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「鶏香 醤油らぁ麺 ¥780+味玉 ¥100」@noodle kitchen 六九麺の写真平日 薄曇り 13:30 先客5名 後客3名

〝今年の店は今年のうちに〟

大行列の銀座での前食を済ませて年始用の買い物も無事に終えて慌ただしい銀座四丁目交差点を眺めながらコーヒーを飲みホッと落ち着く。そこで連食先を探していると未開拓に近い高円寺駅に今年12月1日オープンのこちらを見つけた。

まず心を惹かれたのが屋号だった。ロックテイストが嫌いでない私はすぐさまに銀座からの移動を開始した。道中で定休日を確認するが情報が少なく臨時休業の心配を抱えながら久しぶりの高円寺駅に降り立った。駅からの道のりも店内のBGMに想いを馳せる。ロックと言ってもラーメンのようにジャンルは豊富だ。プログレのようなクラシックロックの醤油系もあればマニアには堪らないヘビーメタルのような濃厚煮干し系もある。さらには豚骨魚介のようなミクスチャーまである。そんな事を考えながら店へ向かった。

街を歩くと後ろ髪を伸ばした同世代のミュージシャン風のおじさんがママチャリでスーパーに買い物に来ていたり、昼間から寒空の下で缶チューハイ片手にクィーンを口ずさむオジさんがいたりと街中にロックが溢れている。そんな街並みを楽しみながら南へ進むとこちらの看板を見つけた。

周囲にはラーメン店がひしめき合う超激戦区で、そこはまるでラーメン屋のおしくらまんじゅう状態だ。そんな場所にケンカを売って出店するあたりにもロックを感じる。そんな高ぶる気持ちを抑えるようにして扉を開けた。

店内に入り券売機で品定めをするがヘッドライナーは特製のボタンだ。前食が午前中とはいえ連食なので弱気になって基本のラーメンを発券した。欠かせない味玉だけは追加した。ほぼ満席のカウンターに座り店内を見渡す。内装はロック色は感じられずオシャレなスウェーデンポップのようだ。しかも楽しみにしていたBGMには80年代半ばの中山美穂の名曲「生意気」が流れていた。ある意味「生意気」=ロックだと自分に言い聞かせて平静を装う。

そんなポップな店内をロックなお二人で仕切っている。強面で声を掛けずらそうに見えるが物腰が柔らかいお二人の丁寧な仕事ぶりが心に刺さる。カウンターを片付ける時には醤油差しの注ぎ口の汚れを確認して向きを直し、調味料を持ち上げて隅々まで拭きとる姿には感動した。調理場からは真っ直ぐにラーメンに向き合って真剣に盛り付けする様子が見える。食べずともお二人の渾身のラーメンだというのが分かる。

決してロックは悪ではないんだと感じていると着席後6分ほどで我が杯が到着した。オリジナルの白磁の高台丼の口縁には屋号の〝69〟を雷紋柄に見立ててある。クラシカルに見えて実はユニークな丼の中の姿からもロックは伝わってこない。逆に親しみやすい顔立ちで迎えてくれる。

まずは透明感と陰りを併せ持つ渋紙色のスープをひとくち。鶏清湯スープのオーソドックスな香りが控えめながら立ち昇る。じっくりと旨みを引き出した厚みのあるスープに鶏油の香りが絶妙にサポートしている。しっかりとリズムを刻むドラムのようなスープがあればこそギターテクニックの華やかさが際立つのと一緒だ。

鶏ガラベースのコクと旨みが走りすぎないようにスープの基礎を作っている。走りすぎないというのは音楽でも大事な事でドラムが走り出すとバラバラになってしまうのだ。そうならないようにコクと旨みはあるが前に出過ぎていないスープが素晴らしい。醤油ダレも強すぎるキレは削ぎ落として円やかな風味だけを与えている。よって非常に優しく飲みやすいスープに仕上がっている。

麺は穏やかなスープに合わせた中細ストレート麺。少しだけビブラートがかかった麺は箸で持ち上げると柔らかく感じるが実はコシのあるしっかりタイプだ。滑らかな麺肌とハリのある食感を両立させた麺はピンポイントで狙った結果の茹で加減だろう。スープが熱いのでグルテンの変化も楽しみだ。

具材は鶏ムネ肉のレアチャーシューが向こうが透けて見えるほど薄切りで添えてあるが旨みや食感を楽しめる量でないのが残念。切り分けの順番だろうが薄すぎてバラバラになっていたので本来の旨みは感じられなかった。一方の豚バラ焼豚はスープよりもキリッと醤油を利かせた味付けで存在感はあるが塩気が少し強すぎた。豚バラ本来は赤身と脂身のバランスも良いが、もう少し厚切りの肉質を楽しみたかった。特製ならば厚切りだったのだろうか。

追加した味玉は円熟の極み。一日やそこらでは完成しないであろう熟成度には恐れ入った。それでいて唇でも噛めるほどに白身は柔らかく塩気も強すぎない。派手さはないが深みのある味玉は追加して良かったと思える逸品。

メンマは唯一無二の味玉と違って個性がないと言うか欠点も見当たらないどこにでもある優等生的な既製品のように思った。

薬味は白髪ねぎと青みのカイワレだが特筆すべき点は見当たらなかった。

終盤になりスープの温度が下がってくると先程まで感じなかった香味が微かに現れてきた。それはスルメイカのような乾物由来の香味だった。その後ろにも複雑な旨みがあるが全てが大げさではないので正体を把握できない。オーソドックスでクラシカルなスープだと思っていたらロックの要素がちゃんと含まれていた。

勝手にロックの要素をビジュアルや表向きの味に求めていたが、こちらのラーメンのロックのテイストは本質的な精神面でのロックだという事に気付き、全ては事は上辺ではなく本質にあると思わされた一杯でした。

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