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「特製中華そば ¥1000」@手打中華そば 大賀110の写真土曜日 晴天 11:25 先待ち4名 後待ち1名 後客4名

〝さすらいの未訪問店めぐり〟

今回は気の向くままに新店、名店、老舗店にとらわれず未訪問店を巡ろうと決めた。

新規開拓には自身に不得手なタイプのラーメンに当たってしまうリスクも大きい。残りの人生あと何食のラーメンを食べられるか分からないので、出来るだけ好みのタイプだけを食べたいと思うのが本音だが、それでは自分の進化は有り得ないと心に決めて新規開拓に乗り出す。

そこで本日は、最近サボりがちだった神奈川県内を中心にRDBにて捜索をはじめる。しかし捜索範囲があまりにも広いので今回は神奈川県の政令指定都市である横浜市、川崎市、相模原市を除いた郊外にターゲットを絞ってみる。中でも未開拓のエリアを重点的に検索していると座間市にあるこちらがヒットした。

お店情報を見るとトップメニューには坦々麺が表記されているが醤油系もラインナップされている。坦々耐性もまだ持ち合わせていない私は醤油系に狙いを定めて初訪問を決断した。

11時半の開店前の現着を目指して午前10時ちょうどに自宅を出発。京王井の頭線で下北沢駅から小田急線に乗り継ぐと1時間ほどで最寄りの相武台駅の予定だったが、偶然にも快速急行に乗車できたので20分近くも時短になった。ほとんどの駅を通過する電車にて人生で初めての相武台駅に降り立った。

大きな駅舎ではないが電車留置線のある南口を出て、商店街を少し進むと飲食店が立ち並ぶ通りにこちらがある。開店25分も前に着いてしまったので行列もなく、慌てた旅ではないので近所を散策してみる。

店を通り過ぎて商店街を先に進むと、食堂やスナックなどの〝食〟の激戦区が一変して〝美〟の激戦区が突如として現れる。そこは、いかにも地元の方に愛されていそうな美容室が立ち並ぶ一帯だ。バス通りでもあるので商店街といった雰囲気とは少し違うが、何とも素敵な町並みだ。しかしこれ以上は見所も無さそうなので定刻5分前に店頭に戻ると行列が出来ており、五番手でそれに続く。

行列の客層も全員が地元の方と思われる。最寄り駅からのアクセスも良いのにRDBのレビュー数や再訪率が少ないのが不思議に思いながら待っていると、定刻通りにご主人自らの案内でオープンとなった。その際のご主人と客の会話からも近所のファンが多い事を確信した。

店内に入り券売機でお目当ての醤油系に味玉をトッピングを追加して発券する。カウンターに座り食券を手渡し店内を観察する。カウンターだけの客席だが、奥には仕切られた製麺室がある。あまり広くはないが計算されたレイアウトの厨房を親子と思われる二人体制で切り盛りされている。お二人の会話の中の親子ならではの厳しいやりとりからも親子だと推測できる。

店内の雰囲気はオシャレな装いでもあるがアットホームな空気も流れる。地元の客層が、そう思わせるのかも知れないが居心地が良い。ただ、その心地よさを邪魔する店内の香りが気になって仕方ない。それは花椒などの強烈な香辛料の匂いだ。四川料理店なら嫌な匂いでは決してないのだが坦々麺を注文してない私には不必要な匂いに支配されそうになる。

意識をそらすために厨房内に目をやるとスチコンなどの最新機器は無いが基本的な厨房機器が設置してある。そのシンプルな道具の中で目に入ってきたのが、打出しの片口付雪平鍋だ。銅製ではないが職人さんの手打ちで仕上げられた鍋は、かなり高価な代物だろう。高級和食店でも見かける事の少ない雪平鍋には店主さんのこだわりを感じずにはいられなかった。

着席後にすぐ先客分の調理が始まっていたが、ワンロット何杯といった感じではない。どうやら坦々麺と中華そばでは、麺の太さも調理工程も異なるのでオーダーによってタイミングを計っているようだ。先客のほとんどは坦々麺を注文しているので、花椒の香りから気をそらしながら待っていると着席後20分で我が杯が到着した。

高台と口縁が染付された白磁の反高台丼の中の姿は、特製なのに派手さの無い謙虚そうな容姿だ。決してボリュームが無いのではなく、ふんだんに盛り付けられた具材たちの品が良く、丁寧さを感じるのが謙虚に見える理由だろうか。あとで触れるが素朴な中に、お茶目な表情も見せる愛くるしい顔立ちだ。

まずは丸鶏由来であろう黄色みを帯び、ドットが大きい鶏油が厚めに浮かんだ栗皮茶色のスープをひとくち。レンゲをスープに沈めると大量の油膜も一緒にすくい上がる。それを口に含むと予想外にサラリとした口当たりに驚く。見た目はオイリー感があるが、重たさはなく口内に張る油膜も少ない。このスープの印象をリードするのは、断然にカエシによるキレだと思う。熟成された醤油の風味とフレッシュな醤油の酸味が同居している醤油ダレが「らしさ」を演出している。そのハッキリしたカエシに負けない鶏ベースの出汁の力強さがあってこそ成立する設計図なのも確かだ。その鶏出汁も過剰なコクやクセを生むのではなく、純粋に鶏の持つ旨みだけを引き出してある。カエシの色の深みで分かりづらいが実は清く澄んだ清湯スープからも、スープを沸騰させずに時間をじっくりとかけて取られたものだと伝わってくる。カミソリのような鋭い切れ味と、ナタのように力強い切れ味を持ち合わせたスープに一瞬で魅了された。

奥の製麺室で手打ちされた中太麺は、手揉みの効果で緩やかなウェーブを見せる。麺上げまで170秒の麺肌からは、溶け始めたグルテンがスープを大胆に持ち上げる。柔らかな口当たりで小麦の香りと甘みを放つ麺の上に、スープの旨みを重ね着した最高のコーディネートだ。強面に見えても本当はしなやかな麺だが、実は芯の強さもあるという捉えどころのない変幻自在な自家製麺だ。手揉みのちぢれも軽めに付けられているので麺を啜る楽しみを損なわず、一気に啜ってもスープの跳ね返りが気にならない。このあたりの計算も見事に私の好みに当てはまった。

具材は特製ならではの豪華焼豚三点盛り。まずは鶏ムネ肉の低温調理はレアチャーシューと呼ぶにはシッカリと加熱してある。しかしこれが私の好みにドンピシャで肉質の繊維を感じながら解けていく食感に悶えそうになる。淡白な白身の旨みを引き立たせるソミュール液のスパイスの力強さも良し。この厚切りも生半可ではない自信の表れ。低温調理と半ナマを履き違えていない安心できる品質だ。

普段は得意でない豚バラ焼豚もこれなら追加したい程の出来映え。脂身の非常に少ない部位ではあったが、赤身の力強い肉質に寄り添うように溶ける脂身が絶品。下味ももボヤけずに浸み込んでいた。この豚バラ焼豚が素晴らしいだけに、もう一枚の豚モモ焼豚は硬めの肉質だけしか表現できずに、豚バラ焼豚の陰に隠れてしまっていた。

堂々たるワンタンは三個入り。大きな肉餡が特徴の日式ワンタンで、私の好みの餡の小さな中式雲呑ではなかった。しかし密度の詰まった肉餡だがフワリとした軽い食感は珍しく、ちゅるりと滑り込むワンタンの皮も美味しい。敢えて香辛料を抑えた味付けも、お子様でも食べやすいのではないだろうか。もちろん大人の私にも十分に満足できるワンタンだった。

追加の味玉はお茶目な焼印が特徴的。いくつかパターンがあるようで今回はヒヨコ印。ご近所の子供たちの誘引効果も狙った商い上手もまた憎い。子供たちにも食べやすいようにか、味付けも控えめで優しい。醤油よりも乾物由来の出汁が効いて、浸透圧で適度に抜けた黄身の水分が熟成を促して薄味だけど味わい深い逸品に仕上がっている。

メンマは鶏清湯スープには欠かせない存在となった穂先メンマを採用。強めの色だが醤油感は穏やかで麻竹独特の発酵臭を活かした味付け。食感も適宜で邪魔にならないアクセントを付ける。

薬味は繊細な仕事が表れた青ねぎで、切り口から染み出す水気が鮮度の良さを物語っている。昼の部開店後の一巡目の客だと、前日の残りの兄貴ねぎに遭遇することが最近は多かったので職人の心意気を感じた。丁寧に細やかに切られたネギは香りも食感も申し分ない薬味だ。

また十字4切の大判な海苔も風味が立って口溶けも良い高品質な海苔を証明している。それを劣化させない保存状態の良さも表れている。

「気が付くと無我夢中で食べ進めていた」と本当は言いたい所だったのだが、どうしても最初に感じた花椒などの店内の匂いが気になってラーメンに集中できない。店内に漂っているのではなく、壁やクロスに染み付いた匂いなのだろう。店内の衛生面や環境は採点には考慮しないと決めてラーメンに対する評価だけにしているのだが、匂いはやはり味の一部なので少し評価を下げてしまった。それでも私の中では高得点なのは嘘ではない。

今回は醤油系の中華そばを食べたので店内の匂いが残念だったが、今後も改善される課題ではないのも理解できる。もし空気の良い場所で、このラーメンを思いきり啜って食べられたらと無理を願ってしまう程に心に残る素晴らしい一杯でした。

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