レビューやランキングで探す、日本全国ラーメン情報
平日 小雨 13:55 先客5名 後客2名新店めぐりで訪れた立川で、もはやフラれる事に慣れてきてしまった自分がいる。夜のネオン街では嘘でもフラれた事がないと言っておくが、この一週間でラーメン屋にフラれるのが三度目なのだ。設備工事やスープ切れとフラれる理由は様々だが、今回は当分の間を夜営業だけにするという昼ラーを主軸としている私にとっては死刑宣告にもとれる貼り紙で告げられたフラれ方だったのだ。経緯を言えば前泊してまで乗り込んできたエリアだっただけに非常に残念な幕切れとなってしまった。仕方なく降り立ったばかりの立川駅に歩いて戻る途中の路地裏に、ピンク色の怪しく目を惹く看板が目に入ってきた。勿論いかがわしい店の看板だったが、自然と目に付いてしまう淫らな脳になってしまったのだろうか。まだ時間帯は真っ昼間なので少ない理性を働かせて看板から目を離そうと思ったら、その隣にはラーメンの看板が見えたのだ。不思議と引き寄せられるように (ピンク看板ではなく) 近づいてみると、見た事のない屋号のラーメン店ではあったが店頭の立て看板の中に〝無化調〟の文字を見つけた。これはピンク看板が導いてくれた何かの縁を感じずにはいられずに店の中へと飛び込んでみた。昼ピークをとっくに過ぎているのに客入りも多いので、予習なしの初訪問でも安心感がある。店内左手の券売機の前に立つと、豊富なメニューがラインナップされているので勉強不足のせいもあり悩みこんでしまった。マイスタンダードの醤油系を探してみたがネーミングからは醤油を思わせるメニューが見当たらずに困っていると、一番右端に追いやられたように〝煮干しらーめん〟を見つけた。先客人は全員と言っていいくらいに油そばのようなものを食べていたので、それだけは避けたいと思いラインナップの中でも何となくイメージできる煮干しらーめんと味玉のボタンを押してみた。そのままセルフでお冷を入れてから、券売機近くのカウンターに座り店内を見回してみる。決して広くはないL字カウンターだけの店内を、ご主人ひとりで仕切っている。至る所に年季を感じるので、立川駅前に根付いて長年に渡り地元の方に愛されている店なのだろう。本日の客層はかなり若い方が多く、私の半分にも満たないような若者男女が油そばを楽しんでいる。前のロットても油そばらしき調理が行われていたが、具材の切り落としの鶏チャーシューだけでなく整えられた麺の表面もガスバーナーで炙っていたのには驚いた。油そばに対する実に丁寧な仕事ぶりが見られて私のラーメンにも期待しながら待っていると、着席して10分かけて我が杯が到着した。その姿は白磁の切立丼の中で、私の思っていた煮干し系とは異なる景色を見せていた。それは私の望んでいた醤油系ラーメンのような、自然で奇をてらう事のないシンプルな表情で出迎えてくれた。見た目にもうれしい誤算が舞い込んできた上に〝無化調〟となれば、はやる気持ちを抑えきれずに木製のレンゲを手に取っていた。まずは深みの強い弁柄色のスープをひとくち。表層には煮干し出汁特有の細かな水泡がほとんど浮かんでおらず、銀皮のきらめく浮遊豚も見られない。これが本当に煮干しスープなのかと疑問に思いながらレンゲを沈めると木製レンゲならではの軽やかな手応えの中に、質量は軽いが純度は高そうなスープがレンゲの中に注ぎ込まれた。この時点でも煮干し感は強調してはこないが、穏やかな煮干し香が微かに鼻先に届いてきた。ようやく脳が煮干しを認識してきはじめた所でスープを口に含んでみると、苦みやザラつきを全く感じないが煮干しの旨みは確実に存在している。そこには〝らーめん チキント〟という屋号の由来とも思われる〝CHICKEN〟を感じる鶏出汁も共存していているが、どちらが勝るでもなく絶妙なバランスを保っている。この時にレビューのラーメンの分類を「煮干し」ではなく「醤油」の方が適切だと思った。そんな鶏と煮干しの旨みが重なったスープに合わせるカエシには東京唯一の醤油蔵である近藤醸造が造り出す、キッコーゴを屋号とする国産丸大豆のみで仕込まれた醤油が使われている。その醤油の風味を十分に活かしたカエシは、キリッと江戸風に仕上げてあるので塩気と醤油感は強く高めギリギリを攻めてくる。スープだけでは塩気を強めに感じるが、麺や具材との相性を考えての設定なのだろう。それを確かめるために麺へと進んでみる。店主さんの麺上げ工程を見ていて驚いたのは、多種多彩なメニューがあるので使われる麺の種類も違うのだ。麺の茹で時間も違ってくるのは当然でタイマーで時間を計りながら茹でているのだが、茹で時間をセットしてカウントダウン方式で計測するのではなく0秒からスタートするカウントアップ方式で茹で時間を見計らっていたのだ。このやり方だとタイミングを知らせるタイマー音が鳴らないので時間を見過ごしてしまいそうだが、見ている限りでは一度も茹で時間を間違うことなく調理されていた。これは余程の経験と勘がないと出来ない芸当だと思った。それを証拠に流れるような手さばきで、次々とラーメンが仕上げられていた。そんな熟練の技から生み出された麺を箸で持ち上げてみると、麺上げまでジャスト60秒で仕上がった中細ストレート麺が現れた。軽やかな指先の感覚から低加水麺を想像しながら一気にすすり上げると、煮干し系に良くある粉っぽい低加水麺ではなくグルテンの密度の濃さを感じられる麺質が歯応えを良くしている。細身ではあるが食べ応えも十分にあり、箸のスピードが加速する。スープとの組み合わせも自然に思えるが、ありきたりではない新しさも感じられた。具材のチャーシューにも鶏をアピールしてくる内容で、部位の異なる二枚が盛り付けられている。鶏ムネ肉は低温調理でしっとりと仕込まれていて、下味の香辛料や仕上がり具合からは鶏ハムを思わせる。肉厚を残した切り方が食感の良さを引き出している点も高評価だ。一方の鶏モモ肉は柔らかく煮込まれているが、筋肉質の食べ応えがあり肉を食べている喜びを与えてくれる。味付けも過剰ではなく鶏本来の旨みも感じられる絶妙な仕上がりだった。鶏チャーシューの他にも肉部門では鶏を意識した具材がもう一つの入っていた。それは鶏ツミレで常に電磁調理器で温めてあるので、ツミレを噛んだ瞬間の熱い肉汁が印象に残る。生姜やネギの風味を軽やかに抑えてあるので、鶏肉と仕込んだスープの味わいの良さをダイレクトに感じられた。もちろん加熱し過ぎによるパサつきなどないのは、温める温度が適温である証だろう。追加した味玉は非常に黄身の色素の濃い卵が使われていた。エサ由来の色素の濃さだとは思うが味わいも深い卵で仕込まれていたので、追加した甲斐のある味玉だった。しっかりと湯煎で温め直してはあったが、黄身の温度に冷たさが残っていなければ更に高評価だったと思う。メンマは太めのタイプが添えてあったが歯を立てる事なく解けていくほど柔らかく仕上げてあり、そこに繊細に残る麻竹の繊維質も感じられる不思議な食感が楽しい。薬味の青ネギの小口切りからは、切り口に潤いがあり鮮度の良さが感じられ香り高い。ランダムな切り口の玉ねぎアッシェからは、歯応えの違いと玉ねぎの持つ甘みと辛みの両方が感じられてアクセント役として誇示している。大判で添えられた海苔は特筆すべき点はなかったが、磯の香りも口溶けも標準的でスープや麺の邪魔をする事なく寄り添っていた。中盤からも煮干しを感じはするが、スープのジャンルを〝煮干し〟とするには疑問があるので〝醤油〟と分別した。本来ならば得意ではないスープのはずが、気が付けばスープと麺の全てを平らげていた。実際には怪しげなピンク看板に引き寄せられて偶然に見つけた店だったが、 起死回生のリカバリーショットを放つ事が出来たと思える一杯でした。
新店めぐりで訪れた立川で、もはやフラれる事に慣れてきてしまった自分がいる。夜のネオン街では嘘でもフラれた事がないと言っておくが、この一週間でラーメン屋にフラれるのが三度目なのだ。設備工事やスープ切れとフラれる理由は様々だが、今回は当分の間を夜営業だけにするという昼ラーを主軸としている私にとっては死刑宣告にもとれる貼り紙で告げられたフラれ方だったのだ。経緯を言えば前泊してまで乗り込んできたエリアだっただけに非常に残念な幕切れとなってしまった。
仕方なく降り立ったばかりの立川駅に歩いて戻る途中の路地裏に、ピンク色の怪しく目を惹く看板が目に入ってきた。勿論いかがわしい店の看板だったが、自然と目に付いてしまう淫らな脳になってしまったのだろうか。まだ時間帯は真っ昼間なので少ない理性を働かせて看板から目を離そうと思ったら、その隣にはラーメンの看板が見えたのだ。不思議と引き寄せられるように (ピンク看板ではなく) 近づいてみると、見た事のない屋号のラーメン店ではあったが店頭の立て看板の中に〝無化調〟の文字を見つけた。これはピンク看板が導いてくれた何かの縁を感じずにはいられずに店の中へと飛び込んでみた。
昼ピークをとっくに過ぎているのに客入りも多いので、予習なしの初訪問でも安心感がある。店内左手の券売機の前に立つと、豊富なメニューがラインナップされているので勉強不足のせいもあり悩みこんでしまった。マイスタンダードの醤油系を探してみたがネーミングからは醤油を思わせるメニューが見当たらずに困っていると、一番右端に追いやられたように〝煮干しらーめん〟を見つけた。先客人は全員と言っていいくらいに油そばのようなものを食べていたので、それだけは避けたいと思いラインナップの中でも何となくイメージできる煮干しらーめんと味玉のボタンを押してみた。
そのままセルフでお冷を入れてから、券売機近くのカウンターに座り店内を見回してみる。決して広くはないL字カウンターだけの店内を、ご主人ひとりで仕切っている。至る所に年季を感じるので、立川駅前に根付いて長年に渡り地元の方に愛されている店なのだろう。本日の客層はかなり若い方が多く、私の半分にも満たないような若者男女が油そばを楽しんでいる。前のロットても油そばらしき調理が行われていたが、具材の切り落としの鶏チャーシューだけでなく整えられた麺の表面もガスバーナーで炙っていたのには驚いた。油そばに対する実に丁寧な仕事ぶりが見られて私のラーメンにも期待しながら待っていると、着席して10分かけて我が杯が到着した。
その姿は白磁の切立丼の中で、私の思っていた煮干し系とは異なる景色を見せていた。それは私の望んでいた醤油系ラーメンのような、自然で奇をてらう事のないシンプルな表情で出迎えてくれた。見た目にもうれしい誤算が舞い込んできた上に〝無化調〟となれば、はやる気持ちを抑えきれずに木製のレンゲを手に取っていた。
まずは深みの強い弁柄色のスープをひとくち。表層には煮干し出汁特有の細かな水泡がほとんど浮かんでおらず、銀皮のきらめく浮遊豚も見られない。これが本当に煮干しスープなのかと疑問に思いながらレンゲを沈めると木製レンゲならではの軽やかな手応えの中に、質量は軽いが純度は高そうなスープがレンゲの中に注ぎ込まれた。この時点でも煮干し感は強調してはこないが、穏やかな煮干し香が微かに鼻先に届いてきた。ようやく脳が煮干しを認識してきはじめた所でスープを口に含んでみると、苦みやザラつきを全く感じないが煮干しの旨みは確実に存在している。そこには〝らーめん チキント〟という屋号の由来とも思われる〝CHICKEN〟を感じる鶏出汁も共存していているが、どちらが勝るでもなく絶妙なバランスを保っている。この時にレビューのラーメンの分類を「煮干し」ではなく「醤油」の方が適切だと思った。そんな鶏と煮干しの旨みが重なったスープに合わせるカエシには東京唯一の醤油蔵である近藤醸造が造り出す、キッコーゴを屋号とする国産丸大豆のみで仕込まれた醤油が使われている。その醤油の風味を十分に活かしたカエシは、キリッと江戸風に仕上げてあるので塩気と醤油感は強く高めギリギリを攻めてくる。スープだけでは塩気を強めに感じるが、麺や具材との相性を考えての設定なのだろう。
それを確かめるために麺へと進んでみる。店主さんの麺上げ工程を見ていて驚いたのは、多種多彩なメニューがあるので使われる麺の種類も違うのだ。麺の茹で時間も違ってくるのは当然でタイマーで時間を計りながら茹でているのだが、茹で時間をセットしてカウントダウン方式で計測するのではなく0秒からスタートするカウントアップ方式で茹で時間を見計らっていたのだ。このやり方だとタイミングを知らせるタイマー音が鳴らないので時間を見過ごしてしまいそうだが、見ている限りでは一度も茹で時間を間違うことなく調理されていた。これは余程の経験と勘がないと出来ない芸当だと思った。それを証拠に流れるような手さばきで、次々とラーメンが仕上げられていた。そんな熟練の技から生み出された麺を箸で持ち上げてみると、麺上げまでジャスト60秒で仕上がった中細ストレート麺が現れた。軽やかな指先の感覚から低加水麺を想像しながら一気にすすり上げると、煮干し系に良くある粉っぽい低加水麺ではなくグルテンの密度の濃さを感じられる麺質が歯応えを良くしている。細身ではあるが食べ応えも十分にあり、箸のスピードが加速する。スープとの組み合わせも自然に思えるが、ありきたりではない新しさも感じられた。
具材のチャーシューにも鶏をアピールしてくる内容で、部位の異なる二枚が盛り付けられている。鶏ムネ肉は低温調理でしっとりと仕込まれていて、下味の香辛料や仕上がり具合からは鶏ハムを思わせる。肉厚を残した切り方が食感の良さを引き出している点も高評価だ。一方の鶏モモ肉は柔らかく煮込まれているが、筋肉質の食べ応えがあり肉を食べている喜びを与えてくれる。味付けも過剰ではなく鶏本来の旨みも感じられる絶妙な仕上がりだった。
鶏チャーシューの他にも肉部門では鶏を意識した具材がもう一つの入っていた。それは鶏ツミレで常に電磁調理器で温めてあるので、ツミレを噛んだ瞬間の熱い肉汁が印象に残る。生姜やネギの風味を軽やかに抑えてあるので、鶏肉と仕込んだスープの味わいの良さをダイレクトに感じられた。もちろん加熱し過ぎによるパサつきなどないのは、温める温度が適温である証だろう。
追加した味玉は非常に黄身の色素の濃い卵が使われていた。エサ由来の色素の濃さだとは思うが味わいも深い卵で仕込まれていたので、追加した甲斐のある味玉だった。しっかりと湯煎で温め直してはあったが、黄身の温度に冷たさが残っていなければ更に高評価だったと思う。
メンマは太めのタイプが添えてあったが歯を立てる事なく解けていくほど柔らかく仕上げてあり、そこに繊細に残る麻竹の繊維質も感じられる不思議な食感が楽しい。
薬味の青ネギの小口切りからは、切り口に潤いがあり鮮度の良さが感じられ香り高い。ランダムな切り口の玉ねぎアッシェからは、歯応えの違いと玉ねぎの持つ甘みと辛みの両方が感じられてアクセント役として誇示している。
大判で添えられた海苔は特筆すべき点はなかったが、磯の香りも口溶けも標準的でスープや麺の邪魔をする事なく寄り添っていた。
中盤からも煮干しを感じはするが、スープのジャンルを〝煮干し〟とするには疑問があるので〝醤油〟と分別した。本来ならば得意ではないスープのはずが、気が付けばスープと麺の全てを平らげていた。
実際には怪しげなピンク看板に引き寄せられて偶然に見つけた店だったが、 起死回生のリカバリーショットを放つ事が出来たと思える一杯でした。