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清湯野郎のくせにこってりに挑戦するとは!
それにしても、ピリピリ神経尖った感じが伝わってきます。
店主サン何処を目指してるのだろう!
なるとさんのティッシュの現場を見つかったら一発退場ですよ!大人なので食べなさい!
虚無 Becky! | 2019年11月16日 16:31清湯野郎のくせにこってりに挑戦するとは!
それにしても、ピリピリ神経尖った感じが伝わってきます。
店主サン何処を目指してるのだろう!
なるとさんのティッシュの現場を見つかったら一発退場ですよ!大人なので食べなさい!
虚無 Becky! | 2019年11月16日 16:31
〝ニューオープン 探検記〟
実は前日にも初訪問を狙っていた新店なのだが店主さんのこだわりで、当日のスープの出来に納得がいかず昼の部の営業を中止されていたのだ。そこで本日はRDBのお店情報にある twitter欄を確認してから店を目指した。
自宅からでは遠いので笹塚の人気サウナ「天空のアジト マルシンスパ」にて朝を迎えた。朝雲の隙間からこぼれる陽の光と、サウナの蒸気に包まれながら、贅沢な朝のひと時を過ごしてから笹塚駅に向かった。京王線に乗ってしまえば20分で最寄りの京王稲田堤駅に着いてしまった。自宅からでは考えられないアクセスの良さに、我ながら前泊の恩恵を感じられた。
京王線の駅前から南武線の駅へと抜ける細い近道を進んで行くと、駅の裏手の路地に開店祝いの花が並んだ店先を発見した。11時開店の10分前の現着だったが、すでに一人の並びが発生していた。少し出遅れてしまったようだが、その方に続いて二番手での待機となった。
大通り沿いではないが駅近物件の好立地の店頭は、まだ半シャッターで閉ざされているが、店内からはスープの香りが漂っている。チームカラーとでも言うべきエンジ色の看板や、電光式の立て看板が大きく目を引く。そこには「六等星」という店名が書かれているが、肉眼では見えないほどの無数に存在する星の名前を、店名に使われるあたりに店主さんの謙虚さが表れている気がした。そんな事を思っていると定刻を少し過ぎて、店主さんが白い暖簾を掛けてオープンとなった。
店内に入ると入口左手に設置された券売機の前に立った。多くのメニューボタンが設定されているが、オープン当初なので絞り込まれたラインナップとなっている。現時点では数少ないメニューにあるのは、私の得意ジャンルではない〝こってり〟とネーミングされたラーメンだけだった。ここまで来たのだからと開き直って、味玉入りのボタンを押してカウンターに陣取った。卓上に置かれたお冷を飲んで、喉を潤してから店内を見渡してみる。
店外待機中にも聞こえてきたくらいの大音量のジャズが流れる店内は、L字カウンターだけの少数の客席となっている。白と木目を基調とした内装に清潔感があるが、自家製麺をウリにしているだけに厨房内には小麦の跡が荒々しく残っている。店主さんお一人で切り盛りしているので回転は良くないが、リズム感のある仕事ぶりには期待が高まる。文字通りに〝こってり〟を感じさせるスープの匂いが店内にも満ちており、提供前からアペタイザーが始まっているようだった。そんな前菜のような香りの中で待っていると、着席して10分で我が杯が到着した。
その姿は胴が朱赤の切立丼の中で苦手な要素を見せてくるが、とでも丁寧さを感じる盛り付けが印象良く映った。その丁寧さを示す点が、調理工程の中にいくつも見られので順次紹介していきたい。
まずはスープをひとくち。最初に感心したのは器を温める作業だが、今や大半のラーメン店で行われている工程である。しかし店主さんのこだわりは、お湯で温めた器に出来るだけ水滴を残さないようにしていた。それはスープが少しでも薄まる事を嫌うからだろう。それを嫌ったのにも大きな理由があると思われた。厨房内では営業中も常にスープが炊き続けられており、店主さんは事あるごとに煮えたぎるスープに鼻を近づけ香りを確認していたのだ。それだけ魂を込めて炊いたスープなので、わずかな水滴も許せないのだろう。正直言って最初から〝清湯野郎〟の私には合わないスープだと直感したが、店主さんの思いがスープに詰まっていると痛感した。それならば苦手ながらも真剣に向き合わなければならないと、襟を正してレンゲを手にした。
紅檜皮色の液面にレンゲを沈めようとするが、スープの濃度がレンゲの行く手を阻もうとしてくる。かなりの強い手応えを感じながら押し込むと、ドロリとした粘度を見せつけながらレンゲに注がれてきた。しかしこの段階に於いては、濃度に伴った動物系スープ特有の獣臭さを一切感じられない。スープ炊きではボートのオールのような大きな木ベラで豚骨を潰していたのに、細心の注意を払われながら炊かれたスープには臭みひとつない。スープの出来不出来で店を閉めると言うのも大げさではなく、この店主さんならばあり得る事だと思えた。そんな渾身のスープを口に含むと、思わぬ香りが先陣を切った。それは鰹節にも似た魚介系の香味で、実際には使われてないかもしれないが、初見での味わいでは確かに感じられた。その土台を築く動物系スープのコラーゲンの含有量は業界トップクラスで、上唇と下唇が離れようとしないくらいだ。スープだけの塩気とすれば高いが、この後の麺との組み合わせで印象が一変する。
続いて期待の自家製麺を味わってみる。自家製麺らしく製麺所のものではない、プラスチック製の黒いコンテナを麺箱に代用されている。その麺箱に付いた小麦粉や、打ち粉の馬鈴薯粉が手仕込みの大変さを物語っている。茹でる直前には手揉み工程が施され、掌底だけでなく両手の拳を使って麺に命を吹き込んだ。そんな麺を癒着させないように、テボを使わず大鍋で対流させながらの麺茹で工程が続けられる。タイマーに頼らずに自身の指先の感覚だけで、当日の茹で時間を計っているようだった。本日の麺は 225秒で麺上げされたが、平ザルを巧みに操って湯切りされる動きにも安定感があった。ワンロット2杯だけと、盛り付けのタイムラグにも気を使われた麺を一気にすすり上げると、手揉みによる不揃いな口当たりで飛び込んできた。平打ちぢれ麺としては長めの 30センチ程度に切り出しされているので、思い切りすすると麺尻が踊ってしまいスープの飛散が抑えられない。しかし麺肌のランダムなエッジが生み出す口当たりの楽しさが止められず、スープが拡散する事など、お構いなしにすすり続けた。ピンポイントのベスト麺ディションと思われる茹で加減には、全てが計算されていると本当に驚いてしまった。麺肌に溶け出し始めたグルテンと、打ち粉の馬鈴薯デンプンのヌメリが麺のスピード感を加速させる仕組みとなっている。勢いよく唇を刺激しながら滑り込んできた麺は、ちぢれた形状を利用して口の中を暴れ回る。そんな麺を奥歯で抑え込むように噛み潰してみると、硬すぎはしないが芯の強さを残すモッチリとした歯切れで応えてくれる。潰れた麺の断面から溢れ出す小麦の甘みが、スープの塩気を遥かに凌駕するので、圧倒的に麺の甘さが口の中の主導権を握った。すでに苦手なスープの事など忘れてしまっていた。
具材のチャーシューにも、盛り付け直前に切り分けるといった強い拘りを見せてくれた。豚バラ肉を煮豚で仕込まれてあり、かなりの大判厚切りで存在感がある。見た目のインパクトばかりでなく、仕上がりの素晴らしさにも納得してしまった。脂身はとろけるような柔らかだが、赤身の食べ応えはしっかりと残してある。脂身を柔らかくする事に注視しすぎると赤身の旨みが抜けがちになってしまうが、こちらの煮豚は両者の持ち味を兼ね備えている。それでいて味付けも優しく、スープの塩気を借りる事で完成される設計図にも感心してしまった。
幅広の板メンマも見た目には醤油感の強そうに見えたが、実際には薄味で口の中の塩気を抑える効果がある。硬すぎず柔らかすぎずの歯応えがアクセントとなってくれるので、もう少し入っていても良かったくらいの板メンマだった。
追加した味玉は KO負けしたボクサーのようにボロボロな姿に傷ついていたが、下茹での半熟具合は見事に仕込まれていた。褐色の漬けダレは白身の表面だけにしか浸透しておらず、私独自の〝味玉論〟からは随分と外れてしまっていた。もし完全熟成を果たした味玉だったらと想像してみたが、このスープの中では濃厚になり過ぎるのも理解できた。敢えて、卵本来の持ち味だけで勝負された味玉なのは仕方ないのだろう。
薬味の白ネギの小口切りは切り口のみずみずしさからも鮮度の良さを感じられ、清涼感のある香りと爽やかな舌触りがスープに負けじとアピールしていた。青みの小松菜は簡単に言えば茹でられただけなのだが、この自然の旨みと食感がスープの中では存在感を発揮していた。複雑なスープの旨味に少しずつ疲れそうになってきた味覚を、ナチュラルな野菜の味わいが呼び戻してくれる。口直し役を演じてくれた小松菜だったが、追加したくなる青菜には久しぶり出会った気がする。
出生地不明のナルトは初見の段階で出演を辞退してもらい、ティッシュに包んで舞台のそでに捌けてもらった。
中盤以降も自家製麺の素晴らしさに箸のスピードは落ちる事なく、麺と具材は完食していた。しかしスープ単体で飲み干せはせずにレンゲを置いたが、思った程の舌や喉を灼くような刺激は残っていなかった。
やはりスープだけを見ると〝清湯野郎〟の腰抜けオジサンには合わないジャンルではあったが、血気盛んな若者たちには支持されるラーメンなのは理解できた。
結果としてスープは残してしまったが先客も残したスープを見て、店主さんがとった行動が最後に脳裏に焼き付いた。それは下膳した器の中に残ったスープを洗い場の影に隠れて、味を確認し直していたのだ。その姿が最初の一口目から最後の一滴までに責任を持つという、店主さんのラーメンへの情熱を感じられた。たまたま私の偏った嗜好に合わなかっただけでスコアは高くないが、とても清々しい気持ちで店を後にした一杯でした。