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「中華そば 小 ¥800」@つけそば 周の写真平日 晴天 10:45 待ちなし 後待ち8名

〝ひとつのラーメン店が人の流れを変えてしまう〟ことを知った。

先月オープンした板橋区の西台駅にあるラーメン店に行くために10年以上ぶりに乗ることになった都営三田線なのだが、それをキッカケにこの沿線沿いの開拓意欲に目覚めて二週間で三度目の乗車である。この沿線には名だたる有名店が多く存在するが、いずれも趣向とはズレがあると思い込んで訪問を避けていた都内では未開の地だった。

そんな未開の地で店探しをすると人生すら変わるのではないかと期待をさせてくれる店を見つけた。それは私自身がつけ麺が得意でない上に「つけ麺推しの店のラーメンは口に合わない」と云う持論があり、それを未だに克服出来ずにいるのだ。しかしこちらの店はつけ麺推しの店には珍しく無化調を謳われている。過去には出会ったことのないシチュエーションに心躍らせながら向かうことにした。

昼の部の開店前の先着を目指して半蔵門線から三田線に乗り継ぎ初上陸の板橋区役所前駅に着いた。ここからは徒歩ですぐなので迷わずに店先まで来られた。少しだけ奥まったマンションの入口には大きな看板もあり店頭には外待ちのベンチもあるので先頭にてオープンを待つ。

待機中にガラス越しに店内の様子を見ると製麺室があり中にはウン百万円もする自動製麺機、その名も恥ずかしい「リッチメン」が堂々と鎮座されている。もし中国に輸出する場合の表記は「富裕麵」だろうなとくだらぬ事を想像してしまった。

まずは〝無化調〟〝自家製麺〟の情報を入手し待っていると後列も増え始めた。中には女性客もいるので薄味への期待も勝手に高まる。定刻通りにオープンとなり入店し券売機の前で隅っこに追いやられた中華そばの小盛り見つけ出しなんとか発券しカウンターに陣取る。

薄暗い店内を物色するとご家族と思われる三人体制での切り盛り。逆L字のカウンターのみの店内は中待ち席まで用意してある親切な造りとなっている。着席すると茹で野菜のキャベツとモヤシが先付のように出てきた。初心者の私には意味が分からず周囲の動向を見守ることにした。そのまま食べる人もいれば卓上のドレッシングをかけて食べている方もいる。どうするか戸惑っているうちに我が杯が早くも到着した。白磁の反高台丼の中の姿は煮干し特有の水泡が液面に現れた、食べずとも豚骨魚介と分かる表情だ。

まずは芝翫茶色のスープをひとくち。真っ先に感じたのは唇から伝わってきた動物性コラーゲンの粘りでくちびるを閉じるたびに上唇と下唇を粘着させる。エマルジョンの極みとも云える乳化の最高峰を体感できる。苦手な魚粉の粒子も感じるが極微粒子なので乳化したスープの舌触りの邪魔はせずまったりと口元から喉元にかけて覆い尽くす。店内に女性ユーザーが多く見られのも納得がいく塩分濃度の低さも私にはありがたいとこの時は思っていた。

高級製麺機「リッチメン」で打たれた自家製麺を楽しみにいただいてみる。最初の印象は小盛りでも十分に見える麺量に驚く。券売機のボタンにも150gとあるので私にはとっては並盛り以上である。その麺を箸で持ち上げると店内が暗いので分かりづらいが切断面のエッジが立っている事は確認できる透明度が高めの中太ストレート麺。啜ってみるとそのエッジを全く感じないほどに丸みを帯びているように思えるのは麺肌の滑らかさが秀でているからだろう。口当たりの滑らかさからモッチリとした小麦の香りを湛えた歯応え、咀嚼された甘みと共に滑り落ちる喉ごしまで楽しめる〝ゆりかごから墓場〟までを思わせる麺だ。これには小麦粉とかんすいだけでは成し得ない秘策が隠れているように思えた。

具材は煮豚型豚バラ焼豚で大胆に厚切りにされた食べ応えを重視したスタイル。選ばれた部位は豚バラながら赤身のバランスが良く脂身と二分化されたような部分だった。冷たさが残っていたのは残念だったが脂身の持つしつこくない甘味と赤身の持つ肉々しい旨味の両方を味わえる。このジャンルの焼豚ではかなりの仕上がり具合で気に入ってしまった。

メンマは大きさはまずまず揃っているが食感の違いが個性的すぎて戸惑ってしまった。しなやかな口溶けを見せるメンマがあるかと思えば、全く歯が立たない繊維だらけのメンマもいる。それぞれの個性のバランスを考えて盛り付けてあるとは思えず、繊維だらけのものばかりが入っていたらと考えると不安になった。

基本でも入っている味玉半個はしっかりと熟成感もあるが優しい漬けだれの味の浸み込みが程よい。これならば追加したくなる味玉だった。

薬味は青ネギと白ねぎの小口切りが両方添えてあり、ひとかけらだけの鷹の爪が混じっていたのが謎を深める。メンマの味付け用の唐辛子が入ったのだろうか。やはり謎である。

ここで先付で出てきた茹で野菜を見よう見まねでラーメンにインしてみる。しかし私以外の方は全員がつけ麺を食べているので本当の正解は分からずじまいだが。初動では若干の不快感のあるモヤシの匂いだったが冷めると共に薄れてきて食感の妙だけを与えてくれる。キャベツも歯応えだけを残してくれた。

中盤から麺を食べ進めていくと〝無化調〟を謳われているので非天然由来の旨味成分では無いだろうが味覚に変化が起きてきた。それは重たすぎる甘味の存在が舌を痺れさせてきた。スープに感じる旨味のほとんどが甘味によるものなのは最初から分かっていたが、天然由来だけの甘みではなく精製された砂糖による甘味のようだ。これには完全に味覚が麻痺してしまい、甘さの裏に隠れていた強い塩分まで見過ごすところだった。

気がついた時には麺はほとんど食べてしまっていたので脳が満足していた事は間違いなく非天然由来成分が添加されてないのが本当だとすれば砂糖由来の自然界の脅威を知ることになった。この先は甘味と塩分の悪魔のスパイラルを織り成す中毒性を含むスープは飲むことが出来ずにレンゲを置いた。

席を立ち待っている華奢な女性客に席を譲るが手には特製つけ麺の大盛りの食券を持っていた。それを見た時に自身の胃袋の弱さと、現代に背いた味覚について考えさせられる一杯となりました。

投稿 | コメント (2) | このお店へのレビュー: 1件

コメント

「富裕麵」「ゆりかごから墓場までを思わせる麺」...│д゜)ジ~ッ!相変わらず飛ばしていますね。

〝ひとつのラーメン店が人の流れを変えてしまう”まさしくそう思えたつけ麺でした。
自分はつけ麺確率はそれほど高くはないのですが、麺が美味ければつけ麺をいただきます。
旨い麺をどう食わせるか?と思えるのがつけ麺。迷った時には、「オススメは?」と聞けば店主の気持ちがわかることが多いですが、時として「全部オススメだよ」と返されると帰ろうかとも感じてしまうんですよ。

こちらのつけ麺の味は今も思い出せるほど衝撃的でした。
頑者でつけ麺を外したり、はなぶさのつけ麺やとみ田のつけ麺、昨日のひな多のつけ麺の麺は旨かったです。
1つの拉麺や情報、出会いで、人生が大きく変わる瞬間て、ありますよね。

昭和のBecky! | 2019年8月22日 12:40

近い将来つけ麺デビューする日が来る時には、私の偏屈な味覚の理解者だと勝手に思っているベキさんとはアドバイザリー契約を結ぶ方向で現在進行しております。その際はご指南よろしくお願いしますね。
人の流れと言えば確かに久喜市の店には公共交通機関ユーザーの私には行きづらい場所ですが、ベキさんのレビューを見て再訪意欲が抑えられない状態です。

のらのら | 2019年8月22日 22:44