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2018年5月15日の大崎裕史の今日の一杯

山形県鶴岡市三瀬

中華そば(あっさり)

山形県鶴岡市に「日本一ラーメンを売る旅館」がある。正確には「10月から翌年5月までラーメン店に変わる元旅館」だ。その名を「琴平荘」という。旅館業の閑散期(11月から3月)にラーメンを提供し始めたのが2002年。今では10月から5月までがラーメン提供期間。6月から9月まではなんと自家製焼き干しなどの仕込みに充てるのだ。

鶴岡駅から車で30分、すぐ隣は海だ。そんな立地にも関わらず、平日でも開店前に50人が集まる。土日だと全国からこのラーメンを求めて100人並ぶこともある人気店だ。以前からその店の存在は知っていたのだがなかなか行く機会が無く、東京から多数のラーメン仲間が行っているのに未訪だった。今回、ようやくそのタイミングが廻ってきた。前泊して地元の方に車を出していただき、先頭を取るつもりで9時半に店頭へ着くとすでに二人が並んでいた。10時15分頃に常連さんの判断で中へ入る。食べる場所は元旅館ならではの大広間。ここからも海が見える。10時40分に数えたらすでに35人待ち。その頃から注文を取り始め、50分には提供開始。前倒しで営業開始していただけるのは大変ありがたい。

中華そばのあっさり(700円)を注文。登場した中華そばはチャーシューが大きめだが正統派で王道をゆくもの。まずはスープを飲んでみる。じんわりした旨味が口の中に拡がる。優しく身体に染み込んでいき、一口が二口に三口に、、、。レンゲが止まらない。魚介系(焼き干しなど)と動物系(豚と鶏の肉出汁)が見事に融和し、特別な食材が目立つこともなく「芳醇な旨味」として口に運ばれていく。あえて言うなら自家製の焼き干しの風味であろう。

次は麺だ。麺に含んだ水の量を加水率と呼ぶ。通常は30%前後。博多は20%台後半で低加水、喜多方ラーメンが30%台後半で多加水と呼ばれる。こちらは超多加水で50%を超える独特の麺。220gと多めだが食べ終えるとおかわりしたくなるほど。大盛りの330gで頼む人も少なくない。ゆっくり食べてもおいしい麺だ。スープは冷めるとその表情を変え、別の旨味が顔を出す。なので、ゆっくり最後まで味わえる。

具は柔らかくて肉の旨味がするチャーシュー、手間をかけたメンマ、脇役だが海苔やネギもいい。これぞ「究極の普通の中華そば」と呼びたい。毎日のように食べに来る常連さんがいるのも頷ける。

外から見ても、中に入っても「ラーメンも出している旅館」にしか見えない。しかし、開店前に並ぶ人数としては日本有数の「人気ラーメン店」なのである。最大の大型宿題店にようやく来ることができた。しかし、明日にでもまた食べに行きたい。

お店データ

中華そば処 琴平荘

中華そば処 琴平荘

山形県鶴岡市三瀬己381-46 旅館琴平荘(三瀬)

このお店の他の一杯

    大崎裕史
    大崎裕史

    (株)ラーメンデータバンク取締役会長。日本ラーメン協会発起人の一人。東京ラーメンフェスタ実行委員長。1959年、ラーメンの地、会津生まれ。広告代理店勤務時代の1995年にラーメン情報サイト「東京のラーメン屋さん」を開設。2005年に株式会社ラーメンデータバンクを設立。2011年に取締役会長に就任。「自称日本一ラーメンを食べた男」(2024年6月末現在約14,000軒、約29,000杯実食)として雑誌やテレビに多数出演。著書に「無敵のラーメン論」(講談社新書)「日本ラーメン秘史」(日本経済新聞出版社)がある。