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2022年11月9日の大崎裕史の今日の一杯

北海道札幌市西区発寒南

スペシャルら~めん 1,300円

「新横浜ラーメン博物館」創館(1994年)当時はインターネットの“イ”の字も登場してなかった。いや、世の中では大学の一部などでその存在を知られていたのかもしれない。情報収集手段があまりなかった時代なのでラーメン好きにとってのラーメン情報はテレビや雑誌で紹介される一部のマスコミ情報のみ。
都内のラーメンはそこそこ食べて『ラーメン大好き人間』を自称していた私だったが、全国レベルになるとほとんど知識も情報もなかった。出張で地方に行っても書店でグルメガイドを立ち読みし、そこに載っているラーメン店を記憶して食べに行くのがせいぜい。ところがラー博には『ラーメンデータベース』なるものが存在し、全国のおいしいラーメン情報がたくさんあるらしい、という噂を耳にしたことがあった。どこかのお店でそんなのが飾ってあるのを見た、という話を聞いたのだ。

ラー博が開館して2年くらいした頃、店舗が入れ替わるらしい、という情報が流れてきた。『ラーメンデータベース』を持つラー博は、どんなお店を登場させるのだろう?興味津々、ワクワクドキドキである。

新しく登場する店は札幌の「爐(いろり)」というらしい。もちろん私はサッパリ知らなかった。札幌からは「すみれ」がすでに出てきているのに、何故また札幌なんだろう?と普通に疑問に思った。同じようなお店を誘致しても比較されるばかりじゃないのだろうか?頭にクエスチョンマークをたくさん浮かべて、まずは食べに行ってみた。
すると度肝を抜かれた。松田優作張りの「なんじゃこりゃ〜」と叫んだかもしれない。スープが真っ黒なのだ。

名付けの名人がいたなら『札幌ブラック』とでも付けていたかもしれない。いまや、全国のあちこちに「○○ブラック」というラーメンが存在しているが“ブラック”の先駆者なのだ。

喜多方ラーメンから派生した会津の小さなラーメングループで育ったラーメン小僧が東京に出てきていろんなラーメンと出会い、『井の中の蛙』が大海を知ることになったわけだが、東京ですら『小さな大海』だったわけだ。世の中にはまだまだ知らないラーメンが存在することを目の当たりにし、打ちのめされた。そしてますます“ラーメン”という大海原を大航海したくなった。

さて話を「爐」に戻そう。その真っ黒いスープはラードでもやしや玉ねぎ、そして貝やイカなどの魚介類を黒くなるまで炒めたもの。黒い油の幕の下には醤油スープが存在した。いやはや驚いた。

後に『ご当地ラーメン』という言葉に対抗して、『ご当人ラーメン』という言葉が登場した。複数の同じようなラーメンが、ある固まった地域に存在するのを『ご当地ラーメン』と呼んでいたわけだが、他には無い個性的なラーメンを提供するお店を『ご当人ラーメン』という呼び方をし始めたのである。まさに「爐」は唯一無二の存在だった。
昔のラーメン本を読むと「爐」のページにはこんなことが書いてある。「ラーメンのウマさはスープの温度だ!食べ始めは78度、食べ終わる頃に65度になるのが良い!」
「爐」のラーメンはもっと熱々だった記憶があるが店主がそう言うのだから、そうなのだろう(笑)。

そんな希有なラーメンがまたラー博に戻ってきた。2022年11月4日(金)~11月24日(木)の3週間。ご当地ラーメンではなく、『ここでしか食べられないご当人ラーメン』。スペシャルら〜めんを注文。通常の醤油ら〜めんは野菜をラードで焦がしたもの。スペシャルは野菜+魚介(イカ、ホタテ貝、つぶ貝、あさり等)。麺は西山製麺の多加水熟成縮れ麺。スープは豚骨ベースの白湯に焦がしラードが蓋をしている。何度か食べているが出てきたときはやっぱりギョッとする。しかし食べ進めていくと慣れてきて、おいしいラーメンだ。2回目があったら醤油ら〜めんも食べてみたい。

お店データ

らーめん爐

らーめん爐

北海道札幌市西区発寒3条5-3-11(発寒南)

このお店の他の一杯

    大崎裕史
    大崎裕史

    (株)ラーメンデータバンク取締役会長。日本ラーメン協会発起人の一人。東京ラーメンフェスタ実行委員長。1959年、ラーメンの地、会津生まれ。広告代理店勤務時代の1995年にラーメン情報サイト「東京のラーメン屋さん」を開設。2005年に株式会社ラーメンデータバンクを設立。2011年に取締役会長に就任。「自称日本一ラーメンを食べた男」(2024年6月末現在約14,000軒、約29,000杯実食)として雑誌やテレビに多数出演。著書に「無敵のラーメン論」(講談社新書)「日本ラーメン秘史」(日本経済新聞出版社)がある。