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「ワンタンメン(700円)」@江戸豊の写真新・東京横濱ノスタルジックラーメン紀行 其の七

 ボクが二十歳代の時、自分が六十歳になるなんて考えもしなかった。というより、それはあり得ないと思っていた。

 気が付けば「♪愛を止めないで そこから逃げないで」と謳った小田和正は間もなく古稀を迎える。若くてイケメン俳優の代表格だった近藤正臣や草刈正雄は老大名や白髪の参謀役となり、堺雅人主演の大河ドラマの脇を固めている。立川談志が司会で、歌丸、圓楽、こん平、木久蔵なんて噺家たちが大喜利で笑いを取った時代は一体いつの頃だったか。

 「時間」はいつの時代もどんな時も、いかなる理由があるとしても、この世に生きるあらゆるものたちに、等しく平等に流れるんだ。だから、不公平なんか絶対にない。

 だから齢を取ることは、軽い気持ちで許容しないといけないし、何より齢を重ねて良いことも結構あるもんだ。

 たとえば、此処の雰囲気に心を穏やかにされ、何の変哲もない中華そばに懐かしい感動を覚えるなんてことは、ボクがあと数年で還暦を迎えるからこそなんだ。

 たった四つの卓。椅子がきちんと十六脚。仲見世の近くだというのに、外の喧騒からは遮断された空間に、緩い時間が流れる。

 いや、そうではない。何処にいようと、どんなときも、「時間」は同じ長さでしか流れない。だけど、この緩い時間は、紛れもなく事実としてボクは感じる。

 鶏主体の濃い目のスープ。なんかカレー粉のような香辛料のかほりが鼻腔をくすぐる。麺はツルツルで舌に触った感触が妙に嬉しい。バラロールのチャーシュー、メンマ、葱、ナルト巻きなんてのは中華そばの鉄板だ。

 ただ、ワカメはいかん。これは青菜にすべきではないか?

 休日の浅草。高く蒼い空。気温摂氏二十一度。日本語だけはなく、様々な言語が飛び交う。行く人々の瞳は青だったりする。髪の色だってそうだ。金、黒、茶、白、グレー。東京の、というより日本の、代表的な観光地である浅草。都内に五十五年以上も住んでいれば、浅草なんて、ましてこんな晴れた爽やかな秋の休日になんて出向く気はしない。

 だけど。かつて浅草には來々軒があった。明治四十三年創業のその店は、日本初のラーメン専門店だった。浅草は、荻窪あたりと並んで、老舗ラーメンが喰える聖地とも言うべき地。だから、今日、ボクは此処にいる。

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 仲見世の、ほんの一本脇に入った道。「昔ながらの おいしいラーメン」と小さく書かれた貼り紙。昭和四十三年創業の、小さな店。後から来た客七人のうち、六人はボクより年上のようで、注文も一人を除いて皆「中華そば」。だけど。一人だけ、若い女性。一人で入って来た。

 創業五十年近く。そんなに、長く。だから、この店は年配の客だけに受けているわけではないのだ。

投稿(更新) | コメント (6) | このお店へのレビュー: 1件

コメント

ノスタシリーズ楽しく拝見しております。^ ^
浅草は流石に歴史がありますね。
近くにいながらあまり訪れなかったのですが、
最近、面白さを再発見しています。

NORTH | 2016年11月10日 20:24

こんばんはぁ~
日本のラーメンの歴史は浅草から始まりましたからね。
このお店は知らなかったです。来々軒の歴史は調べた事がありますよ。
祐天寺の来々軒、今の代の作るラーメンは昔の味とは違うと思いますが
美味しいですよ。 

mocopapa(S852) | 2016年11月10日 21:44

こんばんは!

ノスタシリーズ毎回楽しみにしています!

>若くてイケメン俳優の代表格だった近藤正臣や草刈正雄は老大名や白髪の参謀役となり、堺雅人主演の大河ドラマの脇を固めている。
同じドラマを見ながら「時が経った」と同じ事を感じています!
横浜の歴史店も調べなきゃ!

尼茶(血圧やや良化^^;) | 2016年11月10日 21:46

昔の笑点をBSで見ていると、
今の笑点の薄っぺらさを実感させられます。
ちなみに私は「Yes,No」が好きです。
いつになくじさまを雄弁にさせる、
それこそが真のクラシック。

GT猫(ひっそり活動中...) | 2016年11月11日 11:00

こんばんは。
ノスタシリーズ続きますね。
写真の撮り方にも哀愁を感じます。

kamepi- | 2016年11月12日 00:11

こんばんは。
ショートエッセイのようなレビュー、
楽しませていただきました。

おゆ | 2016年11月12日 18:00