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「ワンタンメン(650円)」@華月の写真家に風呂がなく、すぐ近くの公衆浴場・・・いや、銭湯って書こう。銭湯の二軒ほど先に古いラーメン屋だか中華料理店があった。ボクが5歳か6歳ころのことだと思う。初めてラーメンを喰った、一番古い記憶だ。

 なんで覚えてるかって? 一緒に行った母親が「スープを飲まないとすぐお腹減っちゃうよ」と言った。ボクには覚えがないが、どうもスープを殆ど飲まなかったらしい。その理由は不味かったからではなく、きっと幼かったボクの腹には、もうスープが入る余地はなかったのだと思う。で、何時間かして「母ちゃん、お腹減った」とボクが言うと、「ほら、さっきスープ飲まなかったからさ」。この何でもない会話を何故か覚えている。だからラーメンの味など記憶にないが、多分初めてラーメンを喰ったのがこの頃ということなのだ。ボクのラーメンの原風景。

 それからもう50年経つ。以来、どれだけのラーメン提供店を訪ねたのだろう。RDBのボクのレヴューからすると1,600軒とか1,700軒くらいだろう。もうとうに消えてしまった店、よくこの味で客がくるな? なんて思う店もある。外観がかなり古いというか汚いというか、入るのさえ相当な勇気が必要な店もあった。

 この日伺ったのは此処。地元の方をブログが結構ネット上で見かける。鳥居がない、狛犬の代わりに兎が置かれているという古刹・調(つき)神社のすぐ脇にあり、テーブル三卓しかなく、平日2時間ちょっとの営業時間、という老舗の店ということらしい。こういうお店は、ハズレの可能性もあるが、RDBや他所のサイトの評価を信じることにする。

 平日12時ちょっと前にお店に着く。小さいお店だ。引き戸を開けて店に入ると。先客は6人。4人掛けのテーブルが確かに三卓あるものの、実質的には8人座れば満席状態。

 おかみさんは、70歳ちょっとだろうか、入るとすぐ「旦那さん、何します」と聞いて来る。男の客は皆「旦那さん」だ。タンメンとかチャーハンも食べてみたいが、狭い厨房に、それこそおかみさんよりチョイ上くらいのご主人がいる。これでは鉄鍋は振れないだろうと思って、無難に掲題のものをお願いする。

 が。ご主人は小さい厨房を広く使って、きちんと炒めている。わき目もふらずに、という感じだ。手さばきは見事なモンだ。ああ、タンメンにすればよかったかな?

 後からどんどん客が来る。無論、店内には入り切れない。注文は意外にも圧倒的にチャーハンである。が、おかみさんはあっさりこういう。「チャーハン、できないの。終わっちゃった」。ボクの前の客がチャーハン食べてたから、ハナからない、ということでなく、本当に飯が切れてしまったのだろう。そして面白いことに、チャーハンと言った多くの客が「ぢゃあ、タンメン」と頼むことだろう。
 
 しかし、狭い店である。脱いだダウンコートや鞄の置き場に苦労する。えい、どうせ座ることが難しいのだから、隣の席に置いちまえ。

 7分ほどでお待ちど様。結構ラードというか、油が浮いてるな。ではいただきます。

 成程。

 こりゃ「昭和四〇年代」だな。調べると、此処の創業は昭和三十八年だそうだ。1963年。東京五輪の前の年。多少のマイナーチェンジはしているのかも知れないが、おそらくスープの基本は変えていないんだろう。鶏ガラ、豚骨、少々の煮干し、あとは香味野菜とか。

 齢のせいか、こうしたスープに妙に惹かれる。そりゃ平板かもしれない。ただ、シンプルの良さというのは必ずあるものだ。結構浮いていたラードか油も意外に気にならない。むしろあっさりで、じんわり染み入るような味だ。今日の外気温は7度程度だが、汗が噴き出てくる。

 麺は硬過ぎず柔らか過ぎず、適度な硬さの少し縮れたストレート細麺。これでいいぢゃないか。汎用チックと言えばそうだが、このスープにはこの麺がいい。

 チャーシューは厚いのが2枚。脂身が殆どない煮豚。クラシカルな味だ。メンマもどうということはない。大ぶりにカットされた小口ネギは気持ちよい。

 雲呑は・・・餡が少なく、皮は固い。こりゃ失敗だな。とても全部は喰えない。後から来た客が喰ってた「ヤサイラーメン」がやけに気になる。

 雲呑は少し残したが・・・美味しいラーメンだと思う。味というのはそれこそ「味」だけでない。この店の、老夫婦が醸し出す雰囲気や言葉、思いきり昭和しているテーブルや椅子。つまりは店全体で美味しさを作っているのだ。だからこそ、営業時間たったの2時間、駅から結構離れたこの場所に、この古いラーメン店に、これほど多くの客が来る。

 一体、この老夫婦は何のためにラーメンを作っているのだろうか。失礼だがその齢で鉄鍋振りやスープの仕込みはキツイだろう。もう年金だって受け取っているはずだし。

 もしそれが、此処に喰いにくる客のためだけだとしたら。この店のラーメンが喰いたくて来る客のためだけに、作っていてくれるのなら。

 きっとそうに違いない。だからこそ、客は足を運ぶ。

 いつまでも営業して欲しいと願いたい。が、時は誰の上にも平等に過ぎて行く。いつの日か、この店もなくなってしまうのだろうが、一日でも長くとただ思う。

 ※44年近く大久保で営業していた、永福町大勝軒系の めとき  が昨年閉店してしまった。もう一度食べたかった。本当に食べたかった・・・

投稿 | コメント (9) | このお店へのレビュー: 1件

コメント

毎度です~

久々の文芸タッチすね~
しっかりホロッと来ましたわ。

としくん | 2016年1月24日 15:24

うわー、こう言う店大切にしたいですね。
一方、「めとき」はいつかこう言う日が来るのだろうと思ってはいましたが・・・寂しいです。
私は、地方出身者なもんで、銭湯の記憶は深いです。
帰りがけに家族で寄った中華飯店は思い出深すぎ。幼い私は、スープ類が熱くて熱くて・・・飲めなかった思い出があります。嗚呼、昭和は遠くになりにけり・・・。

ああ、こんなところでめときさんの閉店を知るなんて。
さてこちら、一女に通う女子校生から「閉店したんじゃなかったっけ?」
なんて言われましたが、なんだ、健在じゃん!
営業時間の関係で行けないんですが、職場の近くのレジェンド、
ぜひ一度食べておきたい、後悔を残さないために。

GT猫(ひっそり活動中...) | 2016年1月24日 16:22

こんばんは。
時は誰の上に身平等に過ぎて行く、名文句ですね。
永代橋のおはるを思い出しました。

kamepi- | 2016年1月24日 19:45

歴史を感じちゃいますね。
子供の頃はマズイラーメンばかり食べていたので、
ラーメンはあまり好きじゃなかったですよ。(^^;;

NORTH | 2016年1月24日 20:29

こんばんはぁ~
浦和へようこそ!!!
このお店 いいお店ですよね。
ここビールが無いんで、次回は持ち込みで餃子と炒飯いただきます(笑)
で いつ飲みに行きます?

mocopapa(S852) | 2016年1月24日 22:18

どもです。
貴殿のラーメンに対する原風景が垣間見えた気がして興味深いです。
麺よりスープの方が腹もちは良くないと思いますが、微笑ましいというか..
しかし、こうゆうお店は末長く続けて欲しいです。
生涯現役..
高齢化社会の日本に一番必要なことかもしれませんね。

ピップ | 2016年1月24日 22:36

ブルさん、こんにちは。

未だにあるんですね~こういうお店!
末永く続いて欲しいです!いけるかどうか分からないけどBMしました!

尼茶(血圧やや良化^^;) | 2016年1月26日 13:45

ぶるまさん、kaitです。
良き店ですね。
>一体、この老夫婦は何のためにラーメンを作っているのだろうか。
感じは違うでしょうが織田さんを思い出しました。

kait | 2016年1月27日 19:19