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のらのら

男性 - 東京都

はじめまして。レビュー開始から一年が経ち、二年目の目標を全国制覇にしました。一杯のラーメンに出会うまでの経緯も書き記しているので、前置き等が長くなりがちですがお許しください。しかし採点に関しては立地 接客 衛生面 価格設定などは考慮せずに、ラーメン一杯に対しての評価にしています。自分の好みだけで評価しているので不快な文面もあると思いますが、何卒宜しくお願いします。

平均点 73.435点
最終レビュー日 2019年7月19日
568 460 14 1,850
レビュー 店舗 スキ いいね

「特製醤油ラーメン ¥1120」@麺屋 武嶋屋の写真土曜日 曇天 11:20 先待ち7名 後客12名

〝ニューオープン パトロール〟

本日は難攻不落と思われた秩父で産声を上げた新店攻略のために所沢に前泊している。RDBの新店情報で見つけたこちらへの初訪問するには自宅からでは移動時間がかかるので、昨夜は深夜1時を越えた頃に所沢に乗り込んできた。

日本国内で二ヶ所しかないらしいサウナの聖地フィンランド産の木材で造られたサウナと、埼玉屈指の冷たさを誇る水風呂を有する宿泊施設で朝を迎えた。水風呂の冷たさは良かったが肝心のサウナの温度が今ひとつ熱さが足りずで肉体的は整いきれずで残念だったが、食事処の生ビールは裏切る事なく精神的には完璧に整った。

翌朝は西武秩父駅までの最短ルートとなっている所沢 9:52発 西武池袋線特急 ちちぶ9号にて向かう予定でホテルをチェックアウトしたのだが、三連休の初日なので有料特急は満席でチケットを予約してない事を悔やんだ。仕方なく小刻みに各停電車を小手指と飯能で乗り継いで向かう事になった。

休日の西武秩父線の車内は行楽を楽しむ家族づれや女子大生の仲良しグループの日帰り旅行でワイワイと賑わっている。そんな車内でラーメン一杯のためだけに秩父を目指しているのは私だけだろうなと思うと切なくなってきた。

少しセンチメンタルになりながら変わりゆく車窓の景色を眺めていると、最寄りの西武秩父駅に所沢駅を出てから1時間半程かけてたどり着いた。トレッキングシューズを履かずに秩父駅に降りたのは初めてかもしれないと思いながら、開店まで時間に余裕があったので久しぶりの秩父駅を見て回った。かなり立派にリニューアルされて食事も楽しめる温泉施設が併設されていて、以前のイメージとは全く違う風景になっていて驚いた。そんな施設内の食事処は昼時を前に多くの観光客で賑わっている。中には味噌ラーメン店も出店しているので、もしも目的の新店が臨時休業であってもリカバー出来ると妙な安心感が生まれた。

定刻の10分前になる頃に、いよいよ目指している店へと向かってみた。駅からはほんの数分歩くとパチンコ店の新装開店かと思うような、都内の開店祝いでは見かけなくなった大きな花輪がすごい数で出迎えてくれた。出迎えてくれたのは花輪だけでなく、大勢の開店待ちの行列もあった。失礼ながら、こんな所に開店待ちが出来ているとは目を疑ってしまった。待っている方々は偶然にもお知り合い同士のようで、会話の内容などから地元の方と思われる。そんな地元客の期待を一身に集めている新店なのだろうと、よそ者ながら私も期待を込めて最後尾を探した。

店頭には外待ち用の受付シートが置かれているが誰も記入せずに整列するでもなくバラバラに待機しているので最後尾が分からずに、少し間隔をあけてそれらしく開店を待つことにした。すると定刻よりも5分も早く暖簾が掛けられオープンとなった。

後待ちがなかったので先客が入店するのを見届けてから八番目で店内に入った。入口右手に設置された券売機の中から最上段に位置するのが醤油系だったのでためらう事なくメニューは決まったが、せっかく秩父まで来たので贅を尽くした特製のボタンを迷わず押した。ホールスタッフさんから「お好きなカウンター席へどうぞ」との事なので少しでも調理風景が見えそうな席を選んで腰を下ろした。

カウンター越しに店内を見渡すと新店舗らしく新しい木の匂いが残る客席は、カウンターよりもテーブル席を多く設けた複数人向けのレイアウトとなっている。所々に焼杉板を使われた内装はシックな落ち着きを感じさせてくれるが、打ちっ放しのコンクリート床と椅子の脚が擦れる音が大きく響くのが居心地の良さを半減させてしまっている。そんな店内を本日はオープン直後の週末なので、万全の六人体制の強化布陣をとっている。本日は土曜日という事でホールスタッフには初々しい学生バイトさんが実践を交えながら研修中のようで、慣れないオペレーションながらも着実に配膳が進む様子を眺めていると着席して20分で我が杯が到着した。

その姿は白粉引の八角丼の中で特製ならでは豪華布陣で出迎えてくれたが、少しやり過ぎではと思ってしまうような要素も含んで見えた。それだけお客様に喜んでもらおうという、店主さんの思いの表れでもあるとも感じながらレンゲを手にした。

まずは赭色のスープをひとくち。液面の油膜には細かな豚背脂と思われる脂片が浮かんでいて、強めの動物性を感じ取った。レンゲを落とし込んだ指先の感覚からは濃度の低さを感じるが、レンゲに注がれたスープには多めの香味油が伴ってきた。そんな四つ足系に思われるスープを口に含んでみると、意表をついて魚介系の香りが先行してきた。魚介系の中でも鰹節の香りが主で、節粉ではなく削りがつお由来のものと思われる。和出汁感の強いスープを支えているのはオーソドックスな鶏や豚主体の動物系清湯スープで、土台はしっかりとしているがクセにも感じる獣特有の臭みも潜んでいた。合わせる醤油ダレも少し強めに思われたが、塩っぱいほどではなくスープを引き締める役割を担っている。旨味の底上げも感じてしまったが、動物系と魚介系の基本的なWスープに仕上げてあった。

スープによって様々な麺を使い分けられているが醤油系には中細ストレート麺が採用されていた。麺上げまで60秒の中細麺を箸で持ち上げてみると、少しウェーブがあり透明感を見せる麺肌は丸みを帯びてグルテンが詰まっていそうに感じた。そんな麺を啜ってみると想像した通りの滑らかな口当たりで滑り込んできて、昔の中華麺にも共通するような啜り心地を思い出した。本日の客層が高齢だったので、皆さんにも馴染みのある麺質なのではと想像した。とりわけ小麦の香りが高いとか素材の甘みを感じるといった麺ではないが、幅広い年齢層に受け入れられるタイプの麺を採用されていた。オイリーな油膜の力を借りて口の中に飛び込んできた麺を噛みつぶすと、もっちりとした跳ね返りが食べ応えを強くしている。特別な個性がないのがかえって個性的にも感じるような麺だと思った。

具材のチャーシューは部位違いで二種類三枚が盛り付けてあった。いちばん手前には豚肩ロース焼豚が煮豚ながらも赤身がパサつくような事なくしっとりと仕上げてあり、味付けも適度に乗っており存在感のあるチャーシューだった。残る二枚は豚バラの煮豚型だったが、煮汁の味の薄さなのか豚バラ自体の質の悪さなのか獣臭が出てしまったいた。部位的には赤身と脂身のバランスの良い部分だったが、チャーシューとしての出来映えとしては私には残念な仕上がりだった。

初見で少しやり過ぎと思えた具材の味玉は、特製なのでだろうが一個半も盛り付けてあった、
きっと基本の醤油ラーメンでも半個入りなのだろうが、特製だからといって更に一個追加する事はないのではなかろうか。決して量が多くて文句を言っている訳ではないが、好みと違った固茹でたまごだったので不必要に思ってしまったのだ。

メンマは極太タイプを使われていたが手仕込み感はなく一般的な甘みを利かせた味付けは安定感はあるが、ここならではのメンマと言った仕上がりでなく残念だった。

薬味の白ネギは粗々しい切り口が素朴さを感じさせて、食感や辛味の面でも良い意味で〝洗練された〟とは真逆の野趣を味わえた。また清涼感を付け加えてくれる黄柚子の皮も彩りと共に爽やかな香りを中盤から与えてくれたが、この時期には黄柚子は珍しいのでハウス栽培の柚子だろうか。栽培方法や品種の改良で、食べ物の旬が曖昧になってきた事を実感する。

青みにはカイワレが少し添えてあったが、気が付けば食べていた程度の存在感しかなかった。提供時にはすでに丼に張り付いてしまっていた海苔は、ばら海苔のように溶けが早く香りも無かったので質の高さは感じられなかった。ナルトに関しては今回も口にする事はなかった。

中盤と言わず序盤から不要な旨味が箸の動きを妨げてきたが、なんとか戦いながら麺は大方食べきったがスープは残してしまった。

周囲を見ると極太のつけ麺や、中太麺の味噌ラーメンなどを楽しんでいる地元客で賑わっていた。こちらの店のもう一つのウリでもあり、屋号の由来と思われる有名店で修行された〝いなり寿司〟を食べている客がいなかったのが不思議に思いながら席を立った。関西ではうどんにおいなりさんの組み合わせをよく目にするが、ラーメンにいなり寿司のコンビが早く地元に根付いて欲しいと思いながら店を後にした。

今回は秩父観光をするでもなく次発のレッドアロー号にて帰路に就いたが、途中駅の飯能までを後ろ向きで走ると初めて知って驚きと戸惑いを感じる事になった一杯でした。

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「特製塩そば ¥1100」@おとなの塩sobaの写真平日 曇天 11:45 先客2名 後客3名

〝ニューオープン パトロール〟

本日は一週間ぶりに自宅のベッドで目覚めた。関東近郊の新店めぐりに勤しんでいた為に家に帰っても着替えるだけと、自宅を更衣室のような扱いにしてしまっていたのだ。

久しぶりの家でのコーヒーを楽しみながらRDBの新店情報を閲覧していると新宿でのオープン情報が挙がっていたが、本日はワンコインサービス期間中のようなので混雑が予想されるのと評価に公正さを欠いてはいけないと思い先送りにした。次に候補に挙がってきたのが西川口のこちらで、お店情報によれば屋号も変えての移転リニューアルのようで再出発への意気込みを感じられる。少ない情報量の中に見つけた〝無化調〟の文字にIT系おじさんの血が騒ぎ初訪問を決定した。

11時半開店の現着を目指して10時半には自宅を出た。埼京線で赤羽まで向かい京浜東北線に乗り換えれば自宅から40分ほどで西川口駅に着いたが、そこからは歩くと20分近くあるようなのでバスを利用することにした。どうやら人生で初めて降り立った西川口駅の東口を出るとバス停が二ヶ所あるのだが、目的地へ向かう4番乗り場が見つけられずに予定の発車時刻を過ぎてしまい仕方なくバスを諦めて歩いて向かう事になった。駅前の立ち飲み屋では昼前なのに生ビールを片手に盛り上がっている客であふれかえっているが、そんなうらやましい姿に背を向けてトボトボと歩き始めた。

生ビールではなくナビを片手に持って青木町公園方面へと進むと20分ほどで目的地周辺までは辿り着けたが、飲食店らしき建物のない住宅地に戸惑っていると少し先に白い提灯のようなものが見えたので近づいてみた。すると大きな暖簾が掛かった店だったが、通りの先からでは道路に平行になった看板や暖簾しかなく、縦に飛び出した看板が設けてないので遠くからでは分かりづらい外観となっていた。

そんな店先には有志から贈られた白提灯が掛けられており仲間たちからのリスタートへの後押しが心強く表れている。店頭の暖簾には〝自家製麺〟〝無化調〟と大きく書かれてあり店の持ち味を思い切りアピールしている。そんな主張にハードルを上げないように心を落ち着かせて暖簾をくぐった。

店内に入るとオープン直後なので券売機の案内係のスタッフも配置されていて、案内に従って入口右手の小型券売機にて品定めをする。マイスタンダードの醤油系もあったが、やはり今回は屋号にも掲げられた塩系を選び開店祝いの意味も込めて特製ボタンを押した。順番通りにおしぼりと箸がセットされたカウンターの奥から詰めて座り、そこから店内観察をはじめる。

新店だけに真新しい店内の装いではあるが、移転前に贈られたサイン色紙なども飾られてあり歴史を感じる部分もある。カウンターよりもテーブル席が多く設けられた店内を本日は開店特需を予想してか万全の四人体制で回している。客席と厨房が独立したレイアウトなので調理工程を眺められないのが残念な上に、カウンターに対面して洗い場のシンクが設置されているので目の前には常に洗い物をするスタッフがいるのが気になってしまう。人の気配を感じないように卓上のウンチクを拝読しながら待っていると、着席して10分はどの時間をかけて我が杯が到着した。

その姿は小ぶりな白磁の鳴門丼の中で、特製ならではの豪華絢爛を詰め込んだ景色を見せている。しかしこの〝特製〟にした事が、本日最大の失敗だった事にはまだ気が付かずにレンゲを手にした。

まずはスープの色調が見られないほどに多くの具材が盛られた液面にレンゲを押し込んでみると、透明度の高い薄香色のスープがレンゲに注がれた。具材たちの派手な景色に対してスープからは気高い品のある、おしとやかな表情に見えた。そんな美しいスープを口に含むと、香味油の力を借りて鶏由来の動物系スープが筆頭に現れた。清らかな見た目に反して強い旨みが土台を支えていて、追随してくる魚介の香味が奥深さを与えている。その魚介系の旨みが複雑で数種類の節や煮干しが加わっていると思われるが、特に際立ったところを感じさせないバランス重視の配合に思えた。またカエシの塩ダレにはウンチクによると貝類や甲殻類も使われているようだが、コハク酸やアリシンをほとんど感じない。言い換えれば過度な貝類や甲殻類からの塩気も感じないという事で、独特な個性を主張するためではなく旨みを重ねる一員として参加しているように思える。たったひとくちで口の中に自然な旨みが張り巡らされたような感覚は塩系スープではあまりなく新鮮に感じた。

新たなスープとの出会いに喜んでいる口内に期待の自家製麺を送り込むために、箸で麺を持ち上げようとすると最初の悲劇が待ち構えていたのだ。それは高級割り箸の竹箸を採用されているのだが、箸先が丸く削られているので麺が滑って捉える事が難しく持ち上げられない。さらには小ぶりな器のせいでスープの量が少なく(具材が多過ぎるのもある)麺がスープの中で絡まってしまい拾い上げられるのを拒んでいる。それだけでなく表層を覆い隠す特製の具材たちが麺の行く手を遮り邪魔をしてくる。麺を持ち上げるだけでも手こずってしまい、麺をすすり込む楽しみは半減してしまった。もうひとまわりだけ大きな器ならば特製にしても結果が違っていたのではないだろうか。それでもしスープの必要量が増えたとして価格が100円上がったとしても、そちらの方が随分と良かった気がする。何とか苦戦しながら拾い上げた自家製麺は、店内の製麺室に設置された大和製作所の高級製麺機〝リッチメン〟から生み出された中細ストレート麺で麺上げまではジャスト40秒。とてもハリのある麺質が箸先から伝わってくる自家製麺をすすり上げると、整ってない絡まった麺線が口当たりの良さを消してしまっている。麺肌自体は滑らかに仕上がっているのに、滑りの悪さばかりが印象に残り大変もったいなく感じてしまった。すすり心地は悪いが内麦ならではの風味は噛んだ瞬間にあふれ出す素晴らしい麺だけに、店側の器選びと私の特製を選んだミスが重なって残念ながら本来の麺の力を感じる事が出来ずに残念だ。

次に私の中ではミスチョイスとなった豊富な具材をひとつずつ味わってみる。最初は鶏ムネ肉の低温調理を食べてみると、小ぶりながらも厚みを持たせてカットされているので歯応えもあり、肉質の良さと舌触りの良さも出ている。下味のソミュール液が弱いので薄味ではあるが、薬味の黄柚子の香りが移っていたので味気なさはなく食べられた。次に豚モモ肉のロースト型は赤身本来の食べ応えを楽しむ調理法で低温調理とは違った歯応えを味わえる。また豚バラ肉もローストタイプで片面をバーナーで炙られて香ばしさを付けてあり、バラ肉特有の脂っぽさを軽減してくれる。もっとも大判な豚肩ロースも同じ調理法で仕上げてあり、噛み応えをしっかりと楽しめる。全てのチャーシューに共通するのはスープに寄せた薄味仕立てなのだが、素材の旨みが強いので味がボヤけずに食べ進められる点だ。

肉部門の具材としてはかなり珍しいのが、アスパラの豚バラ巻きが添えてある事だった。特製ならではの配置なのだろうが、巻かれたアスパラには香りも食感も残っていないので冷凍アスパラを疑ってしまった。また味付けに使われている黒コショウが穏やかなスープに流れ出してしまい不必要な個性を与えてしまっていた。

半カット分が添えてある味玉は、S玉で仕込まれているので黄身の中心部までしっかりと浸けダレの浸透と熟成が行き渡っていた。卵本来の旨みもありながら浸けダレの醤油感もある素晴らしい味玉だった。

穂先メンマは見た目の美白から想像した通りの薄味でメンマ特有の発酵臭が香り、茎から穂先への食感のグラデーションが心地良く軽快なアクセントを与えてくれた。

薬味陣も豊富で手の込んだラインナップで、ふんだんに盛り付けてある。一番大量に添えてあるのは白髪ねぎなのだが、非常に細やかで技術力の高い丁寧な仕事ぶりが見てとれる。しかしその細やかな白髪ねぎがスープに拡散してしまうと収拾がつかずにあらゆる場面で口の中に入ってきてしまう。常に麺に寄り添い、スープにも混ざっては入ってくる。それが邪魔に思えてしまったのが本音で、細やかすぎる薬味は場面を選ばないので不要に思ってしまう。白ネギのみじん切りも添えてあったが、そちらにも同じ感想を持った。

青みのカイワレは彩り役が大きな使命なのだろうか、味や食感を発揮するほどは入っていない。いつからか〝塩系=水菜 カイワレ〟のような構図が出来上がってしまっているが、茹で青菜の手間を省く薬味としか思えないのは私だけだろうか。

また香りと彩り役の両方を担っている黄柚子も、苦味のある薄皮を丁寧に取り除かれて刻まれている仕事ぶりは素晴らしい。先程の鶏ムネチャーシューに香りを加えてくれたりと活躍も見せてくれたが、スープを飲み干す際にも伴って入ってくるのは少し迷惑にも感じた。

中盤以降も麺自体の美味さは変わらず食べ進んだが、どうしてもすすり心地の難点が目立ってしまい本来の麺を楽しむ事が出来なかった。もし本日のスープと麺と味玉だけが大きな器に盛り付けてあったならば90点台とも思える出来だっただけに特製にした事を悔やんでしまう。

完食完飲していながらも不満が残る納得のいかない気持ちで席を立った時に、後客が食べていた醤油系の大盛りの器を見ると鳳凰の描かれた大きな高台丼に盛り付けられたいた。この器ならば麺が絡まるような事もなかったのではと、器選びの大切さを思いながら店を出た一杯でした。

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「贅沢らーめん ¥1000」@麺Dining Number Nine 09の写真平日 曇天 13:10 先待ち12名 後待ち4名

今にも雨が落ちてきそうな曇り空を見上げながらこう思った。

「今のわたしの心境そのものだ」

本日は恒例の新店めぐりの為に、地震や雨天をかいくぐってまで草加駅までやって来た。それなのに目的としていたラーメン店は、まさかの10日後オープンと予習不足を露呈してしまったのだ。

そこで地の利のない草加駅周辺でのリカバリー先を探してみると二軒の候補店が挙がってきた中で、藁にもすがる思いで駅の反対側へと歩き出した。まずは東口近くの候補店の前まで行ってみると昼時を過ぎているが20名以上の行列があり断念した。

そこから少し離れた場所にあるコチラへと向かってみる。普通の通り沿いに何故か古びた特殊浴場があったりとカオス感満載の道を進んで行くと、先程よりは少ないが行列のある店先を見つけた。直前に降りはじめた雨の中で最後尾に付けて外待ち待機となった。

突然の初訪問となったので下調べをしてない現状で、店頭に貼られたメニューをありがたく熟読するも不得手な〝濃厚〟の二文字が踊るラインナップには少しばかり意気消沈してしまった。覚悟を決めて並んでいるが回転が悪いのか30分ほどで前列の若者を見習って食券を先購入してから並びに戻った。訳もわからず勢い任せで特製らしきラーメンのボタンを押してしまった。そこからも10分以上すると先客が出てきたので空席を確認してから再び店内に入った。

並びはじめてから40分以上でようやくカウンターに腰を下ろして食券を手渡すと店内観察を開始する。瞬間最高年齢を余裕で更新できた若い客層に紛れて店内を見渡すと、多くの女性客が目につく。もしかしたら女性客にも受け入れられるヘルシー志向なラーメンなのかもと一縷の望みを託してみる。店内にはサーフィンのショートボードやサーフムービーのDVDが置かれてあり、店主さんの趣味が垣間見られる。そんな店内を本日はツーオペで切り盛りされているが、寡黙な中でも息の合ったコンビネーションに釘付けになってしまった。

そんな安定感のあるオペレーションを眺めていると、着席して8分で我が杯が到着した。その姿はオリジナルの屋号入りの多用丼の中で、荒々しい景色を見せている。特製仕様と思われる〝贅沢らーめん〟をオーダーしたので別皿で提供されたトッピングたちも記念撮影用にオリジナルで盛り付けてみた。丁寧に別皿の味玉と切り落とし焼豚を盛り付けたつもりだがワイルドに見えるのは、口縁に飛び散ったスープが思わせるのだろう。ここまでくれば自称〝IT系清湯おじさん〟などとは言ってはいられず覚悟を決めてレンゲを手に取った。

まずは丁子茶色のスープをひとくち。初見はやはり均一な乳化を果たした濃厚スープの印象ではあるが、もっとも苦手とする魚粉の浮遊物が液面に見られない。「濃厚魚介=魚粉」の悪いイメージとは違った表情に少し安心してレンゲをスープに落とし込んでみると、レンゲを持つ指先に係る抵抗は非常に重たい。そんなマットなスープからは高温な湯気と共に煮干しを主とした香りが立ち昇っている。レンゲを落とし込んだだけでは微動だにしない液面は、やはり濃厚の二文字がお似合いのスープであった。いざ粘度の高いスープを口に含むと、予想を上回る狂気的な熱さが唇を襲われ危険を感じる程だった。その熱が落ち着くと、思いもしなかった滑らかな舌触りが残っている。しかも味わいとしても穏やかな塩気で、粘度としては濃厚ではあるが味覚の面では強烈すぎるインパクトを感じさせない。もちろん淡麗ではないが対応できそうなスープに感じて、味わってみる事にした。きっちりと乳化されたスープは動物性コラーゲンを思わせるが、不必要な臭みやクセを表に出してこない。この粘度を生むためにはコラーゲンだけでなく、野菜のポタージュ的な要素も多く含まれているのだろう。よって舌触りも軽やかで塩気よりも甘みを感じるスープに仕上がっている。

そんな熱々のスープの中から、まだ見ぬ麺を拾い上げてみる。オーダー時に麺の太さを聞かれ基本の太麺にしたので、かなりコワモテな中太平打ち麺が現れた。たしかに平打ち麺ではあるが、手揉みのような不規則な形状ではなく均一的な波状を見せる。麺上げまで180秒中太麺は、見るからに麺肌に溶け出したグルテンが滑らかな印象を受ける。そのグルテンと作用して持ち上げられたスープの高温に怯むことなくすすり上げると、ヤケドしそうな灼熱地獄が再び襲いかかってきた。実際にも上アゴの薄皮がめくれてしまう程に熱かったが、熱さ耐性だけは持っている私には有難い事である。しかしこの麺とスープの熱さでは女性客も多いので回転率は悪くなるのも納得できた。あまりの熱さに具材を先に味わってみる。

なんと言っても具材のセンターは豚バラチャーシューであろう。最初は小ぶりに見えた煮豚型のチャーシューは、その厚みがファミコンのカセットくらいあるのには驚いた。そんな分厚いチャーシューにもスープの熱さが伝わっているのではないかと思い、無意味とは思いつつもファミコンのカセットのバグ改善のためと同様に息を吹きかけてみた。それが効果があったのかは別にして、提供直前にバーナーで軽く炙られたチャーシューは適度に崩れる常温まで戻されていた。そんな豚の角煮とも思えるチャーシューに箸が触れただけで、赤身と脂身が分裂した。本来ならば得意ではない豚バラの煮豚を食べてみると、とろけるような脂身が主体となってアピールしてくる。柔らかさだけでは申し分ない食感ではあるが、脂っぽさも感じてしまうようなチャーシューだ。バランス良く整った赤身の部分は赤身の繊維質ばかりが口に残ってしまい、全てを柔らかく仕上げた結果として肉を喰らう楽しみは残ってなかった。卓上のウンチクにはハーブを使用していると書かれていたが、ほのかに香るのはローリエだろう。肉の臭みを見事に消して香草としての役割を果たしていた。

それに加えて切り落としの煮豚も煮汁と共に別皿で供されたが、撮影用に器に投入する際にかなりの煮汁も入ってしまった。それがスープの味をより濃くしてしまったのかもしれない。また肉片の方はライスの上だと本領を発揮しそうな柔らかさであったがラーメンの中ではいつのまにか姿を消してしまい、スープの底へと沈んでしまっていた。時々レンゲにすくわれて口の中に入ってくるが、肉の繊維質ばかりが残ってしまい大きな必要性を感じなかった。

味玉はストレスを感じない程度に温め直されてる上に、高温スープで更に加熱されていた。そんな熱々の味玉を唇で割ると中からは適度にゲル化した黄身が現れ、濃密な舌触りが口内に張りめぐった。この感覚だけは良く分かったが、味付けの方はスープに負けてしまって実際には感じられなかった。

薬味は青ネギとタマネギ彩りの面でもアクセントをつけていた。タマネギアッシェの方はみずみずしい切り口でタマネギ本来の甘みと辛みがスープに味の変化をもたらしてくれたが、青ネギの方は乾いた切り口からも想像できたが切り置きの時間が長く香りも食感も失われていた。そんな青ネギには業務用カットねぎを使用しているのではとも思ってしまった。

それに対して黒々として密度も濃く、表面の照りがまぶしい海苔は肉厚がしっかりとしている。繊細な口溶けを楽しむタイプではなく、強いスープにも負けない噛み応えと味わいを楽しめる。香りも高く高品質の海苔を目利きされていると感じた。

序盤はスープの熱さで先送りにした麺に戻ると、多少の変化はあるが力強さは失せていない。先程よりもスープの温度は若干落ち着いてはいるが、それでもまだまだ高温をキープしており麺を一気にすすり上げるには勇気が必要だった。口の中に飛び込んできた麺を噛むと、みっちりと詰まったグルテンが高弾力を生んで奥歯を跳ね返そうと押し返す。そんな攻防が楽しく反発力に負けじと噛み切った麺からは小麦の甘みが弾け飛ぶ。小麦の香りは少ないが甘みを引き出すスープの塩気にようやく感謝した。その後も咀嚼の楽しみのおかげで8割程度の麺は食べられたが、終盤にかけては中年おじさんには味の強さに舌が疲れてしまい箸とレンゲを置いた。

スープはほとんど残してしまったので丼の底には他の具材があったのかもしれないが、確認できずに席を立った。この時にも私よりも15分以上も前に入店した二組のカップルたちの女性どうしがゆっくりと食べていた。となりに座っている彼氏たちはもちろん食事を終えていたが、女性陣たちが食べ終えるのを談笑しながら待っている。それを見た時に「最近の若いもんは」と年寄りくさい事を思ってしまった自分が悲しくもあり、誇らしくも感じた一杯でした。

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「特製中華そば ¥1000」@食煅 もみじの写真平日 晴天 11:05 先客8名 後客10名以上

〝ニューオープン パトロール〟

食べてる最中から誰かに伝えたくなるようなラーメンに出会ったのは久しぶりだった。

そんな出会いが待っているとも知らずに、昨夜は大宮駅前に宿をとっての大宮ナイトを楽しんだ。たらふく呑んだ割には今朝も快調に目が覚めると10時にチェックアウトして大宮駅に向かった。

それも全てはRDBの新店情報に挙がってきたこちらへの初訪問のためである。関東逆サイドの自宅からでは早朝の出発を強いられるので、ひとまずは通過地点の大宮で前泊してから向かう作戦に出た。

大宮駅からは宇都宮線にて20分ほどで人生初となる白岡駅に降り立つと、西口のバス停から朝日バス 白01系統 菖蒲仲橋行きで5分ほど揺られると最寄りの樋の口バス停に着いた。そこは白河市と久喜市の境に位置する私のような歩兵には難攻不落な場所である。バスを降りるとすぐ目の前には大きな看板のある店が見えるが、田植えが終わったばかりの田んぼに阻まれて大きく迂回しなければならない。11時開店を少し過ぎていたので店先の駐車場には数台の車が停まっており慌てて先を急いだ。

回り込むようにして店先にたどり着くと、あまりの立派な店構えにたじろいでしまった。大型駐車場を完備した一軒家の脇には古い木製のつき臼がオプジェとして飾られている。入口というか玄関の広い軒下の外待ち席に並びがなかったので引き戸を開けて店内に入ってみると、店内の設えには更に驚いた。そこはまるで古民家を移築したかのような大きな梁が目を惹く古風な造りとなっている。券売機は設置されてないので、ホールスタッフさんの誘導で対面式カウンターに座り卓上メニューから品定めをする。

スープが醤油と塩の二種類と、つけそばだけのシンプルなラインナップの中からマイスタンダードの醤油を選んだ。この後は連食予定もないので思い切って特製にしてスタッフさんに告げた。先客は8名ほどいたが、ご近所さんであろう年配の方々が注文に迷っているようなので私の注文の方が先に通された。私がおそらく最年少ではないかと思われるような人生の大先輩に囲まれながら店内を見渡してみる。さすがは駐車場の数に見合った多くの席数を設けてあり、現時点では稼働させてないテーブル席もあるようだ。

また内装の至るところにもこだわりを見せる。重厚な船箪笥などの古民具や、戦前のものと思われる木製看板も飾られている。玄関の上に飾られた木挽き鋸も歴史の古さを感じさせる。そんな古い設えに合わせて、お冷の器もグラスではなく陶器の湯呑み茶碗を使う細かな演出も心憎い。そんな古さを活かした客席に対して、独立した調理場内の厨房機器から放たれるステンレスの輝きが好対照に映る。調理工程が見られないのが残念だが、美味いものを作り出すオーラがあふれている店主さんの動きに期待が高まる。そんな店内を本日は盤石の五人体制で回しているが、調理作業の全てを店主自らが担っているので大変そうではあるが安心感はある。

そんな見所満載の店内を眺めていると、着席して15分で我が杯が到着した。その姿は盛り付けられた器にも、こだわりと高級感があふれている。有田焼と思われる多用丼を絵柄の違う数種類用意されていて使い分けられている。特にスープ毎に変えられているわけではないようなので、ご主人の気分次第という事だろう。そんな器の中には褐色のグラデーションが食欲の本能を視覚から刺激してくる。大胆さと繊細さを併せ持ったような景色に興奮を抑えながらレンゲを手に取った。

まずは柿渋色のスープをひとくち。やや霞がかかったスープに浮かんだ油膜の少ない部分にレンゲを落とすと、破れた油膜の隙間から飲まずとも美味いと分かる香りが立ち昇った。それは的確な表現かどうかは分からないが〝埼玉らしい〟美味さを感じさせる香りだった。東北から九州まで地方遠征で感じた関東のラーメンのレベルの高さの中でも、埼玉県のクオリティの高さは群を抜いていると常々感じていた。そんなラーメン王国の遺伝子を受け継いだかのような香りに一瞬で魅了されてしまった。そんな素晴らしい香りのスープを口に含むと、鰹節と煮干しの織りなす魚介出汁の旨みが先陣を切って口の中に広がった。すると直ぐさま動物系出汁のどっしりとした旨みも後を追いかけてきた。そこに香味油の軽やかなコクと、醤油ダレのキレが加わり一体感を生んでいる。魚介出汁が前に出てはいるが全体的にバランスに優れたスープは感動レベルの仕上がりだった。何も誇張せずに個性を主張できるスープには久しぶりに出会った。

これだけ美味いスープの後は自家製麺にも期待が高まり箸を手にした。スープの中で泳いでいる状態でも切刃のエッジがハッキリと見られる中細ストレート麺を持ち上げてみると、程よい加水と思われる手応えが箸先から伝わってきた。それと同時に少し柔らかめなハリの弱さも感じられるが、麺上げまでは推測して85秒くらいだろうか。いざ口に運ぶと、見た目のエッジの鋭さに反して滑らかな口当たりが唇を通過した。気持ち柔らかめではあるがハリもあり、口の中を躍動するかのような力強さもある。そんな弾ける麺を奥歯で捕らえようとすると、咀嚼から逃げるような麺質が顔を見せる。この捕らえづらい食感が苦手なのだが、麺が軋み泣くほどではなかったのが救いだった。ゆっくりと奥歯で押さえ込むと咀嚼に応えてくれて、小麦の風味があふれ出すオリジナリティのある良麺だった。

具材のチャーシューは大判な豚ロースの低温調理と豚バラの角煮の二枚看板が盛り付けられる。熱変化の早そうな豚ロースから食べてみると、薄切りかと思えたレアチャーシューだったが食べ応えのある厚みがあり赤身本来の旨みと食感が味わえる。豚ロースならではの脂身もしっとりと仕上げてあり、筋切りもされてあるので不快な食感は感じさせない。一方の豚バラのチャーシューは角煮仕立てとなっており、さっぱり目の豚ロースに比べて濃いめの味付けが施されて対照的な組み合わせとなっている。歯応えも豚バラの特徴を活かして柔らかく仕上げてあり、ほどけるような食感が楽しめる。

見た目には白身に裂け目があり、どうかと思われた味玉だったが抜群の仕上がりを見せる。下茹での半熟加減も程よく、熟成度もありゲル化した黄身も流れ出すような事なくネットリとしている。そんな熟成を感じさせながらも醤油感は少なく卵本来の味わいも残している。また午前中の開店直後にもかかわらず、常温以上に戻してある提供温度も素晴らしい。白身の裂け目も〝あばたもえくぼ〟に思えるような味玉だった。

メンマは極太タイプでよくある業務用味付けメンマかと思えたが、しっかりと店仕込みされたメンマだった。全体の中では強めに味付けしてあったが、噛めばほどけるような柔らか仕上げなので噛む回数が少なく塩気を感じている暇がなかった。

ここまで麺のテクスチャー以外は偏屈な私の好みに限りなく近いラーメンに喜んでいたのだが、ここからの薬味に対しては喜びを越えた感動すら覚えてしまった。

まず白ネギの笹切りは敢えての切りっぱなしで、水にさらしたりせずに白ネギ本来の辛みを感じさせてくれる。たしかに甘みのある白ネギも魅力的ではあるが、生の白ネギならではの刺激も捨てがたい。さらには白ネギを細かく刻んだ薬味も併用されていて、細かいだけにスープで加熱されて辛味が甘味に変化している。また青みには丁寧に下茹でされたホウレン草が使われていた。水菜で青みを手抜きする店が多い中で、ひと仕事が光る珍しい存在だ。最近では主流となりつつある小松菜も良いが、ホウレン草特有の苦味を味わえたのも久しぶりに思えうれしい。

これだけでは収まらず、屋号に掲げた〝食煅〟への思いを知ることになる具材があった。それは天に盛られたもみじ型の昆布で、本来ならば役目を終えた出汁昆布を型抜きして具材として食材の使命を果たしている。それだけではなく厚削りの鰹節の出汁ガラも丼の底に沈んでおり食材の使命を全うしていた。更には本来ならば捨てられるであろうホウレン草の根元までも、きちんと処理され具材として添えられてあった。最後の最後にスープを飲み干した時に丼の底から現れた栄養価の高いホウレン草の根元を見た時には、ご主人の食材に対する愛情の深さに涙が出るくらいに感動してしまった。

もしかしたら型抜きされた出汁昆布以外は偶然に入ってしまったのかもしれないが、ご主人が屋号に込めた食煅の〝煅える〟の文字の意味を噛み締めながら席を立った。

すでに名店の雰囲気に満ちた店を後にする時にも、外待ち席も埋まっており並びは増え続けていた。帰りのバスが一時間後にしかなく、40分ほど歩いて白河駅まで戻る事にはなってしまったが本当に来て良かったと思える一杯になりました。

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「醤油ラーメン ¥700+味玉 ¥100」@拉麺 イチバノナカの写真平日 雨天 11:00 先客1名 後客2名

〝ニューオープン パトロール〟

「イチバノナカ」へ「イチカバチカ」の「イバラノミチ」

今回も昨晩から気合いを入れて、所沢に前泊してからの新店めぐりでの連食を予定している。RDBの新店情報の中に見つけたコチラへの初訪問する為だけに、所沢駅近くのサウナに宿を取った。自宅からでは早朝からの移動を余儀なくされるので、前日から所沢に移動してきた。

前夜は所用を終えた神楽坂から飯田橋に向かい、存在すら知らなかった全席指定の西武線S-TRAINに飯田橋駅のホームで慌てて指定席券を購入してから乗り込んだ。しかし思ったよりも乗客数は少なく車内はガラガラで無駄使いをしてしまったかとも思ったが、所沢までの40分を22時台にもかかわらず電源付きの指定席に座って移動できるのは意味のある時間だった。停車する途中駅も二駅だけと非常に快適なままに所沢駅に着いた。

そこからは初めて予約した駅前のサウナに向かったのだが、とても素晴らしい施設で驚いた。ここからはサウナレビューとなってしまうが、簡単に言えば水風呂の温度の低さが都内でも数カ所しかない13度という冷たさだった。サウナ好きと言うよりは水風呂に入るために、熱いサウナを我慢していると言っても過言ではない私には最高の水風呂だった。さらには33度台の低温露天風呂に浮かんだリクライニングシートで、ゆったりと体調を整えられる環境は他のサウナにはない充実した設備だった。サウナで汗を流したあとは27時まで営業している食事処で楽しむ生ビールも魅力の一つだ。ついつい深酒をしてしまい26時半のラストオーダーを合図にベッドに入った。

翌朝も快適に目覚めると朝風呂を浴びて身支度を整える。この時点で午前10時と自宅からでは、こんなにものんびりと過ごしてはいられないので前泊の甲斐が大いにあった。都内からここまでは順調に進んできたが、ここからの道のりが困難を極めた。

RDBのお店情報では11時開店となっているので、開店前の現着を狙ってみる。10時ちょうどにチェックアウトすると目の前の所沢駅東口バス停から西武バス 所52系統 志木駅南口行きに乗車した。小雨の落ちてきた車窓を眺めながら25分ほどで最寄りの「坂の下上」という、ややこしい名前のバス停に着いた。と、ここまでは大きな困難ではなかったのだが、ここからの道のりが大変だった。すぐにバス通りを外れて鬱蒼とした木々が茂った小径へと入っていく。所々に住宅があったり、突然として物流センターのような大きな建物が現れたりの見知らぬ道を歩いていく。10分ほど歩くと所沢インターを大きく迂回する道を関越道の下をくぐったり上を越えたりと方向感覚を失いかけた時に、目の前に目的地の所沢市場の看板が見えてきた。ここまでバス停から20分は歩いただろうか。大きな交差点を渡り市場入口から場内に入ると、駐車場の右手に大きく「イチバノナカ」と書かれた看板があった。

バスの遅れなどで11時開店ちょうどの現着となったが、店先の様子がおかしい。店の前にはトラックが停まっていて何かの大きな機材を搬入しているのだ。まさかの厨房機器の故障での臨時休業が頭をよぎり「イチカバチカ」が現実になってしまったかと思われた。折れそうな心を支えながら店先に近づいてみると、業者が搬入作業をしている店内から「いらっしゃいませ」の明るい出迎えの声が聞こえてきた。

ようやく「イチバノナカ」への「イチカバチカ」の不安が取り除かれ、安堵して傘をたたんで店内に入った。入口左手の券売機には豊富なメニューがラインナップしているが、やはりマイスタンダードの醤油系のボタンを押した。好物の味玉は発券ボタンが未設定なので、現金にて口頭注文で追加した。

店内右手では搬入が続いているのでL字カウンターの左側に座り店内観察をはじめる。テーブル席も設けられている明るい店内は、天然木で造られた市松模様のカウンターが特徴的だ。そんな有機質な天然木の設えと、調理場内の無機質なステンレスの厨房機器とのコントラストが印象に残る。そんな温かみのある店内を本日は三人体制で回している。オープン当初なのでオペレーションも定まらずトラブルも発生していたが、その経験が積み重なる事が大きな自信に繋がると期待しながら穏やかに見守っていると、着席して6分で我が杯が到着した。

その姿は朱赤色の切立丼の中で、とても美しい景色を見せてくれる。トラブルがありながらも、客に提供するラーメンには決して妥協を許さない職人魂が丁寧な盛り付けからも伝わってくる。その景色には食べずとも作り手の熱意を感じずにはいられない。雨の中を歩いて来た甲斐があったと確信しながらレンゲを手にした。

まずは鳶色のスープをひとくち。上層には粒子の細やかな背脂片が浮かんでいるスープにレンゲを沈めてみると、下層には透明感のあるスープが潜んでいた。香りとしては鰹節を主体とした魚介系がリードしている。慣れ親しんだ和風の香りに誘導されながらスープを口に含んでみると、豚背脂の脂片が唇と舌を潤した後で動物系の出汁の旨みが追い越していく。〝キレ〟と〝さばけ〟の良い魚介と動物のWスープに、豚背脂がコクと甘みを加えているバランスに優れたスープに思える。カエシの醤油ダレも塩気や酸味が特出する事なくスープに輪郭を与えている。その印象は非常に穏やかで私にとってはありがたいが、市場で働く人たちには物足りないのではと余計な心配までしてしまうほどにサッパリとしている。

そんなスープに合わせる麺は平打ちぢれ麺を採用されていて、麺上げまではジャスト105秒。100秒でも110秒でもない微妙なタイミングにもこだわりを感じる。マイブームとなっている平打ちぢれ麺に期待しながら箸で持ち上げてみると多加水麺とは思うが、さほどの重たさは伝わってこない。むしろ軽やかにすら感じる麺を一気にすすり上げると、想像通りに麺の質量、茹で加減、麺のうねりのどれをとっても軽やかだ。自家製手打ちぢれ麺とは違った均一性があり、優等生的な麺質がスープの穏やかさにも合っているように思えた。口の中を暴れまわる自家製手打ちぢれ麺のようなワイルドな食べ応えはないが、相性の良い麺を選ばれているセンスを感じた。

具材のチャーシューは豚肩ロースの低温煮豚だろうか、しっとりとしながらも赤身の繊維質が崩れるような食感が素晴らしい。厚切りという程ではないが、かなり贅沢にスライスされているので豚肩ロース本来の持ち味も引き出されている。味付けはスープに合わせてか控えめにしてあるが、素材の旨みが強いので物足りなさや味気なさを感じさせないチャーシューに仕上げてあった。

それに比べると追加した味玉は残念ながら好みではなかった。これも全体のバランスに配慮した薄味仕立ての味玉なのかもしれないが、漬けダレの浸透を全く感じられない半熟ゆでたまごを食べているようだった。メニュー表記に半熟玉子となっていれば文句の付けようもない仕上がりだが、味玉を名乗るのならば何らかの旨みを付け加えて欲しいと思ってしまった。

極太メンマは繊維が残りすぎないように短めカットしてある心づかいがうれしい。小ぶりでも硬さを残した仕上がりなので食べ応えも十分にあり、ザクッとした食感がアクセントとなった。

薬味の白ネギには丁寧な仕事がされていて、しっかりと水にさらしてあった。よって香りや刺激よりも爽やかな歯触りの食感となって薬味の役割を果たしていた。また青みの三つ葉も香りの弱い葉先部分だけを添えてあるので、三つ葉の茎特有の強い香りを抑えてあった。逆に茎の部分はどこに使っているのか知りたくなった。

彩り役のナルトには不信感しか持っていないので、残念ながら今回も箸をつける事はなかった。

好物の味玉の評価が低くなってしまった点と、途中から奥歯の付け根あたりに必要以上の唾液が滲んでくるのを感じたので、過多ではないにしろ旨味の足し算を思わせる点が80点オーバーとはならない要因だった。

先ほど下車したバス停で帰りのバスの時刻を調べておいたのたが、一時間に一本しかないバスに乗り遅れないように慌てて店を後にしなければならない一杯でした。

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「中華そば ¥760+味つき玉子 ¥100」@中華蕎麦 瑞山(ZUIZAN)の写真日曜日 晴天 14:00 先客13名 後客10名以上

何の予定もない日曜日の昼下がりにようやく目が覚めてベッドから出てきた。手に取ったスマホには、私の怠惰な生活を気にかけてくれている後輩家族からの自宅へのお招きのラインが届いていた。

「夕方5時にお待ちしてます」との内容だったが、後輩が新居を建てたのは和光市と随分と遠いが、自宅からは乗り換えなしで行けるのでお邪魔することにした。しかし後輩の本当の目的は分かっていて、子守役にされるのが目に見えている。幸いなことに二人の子供たちも私になついてくれているので可愛くて仕方ないのだ。その子守りの間に若夫妻は束の間のドライブデートを楽しもうという算段なのである。人助けの上に自身も子供たちに癒されるというwin-winなので和光市に向かうことにした。

後輩宅では夕食の準備はしてあると思うが、それまで何も食べずにはいられないので和光市近辺での未訪問店探しを急遽はじめた。日曜日の中途半端な時間なので捜索は難航したが、ひと駅先の朝霞駅にある通し営業のコチラがヒットした。RDBのお店情報によると開店以来の人気を誇る店のようでラーメンの写真にも風格が漂っている。詳細はさておき直ぐに身支度をして東武東上線直通の副都心線に揺られること40分ほどで最寄りの朝霞駅に着いた。そこからは歩いて向かったが途中にあった都内でも珍しいルーマニア料理店のメニューに気をとられた。更にその店の奥には「ナマステ朝霞」というナイスなネーミングのインド料理店が並んでいた。ヨーロッパとインドの距離の近さに驚きながら10分くらい進むとパチンコ店の向かいの店先が見えてきた。

通し営業という事だが昼ピークをとっくに過ぎても店内のテーブル席は全て埋まっている。カウンターの空席を確認してから券売機の前へと進み改めて品定めをする。濃厚系がトップを飾っているが、マイスタンダードの醤油系を見つけ出し味玉追加で発券しホールスタッフに手渡すとカウンターに案内された。

セルフのお冷やを取り忘れたのでテーブル席の方に戻り水を汲んでから再び待機に入る。本日の客層は休日との事で家族づれが多い。ベビーカーにも対応してあるので若夫妻たちにもうれしい店の造りだ。そんな店内を本日は四人体制で回している。調理場に二人、ホール専任が一人、どちらも行き来しているスタッフが一人である。カウンター越しに調理場内に目を向けると昔の中華料理屋を彷彿とさせる調味料や溶き卵などを入れる1号缶の空き缶が再利用されて多く並んでいる。ガス台には片手中華鍋もあるので、まさにオールド中華の厨房スタイルだ。力強いパワーとオーラが溢れる調理場を眺めていると着席して8分で我が杯が到着した。

そのラーメンの容姿とオールドスタイルの厨房とのギャップに、まずは驚いた。その姿は愛くるしいピンクのロゴデザインの切立丼のお洒落鉢にてお目見えした。同じデザインのレンゲとのコンビで可愛らしさは倍増する。そんな器に合わせたような今風の盛り付けも大きなギャップを生んでいる。

まずは透明感のある栗梅色のスープをひとくち。仕上げに投入された鶏油の粒子がまばらな液面からは、今風の見た目とは違って懐かしい香りが漂ってくる。目を閉じれば調理場の風景と見事に合致するような昔ながらの香りだ。そんなスープを口に含むと、鶏主体の旨みに軽やかな香味油が重なった落ち着きのあるスープに仕上がっている。香味油も鶏油だろうが干し椎茸のような乾物系の旨みも加わる。その懐かしさの中には不必要なまでの強制的な旨味成分も強く舌に残る。せっかくの鶏出汁の旨みを超えてしまっては本末転倒に思える。鶏ガラだけではない肉や皮脂のコクも感じたので丸鶏ではないにしても骨付きのモモ肉などは使われているはずの原価のかかったスープだけに残念に思えた。カエシも旨みに負けじとしっかり目に利かせてあるので強めの二重奏が続いていく事となりそうだ。

麺は全粒粉入り中細ストレート麺で麺上げまではジャスト50秒。そんな麺を食べる前から懸念される事が、目の前の茹で麺機の中では起きていた。通し営業の中でも昼の遅い時間帯に訪れたので、茹で麺機の中のお湯は全粒粉の溶け出したフスマの色でスープよりも濁った褐色になっていた。そんな濁った茹で湯から麺上げされた麺には湯切りしても残り湯が大量に絡んでしまっていた。結果として茹で湯のつけ汁で麺を啜っているような不快な香りがしてしまった。麺肌をまとった茹で湯を払おうとスープの中を何度もくぐらせると、先程まであんなに澄んでいたスープは一瞬で濁ってしまった。きっと開店直後ならばこんな匂いのする麺を食べる事はなかったのだろうにと残念が重なってしまった。

スープも麺も諦めて具材を食べてみる。チャーシューは二種類で鶏ムネ肉と豚ロースでどちらも低温調理されている。鶏ムネ肉はどちらかと言えばしっかりと熱が入っているので筋繊維の食感を楽しむタイプ。味付けもちょうど良く美味しい。一方の豚ロースはかなりの薄切りなので提供時には器のロゴにも負けないピンク色を発していたが、麺のやり取りの間に完全に灰色に変色してしまっていた。しかし豚ロースならではのしつこくない脂身のチカラを借りてパサつきがちな赤身をしっとりと食べさせてくれた。

追加の味玉は黄身の小さな薄味タイプ。私の味玉論とは違っていた。芯温の冷たさも気になり追加しなくても良かったくらいに思えた。

しかしメンマは入手困難な金絲メンマが贅沢に添えてあった。新規では入手ルートの調達が難しい食材を確保できるのは、長年の信頼と実績があるからだろう。現在では都内でも老舗高級中華料理店は別として、ラーメン店で扱っている店は数えるほどしかない。そんな珍しい食材を惜しげもなく奮発しているので、本来のあるべき姿の麺のコンディションで合わせてみたかった。

薬味はまっすぐではなく曲がって育ったスプラウト系が添えてあった。通常は大根のスプラウトだろうが、育ち方が違っていたので他のスプラウトかも知れない。食べても大根の辛味も感じなかったが何の新芽かは定かではない。細かく刻まれた玉ねぎも白ネギとは違った食感でアクセントになっていた。

黒々とした海苔は大判の十字9切が添えてあり、厚手ながらも口溶けの良い質の高さが出ていた。

最終的にはスープは全量、麺も半分以上も残してしまったが、訪問時間の下ブレに当たってしまったのが悔やまれる。もし再訪する事があれば開店一番乗りで汚れてない茹で湯で麺上げされたラーメンを味わってみたいと思った一杯でした。

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「ぜんやラーメン ¥750」@ぜんやの写真日曜日 晴天 13:40 先待ち4名 後待ち5名

〝温故知新ラーメンめぐり〟

故き麺を温ねて新しき麺を知る

本日は10数年前のラーメン本に触発されて、現在でもファンに愛され続けている名店めぐりをしている最中だ。自宅を出発する時から狙いを定めていた二軒目がコチラなのだ。

午前中の一食目に選んだのが埼玉 志木駅にある「麺家 うえだ」だったので、そこからの移動も簡単で10分ほどで最寄りの新座駅に着いた。そこで駅前散策をしながら胃袋の空きスペースができるのを2時間ほど待とうと思ったが、新座駅前こそ賑わいがあるが少し離れると車しか走っていないような通りで散歩気分は湧いてこなので再び駅前に戻りコーヒーを飲みながら時間をつぶす事にした。

RDBのお店情報によるとオープンして15年以上も人気店であり続ける埼玉県屈指の有名店だ。私の持っている昔のラーメン本にも度々登場するので、行かなくても名前だけはもちろん知っていた。そんな人気店に初訪問するキッカケになったラーメン本に感謝したい。

そんな事を考えていたら程よく時間も経過し連食スペースも空いてきたので、意気揚々と店を目指した。駅前からは横断歩道の極端に少ない川越街道を渡り5分ほど歩くと、満車の駐車場に隠れた暖簾を見つけた。日曜日なので昼ピークは関係なく満席で外待ちベンチには行列もできている。しかしこの行列が有名人気店の証のようでうれしくもある。最後尾に続いて席が空くのを待っていると流れが良かったのか、わずか5分ほどで入店の案内があった。店に足を踏み入れた瞬間に美味そうな香りが鼻をくすぐった。

シンプルなメニュー構成の券売機の中から連食なので基本のラーメンを発券した。好物の味玉のボタンを探したが存在しなかったので、カウンターに座り店内を眺める。メニュー構成と同じくシンプルなカウンターだけの店内をご夫妻のお二人で切り盛りしている。接客や洗い物などの片付けを奥様が担当し、ご主人は調理に徹している。そのご主人の白衣に白帽の正装姿が凛々しくラーメンへの期待も高まる。厨房内には麺ゆで機や食洗機などの大きな機材はないが、ステンレス製の両手中華鍋が麺ゆで用に鎮座しているのが目に入った。これもまたシンプルに一種類の麺だけを使用すればこその設備である。そんな中華鍋から麺上げされる巧みな平ザルさばきに見とれていると、着席して5分で我が杯が到着した。

その姿は白磁の反高台丼の中で神々しく輝いている。何の奇もてらわない真っ直ぐに光り輝く景色は黄金卿のようである。そんなエルドラドに心を奪われていると、まぶしいスープからは店内に満ちた良い香りを、より濃縮させた香りが立ち昇ってくる。期待値の限界点を超えたところでレンゲを手にとった。

まずは香味油の細やかな粒子が浮かんだ金朱雀色のスープをひとくち。透明感がありそうで実は曇りガラスのような霞みがかったスープをレンゲですくい上げると、更に香りが強くなった。それはクセを殺した動物系スープの香りだった。その香りと共にスープを口に含むと丸鶏主体のスープではあるが、鶏油の野性味あるコクや香りがほとんどしない。どちらかと言えば動物系スープでも豚由来の風味を強く感じる。スープが少し霞んでいるのは豚ガラも炊かれているのだろうか。香味油も鶏油ではなくサラリとした香り高いラードなのが分かる。その動物系スープの陰に隠れて香味野菜の香りと甘みが存分に感じられるスープだ。更にその後ろには昔ながらの不自然な旨味が潜んでいるのが私には残念ではある。塩ダレも本当に塩を使っているのかと疑いたくなるほどに角がなくまろやかだ。たしかに美味いが危険な中毒性がありそうだ。

麺は平ザルで湯切りされた黄色みのある中太麺で少しちぢれた麺肌が特徴。麺上げまでおよそ100秒だが、全てはご主人の体内時計と指先だけで計られていた。黄金色のスープから持ち上げると「お前も黄金色なんかぁーい」と、ツッコミを入れたくなるほどに美しく輝いている。そんな美麺をすすり上げると、加水率の高そうな腫れ上がった麺肌が口の中で弾け飛ぶ。麺のちぢれが加わる事で更に口内を暴れまわる。見た目は美しいがお転婆な気質を持った麺に、すぐに惹かれてしまった。やはりヤンチャなくらいの食べ応えがある方が噛みつぶす楽しさを生んでくれる。

具材のチャーシューは部位違いで二枚。どちらも小ぶりだが異なる肉質の食感を表現している。どちらもロースト型で、豚モモは脂身のない赤身の肉々しさが特徴。少しパサついた感もあるが味付けの良さでカバーしている。一方の豚バラは適度な脂身が甘さを引き出されてトロトロすぎない仕上がりも良かった。本来は赤身派なのだが今回は豚バラに軍配を上げた。

板メンマも出しゃばらない味付けでコリッとしたアクセントだけを務め上げている。

薬味の白ネギは計算されているのかは分からないが厚めに切られた小口切りの部分と、繊細に切られた部分の両方が添えてあった。粗々しい白ネギからは大胆な食感と強めの香りと辛みが出ていて、細かな白ネギからは軽やかな食感と程よい刺激臭が出ているので、ひとつの薬味なのに複雑な要素を与えてくれていた。

青みのほうれん草も偶然かもしれないが葉先の部分しか入っていなかった。茎の部分が見当たらないのが不思議で隣のラーメンも見たが、やはり葉先部分だけだった。これも狙いだとしたら真意を知りたくなった。

沢山の不思議を感じながらも麺と具材は平らげていた。しかしスープはこちらも飲み干すことはできず残念ながらレンゲを置いた。丼に残ったスープの量を見て、惜しげもなく大量に注がれている事に気が付いた。これを飲み干したら誰しもが満腹になりそうな量なのにも最後ながら驚いた。

今回のラーメンをキッカケに平成最後を機にして老舗めぐりをしようと考えていたが、昔ながらのラーメンには苦手な非天然由来の旨味成分との戦いが付きまとう事になるのを暗示する一杯となりました。

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「焦がし醤油らーめん(鶏)¥780+煮玉子 ¥100」@麺家 うえだの写真日曜日 晴天 10:30 待ちなし 後待ち5名

〝温故知新ラーメンめぐり〟

故き麺を温ねて新しき麺を知る

昨日、書棚にあった 2006年の首都圏版ラーメン本を久しぶりに開いてみた。その巻頭を飾る老舗特集では、渋谷「喜楽」神田「栄屋ミルクホール」などの10数年前から老舗扱いの名店が取材されていた。それらの当時からの名店は現在も人気を博しファンに愛される人気店だ。しかし、そのラーメン本に掲載された新店特集の店の9割はすでに閉店している。それだけラーメン業界で生き残るのは大変なのだろう。

そこで本日はRDBと昔のラーメン本をフル活用して、10年以上ファンに愛され続けている名店めぐりを開催する事にした。その首都圏版のラーメン本の中に気になるページを見つけたのが埼玉県の特集ページだった。今では目にする事のない店の名前もある中で、現在も活躍されている二つの名店が同じ見開きのページに掲載されていた。どちらも10数年前当時から人気店として紹介されていて、現在のラーメン本でも良く見る店なのだ。その二つの店の連食計画を企てる事を決めてRDBを開いてみる。

RDBのお店情報では開店時間が早かったのがコチラだったので一軒目に決定した。11時開店前の現着を目指して9時半には自宅を出発。最近では利用頻度の高い副都心線に乗車し乗り換えなしで40分の早さで最寄りの志木駅に着いた。南口を出ると駅前整備の大工事が進められている。工事現場を大きく迂回して進んでいくと10分もしないうちに白い看板と黒いのぼりがたなびく店先が見えてきた。開店30分前の現着では行列もなく半シャッター前の外待ちベンチの先頭にて待機をはじめる。

待ち時間を利用して本日のお題を再検討する。店先の歩道に立てられたのぼりには「焦がし醤油らーめん」と書かれている。店頭のメニューには多数のラインナップが並んでいるが〝埼玉名物〟の言葉に惹かれて焦がし醤油らーめんにしようと決めた。

定刻になる頃には並びも5人に増えていた。オープン15年を迎える現在でも開店待ちが出る人気店なのが分かった。11時ちょうどに開店となり券売機で決めておいたお題に煮玉子目当てでトッピングのボタンも押した。カウンターの奥に座り店内を物色する。

かなり照明を落とした薄暗いカウンター越しには名物店主さんが元気そうにされている。写真では何度も見た事のある方だけに初対面には思えない。本日は三人体制で回しているが、着席すると直ぐに 1st ロットでの調理が始まった。その光景はラーメン店では見る事のない豪快なインパクトを見せつける。オーダーした「焦がし醤油らーめん」と言うのは名ばかりでなく〝焦がし〟を超えた〝燃やし〟の景色が目の前に広かった。それは丼に入れられたカエシや香味油を直接バーナーで炙る工程から生まれる。最初は穏やかに油が弾ける音がしているだけだが次第にその音は大きくなり、薄煙が立ち昇りはじめる。すると見る見るうちに火柱が上がると、高さ1メートルを超える火柱へと豹変したのだ。その巨大な火柱の向こうに見える女性店主の麺上げ姿が今でも目に焼き付いて離れない。

一瞬で店内にはスモークが立ち込めて幻想的な光景になったところに我が杯が到着した。それは黒の高台丼が二鉢重ねられて現れた。バーナーで熱された丼に触れないための二重構造らしい。今まで見た事の姿に驚いてしまった。その奇妙な重ねられた器の中の姿は、黒の器の重ね着の中に更に黒のスープをコーディネートしている。そのスタイルを見て、まだ若かりし日に受けたショックを思い出した。

それはコムデギャルソンのデザイナー川久保玲が投じた「黒の衝撃」だった。

その30数年前の黒の衝撃にも似た姿が器の中にあふれていたのだ。その黒の濃淡を、薄暗い店内のスポットライトが浮かび上げている。そんな隠微なグラデーションに背徳の美を感じながら木製レンゲを手に取った。

まずは黒檀色のスープをひとくち。登場時は液面を覆う具材や香味油に守られて湯気は上がっていないが、レンゲでそれらを破ると瞬時に湯気が立ち昇る。その湯気には香ばしい焦がし醤油の香りが寄り添っている。正に名は体を表すである。十分に香りを楽しでからスープを口に含もうとすると、想像以上の熱さが唇に伝わった。器やカエシをバーナーでダイレクトに熱してあるだけに狂気的な温度だ。木製レンゲなので幾らかは温度が伝わりづらいはずだが、それでも驚くほどの高温スープだ。息を吹きかけ少し冷ましてから飲んでみると、焦げた醤油にほんのりと甘さが加わった見た目よりも柔らかな印象だ。みたらし団子という表現にも納得できる甘 辛 苦が一体となっている。ベースを鶏か豚から選べたのだが、今回は鶏ベースにしたのでコクよりもキレのあるベースと合わさり軽やかな印象を受けた。

麺は店主自らの指先で茹で加減を確かめられた中細麺の中では少し太めで、麺上げまでは約150秒ほど。その麺をスープの中から引き上げると、熱された器の口縁に麺が触れた瞬間にジュッと麺が焼ける音がした。そこから更に幻想的な光景が浮かび上がる。初めて空気に触れた麺肌からも、湯気が川の流れのようにせせらぐ。光を受けたその光景もまた美しく食欲を刺激する。すでにスープが浸みて色付いた麺を啜ってみると、色調ほどの醤油感は移っていない。むしろ麺の小麦の甘みの方が優っていると感じる。それもスープの塩気が引き出した仕業だとしたら完璧なまでの方程式だ。見た目の醤油感と実際の塩気の違いに脳内は混乱しているが、そのおかげで夢中で麺をむさぼる事ができた。

ここまでは良かったが具材が私の好みとは違っていた。それは提供温度の冷たさが全てだった。最初は器の中で炙られていると思った豚バラチャーシューだが冷えていた。脂身よりも赤身が多い部位は好みだったが、冷たい口当たりには意表をつかれた。たしかにスープがかなり高温なので冷たいチャーシューを浸しても温度がすぐに下がることはないが、せっかく炙ったチャーシューならばせめて常温以上であって欲しかった。

味玉も同じく黄身だけでく白身までも冷えていた。開店直後の 1st ロットというのもあるだろうが個人的には残念だった。味付けも控えてあるのはスープとの組み合わせを考えての薄味なのだろう。もしかしたら提供温度も箸休め的な冷たさを表現していたのだろうかとも思えた。

こちらはメンマではなく山くらげを採用されているが、独特の食感のアクセント能力は抜群で楽しむことができた。ラーメンの中で出会ったのは初めての醤油せんべいは、徐々に湿気ていく変化が面白く焦がし醤油との相性は言うまでもなく良かった。

薬味の青ネギや白ネギと、あげ玉や海苔の存在感はスープや麺に比べると感じられなかった。しかし茹でキャベツに粉唐辛子が振られた具材からは、キャベツの持つ甘みと唐辛子の辛味が見事に合って味にメリハリを付けていた。

最後まで麺とスープのコンビネーションの良さで完食したが、スープは単体で飲み干せるほどヤワではなくレンゲを置いた。食べ終えた後も 2nd ロットまでの提供しかされていないので時間をかけた丁寧な仕事ぶりなのだろう。今回は具材が残念な部分があったが、他のスープや麺も試してみたくなる内容だった。また次回も店主さんの健在ぶりを見に来ようかなと思った一杯でした。

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「特製 蛤そば ¥1130」@中華そば 四つ葉の写真平日 晴天 10:25 先待ち3名 後待ち8名

〝昨夜は人知れず久しぶりの川越の夜を楽しんだ〟

今回は都合上ラーメン断ちをせねばならぬ状況ゆえに、昼食は蔵の街の老舗うなぎ店で特上うな重を楽しんだ後に観光気分を味わうために人力車に乗ってみたりした。ディナーは川越駅前の老舗鉄板焼き店で車海老とステーキを堪能してから夜のネオン街に身を隠した。

昨晩は定宿のサウナ付きカプセルホテルではなく、本川越駅直結のホテルに宿泊して午前9時に目が覚めた。私にとってはラーメンの街である川越に来て、一度もラーメンを食べない事など考えられずに候補の店を探し始める。

RDBを見ていても初訪問を果たしたい店もあるが、是非にも再訪したい店がいくつもあるので困ってしまう。それほどに川越のクオリティが高いという事だが、こちらの未食メニューが気になって久しぶりの再訪を決めると、身支度を整えてチェックアウトして移動を開始する。

11時開店前の現着を目指して、ホテルの目の前のバス停から9:58発の東武バスウエスト 川02系統に乗り込んだ。前回の川越行脚の時も何度もお世話になったバスに揺られること20数分で最寄りの伊草小学校前に着くと、迷うことなく歩いて5分もせずに店先が見えてきた。平日の開店30分前でも並びが発生しているのは、超人気店の証でもある。列に続く前に決めておいた未食のお題を発券すると、無事に四番手をキープできた。葦簾の陰に置かれた外待ちイスにて待機となるが、これからの季節の行列にはありがたい待機場所を完備している。

本日は私以降の行列の伸びは穏やかで外待ちイスにも空席が目立っていたが、定刻よりも20分以上も早くオープンとなった。順番通りに入店となり右手の入口からカウンターへと案内されると直ぐに店内観察をはじめる。

着席と同時に順序よく小鍋にてスープを沸かし直している厨房からは、スタッフの経験の豊かさが織りなす手際の良さだけで食べ手の安心感と食欲を増進する。そんな店内を本日は五人体制で回している。客層もテーブル席には初夏のツーリングを楽しむライダーの団体も見られ、地元の方よりも私のような観光客の方が多く感じた。抜群の安定感のあるオペレーションを眺めていると、着席して8分で我が杯が到着した。

その姿はいつも通りの美しい翡翠色の高台丼の中で、初対面ならではの初々しさのある表情で出迎えてくれた。前回の特製ほどの立体感はなかったが、平面上の配置としてはバランスの良いレイアウトが期待感を高めてくれる。食べる前から先走り気味にレンゲを手にした。

まずは大きな粒子の香味油が浮かんだ江戸茶色のスープをひとくち。曇り空から薄い光が射し込んだように見えるスープには、透明感の中にも霞んだ濁りも見られる。それが蛤由来のコハク酸であると確信しながら口に含むと、非常に旨みの強い出汁感に包まれる。蛤が主導する魚介出汁の陰では鶏由来の動物系出汁も、しっかりと屋台骨を築いている。そのどちららもが強い主張をするのではなく、双方が譲り合うことで引き立て合っているようなバランスのスープだ。そこに加わるカエシも絶妙な輪郭を形作っている。塩分過多になりがちな貝出汁の塩気を高めではあるが過剰にならないピンポイントで仕留めてある。そんな見事な塩分濃度のスープは、点滴のようにスムーズに体内に取り込まれていく。

麺は基本のラーメンと同じ麺なのだろうか、麺上げまでジャスト125秒の中細ストレート麺を採用してある。かなりしなやかな麺質が持ち上げた箸先からも伝わってくるが、ハリやコシは感じられない。通常のパツっとした歯応えを想像しながら口に運ぶと、たしかに滑らかな口当たりの中にもハリのある麺肌には感じられたが弱く感じた。ひとくち目でこの食感では後半にはスープの加熱によって麺がダレる事を心配してしまった。蛤によるスープからの磯を感じる風味と小麦からの麺の甘みの重なりが、得も言われぬ一体感となってラーメンの中で主役たる活躍を見せている。それほどに大切な麺の持ち味が次第に薄れていくのは、残念ながら悲しい出来事だった。中盤からは腰抜けになってしまった麺を食べなければならない現実が襲ってきた。

昨日のラーメン断ちのおかげで特製にしたので具材陣はフルボリュームだ。センターに鎮座するチャーシューはこちらの代名詞でもある豚肩ロースのレアチャーシュー。今回分はロゼ色の発色がくすんで見えたのは部位の性質なのだろうか、圧倒的な美しさは出ていなかった。しかし下味のマリネ加減は素晴らしく安定感がある。レアと言っても法的な加熱温度と調理時間を守られた安心できるレアチャーシューとなっている。そのまま食べても良いし、スープにひと泳ぎさせてから食べるも良しのレア感の変化も楽しめる名品である。

味玉は好みとは反してサッパリタイプで残念ではあったが、卵本来の黄身の甘さが蛤の塩気と相まって豊かな旨みを生み出していた。少し冷えた提供温度だったので〝味玉愛〟は十分に感じられなかったが、スープとの相性は良かったと思う。

穂先メンマは味付けと発酵臭の残り香のバランスがとれていて、手仕事感が十分に伝わってくる。柔らか過ぎずの食感も心地よく、香りとともにアクセントになっていた。

具材と言うべきか出汁の副産物と言うべきなのか迷ってしまう蛤も添えてあった。もちろん出汁に旨みは出し切っているので具材としては旨みは少ないが、簡易的なハマグリエキスではなく生の蛤でスープをとっている証にもなっている。ひとつだけ蛤の身を食べてはみたが、想像通りに旨みは残っていなかった。

薬味の三つ葉も大きめの切り方がスープの邪魔をせずに、噛んだ時にだけ野趣ある香りを与えてくれる。これは切り方が功を奏した薬味となっていた。

レアチャーシューと同様にこちらの真骨頂と思っている海苔は、やはり寿司屋を営まれていただけに海苔選びの目利きには恐れ入る。香り高く口溶けも優しく海苔と、蛤出汁の持つ磯の風味と見事にマッチしてスープや麺をワンランク上の世界に上げてくれた。

中盤からもスープの味わいに引っ張られながら食べ進んできたが、麺の状態が劣化してきたので咀嚼の楽しみは半減していた。また低加水麺なので時間の経過につれて麺が膨らんでしまい、通常でも多く感じる麺量がさらに増して食べ切ることが辛く感じるほどだった。

こちらへは今回で三回しか訪問してないが、本日の麺ディションはベストとは思えなかった。それでもスープの美味さが際立っていたので、この採点としかならなかった一杯でした。

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「醤油ラーメン味玉入り ¥900」@麺匠 きくちの写真平日 大雨 13:45 先客5名 後客なし

〝ニューオープン狙いうち 〟season2

新店めぐりをしている今週だが、RDBの新店情報の中に知っている店名を見つけた。詳しく調べてみると江東区からの移転のようで、移転前には訪問していることを思い出した。その時の印象は今ひとつだったが新たな期待を込めて初訪問を決めた。

その為に前夜は文京区在住の古い友人と久しぶりに上野で酒を酌み交わして宿をとった。翌朝10時すぎにホテルをチェックアウトして日比谷線の上野駅に向かった。30分ほど地下鉄に揺られると最寄りの新田駅に着いた。人生初の新田駅西口を出ると駐輪場天国のような自転車の中を進んで行くと、随分と遠回りして店先が見えてきた。11時半開店前の現着だっので並びも発生しておらず先頭で待機しようと近づいてみるとシャッターに手書きの不穏な張り紙が貼ってある。全貌は次の通りだった。

「本日電気トラブルが発生し仕込みができないため、営業できない可能性が非常に高いです。至急、対応してますが復旧の目処がたち次第店頭、Twitter、Instagramでご連絡させて頂きます。申し訳ございません。麺匠きくち店主」

ここまでが二日前の真相なのだ。そこで本日は暴風雨による危険情報が流れる中でのリベンジを決意したのだ。同じ日曜日にスープ切れに見舞われた田無の新店でのリベンジを果たした後にコチラへと向かった。

西武バスと中央線、武蔵野線から東武スカイツリーラインへと三度の乗り換えと、南越谷駅でのコーヒーブレイクを挟んで二時間程かけて最寄りの新田駅に二日ぶりに舞い戻ってきた。今回は昨日の遠回りの失敗を踏まえて東口から向かう事にする。地図では線路よりも西口側にあるが、東口からの方が簡単に行く事ができる。土砂降りの雨の中を折りたたみ傘ひとつに守られながら覚えている店先を目指した。

二日前には半シャッターだった店頭には開店祝いの大きな花輪が飾られている。最近ではパチンコ店の新装開店でも見かけなくなった豪華なお祝いを見ながら入口のドアを開けた。店内に入ると券売機はなく卓上にはメニューが置かれてある。「お好きな席へどうぞ」との女性スタッフさんの案内でカウンターに座りメニューに見入る。移転後初訪問なのでメニューの筆頭を飾っている醤油系とマイスタンダードが合致していたので、迷う事なく味玉入りの醤油系を告げた。

オーダーを終えると店内観察を開始する。客席と厨房が二分化された移転前の住吉時代とは随分と異なるレイアウトだ。店舗の敷地が正方形に近いのでカウンターもコの字型を採用されて、スペースを有効に活用してある。それでもコの字カウンターの一辺には席を設けず、ゆったりと余裕のある配席にしてある。定かではないが客席の後部には製麺室か物置き場も広く設置してあり、都内からの移転の利点を大いに感じられる設備だ。そんな店内を本日は調理とホール業務を分業した二人体制で切り盛りされている。奥まった厨房での調理なので作業風景が見られないのは残念だが、ご主人の後ろ姿に全幅の信頼を寄せて待つ事にする。

先客のロットのタイミングの関係で、着席して14分かけて3番目のロットにて我が杯が到着した。その姿は以前と変わらない揃いの受け皿に乗った白磁の切立丼の中で、ワンロット2杯以下の仕上げにこだわった渾身の姿を見せている。派手さはないが実直そうな表情が印象的だ。一食目の化学兵器のようなラーメンで傷ついた身体を癒してくれる事を期待して、レンゲを手に取った瞬間にご主人の心づかいに驚いた。それはレンゲが温めてあった事だ。もしかしたら食洗機の温度が残っていただけかもしれないが、傷ついた心にも強く響いた。

まずは少しだけ霞みがかった芝翫茶色のスープをひとくち。出来るだけ純粋なスープを味わいたく、薬味類をよけるようにレンゲをスープに沈めた。すくい上げたスープからは卓上のウンチクを疑ってしまうような複雑な香りが立ち昇る。ウンチクでは動物性オンリーのスープとなっているが、魚介系とは言わないまでも乾物由来の香りも漂ってくる。香りだけでも幾重もの重なりと奥深さを感じられる。不思議な感覚のままにスープを口に含むと、鶏ガラが主導権を握っているような動物系スープだ。スープに霞みを付けているのは豚ガラも使用してあるのだろうか、とても懐かしさのある清湯醤油スープだ。香りの中で感じたの乾物系は、スープの中の香味野菜由来のものなのだろうか。それともカエシに浸された乾物由来なのだろうか。もちろん詳細は不明だが味わい深いスープには間違いない。私には若干高めのカエシの設定が、後半どう現れてくるのかが心配ではあった。

麺上げまでジャスト120秒の自家製中細麺はスープの中でもオリジナリティを見せつけている。そんな個性的な麺を箸で持ち上げてみると麺肌に浮かんだ全粒粉のフスマが樹木の〝サルスベリ〟のようで、他では見ることのない麺だと認識できる。そんな自家製麺を口に運ぶと、荒々しくも見える麺肌の口当たりの滑らかさは感動的だった。唇にすら抵抗を感じることなく滑り込んできた麺を噛みつぶそうとすると、咀嚼から逃げようとする苦手な歯応えを感じてしまった。プリッとした歯触りは良いのだが、このタイプの麺には歯切れの悪さも付随する事が多いと思う。例を出せば、ラーメンの鬼〝佐野実〟氏の系譜の自家製麺が得意でないのだ。ラーメンの麺にも歯応えと歯切れの良さを個人的には求めてしまう。ただその点では多少残念な麺質だが、小麦の香りや甘みは申し分ない。逆に小麦の甘みを増幅させる為のスープの塩気なのかもとすら思ってしまった。

チャーシューは以前と同じ部位の豚肩ロースの煮豚型だが、今回分は脂身の少ない赤身の多い部分が切り分けられていた。超厚切りという程ではないが、かなりの厚みで切られている。何よりも特徴的なのは肉質の柔らかさで箸でつかんだ感覚はしっかりとしているが、噛んだ所から筋肉の繊維が解けていくような独特の歯応えを楽しめる。じっくりと煮込まれた赤身は本来の旨みを煮汁に放出しながらも、肉自身も煮汁の旨みを吸収しているようだ。前回はパサついた印象が残っているが、今回分に関してはベストの仕上がりに感じた。

さらには追加した味玉は大きくモデルチェンジしているように思った。それは提供温度の熱さとなって表れている。半割された味玉には温められたものが少ないと日頃から思っているが、本日の味玉は危うく舌を火傷しそうな程に熱くなっていた。あまりの温度に驚いたが、旨みの強さにも驚かされた。それは卵本来の旨みに加えて、漬けダレの浸透による味付けもしっかりと利いている。私独自の〝味玉論〟とは違って熟成タイプではないが、ゆっくりと時間をかけないと成し得ない均等な味の浸み込みが新たな味玉の新境地を開いてくれそうだ。

メンマにもマイナーチェンジがされていて、極太メンマから短冊メンマに仕様が変更されていた。このメンマの方が麺との相性は良く思えたのは、決して歯応えを重視するタイプの麺ではないので極太メンマだと異質に感じてしまうのだ。その差異をアクセントと言うのかもしれないが一体感としての役割は果たさないので、今回の短冊メンマのように主張しすぎない方が好みで良かった。

薬味には二種類のネギが使われている。小松菜などの葉野菜を青みとして使わずに、白ネギと青ネギで全てをまかなっている。スープで加熱された白ネギを刻んだ薬味は適度な甘みと食感を与えてくれるが、青ネギの小口切りには大きな役割を見出せなかった。万能ねぎだけに用途は万能だが、特徴としては何も残らない。彩りとするならば下茹でされた、ほうれん草や小松菜の方が意義がある気がした。

しかしながら中盤以降も何ら不快感もないままに食べ進めて、気が付けば丼の底が見えていた。前食の田無での化学式のようなラーメンではなく、自然派なラーメンに心も身体も癒されて完食完飲できた。移転されてメニュー構成にも変化があるようだが、魚介系を合わせた新メニューの中華そばにも期待が高まってしまう一杯でした。

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