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私が青木亭の味を知ったのは、この店、瀬崎店が最初だった。初めの頃に食べた時は置いてあるニンニクやコショウをたっぷり入れてしまい、青木亭の旨さに気付かなかった。ニンニクは好きだ。だが入れ過ぎてはいけない。体にもきっと良くないだろう。なにごとにも適度というものが有る。若いうちは、それに気付かない。男は、歳を重ねる事で気付く事がある。そしてこの夜の青木亭瀬崎店での食事で私は、また一つ気付かされたのだった。仕事も一段落し、さてメシでもと思ったが今日はいつもの部下は公休日。しかたなくラーメン好きのNRCを誘ってみたが、連日のラーメン屋通いのせいで金欠だと言う。「おごってくださいよ」「駄目だ」私は決して奢らない主義なのだ。かくして私は、一人寂しく原付バイクで青木亭へ向かったというワケだ。(青木亭か。久しぶりだな)吹きすさぶ寒風の中バイクを走らせながら、少し昔の事を思い出した。隣に座った若者のカップル。彼女を守る様に隅の席に座らせて、彼氏の方が私の隣に座った。しばらくカップルの楽しそうな会話を聞いていると、待っていた私のラーメンが来た。割り箸を割って、さあ喰うぞといったその時!「ハクション!!」彼氏がクシャミをした。何故か私のラーメンに向かってだ。彼女に向かってクシャミをしてはいけない。それは解る。だが、それなら手で口を押さえればよかろう。何故、私のラーメンにクシャミを入れるんだ!彼氏を見ると目が合った。そして、なにごとも無かった様に彼女との会話に戻った。謝罪は無い。悪びれもせずに彼女とおしゃべり。いや、いいんだ。別に死ぬわけでも無い。クシャミくらいで大騒ぎして店に迷惑を掛けても悪いし、彼女の方も困ってしまうだろう。なにより、この状況で「こら!謝れや!弁償しろ!」と大声を出し、席を立ち上がって若者の彼氏に抗議したらば、完全に”若いカップルに因縁をつけるオヤジ”と見られてしまう。私に残された選択肢は一つしか無かった。我慢して見知らぬ若者のクシャミ入りのラーメンを食べたのだった。タンが入ってなかったのは幸いだった。半キャップを脱ぎ、店内へ入る。「らっしゃいマセ!」威勢の良い声。券売機で食券を購入し席に通される。隣の席には誰も居ない。(今日は安心して食べられそうだ)クシャミも迷惑だが、女性客の香水にも過去何度か苦い思いをした事がある。だから私は、この店ではタバコを吸わない。頼めば灰皿を出してもらえるのだが、私は吸わない。たとえ隣の席に誰も居なくてもだ。被害者で居続けようという厭らしいエゴなのかも知れない。それでも私は、この店では吸わないと決めている。ただ黙ってお冷を見つめてラーメンが来るのを待つ。「お待たせしました。器が熱くなってますのでお気を付けください」「ありがとう」丁寧に手渡されたラーメンをカウンターへ降ろす。ねぎ味噌が好きな私だが、ここでは醤油ベースがお奨めだ。柔らかそうな長ネギジュリエンヌが私の箸を誘っている。その誘惑を箸先で優しくかわして、先にチャーシューをスープに漬ける。木製のれんげで金色のスープを一口。舌の奥でスープの深みを楽しみながら、鼻に抜ける上品な豚骨醤油の香りで食欲を盛り上げる。中盛りを頼んで正解だった。器一杯に頼もしくドッシリと沈んでいる肌色の麺は、今夜の私を満足させてくれるに充分だろう。ネギと麺を併せて口に運ぶと、先ほどの上品な香りと味わいが温度と共に身体中を駆け巡る。一口食べただけで、食欲の興奮が始まる。二口目にチャーシューを少しだけちぎり口へ運ぶ。青木亭の味が脳髄を直撃する。アドレナリンが分泌され体温が上昇し、発汗した。じわりと額に汗をかく。慌てて着ていたブルゾンを脱ぎ、再び箸を握り快楽をむさぼり喰った。と、その時だ。ブルゾンを脱いだせいかと思ったが、何かおかしい。寒い。ふと見ると、出入り口の扉が開けっ放しではないか。食べ終えた客が、扉を閉めずに帰ったのだ。どうもこの店は客層が悪いようだ。マナーを知らぬ不届き者。同じ青木亭のファンとして恥ずかしくさえ思った。「ハクション!」唐突に鼻腔を冷気に刺激され、クシャミが出た。実はまだ風邪気味なのだ。れんげと箸を持ち、両手はふさがっていた。突然の事だったので自分のラーメンにクシャミをかけてしまった。私はいい。自分の唾が自分のラーメンに入っただけ。気になどならない。だが、この芸術品とも言えるラーメンを提供してくれた店員さんはどう思っただろうか・・・・・・。(すまない・・・)残りのラーメンをたいらげながら、昔私のラーメンにクシャミをした若い彼氏くんを再び思い出した。あの時、私は自分のラーメンにコショウを掛けていたのではなかったか。コショウとクシャミ。全てがつながった。(そうか。そういう事か)どうやらあの日、私のとった行動は正しかったようだ。他人に簡単に怒ってはいけない。扉を閉めずに帰った客にも理由が有ったに違いない。もしかしたらブルゾンを脱ぐ私を見て、気を利かせてワザと閉めなかったという事も考えられる。「ご馳走様」「ありがとうございます」店を出る時、店員さんに少しだけ笑顔を見せたが気付いてくれただろうか。帰り道、あれほど冷たかった風が心地好く感じられた。
点数高いね~!相変わらずいい文章だね。今度おごってくれよな!
高得点だね!すげ~前に、すげ~高い物おごった記憶が・・・
NRCへ >今度おごってくれよな! 駄目だ
初めの頃に食べた時は置いてあるニンニクやコショウをたっぷり入れてしまい、青木亭の旨さに気付かなかった。
ニンニクは好きだ。
だが入れ過ぎてはいけない。
体にもきっと良くないだろう。
なにごとにも適度というものが有る。
若いうちは、それに気付かない。
男は、歳を重ねる事で気付く事がある。
そしてこの夜の青木亭瀬崎店での食事で私は、また一つ気付かされたのだった。
仕事も一段落し、さてメシでもと思ったが今日はいつもの部下は公休日。
しかたなくラーメン好きのNRCを誘ってみたが、連日のラーメン屋通いのせいで金欠だと言う。
「おごってくださいよ」
「駄目だ」
私は決して奢らない主義なのだ。
かくして私は、一人寂しく原付バイクで青木亭へ向かったというワケだ。
(青木亭か。久しぶりだな)
吹きすさぶ寒風の中バイクを走らせながら、少し昔の事を思い出した。
隣に座った若者のカップル。
彼女を守る様に隅の席に座らせて、彼氏の方が私の隣に座った。
しばらくカップルの楽しそうな会話を聞いていると、待っていた私のラーメンが来た。
割り箸を割って、さあ喰うぞといったその時!
「ハクション!!」
彼氏がクシャミをした。
何故か私のラーメンに向かってだ。
彼女に向かってクシャミをしてはいけない。それは解る。
だが、それなら手で口を押さえればよかろう。
何故、私のラーメンにクシャミを入れるんだ!
彼氏を見ると目が合った。
そして、なにごとも無かった様に彼女との会話に戻った。
謝罪は無い。
悪びれもせずに彼女とおしゃべり。
いや、いいんだ。別に死ぬわけでも無い。
クシャミくらいで大騒ぎして店に迷惑を掛けても悪いし、彼女の方も困ってしまうだろう。
なにより、この状況で「こら!謝れや!弁償しろ!」と大声を出し、席を立ち上がって若者の彼氏に抗議したらば、完全に”若いカップルに因縁をつけるオヤジ”と見られてしまう。
私に残された選択肢は一つしか無かった。
我慢して見知らぬ若者のクシャミ入りのラーメンを食べたのだった。
タンが入ってなかったのは幸いだった。
半キャップを脱ぎ、店内へ入る。
「らっしゃいマセ!」
威勢の良い声。
券売機で食券を購入し席に通される。
隣の席には誰も居ない。
(今日は安心して食べられそうだ)
クシャミも迷惑だが、女性客の香水にも過去何度か苦い思いをした事がある。
だから私は、この店ではタバコを吸わない。
頼めば灰皿を出してもらえるのだが、私は吸わない。
たとえ隣の席に誰も居なくてもだ。
被害者で居続けようという厭らしいエゴなのかも知れない。
それでも私は、この店では吸わないと決めている。
ただ黙ってお冷を見つめてラーメンが来るのを待つ。
「お待たせしました。器が熱くなってますのでお気を付けください」
「ありがとう」
丁寧に手渡されたラーメンをカウンターへ降ろす。
ねぎ味噌が好きな私だが、ここでは醤油ベースがお奨めだ。
柔らかそうな長ネギジュリエンヌが私の箸を誘っている。
その誘惑を箸先で優しくかわして、先にチャーシューをスープに漬ける。
木製のれんげで金色のスープを一口。
舌の奥でスープの深みを楽しみながら、鼻に抜ける上品な豚骨醤油の香りで食欲を盛り上げる。
中盛りを頼んで正解だった。
器一杯に頼もしくドッシリと沈んでいる肌色の麺は、今夜の私を満足させてくれるに充分だろう。
ネギと麺を併せて口に運ぶと、先ほどの上品な香りと味わいが温度と共に身体中を駆け巡る。
一口食べただけで、食欲の興奮が始まる。
二口目にチャーシューを少しだけちぎり口へ運ぶ。
青木亭の味が脳髄を直撃する。
アドレナリンが分泌され体温が上昇し、発汗した。
じわりと額に汗をかく。
慌てて着ていたブルゾンを脱ぎ、再び箸を握り快楽をむさぼり喰った。
と、その時だ。
ブルゾンを脱いだせいかと思ったが、何かおかしい。
寒い。
ふと見ると、出入り口の扉が開けっ放しではないか。
食べ終えた客が、扉を閉めずに帰ったのだ。
どうもこの店は客層が悪いようだ。
マナーを知らぬ不届き者。同じ青木亭のファンとして恥ずかしくさえ思った。
「ハクション!」
唐突に鼻腔を冷気に刺激され、クシャミが出た。
実はまだ風邪気味なのだ。
れんげと箸を持ち、両手はふさがっていた。
突然の事だったので自分のラーメンにクシャミをかけてしまった。
私はいい。
自分の唾が自分のラーメンに入っただけ。気になどならない。
だが、この芸術品とも言えるラーメンを提供してくれた店員さんはどう思っただろうか・・・・・・。
(すまない・・・)
残りのラーメンをたいらげながら、昔私のラーメンにクシャミをした若い彼氏くんを再び思い出した。
あの時、私は自分のラーメンにコショウを掛けていたのではなかったか。
コショウとクシャミ。
全てがつながった。
(そうか。そういう事か)
どうやらあの日、私のとった行動は正しかったようだ。
他人に簡単に怒ってはいけない。
扉を閉めずに帰った客にも理由が有ったに違いない。
もしかしたらブルゾンを脱ぐ私を見て、気を利かせてワザと閉めなかったという事も考えられる。
「ご馳走様」
「ありがとうございます」
店を出る時、店員さんに少しだけ笑顔を見せたが気付いてくれただろうか。
帰り道、あれほど冷たかった風が心地好く感じられた。