口左手の券売機にて本日のお題を品定めする。移転前から周知の通り〝排骨担々麺〟がイチオシなのは分かっているが、セオリーを無視してマイスタンダードの醤油系のボタンを探した。券売機の上位部に位置する大きなボタンはいずれも排骨関連なので、目線を下の方に落とすと小さなボタンの醤油ラーメンを見つけた。せめてもと味玉のボタンを探してみたが見当たらず、残念ながらラーメン単品だけを発券した。この選択がそもそもの間違いだと後で気付く事になった。

ホールの女性スタッフさんは「お好きな席にどうぞ」と言ってくれたが、後列が大勢並んでいたので先頭客に続いてカウンターの奥席から詰めて座った。良かれと思って詰めて座ったのだが、これが更なる悲劇を呼ぶのだ。食券を手渡す際に無料ライスを薦められたが、ラーメンに集中するために丁重にお断りをして店内観察を開始した。

背中合わせに並んだカウンターだけの店内だが四人客にも対応可能なコーナー席も設けてあり、移転前よりも手狭になったが客席数は十分に確保していて設計者のセンスが感じられる。見事に導線も確保してあり三人体制がベストと思われるレイアウトの店内を、本日は開店特需に備えた万全の四人体制で回している。右側の壁一面には屋号にも使われている蓮の花が描かれていて、さらには屋号の「Renge no Gotoku」をもじった「蓮華の五徳」と大きく書かれてある。「蓮華の如く」とも読めるのには深い意味がありそうで、中華料理を想像させる〝レンゲ〟と中華鍋には欠かせない調理具の〝五徳〟の意味も含めたトリプルミーニング的なネーミングセンスも面白い。そんな渋谷でのリスタートに賭ける思いを感じながら待っていると、着席して6分でワンロット3杯の中のひとつとして我が杯が到着した。

その姿は白磁の高台丼の中で両隣り客の排骨担々麺に比べると迫力はないが、丁寧さを欠いた雑にも見える盛り付けがワイルドに映った。器の口縁に飛び散ったままのカエシや、まとまりを得ない水菜の盛り付け方には作り手の魂が込められてないと感じてしまう。1st ロットの提供順序も後客の排骨担々麺が優先されて、二番手の私のラーメンは時間を置いた三番目の配膳だった点にも排骨担々麺に対するこだわりは強く感じたが基本のラーメン愛は感じなかった。

それでも目の前のラーメンには罪はないので、心を落ち着かせてレンゲを手に取った瞬間に次の悲劇に襲われたのだった。それは座った席の目の前には食洗機と並んで洗い場が併設されているのだが、カウンターの壁が低いので洗い物をした濯ぎ水がカウンターを越えて我が杯の中に入ったのだ。もちろん大量だったならば作り直しをお願いしたが、ほんの数滴だったのと私以外は誰一人と気が付かないような微量だったので店側に告げる事なく食べ始めた。

まずは赤褐色のスープをひとくち。あくまでもオーソドックスな色調のスープは、清湯醤油系の王道を行くような景色を見せている。透明感もあるが微かな陰りも感じられるスープには、ドットのまばらな香味油が散りばめられている。そんな液面にレンゲをそっと沈めてみると、良い意味での平凡な香りが立ち昇った。そこには奇をてらったような香り付けをされる事もない、昔ながらの基本を貫いた潔さで満ちている。いざ口に含むと、鶏ガラ主体と思われる動物系スープには野菜の甘味が溶け込んでいて、カエシの利かせ方もシンプルでシャープではあるが過度な醤油感を与えていない。醤油ダレの香りも穏やかなので全体的な香りを一番主張しているのは、香味油に含まれるネギ油の香ばしさと思える。やはりバランス感覚に優れた清湯醤油系スープではあるが旨味のベースアップもなかなかで、課長を通り越して部長クラスに昇進を果たしていた。

スープを断念して麺へと取り掛かってみる。麺上げまでジャスト90秒の中細ストレート麺を箸で持ち上げてみると、切刃のエッジが全く見られない丸い形状の麺が現れた。麺肌は少し黄色味を帯びて見え、物腰の柔らかさが箸先から伝わってくる。そんな女性的に見える中細麺を一気にすすり込むと、スープ単体では感じなかった香味油のオイル感が手伝って口当たりの良さを増長させている。麺肌にも適度にグルテンが膜を作っているので、滑らかな舌触りが更に特徴的な印象を受ける。見た目通りに柔らか仕上げなので歯応えは強く感じられず食べ応えの面では好みとは違っていたが、同じ麺を同じ茹で時間で使用している排骨担々麺ならば、サクッとした排骨の揚げ衣と柔らか麺の相性の良さは間違いないであろう。この時に自身のメニューがミスチョイスだったのだろうかと感じ始めていた。

具材のセンターを陣取るチャーシューは豚バラの巻き煮豚型が薄切りで二枚盛り付けられている。つかんだ箸でも切れるくらいに柔らかく仕込まれているが、スライスされてからは時間が経っているのか切り口がパサついていた。柔らかくはあったが肉汁のジューシー感のないチャーシューはスープに浸してから食べる事で難を逃れた。味付けが程良かっただけに切り置きの長さが残念に思える。

基本でも大量に添えてあるメンマは大きさや太さが不揃いで食感の違いが様々なアクセントとなってくれるが、味付けは汎用品のように無難な味付けとなっていた。少し滑りのある舌触りも、どこかで食べた事のあるように思えた。

薬味の白ネギのみじん切りは、香味油の香ばしいネギの香りに加えてフレッシュな白ネギの香味をプラスしている。細かく刻まれる事で食感のアクセントよりも香りでサポートしていて名脇役となっていた。それに反して青み役の水菜にはどうしても〝薬味愛〟を感じられない。水洗いして切っただけの青みの水菜には手間のかかった茹で青菜には遠く及ばない、やっつけ感ばかりが裏側に見えてしまうのだ。

中盤からも不自然な旨味に追いかけられながらも、麺は8割程度は食べ終えてレンゲと箸を置いた。個性を押し付けないスープだっただけに旨味の足し算が際立ってしまったようだ。もしイチオシの排骨担々麺であったなら様々な香辛料の陰に隠れて感じ方が違っていただろうと、メニューのミスチョイスを悔やんだ。

誰よりも早く食べ終えて席を立た時に見回した店内には、誰一人として醤油系のメニューを食べている客がいなかったのを見て改めて〝郷に入れば郷に従え〟の意味を噛み締めた一杯でした。

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「醤油らーめん ¥770+味玉 ¥110」@らーめんDINING れんげの写真平日 曇天 12:40 先客6名 後客なし

〝上州高崎 二泊三日ラーメンめぐり〟番外編 拡大版

トータル三泊四日となった群馬遠征も、いよいよ最後のラーメンとなる時間帯が迫ってきた。それは昨晩キャンセルとなった都内での会食が今晩にスライドされて、急遽ラーメン旅を終えなければならなくなってしまったのだ。何よりも残念なのは本来ならば太田で延泊をして、人生初の太田ナイトを楽しもうと目論んでいたのが実行できずに終わってしまう事だ。後ろ髪を引かれる思いで太田駅近くでラストラーメンの候補店を調べてみる。

伊勢崎で朝ラーを食べて、午前中には二杯目を太田の人気店でいただいた。そこからとりあえずバスで太田駅まで戻ってきて美術館に併設されたカフェで満腹の胃袋の調子を整える事にした。帰りの電車の時間を14:32発の東武線りょうもう26号に乗車しなければ都内での予定に間に合わないので、前食から1時間しか経っていないが作戦を強行しなければならなかった。

そこで駅前北口から再びシティライナーおおた 市内循環バスにて15分ほど揺られて、最寄りの浜町三区バス停に着いた。最寄りと言ってもそこから少し歩かなくてはならないが、大手そばチェーン店や中華料理店を含めると麺料理を扱う店が非常に多い麺ストリートである事に驚いた。そんな大通り沿いを歩いて向かうと、真っ赤な看板が目に入った。

店先には坦々麺の幟旗が置かれているが、先程の店もそうだったが太田では坦々麺が人気なのだろうかと思った。玄関にはえんじ色の半のれんと同色の日除けのれんが掛けられてあり、数台の駐車場も完備されている。看板には「洋食屋さんの本格らーめん」と書かれてあり、お店情報からも知っての通り洋食出身のシェフが手がけるラーメンのようだ。昼どきのピークタイムの訪問となったが、店頭に行列がなかったので幸いにもすんなりと入店できた。

しかし店内に入ると目の前のテーブル席には食べ終えた器が置いてあり、バッシング待ちのようなので入口左手に設置された券売機にて食券を購入してから様子を伺う。すると運良くカウンターには片付けが終わった空席があり、すぐに着席となった。購入したマイスタンダードの醤油系に味玉を追加した食券を女性のホールスタッフさんに手渡してから店内観察をはじめる。

テーブル席とカウンターだけの店内かと思ったが、後ろを振り返ると小上がり席も多く設けてあった。イメージしていた洋風とは違った印象の店内で、夜の部は宴会にも対応できそうな客席の造りである。そんな広めの店内を、ご夫婦らしきお二人で切り盛りされている。ご主人の趣味なのだろうかバイクに関するグッズや写真などが飾られている。カウンターの棚上に置かれた観葉植物の隙間から調理工程を覗き見しながら待っていると、着席して4分で我が杯が到着した。

その姿はメラミンの受け皿に置かれた白磁の高台丼の中で、穏やかに見えるが不思議な要素も見受けられる興味深い表情で登場した。さすがは洋食出身シェフならではの盛り付けのレイアウトの美しさや、ひと味違った薬味の使い方が特徴的だ。そんな得体は知れないが不思議と異質に思えない姿に引き込まれるようにレンゲを手にしていた。

まずは黄朽葉色のスープをひとくち。液面には大理石のようなマーブル模様の香味油が浮遊するスープにレンゲを落とすと、必然なのか不思議なのか分からないが〝和〟でも〝中〟でもない〝洋〟の香りが押し寄せてきた。それは明らかにスパイシーな香りで、初動としてはかなり刺激的な風味が伝わってきた。レンゲの中に注がれたスープを口に含むと昆布が主体のような前置きのあるスープだが、実際には鶏主体の旨みが先導するスープに感じた。その旨みの他には、見た目こそ香辛料の粒は見えないが胡椒系由来の香りが大きく幅を利かせている。それはスープを炊く段階でミル挽きされたペッパーでなくホールペッパーが使われていると思われる。そんな個性的な鶏昆布出汁に合わせるカエシも、キリッと輪郭のハッキリした醤油ダレを加えているので全体的にパンチのあるスープ構成となっている。

そんな独特なスープに合わせる麺は中細ストレートの外注麺を採用されていて、麺上げまではジャスト120秒と中細麺としては長めに茹でられていた。それだけに見た目は非常に穏やかで、切刃の後も丸みを帯びて見える。スープの中で丁寧に折りたたまれた麺を箸で持ち上げてみると、黄色い色素の強い麺があらわれた。箸先の重みからは多くも低くもない加水の程度が伝わってきて、香味油をまとった麺肌がキラキラと輝いている。ストレートの形状からもスープの飛散を気にする事なく一気にすすり込むと、スープに感じたスパイス香がより強くなって感じられた。しかし間髪入れずに麺の甘い香りも追いかけてくる。適度に溶け出した麺肌のグルテンが口当たりを良くしているが、提供時がベストと思われる麺の茹で加減だ。120秒の茹で時間にもダレる事なく、しっかりとした舌触りを保っていた。噛めば更に麺の甘みが引き出されて、スープから感じるスパイスの刺激を麺の甘みが和らげてくれる。もしかしたらスープのスパイスが利いているからこそ感じられる麺の甘みとも思えてきた。そんなお互いを引き立てる組み合わせの妙に食べ飽きる事なく箸は動き続けた。

具材のチャーシューは豚バラの煮豚型が大判の厚切りで入っている。箸が触れただけでも柔らかさが伝わってくる程に、じっくりと仕上げられているのが分かるチャーシューを頬張ってみる。脂身は勿論のこと赤身の繊維質までも解けていくような食感が素晴らしいが、柔らかすぎる訳ではなく歯応えもしっかりと味わえる。また盛り付け直前に炙りの工程を挟んでいて、香ばしさを加えると言うよりは、脂身の融点まで温度を引き上げる作業に思えた。その結果として脂身は口溶けよく、赤身は食べ応えよく仕上がっていた。味付けは強くはないが豚肉本来の品質が良いと思われ、臭みなどの不快な要素が一切なく豚肉の旨みだけが詰まっている。

中太タイプのメンマには非常に甘い味付けが施されている。スパイシーなスープに合わせてなのだろうか、果実を思わせるような胡麻油の甘みがメンマの芯部にまで浸み込んでいる。かなりの柔らか仕立てなので噛む必要がないくらいの食感だが、メンマがほどけた瞬間に胡麻油の甘い香りが舌の上で花開く。先程の麺と同じくスープとの振り幅の大きさが独創的でクセになる人も多いのかもしれないが、初めて食べる私はギャップの大きさに戸惑ってしまったのが本音だ。

追加した味玉は程よく味も乗っていて好みの熟成度合いも出ていたが、提供温度の冷たさばかりは気になってしまった。冷蔵庫から取り出してすぐに盛り付けるのではなく、せめて常温にまで戻してあればゲル化した黄身の甘みや漬けダレの旨みも感じやすくなるように思えて残念だった。

薬味の白ネギは丁寧に水にさらされていたので、余計な辛味や苦味を与えてこずに軽やかな舌触りと香りをアクセントに加えていた。青みの小松菜は茎の部分だけを集めて添えてあり軽い苦味とシャキッとした食感を与えているが、どこにも使われていない葉先の行方が気になってしまった。

またラーメンに関して保守派な私にとっては挑戦状ともとれる青みが、見た目にも個性を発揮しながらセンターに添えてあった。その青みとはイタリアンパセリの事で、同じセリ科の三つ葉ではなく洋食材を使われていた。ラーメンの中に洋風のテイストを必要としない私だったが、このイタパセを口にしてみて思いが少し変わった。一般的なパセリよりも香りが穏やかなので大きく個性を主張する訳ではなく、逆に口の中をサッパリさせてくれる役目を果たしてくれた。考えてみれば日本料理の中でも秋田名物 きりたんぽの具材にはセリが欠かせないように、鶏と昆布主体のスープにセリ科のイタパセが合わないわけがないのだ。それを思った時には見た目のインパクトだけを狙った薬味ではない事を初めて理解できた。

中盤からもスパイシーなスープが醸し出す不思議な感覚に慣れないままに食べ進んできたが、結果としては完食完飲していた。食べ終えたあとも何とも言えない違和感を残しながら席を立ったが、これが洋食シェフの作り出すラーメンの狙いなのだろうと考え直した。ならば次回は洋食シェフによる担々麺にも挑戦してみたいと、新たな好奇心が湧いてきた。

これにて高崎から始まった群馬の一部だけめぐりのラーメン旅も終わりを迎えた。しかしどうしても心残りなのは高崎ナイト 伊勢崎ナイトに続いての、太田ナイトを満喫する事なく太田を後にしなければならない事だ。三泊四日くらいではまだまだ出会っていないラーメンも多くあるので、次回は必ずや太田の夜のネオン街に戻ってくる事を前提に計画を立てると心に深く刻んだ一杯でした。

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「チャーシュー麺 ¥700」@麺&cafe Coi.Coi.の写真平日 曇天 8:45 先客なし 後客1名

〝上州高崎 二泊三日ラーメンめぐり〟番外編 拡大版

今回の高崎遠征を始めた当初は一泊二日の予定で出発したはずだったが数々のアクシデントとトラブルや思いもよらぬラッキーが重なり、延泊を重ねて気が付けば本日は高崎ではなく伊勢崎のホテルで目が覚めた。つまりは三泊四日の長旅になってしまった。

昨夜は人生初の伊勢崎ナイトを楽しむ為に高崎を離れて乗り込んで来たので、利便性の良い伊勢崎駅周辺ではなく夜のネオン街近くのホテルを予約した。ホテルに着くと連日の高崎ナイトのせいで疲れがたまっていたようで、伊勢崎での夜ラーを断念してチェックインを済ませて一眠りに就いた。

一度も目が覚める事なく三時間ほど眠ると外の景色は夜のネオン街へと表情を変えていて、シャワーを浴びて身支度を整えると人生初の伊勢崎ナイトへと繰り出した。ホテルの目の前からすでに怪しい気配がプンプンと匂ってくる。全くと言っていい程に人通りのない道端には呼び込みのお兄さんが所々で待ち構えている。横を通りかかる度に淫らな世界への誘い文句を投げかけてくる。噂以上の怪しさには腰が引けるほどだったので、まずは腹ごしらえの為にホテルのフロントで聞いておいた居酒屋を目指して一目散に歩いて向かった。

とりあえずは乾いた喉の潤すために、最近は見かけなくなってきた大ジョッキの生ビールを飲み干すと太田の地酒 群馬泉の燗酒とアジのなめろうを追加して下準備を整える。酒もツマミも素晴らしい居酒屋だったが、カウンターでも喫煙できる愛煙家にはうれしくも私には残念な店だったので20分ほどで店を出た。

再びネオン街と言うほどは煌びやかではない通りへと戻ってくるとキャッチのお兄さんに声をかけられた。またもやハードな怪しい店への誘いだったので、軽めのG's BARはないのか聞いてみると案内所を紹介してくれた。案内所では優良そうな店を紹介されてOLスタイルのスーツ姿の女の子たちと日付が変わるまで盛り上がってしまった。

この伊勢崎を訪れた最大の目的は早朝から朝ラーが食べられると聞いていたコチラへの初訪問だったのだがホテルで目が覚めると、開店時間の午前7時現着を狙っていたのだが、とっくに過ぎて8時を回っていた。はしゃぎ過ぎた伊勢崎ナイトを反省しながら着替えを済ませてチェックアウトと共に調べておいたバスルートで店を目指す事にした。ホテルの目の前のバス停からコミュニティバスに乗ると200円で一日乗車券を受け取り5分ほど走ると最寄りの連取本町北バス停に着いた。これで帰りのバス代は要らない事を知り、得をしたと喜びながら店へと歩いて向かった。

3分ほど歩くと複数の飲食店が立ち並ぶ建物の中に白地に屋号の書かれたコチラの看板を見つけて近づいてみたが、暖簾や幟旗もない店先は営業しているのか分からずに不安がよぎる。恐る恐るさらに近寄ると、小さな黒板に営業中と書かれてあるのが読めたので安心して店頭まで歩み寄った。ラーメン屋らしからぬ外観ではあるが、カーテンで閉ざされたガラス越しの店内には製麺機が見られる。麺帯を巻き取っている作業が見られるので製麺の真っ最中のようだ。そんな光景に興奮しながら扉を開けて店内に入ってみる。

すると製麺室で作業中の女性店主さんらしき方から「カウンターへどうぞ」と声をかけられ、カウンターの一番奥の席に腰を下ろして卓上メニューから品定めを始める。すると突然に「こちらの席でお願いします」と入口近くの席へと強制移動を強いられる。カウンターへと言われたのでカウンター奥から詰めて座っただけなのに嫌そうな顔で対応されるのは良い気分ではないが、女性店主おひとりのワンオペなので店を守るためには強い気持ちがないとならないのだろうと自分に言い聞かせた。

早朝でも豊富なラインナップの中からメニューの下の方にあった醤油系の中のチャーシュー麺を告げると先払い方式でトレイに代金を入れるシステムだ。お釣りなどのお金をやりとりした後に手を洗わないのが気になったが、衛生面や接客を採点に反映させない方針なので心を鎮める為にセルフでお冷を汲んで店内観察をはじめる。

壮大なクラシックが流れる店内はオシャレと言うよりは研究室のような雰囲気があり、様々なジャンルのラーメンを生み出す設備が揃っている。そんな厨房機器の中でも特に珍しかったのがスープ炊き用のレンジが電磁式だった事で、スープ用としては初めて見たかもしれない。店主さんは調理と並行して、ロール状に巻かれた麺帯を包丁で裁断されている。その手際の良さは場数をこなしてないと達する事の出来ない領域へと昇華されていて、さらには同時にメンマの味付けもこなしながらのオペレーションは圧巻だった。そんな調理工程に見とれていると着席して7分ほどで我が杯が到着した。

その姿は川越めぐりで出会った超人気店である「頑者」と同じ白磁の高台丼に鳳凰の描かれた器の中で、とても700円とは思えない豪勢な景色を見せている。しかし価格設定も評価の対象としないので、さらに気持ちを落ち着かせてレンゲを手にとった。

まずは渋紙色のスープをひとくち。表層には豚背脂の脂片が散りばめられた霞みがかったスープにレンゲを沈めると、程よい香りが穏やかに漂ってきた。豚骨由来ではあるがクセのない香りに導かれるようにスープを口に含んでみると、動物系の香りに反して魚介系の風味が花開いた。特に煮干しの中でも上品でクセのない香味が口の中に広がった。その豚由来の動物系と煮干し主体の魚介系のバランスは、何一つとして尖った味覚のない個性を抑えた仕上がりとなっている。最大限に煮干しの旨みを引き出しながらもエグ味やクセを排除して、豚背脂を利かせながらも動物系の力強さを感じさせない優しいスープに一瞬で引き込まれてしまった。そんなバランス感覚に優れたスープに含まれるとカエシも非常に繊細で、過度な輪郭を与えるわけではないがスープの味がボヤけないようにメリハリを付けている。

待望の自家製麺は製麺室に設置されていた大和製作所の〝リッチメン〟で打たれたストレート細麺で、麺上げまで15秒と博多ラーメンのバリカタにも匹敵する早茹で麺だった。しかしながら高密度のグルテンを感じられる食感の良さは使用されている小麦粉の特徴なのだろうか。製麺室内には日清製粉 特ナンバー1の粉袋が置かれていたので内麦にも劣らない高級外麦で製麺されているようだ。特段に香りが高いわけではないが細麺とは思えない弾力感が食べ応えを強く与えて、喉越しはしなやかに胃袋へと収まっていく。さすがは店主さんが惚れ込んだ小麦粉だけに特徴を完璧に引き出されていると感じた。この麺の美味さが本日の最高到達点かと思われたが、この先には更に驚くべき具材が待っていた。

このあとに食べたチャーシューは、私の豚バラ焼豚の歴史を塗り替えるような素晴らしい仕上がりだった。一枚目のひとくち目を食べた時に、チャーシュー麺にして良かったと心から思える逸品だった。今回は偶然かもしれないが私に切り分けられた部位は、豚バラ肉の中でも脂身の極端に少ない部分が与えられていた。一枚あたりの九割を赤身が占め、残りの一割が脂身という赤身派の私にとっては奇跡のような部位なのだ。その豚バラチャーシューは豚肩ロースのような強い歯応えがありながらも、とろけるような豚バラ肉の脂身も必要最低限にサンドされているので甘みも程よく感じられる。盛り付け直前にはテフロン加工のフライパンで豚脂肪の融点まで、きちんと温め直されていたのが脂身の甘みを感じやすくなっていた理由だろう。そんなダイナミックな食べ応えと、繊細な旨みが同居した豚バラチャーシューが厚切りで5枚も入っているとは圧巻としか言いようがない。これで 700円とは、価格設定も評価の対象外ではあるが実際には驚きが隠せなかった。

メンマは板状のタイプを手仕込みされていて、やや滑りのある質感が特徴的だ。過度な味付けはされず、程よい発酵臭を残した安心感のあるメンマだ。味や香りは印象を残さなかったが、柔らかめでもシャキッとした食感を与えてくれ心地良いアクセントとなっていた。

薬味の玉ねぎはコンカッセほどに大きく刻まれていたが、あえて玉ねぎ本来の甘味や辛味をダイレクトに感じられるように水にさらしたりせず切りっぱなしで添えられてあった。この大きさなので不必要にスープに混じり込んだりしないのも私にとってはありがたかった。

そんなスープの邪魔をしない玉ねぎとは反対に、バラ海苔は終始スープや麺に絡んできて磯の個性を加えてこようとする。ただ香りの弱い海苔だったなのが幸いして、過剰すぎる味変ではなかったが助かった。それでも海苔は板海苔の方が必要な時だけ口に含めるので私の好みにはありがたく、今回のバラ海苔は残念ながら必要性を感じられなかった。

最終的には液面に浮かんだバラ海苔をレンゲの中に回収してから一気に食べて、浮遊物のなくなった純粋なスープだけを両手で丼を傾けて飲み干した。最後は海苔の香りに邪魔される事なくスープの自然な旨みを味わって丼を置いた。

色々とあったがラーメンだけに関すると高評価は必然的で、バラ海苔がなければ大台突破とも思えるような素晴らしいラーメンだった。こんな店が近所にあったら朝から通ってしまいそうで、健康上の観点からは遠くて良かったとも思ってしまった。

満足で店を出るとまだ午前9時を少し回ったばかりで今回の高崎めぐりの番外編の拡大版を更に足を伸ばしてみようかと、コミュニティバスの一日乗車券を握りしめてバス停まで歩いて戻った一杯でした。

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「特製醤油そば (全部のせ) 手揉み麺 ¥1000」@麺処 いち林の写真平日 晴天 10:25 待ちなし 後待ち4名 後客10名以上

〝上州高崎 二泊三日ラーメンめぐり〟番外編

当初は一泊二日の高崎めぐりの予定だったが、突然の同伴出勤のお誘いを受けて延泊する事になった。予定では昨日の夜に三食目(二日間で六食目)を食べてから帰京しようと考えていたのだが、二食目を食べ終えたあとに前夜の高崎ナイトで知り合って連絡先を交換した女の子からの食事同伴を受けて考えていた三食目を断念していたのだ。

もともと連泊予定ではなかったので慌てて駅前のホテルをとって同伴のための食事先を検索すると、駅の近くに和食料理店を見つけ予約を済ませた。その先は大人の諸事情で割愛させていただくが、ご機嫌な高崎はナイト2を楽しんだ。

何時にホテルに戻ったか記憶は定かではないが、今朝の目覚めの良さからはそれほど遅くまでは呑んでいなかったと思われる。早朝8時にベッドから抜け出すと濃いめのコーヒーを飲みながら本日の店探しを始めた。

高崎市内にも行ってみたい未訪問店はあるのだが、少し足を伸ばした先にいずれは行かねばならぬ人気店がある事に気付いた。それはRDBのスパコンがオススメに挙げているコチラなのだ。

そこで本日は高崎めぐり番外編のスピンオフ企画として恒例の対決をすると決めた。

〝第33回 RDBの超高性能スーパーコンピューターが算出したオススメ店は本当に私に合うのか!〟を連日開催する。

このイベントは、RDB PC版のオススメに挙がる六店舗から、その店のイチオシではなく、自分の好きそうなメニューを食べて採点し超高性能スパコンとの勝敗を決めるものである。決してお店との勝負ではないのは理解していただきたい。

採点基準は90点以上付いたなら私のKO負け、80点以上ならば判定負け、70点台なら引き分けとし60点台なら判定勝ち、59点以下の点数ならば私のKO勝ちとする。

過去32戦の対戦相手は「風雲児 」「麵屋一燈 」「煮干しつけ麺宮元 」「竹末東京プレミアム 」「さんじ 」「麺処 晴」「燦燦斗」「神田 勝本」「中華そば屋 伊藤」「麺処 ほん田」「煮干中華ソバ イチカワ」「麺屋 和利道 warito」「らーめん 芝浜」「らーめん かねかつ」「狼煙〜NOROSHI〜」「ラーメン大至」「中華ソバ 伊吹」「麺処 朧月」「Bonito Noodle RAIK」「中華蕎麦 とみ田」「陽はまたのぼる」「神田とりそば なな蓮」「ソバダイニング クアトロ」「旬麺しろ八」「MENSHO」「麺小屋 てち」「らーめん 鉢ノ葦葉本店」「らぁ麺 飛鶏」「中華そば 勝本」「◯心厨房」「家系総本山 吉村家」「自家製麺 くろ松」と名だたる有名店や人気店が並ぶが、通算対戦成績は32戦14勝9敗8分7KO勝ち1KO負け1没収試合と、先日の高崎での対決では初のKO負けを喫してしまったのだ。

それでもまだ私の勝ちがリードしているのは私の偏った偏屈な趣向とスパコンのオススメ店に大きくズレが生じているからだろう。現時点でもスパコンのオススメには一度もレビューアップした事のない、つけ麺専門店が半数以上を占めており対戦相手選びに難航していた最中なのだ。そんな状況下で挙がってきた店なので多少遠くあっても初訪問を決意したのだ。

こちらを目指すには高崎駅前から出ている関越バスに乗れば一本の乗り換えなしで向かうルートがあったが運行本数が少なく、11時開店前の現着を目指すには 9:25発 渋川駅行きに乗車するしか手段がなかった。そこでホテルを午前9時にチェックアウトすると西口バスターミナルに向かって定刻通りにバスに乗った。

やはり車社会の群馬県でバスを利用するのはお年寄りばかりで、私でも断トツの最年少である。そんな人生の大先輩方と一緒に揺られながら一時間ほど北上すると、最寄りの総合グランド前バス停に着いた。バス停の名前の通り、目の前には野球のグランドがあった。梅雨の合間の日差しに輝く鮮やかな緑色の芝生を眺めながらナビを片手に大きな交差点を曲がり店を目指すと、大型靴店と大型眼鏡店が乱立する〝靴天国 眼鏡銀座〟が印象的な通りを5分ほど進むと木目に筆文字の看板が見えてきた。

定刻の30分以上も前なので行列も出来てないので目の前にある大型電気量販店に、どこかのホテルかサウナに忘れてきたモバイルバッテリーを買いに行った。大型店と言えども午前中の電気店には私しか客がおらず貸し切り状態だったので、マイケルジャクソンのような買い物を楽しめた。購入したのはバッテリーだけだがリッチな気分になって店先へと戻った。

再び先頭をキープして暑い日差しの中でオープンを待つ事にした。定刻に近づくにつれて店先の駐車場には車が押し寄せてきて開店待ちの列も増えてきた。すると定刻通りに開店となり、上州の空っ風対策であろう二重扉の中の券売機にて豊富なメニューに迷いながらもマイスタンダードの醤油で勝負を挑んだ。減点法で採点しているので具材が増えると相手には不利にはなるが、せっかくここまで高崎駅から790円のバス代を払って来たので全部のせの特製のボタンを押した。

店内に入りカウンターへと案内されると店主さんの正面に座り、卓上の麦茶で喉を潤しながら店内観察をはじめる。テーブル席も設けてあるが決して広いとは言えないちょうど良い客席の店内を、本日は三人体制で回している。茶系で統一された客席と過度な設備の見られないシンプルな厨房内は、不思議と落ち着いた雰囲気が流れている。安定したオペレーションを眺めながら待っていると、ワンロット一杯の丁寧な調理にて着席後4分で我が杯が到着した。

その姿は白磁の高台丼の中で特製ならではの圧巻のボリュームを見せつけている。これで1000円とは驚きのビジュアルだが、コスパや価格設定は評価の対象にしないため心を落ち着かせてレンゲを手にした。

まずは赤みを帯びた弁柄色のスープをひとくち。たっぷりと液面を覆った鶏油の薄い部分にレンゲを射し込もうとするが、ふんだんな具材たちが邪魔をしてレンゲを沈める場所が見当たらないくらいだ。それでもレンゲの底を押し込んでスープをすくい上げると、分裂した粒子の鶏油が店内の照明をキラキラと乱反射している。その景色を見て美味しくないはずがないと確信して口に含むと、予想以上の香り高きスープが口の中はおろか身体中に鳴り響いた。その香味は上質な丸鶏由来と思われる鶏出汁の香りと、複雑でありながらも突き抜けた醤油の香りのカエシが織りなす素晴らしい香味だ。流行りのポルチーニやトリュフオイルに逃げないシンプルな構成だけに丁寧な仕込みが想像されて、何を足しても何を引いてもこの味わいに到達できないバランスの良いスープと出会ってしまった。少しばかり高めの塩気も麺や具材との相性を考えられての設定だと思い先へと進んだ。

開店前に店頭で並んでいるときに店内から麺を切るような音が聞こえていたのと、営業時間の短さから勝手に自家製麺かと思い込んでいたが、そんな表記はどこにもないので外注麺なのだろうか。麺は細麺と手揉み麺から選べるシステムだったので、絶賛マイブーム再燃中の手揉み麺を迷わずチョイスした。カウンター越しに調理の手元が見えないので想像力を働かせてみると、麺上げまでは230秒程度と思われる手揉み麺を箸で持ち上げてみる。その箸先には手揉みながらも割と規則的な波状の平打ち麺が現れた。掌底で強く押し込んだような潰れた麺肌ではなく、切刃のエッジも残っている平打ち麺だ。一本一本の重みが箸先からも伝わってくるので加水率は高いと思われる麺を、スープの拡散に臆する事なく一気にすすり上げる。どっしりとした口当たりと滑らかな舌触りと歯応えの強さが一瞬で喉の奥へと消えて行った。もし篠原涼子さんに楽曲を提供するならば 「♫ 図太さと滑らかさと力強さ」 というタイトルで歌って欲しくなるような大ヒット間違いなしの素晴らしさを麺質だ。先程まで懸念していたスープの強気な塩気も小麦の甘みと相まって新たな味わいを生んでくれる。今回のスープと麺との相性が抜群だったので細麺も味わってみたいと、この時点で再訪の願いが湧いていた。

具材のラインナップも特製ならではの豪華布陣で出迎えてくれる。チャーシューだけでも部位や調理法、切り方の違いを含めれば三種類ものチャーシュー陣が待ち構えている。初見の段階で好物のタイプの焼豚を見つけていたので食べる前から興奮が抑えきれずにいた。豚肩ロースを使った広東式叉焼、通称 赤耳焼豚は大判であるはずの肩ロースを肉質の持ち味を際立たせる為に、赤身だけの部分と脂身の多い部分と両方のバランスが良い部分の三つに区別されて切り分けされて仕込まれている。味付けに関しては蜜ダレの軽やかな甘みが、吊るし焼きならではの個性を引き立てる。それぞれの部位によって火の入れ加減を微妙に変えているのも心憎く、赤身はしっかりとした肉質を楽しめるように完全に熱を通し、脂身の多い部分はしっとりとレア感を残してある。もしかしたら店主さんの狙いではなく偶然だったとしても、一期一麺の精神に則って高評価は揺るがない絶品焼豚だった。さらにはこの焼豚の切り落とし部分も角切りにて入っている。端切れと言えども引き締まった赤身に浸みた濃いめの浸けダレが食欲を掻き立てる。小ぶりではあるが抜群の存在感を発揮していた。

一方の豚バラの煮豚型は食べ応えを重視した作りの前者に対して、柔らかな食感でコントラストを表現している。もちろん赤身と脂身のバランスの良い肉質で味付けも丁度良い。

肉部門の具材としては券売機にオススメとあった〝つくね〟も入っていた。鶏ひき肉で仕込まれたつくねは、フワッとした柔らかさを持ちながら鶏軟骨の食感と大葉の香りを活かした仕上がりとなっている。よくありがちなパサつきなどは微塵も感じさせずにしっとりとしているのは、鶏ムネ肉ばかりではなく鶏モモ肉も含まれているのだろうか。もしかすると、セセリ肉を挽いたものではないかと思うくらいに心地良い食感であった。

大好物の味玉には大変うるさいのだが、非の打ち所のない完璧な仕込みを見せてくれた。まずは中心部までの浸透がより早い小ぶりな卵を採用されている選球眼が素晴らしく、小玉の特性を十分に活かしている。下茹での半熟具合に始まり、均一に黄身を熟成させた漬けダレの浸透圧加減もベストだ。その熟成に伴うはずの塩分過多も感じられずに卵本来の旨みも残してある。提供温度も常温以上に温められているのも一仕事を感じられて好印象だ。ただ一つ個人的な欲を言えば、半カットではなく全卵のままで添えてあれば難くせをつけずに済んだかもしれない。半カットされていたので口にする前から美味いと分かる熟成度も見えていてので、食べた時の驚きは少なかった。しかしそれくらいしか言う事のない味玉だったのは事実である。

メンマにも手作りの愛が溢れていて大満足な仕上がりだった。見た目の醤油色ほどは味も濃くなく乾燥メンマ特有の発酵臭も感じられた。歯応えも固すぎず柔らかすぎない絶妙な食感で楽しませてくれた。

薬味の布陣も卒なく脇を固めている。青ネギの小口切りは大胆に切られてはいるが、切り口の潤いからも鮮度の良さが伝わってくる。開店直後の一番客なのに、前日分の残ったアニキ薬味ではない事に驚いてしまうくらいにアニキネギが一般化していると感じる。こちらの薬味のように、そうでない事が当たり前になって欲しいと望んでしまう。

また青みの小松菜にも愛を感じられる。手間を惜しんで切りっぱなしの水菜が青みとして台頭している現代で、ひと手間かけて店で茹でた青菜を使われている事もうれしい限りだ。その上に葉先と茎の部分をバランスよく巻いた仕事ぶりにも頭が下がる思いだ。丁寧に水気を切られて長さを揃えて切ってある姿には〝青み愛〟が溢れている。過去にはカイワレを添えてあった気もするが今回だけの幸運だったのかも。

もうこれ以上に褒める所がないと思われたが、丼の口縁にそそり立った海苔も品質の良さばかりでなく保存状態の良さが伝わってくる。そこには目利きの良さと食材へのこだわりを強く感じられる。パリッとした鮮度の良い黒々と密度の詰まった高級海苔を十字四切と大判なカットで三枚も添えてあり、そのまま食べると香り高く厚みのある歯応えを楽しめる。スープに浸して口にすれば消えて無くなるような口溶けの良さが楽しめる2WAYタイプの上質海苔だ。

無我夢中で勢いのままに完食すると少しだけ舌が疲れてきたのは、やはりスープの高めな塩分設定によるものだろう。飲み干せなくもなかったが、心地良いまで終わりを迎えたくてスープは残して箸とレンゲを置いた。

それでも高得点は間違いないラーメンとの出会いだった。これでスパコンのオススメに対する信頼も随分と大きくなった。結果として88点を付ける事になり、スパコンとの対決は私の完敗となった。通算対戦成績は33戦14勝10敗8分7KO勝ち1KO負け1没収試合となった。

今回の高崎めぐりの番外編を含めると、群馬県のラーメンのクオリティの高さを思い知ると共に、高崎ナイトのノリの良さを感じたので近々の再訪は免れないと思った一杯でした。

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