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「鴨らぁ麺 ¥780+煮卵 ¥100」@らーめん 鴨to葱の写真平日 薄曇り 13:50 店内満席 待ちなし

ランチタイムのど真ん中の12時20分に上野御徒町に降り立った。お目当ての店があったのだが大変に人気があるらしく近所で働く友人から行列の話をよく耳にする。とりあえず店へと向かってみる。以前よりも外国色が増したガード下に異様な行列を見つける。店内の様子は分からないが表には20名近い行列ができている。薄曇りだが時々差す日差しが中年の身体には堪えるのでひとまず並ぶのを断念しカフェにて涼を取り体力を回復する作戦に変更する。

しかし純喫茶がいまだに根付くアメ横を含むガード下で大手のカフェは存在感がなく派手な看板が乱立する中で見つけるのは難しい。なので昔ながらの喫茶店で時が経つのを待つ。ジャズが流れる店内の別珍生地のソファに身を沈めるとキライじゃない雰囲気。昭和から時が止まっているようだが時代の流れか禁煙席があるのもありがたい。一時間と少し涼んだので行列がないことを祈りながら再び向かう。

作戦通りに店外に人影はなく店外の券売機にて食券を購入し入店しようとしたが、店内のスタッフから外でお待ちくださいとの案内があった。店内は満席のようだ。

しかし2分ほどで店内に案内される。片付け待ちだったようだがその席以外は満席である。スタッフに食券を手渡す際に「本日の葱」を三種類の中からふたつを選ぶよう言われる。白太葱と季節のネギと刻み玉葱だったろうか、刻み玉葱があまり得意でない私は前者のふたつでお願いする。

店内は上野のガード下らしからぬオシャレ度で内装だけでなく荷物置きなどの心づかいもうれしい。三人体制で女性ひとりがホールを担当している。調理場は二人の男性が切り盛りしている。着席後の待ち時間は少なくわりとすぐに待望のラーメンが現れた。

まずはあまりの器の小ささに驚く。まるでミニラーメンのようである。だがそれは気高く気品があり美しく私を出迎える。追加した煮卵は別皿で提供されていたので写真撮影用にイン。

驚きと感激の中、多めの鴨油に守られたスープをレンゲでひとくち。あぁ、なんて美味いスープなんだろう。久しぶりの衝撃が舌を通じて全身を駆け抜けた。優しい旨みに変化する鴨自身の甘味と醤油の持つ熟成感と塩味と芳ばしさ。シンプルなのに奥深いという矛盾したスープがここにあった。

こちらのスープの材料は鴨、葱、水のみと書かれてあるが、世界中でも牛肉と香味野菜のブイヨンや鷄と白ねぎで作る中華スープ、鰹節と昆布のお出汁などシンプルな動物由来と植物由来の旨みの組み合わせだけで成立しているものがあると聞くが正にこのスープがそれである。

スープを口にする前は見た目からも蕎麦屋の鴨南蛮を想像していたがそれとは明らかに違っていた。例えが見つからないが強いて言うなら鴨なべの出汁のように力強さと繊細さが同時に宿っている。野球界ならばイチロー選手のようなスープ。真鴨ではなく合鴨の丸鷄で取られてあるようで真鴨や青首鴨のような野性味は無いのでワイルドとは思えないので大谷選手のようなスープとの表現がより近いかも。これも持論。

レンゲでたったひとくち飲んだだけで身体中の細胞が活性化され喜んでいるのが分かる。シンプルな旨味構成が脳も刺激し舌以外の感覚も研ぎ澄ます。最初に奥深いと表現したが間違っていたかも知れない。味が複雑ではないので奥深いと言うよりは深みは浅いが無限大に横に広がり続ける感覚かも。他には類を見ない。あまりの興奮に我を見失ってしまった。

興奮する脳を鎮めて麺に取り掛かる。スープの原価が高いのだろうか最低限に張られたスープの中に一糸乱れず整列した麺は麦芽色の全粒粉ストレート角平打ち麺で箸でつかむとスープの中でギリギリ絡み合わずに持ち上がってくる。これ以上スープが少ないとこの喉ごしは生まれないだろう。

全粒粉ならではの麺肌が出汁をまとい喉奥へと滑り込んでくる。鴨油と相まった小麦の甘さと香りが田舎蕎麦をも想わせる。パツンとした歯切れも軽快で全身が喜ぶ。茹で加減も抜群。

具材は煮卵の名にふさわしく褐色に黒く光る。しかし見た目に相反し日焼けした白身は耳たぶのように柔らかく浸透圧による硬化もしていない。もちろん黄身もネットリと熟成しながらも味わい優しいギャップに驚く。

自分で選んだ二種類の薬味のうちのひとつの太白葱だが表面には焦げ目が付けられ更に仕事が施され焼き浸しにされているので辛味は抜けて甘味が増しスープと一体となる。もうひとつの夏らしい薬味はいずれも細切りの茗荷と大葉、あとは水菜だっただろうか麺と合わせると爽やかな夏っぽさを演出してアクセントとなる。

合鴨ムネ肉のコンフィ、低温調理によるオイル煮はロゼ色が美しく肉質も良かったのだが皮目の油身の食感が私には今ひとつだった。フレンチの鴨肉のソテーやグリエのようにとは言わないが皮目を焼いて香ばしさを出してからオイル煮したらクニュっとしたテクスチャーが気にならなかったかも。あくまで個人の感想です。

さもあれ、あっと言う間に驚きと感動で満ちたまま完食完飲していた。飲み干したあとの余韻も自然なままで素材の良さが受けて取れる。こんな所にと言っては失礼だが私の知ってるころの上野界隈では考えられないほどの品の良さと質の良さ。

日本蕎麦の名店が数多い上野界隈で日本蕎麦を思わせるもしっかりした動物由来ベースのスープがそれとは一線を引き唯一無二のラーメンとなっている。ラーメンとしては亜種に分類されるかも知れないが久しぶりに好みの味に出会えたことに感謝する。

久々の大満足で席を立ち、店をあとにする時にふと頭をよぎったことがあった。もしこの鴨出汁のラーメンに青みとしてクレソンが入っていたなら我々中年層は映画版失楽園のワンシーンを必ずや思い出すことだろうと感慨にふける一杯でした。

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