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のらのら

男性 - 東京都

はじめまして。レビュー開始から一年が経ち、二年目の目標を全国制覇にしました。一杯のラーメンに出会うまでの経緯も書き記しているので、前置き等が長くなりがちですがお許しください。しかし採点に関しては立地 接客 衛生面 価格設定などは考慮せずに、ラーメン一杯に対しての評価にしています。自分の好みだけで評価しているので不快な文面もあると思いますが、何卒宜しくお願いします。

平均点 73.435点
最終レビュー日 2019年7月19日
568 460 14 1,850
レビュー 店舗 スキ いいね

「ラーメン (豚1枚 200g) ¥770」@麺屋 もりのの写真平日 曇天 10:15 待ちなし 後待ちなし 後客13名

〝ニューオープン パトロール〟

昨晩はRDBの新店情報を元に新たなラーメンとの出会いを求めると、居ても立っても居られずに家を飛び出して船橋駅前の老舗サウナに宿をとった。

こちらのサウナは決しては新しくはないのだが、なんと言っても広々としたサウナ室が魅力なのだ。肝心のサウナ温度や水風呂は完璧とは言わないが、昔ながらの食事処のメニューの充実ぶりは関東屈指だ。そんな食事処でもっぱら最近のお気に入りは「牛ハラミのあぶり焼き」で、固形燃料の鉄板ではあるが自分で焼きながら楽しむスタイルなのだ。値段も手頃で量もツマミにするには丁度良いのだ。このサウナはネット予約すると生ビールを含むドリンク一杯無料券が付いてくるのも大きな魅力だ。無料生ビールを含めて3杯ほど燃料補給をしてから、夜のネオン街へと繰り出した。

本日の予定を頭に入れて2セットだけに控えたのだが、ついてくれる女の子が全員東京生まれの子ではせっかくの船橋ナイトの楽しみが半減してしまった。次回の参考のために千葉のラーメン事情を入手したかったのだが、あえなく失敗に終わった。しかしおかげで飲みすぎる事もなく記憶の定かなうちにベッドに入れた。

翌朝も天気こそは怪しいが体調万全で目が覚めると、閉館間近まで朝風呂を楽しんだ。閉館時間が近づくと清掃のおばさま達が着替えの最中でもお構いなしに入ってくる。どう見ても先輩と思われるおばさま達に全裸を見られた時に、まだ恥ずかしく思う少年心が私の中にある事を知った。

そんなこんなで午前10時にチェックアウトすると、すぐに船橋駅に向かい東武アーバンパークラインにて最寄りの塚田駅を目指した。最近ラーメンのおかげで乗車機会の増えた路線なのだが新型車両ばかりで、ドアの開閉音がやたらとうるさい旧型車両に出会わなくなった。また本日も新型車両で寂しさを感じながら二駅で人生初の塚田駅に着いた。ホテルを出てからたったの15分で到着と船橋に前泊した価値を噛みしめた。

駅の西口へと階段を下りて右を見れば真っ赤な看板があり、駅からも歩いてすぐの利便性の良い立地だ。1分もかからず着いた店先は半シャッター状態なので定休日ではなさそうだ。向かいにあるコンビニで水分補給の水を購入して、店先から少し離れて張り込みを開始する。

駅前と言えど、人通りや交通量も少なく穏やかな時間が流れている。張り込み最中に店主さんが玄関先の掃除に一度出てきたくらいで状況は変わらないままに時間が過ぎていった。定刻5分前になっても並びもなく、それらしき客も見られずに定刻2分前に早開けとなった。

手書き風の赤のれんが掛けられたのを確認してから先頭にて店内に入ったが、入口右手の券売機の前に立った瞬間に思いもよらない展開が待っていた。それはメニューの内容よりも券売機の上に貼られた、俗に言う〝コール〟の説明書きの存在だった。すなわちJ系と言う事なのだ。人生の中で数回は食べた事があるジャンルではあるが、あの中毒性が恐怖となって極力避けてきたタイプなのだ。券売機の前で躊躇していると後続が次々の入店してきたので、慌てて上部左端のボタンを押してしまった。すぐさま店主さんにアリナシを問われ、訳も分からずにフツウと答えた。

RDBには新店ゆえにレビューもなく写真すらも挙がっていなかったが、まさかJ系とは思いもしなかっただけに困惑しながらカウンターに腰を下ろした。ウォーターサーバーのお冷の飲んで冷静になろうと覚悟を決めて店内観察をはじめる。

カウンター四席と三卓のテーブル席の店内をご主人おひとりで切り盛りしている。ワンオペにしては広い客席なので、調理からカスタマイズの応答や配膳までの全てを担うのは大変そうである。狭い調理場に入りきらなかった冷蔵庫や冷凍ストッカーなどの厨房機器は客席の端に設置されている。本日の客層は圧倒的に地元の方が多く会話の内容からは近所にラーメン屋がないようで、こちらのオープンを楽しみにしていたと言う高齢者の方々も見られる。たしかにオープンして5分もしないうちに店内は満席となり、中待ちまでも発生していた。そんな地元の期待を一身に受けて調理に励むご主人の姿を眺めながら待っていると、ワンロット4杯仕上げにて我が杯が到着した。

その姿は真紅の高台丼の中で数回しか見た事のない景色を見せてくれる。実際にも余程の緊張だったのか写真が手ブレしてしまっていた。しかしながら〝フツウ〟が功を奏したのか強烈なインパクトは感じられず、恐怖心も和らいできたところでレンゲを手にした。

まずはスープをひとくち。J系と言えば標高が高いイメージがあったのだが、盛られた野菜も大量ではなくスープの液面も顔を出している。そんな隙間を見つけてレンゲをグッと押し込んでみると、サラリとした非乳化タイプのスープがレンゲの中に流れ込んできた。その印象は味噌ラーメンよりも軽やかに感じ、J系の中でも穏やかなタイプなのだと自分に言い聞かせた。いざスープを口に含むと、口当たりからも濃度の濃さは全く感じられずに清湯スープとも変わらない印象だ。鼻の奥では豚由来の動物系出汁の香りがするが獣臭さはなく清らかにすら思えた。カエシも強いと想像していたが、高めの設定ではあるが喉が灼きつく程ではない。連日のサウナ浴の影響で塩分を欲しているのかもしれないが、許容範囲内の塩気で助かった。しかし一番の心配材料であった旨味の底上げもされていて、自身の脆弱な味覚は支配されてしまった。大した分量ではないと思われる旨味補填なのだが、果たして本当に必要なのだろうかと思える土台の動物系スープがしっかりしているので不思議に思った。〝アブラ〟や〝ニンニク〟が抜けるのであれば〝コナ〟も抜きでお願いできれば、本来のスープの旨みだけでも十分に美味いスープに思えて残念だった。

調理工程の中で生麺の状態を目の前で見たが、打ち粉にまみれた極太麺を茹で釜に投入すると麺上げまで300秒を数える長い茹で時間だった。そんな麺を箸で持ち上げるが、モヤシが邪魔をするので必然的に〝天地返し〟を行なっていた。丼の中から現れたストレート極太麺は切刃のエッジが生み出す長方形とも見える特殊な形状をしている。麺一本の重みからも加水の高さと豊富なグルテンが伝わってくるパワフルな麺質を想像する。箸先からはハリの強さが鋭く感じられ、麺を掴んでいる感覚ではない違和感もある。ここまでくれば怖いものはなく、一気に数本をすくい上げる。麺のエッジがシャープに唇をえぐって飛び込んできた麺は、300秒の茹で時間でも強いコシを残している。グルテンの弾力性よりもパサつきすら感じるような麺質なので、独特な歯切れを生んでいる。あまり馴れ親しみのないタイプの麺に戸惑いはしたが、嫌いな麺ではなかったのが本音だ。食べ物を食べ物で例えるのはナンセンスだが、酸味の効いたトマトソースをからめて食べても美味いだろうなと考えてしまった。

具材は豚バラの煮豚型が大判の厚切りでセンターを陣取っていた。まず感心したのが、ワンオペなのに盛り付け直前に切り分けていた点だ。手間を考えれば切り置きすれば負担も減るだろうが、切り立てにこだわるご主人の思いが伝わってきた。そんな思いを胸に思い切り頬張ってみると、強めの味付けだが脂身の甘みと相まって新たな旨みを生み出している。あまり得意ではない豚バラの脂身だが、今回は赤身の占める範囲が多い部位が当たったので幸運にも脂っぽさを感じずに食べられた。

モヤシも直前に茹でられていたのと、鮮度の良いモヤシを使われていたので不快なアンモニア臭もなく軽めの茹で加減がシャキシャキとした食感のアクセントを与えてくれた。

薬味の白ネギは小口切りよりも細かく刻まれていたが全体の中では目立つ存在ではなく、あくまでも脇役となってサポートしていた。麺を食べていると、たまにシャキッとした軽い食感と辛味のある刺激を与えてくれた。

今回は下調べ不足で私の好みとは違ったタイプのラーメンに出会ってしまったが、頭でっかちになっていたJ系への苦手意識を少し減らしてくれたような気もする。周囲の客人の満足そうな笑顔を見れば、すでに地元に愛される要素を持った店だと察しがつく。採点は厳しくなっているが、あくまでも好みの問題だけで評価した一杯でした。

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「味玉ラーメン ¥730」@博多一成一代の写真平日 晴天 10:55 先待ち2名 後客2名

〝諸国麺遊記 九州編〟

昨晩のラーメンの印象のままでは、このまま博多ラーメンが食べられなくなるのではと思ってしまうくらいの衝撃だった。

昨晩は博多中洲の宿をとり久々の中洲の夜を楽しもうと思っていたのだが、ホテルでシャワーを浴びてくつろいでいるうちに旅の疲れからか眠ってしまっていた。二時間もウトウトしていたようで、気が付けば23時を過ぎていた。慌てて身支度を整えて中洲のネオン街に飛び出したのだが、不夜城とばかり思っていた中洲も日曜となると営業している飲み屋も少ないようだ。しかも女の子の出勤数も少ないらしく店探しに難航してしまった。どこの案内所に行っても店が見つからずに諦めようとしたところ、一軒のバーの看板が目に入った。明らかに怪しく煌びやかな看板ではあったが、吸い込まれるように入ってみた。そこは海でもないのに女の子たちが水着でカクテルを作っているという、何とも男心をくすぐる絶景だ。そんな楽園のようなバーで女の子と話をしていても気になるのは、自身から発せられる豚骨臭だ。シャワーを浴びたにもかかわらず、つきまとう先程のラーメンの匂いに耐えられずホテルに戻り再び入念に身体を洗った。今回の九州ラーメン旅の楽しみでもあった中洲の夜は、わずか30分で幕を下ろした。

翌朝は夕方から都内での会食があるので間に合うように飛行機のチケットを探してみると、福岡 12:50発の羽田行きに空席があったので手配した。観光地として博多が優れている点の一つに空港の近さがあり、ホテルのある中洲川端からも地下鉄で10分足らずで福岡空港まで行けるという便利さだ。その飛行機の前に何とか昨晩の博多ラーメンのイメージを変えたいと思い、急遽 RDBにて候補の店を探してみる。

すると空港へと向かう地下鉄の途中駅に総合ランキング福岡県第3位のこちらが挙がってきた。とりあえずは先を急ぐため、定休日と営業時間だけを確認すると10時半にチェックアウトして最寄りの東比恵駅に向かった。

地下鉄の4番出口を出るとホテルの工事現場の向こう側に店先を見つけた。定刻の5分前だったので、すでに並びが発生していたが三番手をキープできた。やはりこちらも店先まで豚骨スープの匂いが漂ってはいるが、昨夜ほどの強さではない。もしかしたら一晩で豚骨耐性が付いたのかもしれないと、呑気に待っていると定刻通りにオープンとなった。

店内に入ると券売機はないので屋台風のカウンターに座り卓上メニューから品定めをする。品定めと言っても豚骨一本で勝負されているので選択肢はトッピングだけなので、好物の味玉入りをスタッフさんに告げた。グラスに水を入れて店内を見渡してみるとテーブル席が多くあり、メニューからも夜の居酒屋営業に適したレイアウトとなっている。本日は三人体制で回している厨房内に目をやると、餃子用の大きな鉄鍋や串焼き用の焼き台が置かれている。そんな夜は居酒屋として〆の豚骨ラーメンを食べてる酒呑みの姿を想像して待っていると、着席して8分ほどで我が杯が到着した。

その姿は黒釉薬のオリジナル有田焼鳴門丼の中で、カプチーノ系ではあるが泡だらけといった感じではない。むしろ見た目の濃度は弱く感じるので、博多ニューウェーブ系なのだろうかと思いながらレンゲを手にとった。

まずは路考茶色のスープをひとくち。液面の三割ほどだけが泡立っているスープにレンゲを落とすと、濃度や粘度の強さをレンゲを持つ指先に感じない。手応えとしては中濃タイプに思えるスープを口に含むと口当たりの印象は穏やかではあるが、味の濃さとしては強烈なインパクトを示している。かなり塩分濃度の高いスープだと思ったが、苦手な酸化アンモニア臭を全く感じない。これはあくまでも推測なのだが、今回の九州遠征で度々見かけた三連釜はスープを炊くのに長時間を必要するので必然的に生まれた仕組みなのだろう。それが故に豚骨スープは仕込みの〝時間差ブレ〟によって臭みが違うように思える。昨夜の店は夜営業だったのでスープに酸化臭を強く感じ、店は違えど本日は朝イチの訪問だったので酸化臭を感じなかったのかもしれない。スープからの酸化臭というのは時間経過による油脂の劣化が原因だと思うので、昼の部の訪問が良かったのだろう。

麺は関東では見慣れない「麺屋 慶史」と書かれた麺箱ならぬ段ボールが積まれている。今回も硬さを普通にしたので麺上げまでは25秒程で、先客人はバリカタ発注だったので15秒の早茹でだった。そんなストレート細麺を箸で持ち上げると、切刃の角や真っ直ぐながらも軽やかに波打った形状が特徴的だ。博多ラーメンの細麺をすすった時の独特のアンモニア臭に恐怖を抱きながらも一気にすすり込んでみると、以外にも懸念していたアンモニア臭が少ない。全くしないわけではないがツーンと鼻の奥を指すような刺激はなく、昨夜とは印象が違った。麺のエッジ&ウェーブが唇を通過する時の感覚も面白く、硬すぎない茹で加減も私にとってはベストだった。麺に少しのパサつきはあるが、低すぎないと思われる加水率を活かしてあって好食感だ。スープも濃厚ではあるが臭みなどのクセがないので、麺に絡んでも麺の持ち味を発揮させていた。

具材のチャーシューは豚バラで仕込まれていて、赤身と脂身が見事に三層になった三枚肉。やや旨みの抜け出した赤身の味気なさを、脂身の甘みが補ってバランスを保っている。厚めにスライスされているので食べ応えの面では赤身も存在感をアピールしていた。

追加した味玉は普通の半熟ゆでたまごとしては高評価だが、味玉とすると評価は下がる。博多ラーメンには塩たまごが基本なのかもしれないが、味玉好きとしては残念な仕上がりだった。

この具材も博多ラーメンでは定番のキクラゲが細切りで添えてある。その量の多さには驚いたが、キクラゲにしか表現できない食感のアクセントはさすがと思える。

薬味の青ネギも今回の九州遠征では多く出会った青ネギだったが、不自然に揃った切り口や乾燥具合から見ても業者発注の刻みネギにとしか思えなかった。特に品質に問題がある訳ではないが〝薬味愛〟は感じられない。

序盤から軽快に食べ進められてきた麺も、後半になってもハリがダレる事もなく満足で完食できた。スープを飲み干す事はなかったが、終始不快な酸化臭に悩まされる事なく終わりを迎えられ箸とレンゲを置いた。これで今回のノープランラーメン旅の九州編も無事に終わりを迎える事ができた。

九州七県を二泊三日で巡ってみて思ったのは、勝手なイメージで九州は細麺の豚骨一辺倒だと勘違いしていた事だ。特に驚いたのは鹿児島で一番人気のラーメンが白濁豚骨でなく、麺も中太麺だった事だ。たった一県一杯しか食べてないが、それぞれの地方色は思い切り楽しめた。しかし一番の思い出に残っているのは、鹿児島と博多の夜の街で出会った女の子たちの方言の魅力かもしれない。これは前回の中四国の旅でも思ったことだが旅の恥はかき捨てられても、旅の味と思い出はかき捨てられないと感じた一杯でした。

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68

「メンデラ ¥720」@栄養軒の写真日曜日 雨天 12:30 先客 30名 後客12名

〝諸国麺遊記 九州編〟

またまた悪いクセが出でしまった。ノープランのラーメン旅も本日だけは計画を立てておいたにもかかわらず、まさかの大寝坊で目が覚めた。

昨晩は鹿児島きってのネオン街である天文館に深夜近くなってからの出動となったのだが、翌日にはRDB総合ランキング宮崎県第1位のこちらの開店前の現着を目指すために午前6時発の宮崎行きの電車に乗らなければならなかったのだ。それなのにホテルのベッドで目が覚めると午前8時半を過ぎていた。慌ててチェックアウトして鹿児島中央駅に向かったが、次発の宮崎行きまでは一時間近くも待ち合わせがあり開店前の現着の計画は泡と消えた。

今回の九州遠征での唯一の計画だっただけに昨夜の深酒に悔いが残るはずなのだが、鹿児島の夜の楽しさに比べたなら大した事ではないと思えてきて気持ちを切り替えた。もともとノープランの行き当たりばったりのラーメン旅なので、その後の計画が崩れるわけでもなくのんびりと鹿児島駅の構内で電車の到着を待つ事にした。

何もする事もないので駅のホームへと上がってみると、またもや偶然の出会いが待っていた。それは昨日の長崎駅で出会ったJR九州の特別列車「ゆふいんの森号」に続いて「指宿のたまて箱」通称〝IBUTAMA号〟が発車待ちしていたのだ。そのフォルムは科学忍者隊ガッチャマンの悪役「ベルクカッツェ」か「キカイダー 01」のツートーンカラーを思わせる個性的なカラーリングなのだ。一度は乗ってみたい車両との偶然の出会いに寝坊して良かったと後悔の念が安らいだ。

しっかりと写真と思い出に収めると、鹿児島中央駅 9:59発 きりしま8号にて九州遠征5県目となる宮崎県を目指した。本日からは梅雨入りの影響で雨が降る錦江湾沿いを、雲に山頂を覆われた桜島をバックに列車は走る。完全に貸切状態の車内で車掌さんが「天気が良ければ開聞岳も見られるんだけどなぁ」と鹿児島弁で話しかけてくれた。私が「JR九州の車両ってカッコよくて乗ってみたくなりますよね」と受け答えると、そこからは業務の妨げにならない程度に色んな列車の事を話してくれた。そこには〝鉄道愛〟があふれていて、いつまでも聞いていたいと思う話ばかりだった。最後には子供でもない私に、手作り感のある鉄道カードまでくれた車掌さんとの出会いが素敵な思い出となりながら二時間ほど揺られると宮崎駅に着いた。

そこからは路線バスもないので、駅前でタクシーを拾って店へと向かった。晴天ならば南国ムード満載であろうシュロの木が立ち並ぶ通りを5分も走ると、大きな鳥居の下で降ろされた。すぐ目の前には三角屋根の建物に大きな看板がオーラを漂わせるコチラがあった。

駐車場に停めた車から先客が店に入っているのを確認してから私も入口の扉を開けてみると、そこには活気と熱気にあふれた、都心では感じる事のないパワーが満ちている。そんな空気な圧倒されながら案内されたカウンターの隅席で、本日のお題を決めるべく卓上メニューに目を凝らした。

昨晩の鹿児島ナイトのせいでメニューを下調べしてなかったので、突然に現れた謎の暗号のようなメニューの表記に戸惑ってしまった。

〝メンデラ〟〝肉デラ〟〝Wデラ〟

思わず「ネルソンかよっ!」とツッコミを入れたくなるようなメニューが並んでいる。そんなくだらない事を思っていると、ここで大きな勘違いをしてしまったのだ。それはメンデラ=特製だと思い込んで注文してしまったのだが、この時点ではメンデラ=麺1.5倍とは知らなかった。前食の鹿児島「のり一」と同じように、たくあんのサービスでおもてなしを受けながら店内観察を始める。

お座敷やテーブル席を多く設けた広い店内を本日は七人体制でフル稼働している。客層も地元の方々が多く見受けられ家族連れの割合が多く、年齢層は比較的若いと思われる。調理場内に目をやると強烈な印象を与えてくるのは、三連式の羽釜の大きさだ。スープ炊きに使われているのだが木蓋がされているので羽釜の中の様子は見えないが、熱源のガスの炎を見る限りは強い火力で沸騰させているように思える。時折スープを別の羽釜に移しているのは濃度の調整をしているのだろうか、ご主人の経験だけがスープの決め手となっていると見える。スープを炊きながら麺上げまでもご主人が担っているが、圧巻の二台の麺茹で釜の中には14個ものテボが並んでいる。ワンロット14杯を全てのテボを駆使した麺上げ作業は見せ場でもある。しっかりと時間差を考えてテボに投入された麺を、さばいていく姿は熟練技そのものだ。それを素早く仕上げる盛り付け役のスタッフの機敏な作業も一見の価値がある。

大量生産ながらも、そつの無い調理工程に見とれていると着席して8分で我が杯が到着した。その時になって初めてメンデラが大盛りという事に気付いた。なぜなら他のラーメンよりも、ひと回り大きな丼で現れたからだ。本日の一食目とはいえ、この後も連食を考えていただけに意味も分からずに注文した事を後悔してしまった。しかし悔やんでも仕方ないので目の前のラーメンと向き合ってみる。

その姿は白磁に鳳凰の描かれた反高台丼の中で、素朴ながらも丁寧な盛り付けが好印象を与えてくれる。液面のスープと香味油のツートーンカラーが、先程の列車のボディカラーと被って見える。初めて出会った宮崎ラーメンの姿を目に焼き付けながらレンゲを手にした。

まずは洗柿色のスープをひとくち。羽釜で強く炊かれたと思われる濃密そうなスープと、たっぷりと表層を覆った香味油に強いアタックを仕掛けられると想像しながら口に含んでみる。すると濃厚ではあるが、思いのほかサッパリとした口当たりに驚いた。豚骨由来の臭みもなく、多く思われた香味油もサラリとしている。その香味油からは焦がしネギのような香りが風味をより強く与えている。スープの香りは穏やかで豚骨耐性の弱い私にでも受け入れらると思ったが、塩気と旨味の強さには面食らってしまった。かなりハイな設定のカエシは、スープを飲むには塩っぱさばかりが際立っている。また豚骨スープだけではない不自然な旨味成分も顔を覗かせているのが少々残念である。しかし地方遠征には付き物と覚悟していたので、麺との相性を楽しむ事にする。

表の看板にも大きく書かれているように自慢の自家製麺を箸で持ち上げてみると、加水率の高そうなストレート太麺が現れた。ふっくらとして黄色みを帯びた麺肌が、いかにも美味そうで食欲を刺激する。麺上げまで330秒の長い茹で時間からは想像できないくらいのハリを持った麺質が箸先から伝わってくる。そんな麺をすすり上げると、見た目通りにハリのある口当たりが心地よく滑り込んでくる。多加水麺なのでスープを寄せ付けないのが、私には幸いしてダイレクトに自家製麺の美味さを楽しめる。ひとくち目で大盛りにして良かったと思えるような良麺に出会った。また密度の濃いグルテンが生み出す歯応えと歯切れの良さが、交互に繰り返しやってくるので大量の麺も食べ飽きせずに食べ進められた。

具材のチャーシューは豚バラの煮豚型が小ぶりながらも六枚も入っている。必要以上に柔らかくもなく肉々しい歯応えが好み寄りでうれしい。味付けも薄味ではあるがスープ自体にコショウが強く使われているので、その香りと辛味を借りると丁度良いチャーシューとなってくれる。単体で食べても、麺と組み合わせても相性の良い仕上がりとなっていた。

宮崎ラーメンの特徴でもある茹でモヤシも大量に添えてある。このモヤシは宮崎だけではなく今回の九州遠征で訪れた長崎 佐賀 熊本 鹿児島の四県全てに使われていた具材でもある。こちらも細いタイプのモヤシを使われているので、甘みや香りよりも食感を重視した具材と思われる。自家製太麺のモッチリした食感に交じって軽やかな細モヤシのシャキッとした歯触りがアクセントになってくれた。

メンマは褐色の色合いとは違ってサッパリとした薄い醬油味で仕上げてある。少しだけ滑りのある舌触りと、柔らかくもメリハリのある歯応えが名脇役を演じている。やはり手作り感のあるメンマは素晴らしいと再確認した。

それに引き換え残念なのは薬味の青ネギで、店で仕込まれていない業務用ネギを使われているように思えた。それは乾いた切り口や香りの乏しさから感じてしまった。毎日大量に使う薬味なので手切りするのも大変だとは思うが、業務用刻みネギを使うにしても鮮度の管理も重要だと思った。

中盤からも麺のすすり心地が良く大盛りでも完食していた。強気なスープを飲み干すことは出来なかったが、周囲の地元客も飲み干しているのは少数に見えた。ほとんどの方が卓上のコショウやニンニク醤油という調味料を加えてラーメンを楽しんでいたが、スープを楽しむと言うよりは麺を楽しむためのアイテムなのだろうと推測した。

宮崎ならではの地方色を楽しんで店を後にしたのだが、そぼ降る雨の中を宮崎駅までの20分の道のりを次なる目的地を探しながら歩いて帰る事になる一杯でした。

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「ラーメン ¥700 (うす味 油少なめ)+味玉 ¥40」@家系総本山 吉村家の写真平日 曇天 10:50 先待ち19名 後待ち40名以上

〝第31回 RDBの超高性能スーパーコンピューターが算出したオススメ店は本当に私に合うのか!〟を開催する。

このイベントは、RDB PC版のオススメに挙がる六店舗から、その店のイチオシではなく、自分の好きそうなメニューを食べて採点し超高性能スパコンとの勝敗を決めるものである。決してお店との勝負ではないのは理解していただきたい。

採点基準は90点以上付いたなら私のKO負け、80点以上ならば判定負け、70点台なら引き分けとし60点台なら判定勝ち、59点以下の点数ならば私のKO勝ちとする。

過去30戦の対戦相手は「風雲児 」「麵屋一燈 」「煮干しつけ麺宮元 」「竹末東京プレミアム 」「さんじ 」「麺処 晴」「燦燦斗」「神田 勝本」「中華そば屋 伊藤」「麺処 ほん田」「煮干中華ソバ イチカワ」「麺屋 和利道 warito」「らーめん 芝浜」「らーめん かねかつ」「狼煙〜NOROSHI〜」「ラーメン大至」「中華ソバ 伊吹」「麺処 朧月」「Bonito Noodle RAIK」「中華蕎麦 とみ田」「陽はまたのぼる」「神田とりそば なな蓮」「ソバダイニング クアトロ」「旬麺しろ八」「MENSHO」「麺小屋 てち」「らーめん 鉢ノ葦葉本店」「らぁ麺 飛鶏」「中華そば 勝本」「◯心厨房」と名だたる有名店や人気店が並ぶが、通算対戦成績は30戦14勝8敗7分7KO 1没収試合と現在は私の勝ちがリードしている。

その勝因の一つには根本的なスパコンの誤認予測があると思われる。清湯醤油系が好みなので採点上位には〝淡麗系〟が並んでいる私に対するスパコンのオススメ店は、つけ麺のレビューを一度もしてないのに現時点ではPC版のオススメに三店舗ものつけ麺専門店が挙げられている。これは自己責任でもあるが、度重なる地方遠征で〝イタチごっこ〟となって挙がっている中部地方のラーメン店も二つある。あと残りひと枠に急浮上してきたのが本日の対戦相手となる家系のコチラなのだ。

〝家耐性〟を持ち合わせていない私だが、先月に町屋駅前にオープンした家系ラーメンの新店で家系史上最高得点の74点を付けたのをキッカケにスパコンが急に家系を推してきたのだ。しかしコチラを攻略しなければ手詰まりとなって進む道を断たれてしまう。そこで本日はスパコン対決では初となる家系との対戦を実現するために自宅を出た。

11時開店前の現着を狙って午前10時前に家を出ると東横線の特急に乗り込んだ。道中の25分ほどの車内でRDBにて対戦相手の下調べをしてみると、現在の家系の礎を築いた店の系譜を受け継いだ由緒正しき老舗点のようだ。そんな歴史を重く受け止めながら最寄りの横浜駅に着いた。そこからは浜風を全身に浴びながら歩いて行くと8分ほどで店先が見えてきた。店先と言うよりは驚異の行列が目に飛び込んできたのだ。定刻10分前の現着では遅かったようで、すでに日除けテント下の外待ちベンチは埋まっていた。その景色は浜スタの一塁側ベンチほどの大きさがあるにもかかわらず満席となっている。システムは食券を先買いして列に並ぶようなので、二台も設置されている券売機にて色付きの札を購入して歩道にて待機をはじめる。

開店時間が近づくと、あれよあれよと言う間に行列は膨らみ続けて歩道のキャパを超えるほどになっていた。それを察知してかどうかは定かではないが、定刻よりも6分も早くオープンとなった。まずは選ばれし一巡目前半の13名が店内へと流れ込むと、ここでようやく外待ちベンチへと昇格となった。すぐに食券の札を確認されると5分もせずにに一巡目後半の11名も店内へと誘導された。

店内に入りカウンターに座ると目の前の高台に札を見えやすいように並べて待機する。その間にセルフで水を汲んで店内を見渡す事にする。かなりの広さのある店内には大きなコの字に設置された古めかしい朱赤色のカウンターが印象的だ。ウォーターサーバーの横には小上がり席もあったが、スタッフさんのまかない弁当が置かれていて稼働はしていないようだ。奥には券売機導入前は使われていたであろうレジスペースがあり、大女将らしき女性が店内に目を凝らしている。そんな緊張感の漂う店内を本日は圧巻の九人体制で回している。それぞれの持ち場を守る白いハチマキ姿の男たちの勢いに押されないように待っていると、スタッフさんに好みの有無を聞かれたので気弱にも「うす味」の「油少なめ」でお願いした。そうこうしていると、着席して10分ほどで我が杯が到達した。

その姿は口縁が金で飾られた黒釉薬のオリジナル屋号の入った切立丼の中で、決して丁寧とは言えないが〝漢〟らしい表情で力強く出迎えてくれた。その丁寧さを感じない理由はチャーシューの上に一片だけ飛び散った青菜のせいだろう。しかし盛り付けや美しさは評価の対象にしないと決めているので、気を落ち着かせてレンゲを手に取った。

まずは胡桃色のスープをひとくち。見た目には油少なめが功を奏したのか、液面には荒々しい背脂や油膜はなく穏やかな湖の景色のようだ。私の中の家系のイメージとは違ったスープにレンゲを落とし込んでみると、レンゲを持つ指先に係る抵抗はかなり少ない。濃厚とは思えない認識のままにスープを口に運ぶと、手応えと同様に柔らかな口当たりを感じた。しっかりと乳化したスープの中には粉骨などのザラつきは全くなく、豚骨や鶏ガラ由来の動物性コラーゲンがたっぷりと潜んでいるのが分かる。唇と口内を覆った粘質がそれを物語る滑らかなスープにまずは驚いた。しかし、うす味にした結果が私にとっては残念な誤算となって表れていた。それはカエシの塩気が非常に弱く、味覚としては申し分ない塩分なのだが、その影響で豚骨特有の臭みが前に出てきてしまった。その臭気はスープを飲んだだけでは正直言って分からない程度のものだったが、この後の麺を啜った吸気の中では強く感じてしまったのだ。

それは120秒あたりから固茹でに対応した麺上げが始まり、基本の茹で加減では150秒ほどで麺上げされたストレート太麺から感じたものだった。多加水麺らしき重量を箸先に感じながら一気に啜り上げた瞬間に、不快な獣臭となって襲いかかってきた。スープだけでは感じなかったが、強く吸い込んだ時にだけ豚骨ではなく鶏ガラ由来と思われる余計な匂いを連れてきてしまったようだ。そこで啜り込む食べ方をやめて、ゆっくりと口に送り込む方法をとってみる。すると不快な匂いを感じることなく食べ進められた。もしかしたら自身の鈍感な嗅覚が匂いに慣れてしまったのかもしれない。割と嗅覚や味覚というのは曖昧であると再認識した。そこからの麺の躍動感は素晴らしく、少し平らな形状と溶け出したグルテンが滑らかさを強調する麺肌が組み合わさって愉快な食べ応えを発揮していた。噛んだ時に香る小麦の風味もスープの陰で密かに香ることで存在感を発揮している。喉越しの良さもスープのコラーゲンの力を借りて最大限に引き出されて胃袋へと滑り落ちていく。すでに初動の不快臭の事など忘れてしまうほどの良麺に出会えた。

具材のチャーシューは、一辺だけに脂身がある豚ロースで仕込まれていた。ローストされた香味が特徴でもあるチャーシューは大箱の店内ながらも切り立てにこだわりを持って、盛り付け直前に電動スライサーで切られている。かなりの薄切りなので赤身本来の食感は楽しむ事は出来ないが、味付けの良さを十分に打ち出している。一枚では物足りないと思うくらいに良い仕上がりのチャーシューだった。

味玉は残念ながら好みの熟成感は全くない半熟ゆで卵だった。破格の40円という安さなので多くを望んではいけないが、味玉という表記だったので漬けダレがもう少し浸み込んでいても良かったのになと欲が出てしまった。しかし言い換えれば濃いめのスープ中では箸休め的な具材となっていた事実は否めない。

青みは家系と言えば茹でたほうれん草と思っていたが、本日は小松菜が使われていた。ほうれん草よりも香りも食感を強めの青菜ではあるが〝家系の掟〟なのだろうか、やはり業務用のカット小松菜としか思えない品質だった。食感と言っても店内で仕込んだ茹で立ての小松菜とは違った物足りなさが目立つ。色彩もくすんだ緑色に見えて鮮度の良さは感じられない。また香りも乏しくアクセントを与えてくれる力強さはなかった。

また基本でも大判な十字9切の海苔は大きな存在感を見せていた。口溶けよりもスープや麺に負けないような強い歯触りが持ち味の海苔を目利きされている。多少の湿気では崩れない海苔なので最後までスープや麺との共演を楽しめた。

最後にスープの液面には白ネギのような薬味が二つだけ浮かんでいたが、他のラーメンのトッピングが紛れ込んだのかどうかは定かではない。そんな謎めいた事を思いながら箸とレンゲを置いた。うす味にして大正解だったものの、強気なスープを飲み干せるような強い胃袋は残念ながら持ち合わせていなかった。

採点としては今回も70点を越えたので、スパコンとの対戦は引き分けで幕を閉じた。これで通算対戦成績は31戦14勝8敗8分7KO 1没収試合となり、まだまだスパコンに勝ち越している。

食べ終えて席を立つ時に周囲を見て、ある違和感を感じた。それは私自身の勝手なイメージで〝家系〟にはライスが付き物と思い込んでいたので、ライスを食べている客がいない事を不思議に思ったのだ。そう言えば券売機にライスのボタンが無かったような気もする。様々なジャンルがあるラーメンの世界の中でも、まだまだ勝手な思い込みが強いようで修行と経験の足りなさを痛感した一杯でした。

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「千祥おすすめラーメン 並 味薄め 脂少なめ ¥850」@麺家 千祥の写真土曜日 晴天 11:20 先待ち13名 後待ち30名以上

〝ニューオープン狙いうち〟season2

昨晩のことだが、寝床で見ていたRDBのニューオープンの中に新たな新店情報を発見した。詳しく調べてみようと思ったが、得意ジャンルではない〝家系〟の文字を見て一度は断念して明日の目的地を探していたのだ。しかし候補の店が見つからずに再度こちらのお店情報を見ていると、IT(意識高い) 系おじさんには有難い〝無化調〟の文字を見つけた。

以前にも自身の〝家耐性〟を上げようと思いRDB内の検索ページで〝家系〟と〝無化調〟にチェックを入れて検索した事があったのだ。半年くらい前のその時は、確か二店舗しかヒットしなかった記憶がある。私の中では決して交わる事のない両者と思っていたので、この新店情報が私の中での大きな「家系革命」になるのではと初訪問を意気込んだ。

あまりの興奮に寝付けなかった昨晩の睡眠不足の身体を揺り起こして、オープン初日の開店前の現着を狙って一時間前に自宅を出た。天気の良さも手伝って、明治神宮前駅までは歩いて向かい千代田線に乗車した。30分も揺られると最寄りの町屋駅に着いていた。そこからは1番出口を駆け上がると、すぐにそこが本日オープンの新店だと分かる行列を見つけた。土曜日の休日オープンとなれば、これくらいの行列は覚悟していた。

開店10分前で14番手をキープして最後尾に並ぶと、次々と後列が伸び続けた。わずか3分程の間に列の長さは倍以上になった。五月といえど直射日光を遮るものが何もない歩道上で並ぶのは体力が必要な季節に入ってきた。流れる汗をぬぐいながら待っていると、開店時間になり店内からはスタッフ陣に気合を入れる店主さんの大きな掛け声が店の外にも轟いた。その瞬間、並んでいる人たちからも小さな拍手が起こっていた。定刻通りに第一陣が店内に吸い込まれて行った。

やはり一巡目は逃してしまったが、ようやくビルの日陰での待機となり吹き抜ける風も心地よく感じられた。順番に食券を購入する先買いのシステムだが、券売機の左上部にあるおすすめのボタンを押して再び待機する。すぐ先にも家系ラーメン店の看板が光っているので「町屋お家騒動」の勃発を予感しながら待っていると、開店してから25分で中待ちの案内があった。開店初日なので行列のさばき方も試行錯誤している最中なのか定まっていないようだった。しかし誘導スタッフの親切な気遣いも素晴らしいので、店主さんは調理だけに集中できているようだ。修行先からのヘルプスタッフの応援があってこそ、本日を無事に迎えられた強い信頼関係が胸に響いた。

そんな活気のある店内で待っているとトータル33分の並びでカウンターに昇格した。すでに食券は回収されており、その際には自己体質を考慮して「味薄め」「脂少なめ」を宣告しておいた。カウンター越しに店内を見渡すと、いびつな構造の建物内を有効的に使おうと考えられたレイアウトなのだろう、鋭角なV字カウンターと独立した対壁式カウンターで11席の客席だ。ホールには使用禁止のボルダリングや、店主さんオリジナルの掛時計がユーモラスに飾られている。そんな遊び心のあるホールとは打って変わって、調理場内は男らしさの溢れる真剣勝負を挑む雰囲気が漂っている。大型寸胴鍋でスープを炊き続けているワイルドな景色からもそう感じられる。そんな店内を本日は全ての応援スタッフを含めると五人体制での盤石の布陣で回しているが、盛り付けを含めた調理工程の全てを店主さんが担っている。それが修行先で大きな研鑽を積まれてきた証なのだろう。

いい意味で家系ラーメンを作るのが似合っている店主さんの機敏な動きを見ている暇もない程に、タイミングを見計らっていたのか着席後2分もせずに我が杯が到着した。その姿は黒釉薬の塗られた切立丼の中で〝らしさ〟を存分に見せつけている。表題のメニューが特製という事になるのだろうか、液面を覆い隠すほどの具材たちに圧倒されながらレンゲを手にした。

まずは駱駝色のスープをひとくち。液面にわずかに見えるスープの部分にレンゲを射し込んでみると、濃度は高くなさそうでひと安心した。脂少なめの設定なので表層に浮かぶ油膜や背脂も見られず、清湯野郎の私にでも受け入れられそうだと思いながらスープを口に含んだ。すると高濃度ではないが中濃的な口当たりを感じた。動物性コラーゲンの粘質を唇で感じた後に、粉骨された舌触りが舌の上に残ったが苦手な程ではなかったので助かった。土台には圧倒的な豚骨や豚ガラなどが基礎を築いているが、心配された獣臭さを感じなかったのが好印象だ。調理技術や下処理もあるとは思うが、この臭みの無さが生ガラと冷凍ガラの違いなのだろうかと素材の良さを思った。だがカエシの醤油ダレに関しては懸念していた塩分過多に当たってしまった。味薄めの設定にしたものの、かなり強気な塩気が最初から襲ってきた。麺との相性などを考慮すると、これ以下の塩分設定には出来ないのかもしれないが 30%OFFで私には程よい塩気になるように思った。このスープならばライスを欲するのも納得がいく仕上がりだと思う。無料ライスが食べ放題となっているので、血気盛んな若者たちの胃袋をガッチリとつかむ事だろう。

そんな薄味でも力強いスープに合わせる麺はストレートの太麺を採用している。テボの中を菜箸でかき混ぜる手の感覚だけで220秒ほどで麺上げされた太麺を持ち上げてみると、かなりの重量が箸先からも伝わってくる。それは麺だけの重さではなく、麺肌が吸い上げたスープの重みも加わっているからだろう。多加水麺ながらも、それ程にスープとの絡みが良いのも特徴である。そんな重厚な太麺をスープの拡散覚悟で一気にすすり上げてみると他店で感じたようなカンスイ臭もせず、豚骨由来の不快な吸気も伴ってこない。しかも先程まではスープの塩気を強烈に感じていたが、麺に寄り添った途端に小麦の甘みを引き立てる塩気として役割を果たしている。つまりは私にとってはスープを楽しむラーメンではなく、麺を楽しむ方向性で行けば良いのだと示してくれた。そう考えるとスープへの嫌悪感も些か穏やかになっていた。そんな麺の高密度の麺質が生み出した、歯応えと歯切れが同居した食感が楽しくて咀嚼を喜びに変えてくれる。この麺質ならば後半もダレる心配がなさそうなので、具材たちを楽しんでみる。

具材のチャーシューは豚肩ロースの煮豚型が大判厚切りで二枚も入っている。箸で触れても崩れるような柔らかさではないが、しっかりと歯を立てると赤身の繊維質に添って崩れていく。その感覚が素晴らしく時間をかけた丁寧な仕込みを物語る。もちろん味付けも良く、濃すぎるでもなく肩ロース本来の旨みを引き立てながらも煮汁の旨みも重ねている。あとで出てくる薬味のネギとの相性が抜群で、主役のスープと麺を越えてしまうような組み合わせを見せてくれた。

それに反して残念だったのは味玉の存在感のなさだった。白身の表面にこそ漬けダレが薄っすらと浸みてはいるが、噛み切った内部は半熟玉子そのものだった。好みの熟成感は皆無で物寂しさがあったが、強気なスープの中では心の拠り所となってくれたのも真実ではある。

薬味のネギは贅沢にも九条ねぎを使われているとあったが、セオリーを無視した粗めの笹切りだったのが印象に残る。九条ねぎと言えば繊細な甘みと辛み、そして切り口の歯触りの良さが持ち味だと思っているが、その私の固定概念を覆すような大胆な切り口に驚いた。提供時の生の状態のネギを噛んでみると、鮮烈な辛みが口内を刺激する。ややもすれば辛すぎるとも思われてしまいそうな味わいなのだが、麺との共演では心地よい辛みとなってアクセントを付けてくれた。さらには先程のチャーシューとの共演では見事なネギチャーシューとしての存在をアピールしてくれた。もしかすればチャーシューよりも目立っているのではと思うような存在感だった。そう考えると九条ねぎと言っても等級があると思うが、お世辞にも高級品には思えなかったので廉価版の九条ねぎなのだろう。しかしそんな廉価版の持ち味を引き立てる切り方には店主さんの薬味センスを感じた。

せっかくの薬味センスを見せてくれたと思ったが、青みのほうれん草が残念で仕方ない。しっかりと盛り付け直前にテボを使って温め直してはあるが、素材の良さを全く感じないほうれん草からは香りもなく食感も乏しい。これが〝家系の掟〟ならば仕方なく諦めるが、生のほうれん草を店仕込みで茹でてはいけないのだろうかと思うくらいに業務用カットほうれん草を使っている店が多い。もちろん確信はないが、目の前の茹でほうれん草からも手仕事感は伝わってこなかった。家系だけに毎日大量に使う食材なので既製品に頼るのも理解はできるが、きちんとした青菜の香りや食感も味わいたいと思った。

しかし海苔には薬味センスの本領が発揮されていた。香り高く口溶けもまろやかな高級ブランド海苔とはいかないが、スープに負けないようにしっかりとした歯触りの海苔を目利きされていた。時間が経っても湿気る事のない状態も保存の良さを明らかにしていた。

中盤からもスープの塩気と戦いながらも麺や具材に助けられながら完食していた。最初以降はスープだけを飲む事はなかったが、食べ切ることができて良かった。

今回の74点という採点だけをみると低く思われるかもしれないが、過去の家系史上最高得点となり今後の〝家耐性〟の強化の足がかりとなってくれそうな大切な一杯でした。

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「味玉煮干しらーめん ¥900」@さかなとブタで幸なった。の写真平日 晴天 10:55 待ちなし 後客4名

〝ニューオープン狙いうち〟season2

そろそろ新店パトロールの第2弾を終えようかと思っていた矢先に新たな情報が続けて飛び込んできた。RDBによると二店舗とも昨日オープンしたばかりの新店ホヤホヤのようだ。一方は川崎市、もうひとつは上野で産声をあげた両店なので連食するにはアクセスに難はあるが初訪問を決意した。

先に突撃を決めたコチラのユニークな屋号には不思議と見覚えがあるのだが思い出せない。心の隅にモヤモヤを抱えたままに、11時開店前の現着を狙ってみる。東急東横線の特急Fライナーにて武蔵小杉まで向かい、JR南武線に乗り換えれば乗車時間は20分もしないうちに最寄りの武蔵新城駅に着いた。

この駅にはスパコン対決の為に降り立った事があるが、北口方面に出たのは初めてである。そこからは右へと進むと直ぐに店先が見えてきたが、ネオン看板は光っているが暖簾や営業中の看板が無いのでオープンしているのか分からない。なので様子を見るために高架下の日陰から店先を注視する。すると店先からは少し離れた所から私のように店の様子を伺っている人影を見つけた。そこが行列の先頭なのかもと近づいてみると、入口付近でスタッフさんから新規オープンのビラを手渡された。どうやら定刻前にオープンとなっていたようで、先頭にて店内に入った。と言うことは、少し離れて様子を見ていた人は関係者なのだろうか。

そんな早開けに恵まれて券売機の前へ。メニュー構成はラーメンか、つけ麺の二枚看板と言っても良いだろう。つけ麺耐性が無いので勿論ラーメンを選択して味玉入りを発券した。カウンターに腰を下ろすと店内観察を開始する。その時にようやく見覚えのある屋号の事を思い出した。まだレビューを書き始める一年以上前に訪れた大阪で見かけた蕎麦屋の屋号と似ているのだ。となれば新業態での関東進出であろうと思い、お手並み拝見とするとした。

新店ならではの新しい木材の香りがする店内は、茶色の木目を基調としたカウンターだけのこじんまりとした造りとなっている。客席も狭いが厨房も狭小で、コックピットのように調理機材がぎっちりと詰め込まれている。そんな厨房内で一番に目を引いたのが圧力式の寸胴鍋だ。スペース上の問題だと思うが、大型ではなく中型なのに少し驚いた。客席は少ないとはいえ、夜の部も営業するとなればスープ切れの心配が浮かんでしまう。そんな小さな店だが、本日は他店からの応援スタッフも含めて三人体制と近くで見守るオーナーらしき方の総勢四人で回している。ビラ配りのスタッフさんの客引きによって、私の入店後は続々と客が押し寄せると直ぐに満席となった。

配られたビラや店頭のド派手な看板に引き寄せられた客層は皆さん若者なのが心配材料ではあるが、卓上のウンチクに目を通しながら待っていると着席して3分の早さで我が杯が到達した。その姿は藍色の釉薬が塗られた屋号入りのオリジナル丼の中で力強い表情を見せている。店頭にも大きく記されている〝濃厚〟の二文字が現実となって襲いかかってきた。そこで自身の軟弱な胃袋を心配しながらレンゲを手に取った。

まずは黄像色のスープをひとくち。〝濃厚煮干し〟と称されるスープの液面にレンゲを落としてみると、完璧に乳化した液体の抵抗力がレンゲから伝わってきた。かなりの濃度を蓄えたスープを口元に近づけると、煮干しなどの魚介の香りを感じないままに口に含んだ。初動では唇に感じる動物性コラーゲンが印象強く、その後で豚骨由来のコクと旨みが追いかけてくる。この時点でも煮干しの風味をそれほど把握できないが、塩気としては魚介由来のものを感じる。〝濃厚〟と言っても豚骨をつぶして炊いたスープのように粉骨っぽさが無いのは、圧力鍋で炊かれた豚骨スープの特徴なのだろう。濃度よりもコラーゲン質の高いスープに合わせるカエシは、初見での醤油感の印象が薄くて予想外にサッパリとしていた。しかし薄味と感じたのは、この初見の一瞬だけだったのが直ぐに判明する。

それは麺を持ち上げた瞬間に大きく一変した。麺上げまでジャスト60秒の外注麺を採用されている。それはスープの表層部分に見えるは白っぽい色合いの細麺だったが、持ち上げた麺の色素は驚くほどに茶褐色に染まっていた。それは丼の底に沈んだカエシの色素を吸っているという事で、スープと醤油ダレが分離して混ざってない事を示している。それを確認するために丼の底の方から麺を引き上げると、それによって撹拌されたスープの色が見る見るうちに濃くなった。もしかしたら敢えてカエシを混ぜないで、徐々に味を強くしていく計算かとも思ったが真相は定かではない。結果としては、まぜそばのようにダイレクトに醤油ダレを吸った麺を食べなければならないという、塩気との戦いを強いられる事になった。そうなれば小麦の香りや甘みなどは一切感じられずで残念な状態だった。

具材のチャーシューの仕上がりはとても良く美味しく味わえた。豚肩ロースの煮豚型たが、チャーシューの原価率と食べ応えを照らし合わせた結果で厚切りの短冊カットとなったようだ。この切り方ならば肉厚による歯応えもありながら分量は抑えられる計算だ。例えば同じグラム数で大判にスライスすれば必然的に薄切りとなり、食べ応えは明らかになくなるはずなのでベストの提供方法だと思った。味付けも肉本来の旨みが抜けがちな煮豚ながらも、しっかりと赤身の旨みも残しながら煮汁の旨みも取り込んでいた。このチャーシューならば追加しても良いと思える仕上がりだった。

これに反して追加した味玉は、私には残念な仕上がりとなっていた。ハッキリとした味付けを施されているので単なるゆでたまごのような味玉とは違っていたが、強すぎる醤油感が先走っていた。スープに負けじと強い味付けにしているのか、双方の塩気で喉が灼けるような後味となった。また提供温度の冷たさも塩分を強く感じさせる要因のひとつかと。

さまざまな薬味陣が彩りを添えているが、実際の役割としては力不足に思えた。包丁ではない便利グッズで刻まれたような白髪ねぎや、青みの水菜はスープの濃さに負けて存在感が出ていなかった。そんな薬味の中で唯一のフレッシュ感を打ち出していた紫タマネギは粗切りで大きな部分もあったが、力強いスープの中でも自然な甘みを与えてくれた。忘れていたが海苔はオープン直後なので状態の良いものが添えてあった。

序盤から重ね続けた旨味と塩気に疲れてしまい麺も完食できずに箸とレンゲを置いてしまった。予想の範疇を超えないが大阪の蕎麦屋の新業態ならば、今回の関東進出は若者たちには喜ばしいニュースだと思う。しかし清湯野郎の中年IT(意識高い)系おじさんには過激すぎる内容だった。しかしながら後客の若い男子たちは満足そうな笑みを浮かべているのが、本来の店の評価なのだろうと思った一杯でした。

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「中華そば ¥600」@陽気 大手町店の写真土曜日 晴天 10:55 先待ち6名 後待ち12名

令和改元記念 特別企画

〝諸国麺遊記 中国編〟

今回の中国遠征の四県目となる広島入りの為に、昨日の三食目を終えた岡山駅から 18:51発 のぞみ 45号 博多行きに乗り込んだ。たった30分と少しの為ににグリーン車を調達して広島に乗り込んできた。新幹線の車中で二本ばかりの缶ビールを呑みながら、今宵のホテル予約を完了。これで心置きなく広島の夜を楽しめると意気込んで広島駅に上陸した。すぐに駅直結のホテルのチェックインを済ませて見知らぬ夜の街へと繰り出した。

いかがわしい風俗街と軒を並べる広島の夜のネオン街である流川という飲み屋街を満喫した。今回のラーメン巡りの経緯を写真とともに女の子たちに説明すると、必ず誰もが食いついてきて広島のラーメン情報を教えてくれる。だがほとんどの情報がアフターがらみの深夜のラーメンばかりで、夜ラーを控えている私には参考にならなかった。毎回のように地方遠征では夜のネオン街にお世話になっているが、ラーメンだけのために地方まで来たと言うと最初は不思議がられるが、次第には身体がいくつあっても足りない程のモテっぷりな夜になる。昨夜は、さすがにどうやってホテルの部屋まで帰ってきたのか覚えてないくらいに酔っ払っていた。それなのに今朝は快調に目が覚めるとチエックアウトまで二時間半近くもあったので、無計画な今回のラーメン旅の本日の候補店を見つけるためにRDBに向き合ってみる。

こんな時にはお決まりの総合ランキング第1位に君臨している店を目指すのが一番なのだが、広島県第1位のラーメン店があるのは現在地の広島市内ではなく、昨日の新幹線で通り過ぎた福山市にあるというのだ。引き返す事も考えたが、今日は中国地方制覇のために山口県まで足を伸ばしたいと思っており福山行きを断念した。

そこで本日は僅差で広島県第2位となっているこちらへの突撃を決めた。RDBのお店情報によると本日も営業日となっており、通し営業されているようでありがたい。所在地も市内の中心地にありアクセスは良さそうだ。しかも昨夜の夜の店でも名前が挙がっていただけに期待は高まる。そこで11時開店前の現着を目指して10時半にホテルをチエックアウトして広島駅前のバス停に向かった。

路面バスの 21号線に乗車して中国地方で一番の商業地である紙屋町界隈を通り過ぎて行く。市内には路面電車も走っているせいか、道路の凹凸が激しくバスの乗り心地は最悪だ。そんな車内で揺られながら15分も行くと最寄りのバス停 中電前に着くと、広島の平和のシンボルでもある平和大通りの近くに佇む店先が見えた。定刻の5分前だったので、すでに観光客らしい家族の行列ができていた。周囲を見ると大きなビルが立ち並んでいるので平日はサラリーマンで賑わうオフィス街のようだ。

なんとか七番手をゲットして並んでいると、定刻2分前の早開けとなった。真っ赤な暖簾をくぐり店内に入ると右手の券売機にて品定めをする。メニューはシンプルで中華そばの一本勝負だ。おにぎりやビールはあるが一切のトッピングはない。券売機の上部には、中華そばからはじまって中華そば(2枚) 中華そば(3枚) と最後には (5枚) までのボタンがある。これを見たときに大盛りがない代わりに、日本蕎麦のもりそばのように枚数で注文するものだとばかり思っていた。しかし後々考えてみると5人前も食べられる人がいるわけがないと気付き、団体客や家族向けに人数分の食券を発券できる仕組みと分かった。

そこで迷う事なく中華そばを発券してカウンターに座ると店内観察をはじめる。失礼ながら古ぼけた外観からは想像もつかない程に店内はきれいに片付いている。新しい訳ではないが細部にまで手入れの行き届いているのが分かる。地方の有名店を訪ねるとボロボロの外観や整理整頓されてないのも味わいとしているラーメン点が多い中で、これだけの清潔感はありがたい。そんな店内を回す四人体制のうち、女性が三人いるのが掃除が行き届いている理由に思えた。かなり広い店内だが、オープン直後には満席となり中待ちも発生していた。長いカウンター席とテーブル席も多くあり休日の家族づれで賑わっている。


調理場内では大女将と若旦那らしき二人が麺上げを担っているが、定期的なロット数 (今回は3ロット毎) で麺上げ作業を交代していたのだ。互いに声を発するでもなく、自然の流れで交代する様子に大変興味が湧いた。また他の女性スタッフさんたちも生麺を取り分けたりほぐしたりと補助しているが、指先の合図だけで分量を伝えているように見えた。

そんな静寂のコンビネーションに見とれていると 3rd ロットにて我が杯が到着した。その姿は双喜に龍の描かれた切立丼の中で、素朴ながらも堂々たる表情を見せつけている。派手さはないが丁寧な盛り付けが好感度を上げる。前回の東北遠征では見かけなかったタイプの容姿に自分が今、広島にいる事を実感させてくれた。

まずは土器色のスープをひとくち。適度なラードの粒子が散りばめられた液面にレンゲを挿し込む時に、こう思った「味噌ラーメンなのかな」と。スープの色調だけでなく、立ち昇ってくる湯気の中にも味噌の風味を感じとった。不思議に思いながらスープを口に含んでみると、やはり味噌のような味わいも感じてしまった。もちろん微かな風味なので味噌ラーメンではないのは分かったが、もろみや麹の強い醤油を使ったカエシなのだろかと思った。ベースにはしっかりとした豚主体の動物系スープが旨みの土台を築いている。豚骨や鶏ガラを潰して炊いたようなスープではなくサッパリとした淡にごりのスープだが、特有の獣臭さを消すために大量のニンニクが使われていると感じた。すりおろしたニンニクではないので刺激はないが、香りとしては強く感じた。また、ほとんどの客が「むすび」という、おにぎりを追加していたのが納得できるような、ごはんに合いそうなスープの味わいだった。この時点でも味噌汁のような気がしてならない。

麺は中国地方では定番なのだろうか、すでに食べ慣れてきた中細ストレート麺の柔らか仕上げ。麺上げまで45秒の早茹でだが提供時には既に、しなだれかかるような麺質となっている。それには計算されたであろう理由もあった。それは麺上げをしてスープの張られた器に麺を盛り付けてから具材のモヤシを茹でているので、全ての具材を盛り付け終わるまでの時間がかかっている点だ。しかしこれは麺を柔らかく仕上げるために、わざとそうしているのだと思う。今回の中国遠征で訪れた島根 鳥取 岡山 広島の四県いずれもラーメンの麺にハリやコシを望んではいないような気がしたのだ。食文化の地域性の違いを体現している今回のラーメン旅だ。
実際にこちらの麺も滑らかな口当たりと喉越しを信条としていて、歯応えや歯切れの良さは皆無だ。その食べ応えの不足分を補う役割を「むすび」が担っているとも感じた。

具材のチャーシューは部位違いのように見えたが定かではない。しかし今回のチャーシューは豚ロースと豚ウデ肉のような部位が交互に盛り付けられていたが、実際のところ味わいや食感には大きな違いなかった。どちらのチャーシューもしっかりとした歯応えがある分、肉本来の旨みは抜けていた。その抜け出した旨みは煮汁に溶け込んでいるのだろうか、スープの旨みは強くなっている。なのでチャーシューを噛んではスープを注ぎ込む事で難を逃れた。

先ほど登場した茹でモヤシは細いタイプを使われている。日々大量に使われるので鮮度は間違いなく良い。特有のアンモニア臭を発せずに食感だけで好演してくれた。また物足りない麺の食感をサポートする役目も果たしていた。

薬味はシンプルに青ネギのみと潔い。少し粗さの残る素朴なネギの辛味や香りが、良い意味での田舎くささを引き出している。やはり西日本は青ネギ王国だと実感した。

中盤からは麺の力のなさが好みとは反しているが、今まで味わった事のないスープの魔力で食べ進めていた。この後の事を考えてスープは飲み干さなかったが、完食して席を立った。

これで今回の中国遠征も残すは山口県だけとなった。目指す場所はすでに頭には浮かんでいるのだ。それは今年に入って東京でも話題となっている山口県ご当地ラーメンの発祥の地である〝下松市〟である。そんな下松市で人気のある牛骨ラーメンの店を見つけるために早々と店を後にした一杯でした。

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「丸亀拉麺 ¥800」@王龍ラーメン 神田店の写真平日 晴天 10:55 待ちなし 後客2名

〝花のお江戸で錦を飾ろうツアー vol.2〟

先週は地方の人気店の東京初出店を巡るツアーを開催していたのだが、一週間もしないうちにネタが尽きてしまった。未訪問店限定とハードルを上げてしまったのが継続できなかった最大の理由なのだが、諦めた途端に地方の雄の東京進出の知らせが続けて飛び込んできた。

そこで本日は東京初出店を果たした最新の情報を頼りに連食計画を早朝から練った。そんな連食計画の一軒目に選んだのが、香川県丸亀市に本店を構えるコチラだ。RDBのお店情報によると先月にオープンしたばかりのようでレヴュー数も少なく情報が乏しい中、初訪問を決めた。

ご当地ラーメンの中身だが、大阪にルーツを持つ屋台やバスの移動販売で香川県内で人気になったようだ。所在地は淡路町交差点近くなのだが、自宅からでは直通ルートがないので手前の神保町駅から歩いて向かう事にした。11時開店ちょうどの現着を目指して10時半前に家を出た。

半蔵門線に15分ほど揺られと神保町駅に着いた。そこからは「春の古本まつり」で賑わう靖国通りを秋葉原方面へ15分歩くと淡路町交差点が見えてきた。お店は裏通りにあるのを想像していたが交差点そばの目立つ場所にあったので難なく見つけられた。

定刻5分前だったので店先の外待ち椅子には誰もおらず、先頭にて待機する。店頭に貼られたウンチクに目を通しながら待っていると、定刻通りに色鮮やかなオレンジ色の暖簾が掛かりオープンとなった。

入店すると最新式タッチパネル券売機が東京進出の気合の高さをアピールしている。屋号を掲げたイチオシらしいラーメンにはキムチが入るというのだが、今回は避けて「丸亀拉麺」とあるボタンを押した。タッチパネルに緊張してしまったのか大好物の味玉を追加するのを忘れてしまう大失態を犯した。

カウンターに座り店内を物色すると入口からはカウンターが並び、奥には壁沿いにコの字のカウンターも併設されて客席数はかなり多めだ。内装も飾らない田舎っぽさがあり調理場からは讃岐弁が聞こえてくるので、当主自らの東京入りなのだろうか。そんな店内を本日は五人体制で回している。満席ともなると必要な人手なのだろうが、現時点では手持ち無沙汰なスタッフも見られる。

カウンターに着席して5分で我が杯が第1ロットにて到着した。その姿は白磁に紺の唐草模様の切立丼の中でウンチク通りの表情を見せる。壁に貼られたウンチクには〝あっさり〟でも〝こってり〟でもない〝こっさり〟との表現がしてある。たしかに見た目の色調はあっさりに見えるが、表層の油膜がこってりにも見受けられるので〝こっさり〟の表現がしっくりくる。

まずは白茶色のスープをひとくち。湯気の中に感じる香りは動物系の中でも特に豚由来の香りだ。液面を覆う豚背脂からの香りだろうか。しかしよくある背脂チャッチャ系のような脂片は浮かんでおらず、スープを炊いて冷ました時の上澄み油脂を香味油にしているようだ。その厚めの油膜を破ってスープをレンゲですくうと、豚主体だが鶏ガラなども含まれた動物系スープがベースとなっている。そのベース自体はかなりサッパリしているが、その上に背脂でコクを加えている。穏やかそうに見えたスープだったが、カエシの利かせ方が強すぎて塩っぱさが勝ってしまっている。地元丸亀の丸尾醤油を使用しているようだが、都内の讃岐うどん店でも当たり前に目にするようになった醤油だ。ちなみに親戚関係はないようだが、近所にある同じ名前の丸尾酒造の日本酒 悦凱陣の大ファンなので丸亀を訪れた事がある。その際に醤油もお土産で買って帰ったほど地元ではメジャーな醤油なのだ。その醤油の特徴を出してはいるが、随分と醤油感の強いスープになっている。背脂のコクや甘みに隠れているが不自然な旨味成分もかなり使用されているので、スープを飲むことはやめて麺に移行した。

麺上げまで70秒の中細ストレート麺を合わせてある。柔らかめに茹で上げられた麺質は特徴的な要素はないが素朴さは感じられる。屋台発祥と聞いているからだろうが、麺をすすると金比羅の長閑な景色が浮かんでくる。讃岐うどんといえばアッサリいりこ出汁に歯応えの強い麺を思い出すが、香川県の人もラーメンには濃い味の柔らか麺を求めたのだろうと思えるほどに予想外の組み合わせだった。

具材は豚バラの煮豚で、片面をバーナーで直前に炙っていた。しかし一度に大量の焼豚を炙っていたので、炙り立てで提供された私と後半では香ばしさにかなりの差が出てしまいそうだ。今回はファーストゲストだったので幸運にも正真正銘の炙り立てを楽しめた。カリッとした表面の香ばしさもさる事ながら、穏やかな味付けも申し不満ない。強気なスープの中で優しい存在がありがたい。赤身と脂身のバランスも良い部位だったのも好印象を残した。

板メンマは手作り感がないので業務用既製品だろうか。適度な味付けと食感が程よいアクセントとなってくれた。

薬味の青ネギの小口切りは鮮度の良さが切り口からも分かる。青ネギの野性味が高いので強い風味を与えているが、背脂のコクとの相性はとても良く感じた。しかし茹でモヤシのアンモニア臭はいただけなかった。もしかしたら昨日の茹で置きではと思ってしまうほどに冷蔵庫の冷たさが残っていたのが残念。

最終的にはスープは飲まずにレンゲを置いた。今回はメニューチョイスが失敗だったようで、あっさりタイプのラーメンにすれば良かったと思ってしまった。もしかしたら夏場に汗をかいて塩分を欲した時ならば適度な塩気なのかもしれないが、まだ肌寒さの残る初春の身体には刺激的すぎた一杯でした。

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「中華そば ¥700+味付煮玉子 ¥100」@井出商店の写真土曜日 晴天 22:00 先客6名 後客4名

〝ラーメン紀行〟ならぬ〝ラーメン奇行〟は

まだ続いている。長野県上諏訪から移動した三重県桑名での前食の前に立ち寄った喫茶店で、すでに次の作戦を立てていたのだ。

最初はお隣の奈良県第1位の店への突撃を画策していたのだが、前食を終えてからでは夜の部営業時間内までの移動手段がなく、物理的に諦めなければならなかった。そこで奈良県を越えて一気に和歌山県を攻める策を練ってみた。和歌山県第1位もあるが、和歌山といえば行かなければならない有名店がある事を思い出した。それがコチラだったのだ。

お店情報では23時半まで営業しているとあるので移動手段はなんとかなりそうだ。早じまいなどの危険もあるが未開拓の地、和歌山攻略を目指して初訪問を決めた。

桑名から和歌山へは最安値ルートだと、近鉄名古屋線で伊勢中川で近鉄大阪線に乗り換え、鶴橋JR線で鶴橋、天王寺を経由して阪和線で和歌山入りする経路があるが、4時間半もかかってしまい和歌山に着くのはコチラの閉店間際となってしまうので最短ルートを検索した。

すると桑名から一度は名古屋に戻るが新幹線で新大阪まで行き、関空特急はるかで日根野で乗り換えれば、3時間弱で目的地の和歌山にたどり着けると知り、止むを得ず最短ルートを選択した。乗換時間が6分しかない駅もあるので、入念にJR桑名駅でチケットを揃えて再出発を無事に果たした。

難関だった名古屋駅での新幹線へ6分間での乗り換えも華麗にこなし順調すぎるほどに和歌山駅に着いた。現在時刻は22時前と閉店時間まで1時間半もあるが、何が起きるかわからないので、今夜の宿も見つけてないままに店へと急いだ。

和歌山駅からはナビの指示通りに10分もかからずに大通りの交差点に赤提灯が見えてきた。黄色い大きな看板もボンヤリと明るいが店内が薄暗く営業しているのか心配になるくらいだ。慌てて駆け寄ると、かなりの距離から独特の匂いがしてきた。目を閉じてもいても豚骨醤油だと分かるほどだった。新横浜には行った事があるが総本山は初めてで、一世を風靡した名店だけに緊張感が走る。

店頭の営業中の看板を確認して中へと入る。すると外国人スタッフの元気な声で出迎えられた。壁沿いのカウンターにお冷のグラスが置かれた。そこが私の席のようで案内されるがままに腰を下ろした。券売機はなく壁に書かれた大きなメニューから基本のお題と煮玉子を追加してスタッフさんに告げた。

さすがに年季の入った風格すら感じる店内を見渡してみる。調理場は奥に独立した完全非公開。客席は壁沿いカウンターとアイランド式カウンターが設けてある。それと入口の正面には、ままごと用みたいな小さな二名テーブル席もあるが本当に座れるのだろうかと不思議に思った。店内の所々にガタはきているが、掃除は行き届いてるのでとても気持ち良い。荷物置きの棚にすらホコリひとつ無い。店の外で嗅いだ匂いの何倍もの臭気が店内には満ちている。厨房内は見えづらいがこっそりと覗いてみた。昔の家庭の台所では薪を使って羽釜で米を炊いたりおかずを煮炊きしていたと思うが、その時代の〝おくどさん〟を思わすような二連式のガス台で調理しているのが見えた。右側では中型の寸胴鍋でスープを沸かし、左側では同じ大きさの寸胴鍋で麺を茹でている。簡易的ではあるが麺の茹で湯の交換が大変そうに思えた。そんな店内を本日は五人体制で回している。客層は休日だからか地元客よりも私のような観光客が多く占めていた。

和歌山弁が聴こえてこない店内で待つこと5分ほどで我が杯が到着した。別皿で提供された煮玉子は撮影用にイン。オリジナルの屋号の入った切立丼の中の姿は決して美しいとは言えないが、これも味の一部なのだろう。私にとっては懐かしさやノスタルジーは感じず、ただ素朴さだけは伝わってくる。

まずはスープをひとくち。店内の匂いから豚骨ベースなのは脳に刷り込まれている。いざスープを飲もうとレンゲを探すがどこにもない。そう言えば昔の屋台の夜鳴きそばには、洗い物を増やさない為かレンゲなど付いていなかった記憶がある。その精神を現代にも受け継いでいるのもまた良しかと。郷に入れば郷に従えで、最初から丼を持ち上げて口元へと傾けてみる。さほど熱くはないスープが唇に触れると、思いのほかサラリとした口当たりだ。豚清湯と濃厚豚骨スープの中間くらいの粘度に思える、香りは豚骨にも負けない醤油の香りが立っている。醤油の名産地の紀州ならではの抜きん出た香りだ。スープの見た目からは、もっと力強いスープを思い描いていたが想像よりも二割引だった。それでも白めしを求めてしまいそうな味付けではある。そう言えばカウンターには押し寿司のような包みがあったが、酢飯なら幾らか中和してくれるのかもと思った。

麺はストレートの細麺でスープの中で泳いでいるように見える。箸で拾い上げてみると柔らかそうな麺質と、丸みを帯びた切り刃の麺肌が印象的。出来るだけスープを落として啜ってみたが、強気なスープの味は麺にも入り込んでいるので、濃い味の付いた麺を食べてる感覚だった。

具材は豚バラ焼豚が三枚。これぞ和歌山ラーメンと思える仕上がり。こちらも味が強いので薬味の青ネギと食べることで難を逃れた。

追加の味付煮玉子は文句を言ってはいけないレベル。これが昔ながらと言われれば、温度の冷たさなど言ってはキリがない。

メンマだけは薄味だったのでラーメンの中で唯一のよりどころとなってくれた。歯応えも適当で繊維質も残らない優良メンマだった。

薬味の青ネギは昔のネギのように香りが強く、最近では味わった事のない力強さ。スープの豚骨や醤油にも全く物怖じしない香りで存在感を出している。露地ものの地ネギなのだろうか、歯ざわりは雑で粗いが独特の香りには引き寄せられた。この青ネギのパワーを借りて食べ進められと言ってもいいくらいだ。

中盤からは、そんな青ネギの補助がなくなり全てを平らげる事は出来ずに箸とレンゲを置いた。

店を出て駅前に戻りホテルを探した。土曜日だったが空室がありチェックインをしてから、再び夜の和歌山のネオン街に向かった。何気なく入ったバーのマスターとラーメン話に花が咲いた。マスターによると和歌山は空前の家系ブームが押し寄せているらしい。その理由は、慣れ親しんだ和歌山ラーメンにプラスされた魚介の風味と太めの麺に、若者たちは目新しさを求めて行列するらしい。

深夜1時には大半の飲み屋が閉まるらしい和歌山市内きっての繁華街「アラチ」をあとにしてホテルに帰るタクシーのドライバーさんの言われた、コチラの中華そば屋の話が気になった。

「観光客ばかりで地元の人間は行かなくなったね」と、これが本当でない事を願い、これからも地元に愛される名店であって欲しいと願う一杯でした。

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「らーめん(もも)¥700」@らーめん飛粋の写真平日 晴天 10:45 先待ち1名 後待ち4名

本日は〝蒲田行進曲 前編〟を開催する。

初の蒲田入りが、初の家系レビューになろうとは思ってもいなかった。過去には家系と呼ばれるラーメンを食べたことはあるが今ひとつ相性が良くなかったのが敬遠していた理由のひとつだ。もうひとつの理由が「どうでもいいですよ」の理由で、世の中に〝家系〟という言葉が出てくる前に(出てきてたらごめんなさい)当時、通っていたディスコでハウスミュージックしか流れない西麻布Yellowや芝浦GOLDの事を仲間内ではハウス系をもじって〝家系〟と呼んでいたので家系=ラーメンと言うのがピンと来ないのだ。

しかし蒲田初上陸にあたって蒲田駅周辺で人気No. 1を誇るこちらを無視するわけには行かず初訪問を決意したのだ。本日も開店前の現着を目指して10時過ぎに自宅を出発し東横線から多摩川線の東急コンビの最安値で蒲田駅に着いた。その車内では頭の中に〝蒲田行進曲〟と〝家系ミュージック〟が交互に鳴り響く脳内カオスの状態が続いている。駅からも脳内の混沌とも似た悩ましげな怪しい繁華街を抜けると家系のイメージとは対照的な割烹料理店のような風情のあるこちらの看板を見つけた。

すでに並びも発生しており人気の高さと外観の落ち着いた雰囲気に初訪問の期待が高まる。後列も増え始めた頃に定刻より5分早くオープン。二番手で入店し少し複雑で見づらい券売機で迷ったが基本的には焼豚の種類と量を選ぶだけのようだ。豚バラと豚モモの二種類ある焼豚からサッパリしてそうな豚モモを選び好物の味玉を探したが無いようなのでシンプルな構成のお題になってしまった。初心者なのでデフォがちょうど良いかも。

L字のカウンターに座り店内を物色する。思いもよらぬ若者のワンオペで切り盛りされている。ワンオペなのに客のために早開けしてくれるとは開店準備の早さと心づかいが伝わってくる仕事熱心なご主人なのだろう。本日の客層は年齢差はあるがオール男性と食べる前から登場するラーメンの力強さがうかがい知れる。

着席して食券を渡す際に〝お好み〟を聞かれたが初めてなので全てを普通でお願いした。周囲の常連さん達はオリジナリティ溢れるオーダーをしているが全員に共通していたのは〝麺カタメ〟だった。見知らぬ土地での不慣れな家系の店で不安は募るばかりだ。

調理場では具材の切り分けやカエシの準備などが始まり固唾を飲んで凝視する。生麺の状態では黄色みを帯びた麺を大量に麺茹で機ではなく普通の寸胴鍋に投入した。茹で時間100秒程で平ザルにて麺上げが始まりラーメンが仕上がっていく。

順番通りに配膳されるが私を飛び越して次の客の提供となったが麺カタメからの提供なのは仕方ないと、しばし静観する。結果、私を飛ばした4人前が提供されたが一向に私の分が届かない。そんな風に不満に思っていると突然ご主人が寸胴鍋の中に平ザルを突っ込んだ。なんと私の麺はまだ茹でられていたのだ。麺カタメから遅れる事2分と少し、トータル240秒で麺上げされての提供となった。さすがにこの時点でフニャフニャの腰抜け麺を想像してしまった。

目の前に到着した、胴が朱色で見立てが白の切立丼の中の姿は勝手にイメージしていた雑多な姿ではなく、店の外観にも共通する洗練された品の良い顔立ちに映った。

予想外の表情に高まった期待を押し殺して琥珀色のスープをひとくち。初動は動物性コラーゲンの粘着質が唇をグロスのように覆い包む。それは口中に広がり乳化した油脂が口内に膜を張った。その隙間から感じるのは若干の獣臭さとアトミックなアタックだ。もちろん覚悟していたので底上げ程度の上乗せならば許容範囲内と言い聞かせて先へ進む。スープの出汁自体からの旨味も十分に出ているので完成度の高いスープなのは分かる。醤油ダレの主張も穏やかでスープの輪郭を形成する程度に抑えてある。若者だけでなく中年層の客が多いのも納得がいく仕上がりだ。

次に茹で時間4分を超える麺をいただく。縮れのある平打ち中太麺を箸で持ち上げてみると麺肌は柔らかいが芯の強さが箸先から伝わってきた。いざ口に含んでみると箸先からの伝達通りに麺肌から程よく溶け出したグルテンが口当たりを良くし、わずかに残った中心部のコシが歯応えを生み緩やかなウェーブが喉ごしに楽しさを与えてくれる私にはドンピシャの茹で加減だ。逆にあんなに早上げされた麺が心配になってしまった。「硬すぎる麺では小麦の花は咲かない」の持論が頭をよぎった。

具材は自ら選んだ豚モモ肉の釜焼き焼豚だが赤身の肉質を最大限に引き出す焼き加減と出しゃばらない薫香がダイレクトに本能を揺さぶる。やはり加熱する事でしか生まれてこない豚肉の旨味が感じられ追加しなかった事を後悔するような焼豚だった。

それに反して薬味は残念な仕上がりだった。仕上がりと言ってもご主人の手がかかっている具材では無いので仕方ないが、青みとして添えてある家系には欠かせないほうれん草は悲しいかな業務用既製品を戻しただけの物。香りも食感も全くない彩りとしての存在。こちらも家系の特徴である海苔は海苔の黒緑には程遠い緑色に近い苔色で磯の香りは届かず、口の中に残る口溶けの悪さも露呈していた。たしかにワンオペで薬味ひとつにまで手仕事を求めるのは酷だとは思う。その分スープや焼豚に心血を注がれているのが分かるだけに、更なる高みを望んでしまう。

後半はスープの乳化膜にも味覚が慣れて、潜んでいた不自然な旨味を強く感じるようになりレンゲを置いた。しかし最後まで薬味の白ねぎの食感がアクセントになってくれたので麺は大満足で食べきった。

もしかしたら人生で二度と食べることが無かったかも知れない家系ラーメンだったが、少し歩み寄れたと思えた。真意のほどは分からないが、この世の中に存在すると噂される〝家系〟で〝無化調〟のラーメンを是非に食べてみたいと思った一杯でした。

蒲田行進曲 後編へつづく

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