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2020年6月9日の大崎裕史の今日の一杯

東京都新宿区新宿御苑前

そば(醤油)

「新しい生活様式」になかなか移行できずに新店発掘よりも好きな既食店の新味や再食を選ぶ傾向にある。本来のラーメンスタイルは週15杯くらい食べて、その半分くらいを情報発信するパターンだった。最近は、「ここは間違いなく紹介できる」もしくは「今、この時に食べたい」という欲求で動くことが多い。まだまだお店で食べるのは週に4-5杯程度。移動も極力控えている。通販購入で家で食べるのが週10杯くらい。「おうちラーメンバンク」という通販ラーメンサイトを始めたこともあり、通販の試食にも余念が無い。
そんな中、大好きな「金色不如帰」(新宿御苑前)が長い休業期間から復活したという話が流れてきた。しかも二本柱の「醤油」に関してはリニュアルしたという。元々頻繁に味を変える(進化させる)店主だったのでこの長い休養期間があれば味を変えるくらいのことはしてくると思っていた。早速行ってみた。開店15分位前に着く予定が11時3分着。開店に間に合わなかった。行列店にこういうタイミングで到着するのは一番待ち時間が長くなるパターン。外待ち11番目。行列は間を空けて並ぶように指示され、店内カウンターを少し減らし、隣の人との間に衝立が置かれるようになった。ラーメン界には「一蘭」という先駆者があり、このスタイルは増えていきそうだ。食べ終えて店出るまでにかかった時間は50分だった。
そば(醤油)900円を注文。個人的な印象としてはプチリニュアルではなく、大きな変更に感じられた。ひと言で言えば今までは「蛤」が中心に感じられたが、今回は茸中心のグアニル酸を感じた。しかし、ゆっくり味わえば、いろいろな味や工夫が見えてくる。ベースが随分変わったと思い、店主に確認。店内ではあまり話せないのであとでメールで聞いた。「豚から鴨」へ大きくシフトしたようだ。これは大きな様変わり。「スゴく変えた」と思うのも当然だ。あまり鴨感に気が付かなかったが、「鴨をあえて全面に出さないように」調整したんだとか。味覚がおかしくなったのかと思って焦ったがその言葉を聞いて一安心(笑)。
次ぎに和出汁の見直し。鴨を活かしながらも鴨を主張させず、奥行きを感じる構成、、、、って店主のきめ細かさにはいつも感服するが、さすがすぎてそこまでは気が付かない。
そして油だがラードから鴨の香油へ変更。「鴨を全面に出さないために鴨脂から香味油を作った」という化学の教授と話をしてるみたいなやり取りだ。(笑)それによって、トリュフやポルチーニの薫りや醤油ダレ、全体の香りの拡がりをより感じることができるように、とのことである。いや〜深い、奥深い。哲学的ですらある。
トッピングも変わった。イベリコ豚から鴨ロースロースト昆布締めへ変更。そして生のスライスマッシュルーム。面白いのが蕪の鶏スープ煮込みのロースト。追加したいくらい。そしてもともと使っていた、ポルチーニオイル、ポルチーニフレーク、黒トリュフのタルトゥファータは以前同様使用しているので私には「茸」=グアニル酸の旨味が前面に感じられたのかもしれない。
毎回のリニュアルでホントにビックリさせられる。「昔懐かしい中華そば」と比べるとジャンルが違う食べ物のようだ。しかし、これでも「金色不如帰」にとっては、次の進化へのワンステップでしかないのだろう。恐るべし!

大崎裕史
大崎裕史

(株)ラーメンデータバンク取締役会長。日本ラーメン協会発起人の一人。東京ラーメンフェスタ実行委員長。1959年、ラーメンの地、会津生まれ。広告代理店勤務時代の1995年にラーメン情報サイト「東京のラーメン屋さん」を開設。2005年に株式会社ラーメンデータバンクを設立。2011年に取締役会長に就任。「自称日本一ラーメンを食べた男」(2024年6月末現在約14,000軒、約29,000杯実食)として雑誌やテレビに多数出演。著書に「無敵のラーメン論」(講談社新書)「日本ラーメン秘史」(日本経済新聞出版社)がある。