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2021年11月24日の大崎裕史の今日の一杯

茨城県常総市水海道

昭和の素ラーメン【ユーザーレビュー】

そういや、たくさんレビューを書いていただいている人の「100点満点」というのはどんなお店のどんな味、どんな記事なのだろう?と気になり、今回は「RAMENOID」さんの100点満点を使わせていただきます。2822レビュー中100点満点は3回あります。そのうちの1回がこちら。2018年2月3日投稿と少し古いですが、私も未食なので当然、“キョウイチ”初登場。気合いの入った『感動の一杯,全力レポ。』をご紹介させていただきます。ちなみに「RAMENOID」さんは、こんな方です。『RDB全国ランキング100位まで訪問済み。RDB関東各都県+福島県+宮城県ランキング20位まで訪問済み。茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,各都県100レポ達成。ラーメン二郎全店訪問達成。』スゴすぎます。そんな方の2822レビュー中のたった3回の100点満点の一軒。名作で傑作です。長いですがお付き合いください。
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感動の一杯,全力レポ。
(長文になるが,悪しからず)

昨年末,常総市にいきなり登録されたこちら。
知り合いのブロガーさんの情報によると,あの名店,「人生」のオヤジさんが対岸に開いた店のようだ。
「人生」と言えば,一時閉店という貼り紙が出され,復活した経緯がある。
再開後は息子さんのオペがメインになり,てっきりオヤジさんの体調が悪いのかと思っていた。

店舗情報を提供してくれた方々によると,営業時間は「11:30~」だとか,「一日20杯程度」だとか,定休日は「雨の日、風の強い日、暑い日、寒い日、俺の体調の良くない日」だとか……。
仕事後に,(まあ,とにかく開いて入れば奇跡……)ぐらいの気で行ったので,信号が青なのを確認した時は,車の中で奇声を上げてしまった(笑)
(注;「人生」と同様,店の前に信号機があり,開いているときは青,閉まっているときは赤なのだ)

店の先の契約駐車場に,「人生」の札がかかったスペースがあったので,そこに車を止める。
道路を戻り,門をくぐると,そこはほとんど民家。
店内に入ると,オヤジさんの姿はなく,先客1名が立ち尽くしている。
不安がよぎったのだが,すぐにオヤジさんが,「ラーメン食べに来たの?車で寝てたから悪いね。」と入ってきたので,ほっと胸をなでおろす。

麺メニューは,「昭和のラーメン」と「昭和の素ラーメン」の2品のみ。
先レポの写真で見る「昭和のラーメン」は,「人生」の「ラーメン」よりも具沢山で実に美味しそうだったのだが,夜でもあるし,オヤジさんの一杯をいただくならまずは基本をと,標記メニューを注文。
何と,「人生ラーメン」と同額の450円である。

カウンターに座り,レジェンドなオヤジさんの作業を眺める。
「人生」はいつも混んでいて,声をかけてみたくても話しかけられる雰囲気はなかったが,今は絶好のチャンス。
恋をする少年の様にドキドキしながらも話しかけてみると,作業をしながらいろいろ答えてくれた。
超嬉しい。
大釜に先客と二人分の麺を泳がせ,平ざるでまとめて湯切り。
スープに泳がせた後,菜箸できれいに麺線を整える熟練の技。
2種のねぎを載せ,最後に小鍋に入っていた油を注ぐ。
素ラーメンなので,これで終わりかと思いきや,煮た肉の塊を載せながら,「これは鴨肉,サービスね。」とのこと。
わーお!

スープを飲む前に,麺からいくのが常なのだが,まずスープからいただいてみる。
一口目からガツンときた。
絶句!
見た目は「人生ラーメン」とあまり変わらないのだが,力強さは段違い。
濃厚な鴨の旨味をもつ出汁,やや甘みを感じるまろやかかつ重厚なたれ,コクを増す鴨油……いや,そんな単純な表現は陳腐に感じてしまうほど,心に突き刺さる味わいだ。
普段,「塩派」を自負し,醤油なら出汁先行のカエシ控えめが好きと書いている私だが,そんな普段の嗜好はぶっ飛んでしまう。
次に麺をすする。
麺は加水高めの細縮れ。
鴨肉を載せるのに少々時間がかかったせいか,やや軟らかめの茹で具合。
おそらく,人生ラーメンと同じ麺を使っている。
この麺,昔ながらと言えば昔ながらなのだが,普通ではない。
玉子麺なのかな?
とにかく味わい深く,実に美味い。
硬めが通だという固定観念をお持ちの方は,軟らかすぎると言うかもしれないが,この麺は,この茹で具合がベストなのではないかと私には思えてしまう。
この麺に濃厚な旨味の鴨醤油スープがしっかりと絡んでくる。
麺をすするごとにズシリズシリと感動が積み重なっていく。
涙が出るほど美味い。
「人生ラーメン」よりも大きい2種のねぎは,スープの力強さに比例している。
麺とスープ,そしてねぎ……これだけで十分だ。
しかし,せっかく載せてくれた鴨肉ももちろんいただく。
実に軟らかく煮込まれていて,肉自体がめちゃウマなのだが,ここであることに気付く。
この鴨を煮込んだ煮汁をタレにしているのではないだろうか。
比類なき力強い醤油スープの正体は,鴨出汁メインで和出汁等様々な旨味を抽出したスープだけではなく,鴨を使ったタレにあるのではないかと思った。
いや,そんな頭で分析してしまってはダメだ。
この美味さ,感動は,オヤジさんの生き様,ラーメンに対する情熱,そのものであり,ラヲタの小賢しい理屈で語るものではないのだと思う。
麺量は140gほどだと思うが,心が十分満たされた。
もちろん,器を傾けて天を仰ぎ完飲。

「昭和の~」と名付けられているが,昭和にこんな美味い鴨出汁のラーメンはなかったと断言できる。
ただ,オヤジさんのハートはまさに「昭和」。
「昭和の男が作る素ラーメン」なら納得できる。
自分目線で言えば,「昭和の男にズシリと響く素ラーメン」かな。
こちらで「昭和のラーメン」を食べた麺友さんが,「拉麺人生の創業者である親父さんが,全て自分の手で納得のいく仕事をするために開いたお店。」と表現しているが,オヤジさんといろいろ会話をしていると,自分が作ったラーメンを客が美味そうに食べる姿を間近で見たり,感想を聞いたりしたかったというオヤジさんの思いもあったのだと思う。

そうすると,高採点を付けることが果たしていいのかという思いが浮かんだ。
このレポを読んで超行列店になってしまったら,オヤジさんの思いはどうなる?
オヤジさんに,「こんな美味いラーメンなのをみんなが知ったら行列店になっちゃいますね。」と言ったら,「忙しくて回らないと思ったら,信号を赤にしちゃうから大丈夫。」とのこと。
それなら,素直に思った通りの採点をさせていただく。
満点……その他は考えられない。
茨城ラーメン界においては,大勝軒の故山岸氏以上と言っていいほどレジェンドなオヤジさんと距離感近く話せた感動とか,開いて入れば奇跡と思って来たのにいただけた感動とかがそう思わせるのかもしれないと,自分の心を冷静に分析しようとしたが,そうではない。
ラーメン自体に満点だ。
こうやってレポを書いているうちにも味が蘇ってくる。
ラヲタを自称する者なら,素材の産地がどうとか,出汁がどうとか,麺の小麦がどうとか,半分以上頭で味わうのが常だが,このラーメンは,そんなものを超越している。

ただ,同時に,この感覚が万人共通のものではないことも分かっている。
主観的であり,全ての方が満点を出すとは思っていない。
茨城に生まれ,茨城に育ち,ラーメンを愛するようになり,1000店を超える様々な店で美味いと言われるラーメンを食べてきた私だからこそ,このラーメンの素晴らしさが分かるのだと思う。

また近いうちに訪れ,具沢山の「昭和のラーメン」をいただきたいと思う。
(いや,レポ関係なく,毎週曜日を決めて来ようかな。)

蛇足;
遠征の方には実に狙いにくい店だと思う。
オヤジさんの気分次第で,いつやっているか全く分からない。
開店したのはいいが,先週は月曜から金曜まで閉めていたと話していたし,鴨が入らなければ作れないとも聞いた。
もう歳だから自分のペースでやりたいとも言っていた。
忙しくなったら信号を赤にしてしまうんだから,代替店を用意しないととてもとても。
幻の店。
開いていたらラッキー。
この店は,それでいいのだと思う。

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お店データ

拉麺 時代遅れ

拉麺 時代遅れ

茨城県常総市水海道元町3459(水海道)

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    大崎裕史
    大崎裕史

    (株)ラーメンデータバンク取締役会長。日本ラーメン協会発起人の一人。東京ラーメンフェスタ実行委員長。1959年、ラーメンの地、会津生まれ。広告代理店勤務時代の1995年にラーメン情報サイト「東京のラーメン屋さん」を開設。2005年に株式会社ラーメンデータバンクを設立。2011年に取締役会長に就任。「自称日本一ラーメンを食べた男」(2024年6月末現在約14,000軒、約29,000杯実食)として雑誌やテレビに多数出演。著書に「無敵のラーメン論」(講談社新書)「日本ラーメン秘史」(日本経済新聞出版社)がある。