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「得のせ 中華そば(小)¥1200」@中華そば 葉山の写真平日 薄曇り 11:05 待ちなし 後待ち10名

〝新春うまいものめぐり〟

と題しまして。昨年お世話になって自分が美味しいと思った店だけを巡る贅沢な一週間を過ごそうと決めた。新店めぐりの楽しさもあるが、好みのラーメンとの出会いは千載一遇。なので今週は自分の好きなラーメンだけを食べに各地を廻っているのだ。

本日は新宿区にて美味しかった店の記憶をたどる。昨年中に新宿区内で訪れた店は16店舗だが、その中で、私自身の美味しいと思う採点基準の85点を超えた店は2店舗しかない。その内の最高点を付けたのが、こちらのラーメンだ。過去二回の訪問では、どちらも安定感のある好みの味を再現してくれる。

前回は二回とも昼営業の遅めに時間に訪問した為、追加の焼豚が売切れだったのを思い出し、今日は開店前の先着で、ぜひ好みの焼豚を追加したいと思い、オープンの1時間前に副都心線に乗り込んだ。東新宿で大江戸線に乗り換えると最寄りの牛込柳町駅までは二駅だ。改札を出て大きな交差点を南へ進むと、ずっと工事が続く外苑東通り沿いに、こちらが見えてきた。

開店30分近く前の現着で、しっかりと作戦通りに先頭をキープ。早すぎるとは思ったが、わずか3席の外待ちプレミアムシートを手に入れる為には当然の時間である。すると5分もせずに外待ちイスが埋まり、立ち待ち行列が並び始めた。早い現着で大正解。

ますます冬の寒さが強くなってきた店頭で待っていると定刻よりも10分も早く、ご主人が出て来て「寒いので中でお待ちください」と案内され店内へ。正直、外とあまり変わらない室温だったが、その気持ちに心はものすごく温まった。

店内に入り、券売機の前でも迷う事なく、得のせを発券した。具材が増える事を考慮し麺の量を小盛りにして自主規制をかけた。厨房サイドのカウンターに座り店内を見渡す。ガラスの小窓越しには大量の煮干だしがタッパーウェアに積まれている。その景色と完全にリンクする煮干し香が店内を満たしている。狭い店内だが本日も、おひとりで調理から配膳までの全てをこなすのは、かなりの労力だろうと察する。

定刻の開店時間になるまでも調理場では麺打ちの仕込みが行われている。麺生地を年季の入った短く太い青竹を使って麺を打ち続けている。それは腕で押し込んだり、時には足を掛けて体重を乗せたりと全身を使って麺にコシを与える。

定刻になって店先に営業中の看板を立てると、再び麺打ち作業に入った。開店後すぐに調理とはならないが、この特別リングサイドからの眺めならば待ち時間も苦にならない。むしろ、しばらく眺めていたいほどだ。定刻から10分程で麺打ちが終わり、ようやく調理が始まった。

まずは、打ち立ての切り揃えられた麺に、手揉みを施して一人前ずつに小分けをするのだが、この工程が麺に命を吹き込む儀式のようで、作り手の魂が宿る瞬間に思える。その麺を茹でる間にスープと具材の準備をするのだが、かたまり肉の焼豚に包丁が入った瞬間に、切り目から立ち昇った湯気に興奮してしまった。その湯気は出来立ての焼豚の証でもある。それを見たとかに早くから並んで本当に良かったと心の底から思った。

そんな感動をかみしめていると、ご主人自らの配膳にて我が杯が到着した。木製のお盆に乗った切立丼の中の姿は、得のせならではの大迫力で圧倒的な力強さを見せる。圧巻なのは扇状に広がる海苔の立体感だろう。非常に狭いカウンターにギリギリで収まる位の占拠率だ。

まずは半濁した明るめのキツネ色のスープをひとくち。最初に感じるのは味覚ではなく、反射的に熱いスープだという事だ。夏場でも熱いスープが好きなので、今日の熱々のスープがありがたい。口内で感じる味覚の第一印象は、煮干しの旨味と、やや強めな塩分だ。前回よりも煮干し系のスープが動物系スープよりも幅を利かせていると感じる。合わせたスープのバランスのせいなのだろうが、カエシの醤油の塩分ではなく、煮干し自体が持っている塩気が出過ぎたのだろうか。

打ち立ての自家製麺を箸で持ち上げてみる。麺一本に太さは無いが、ずっしりと重みがある。密度の濃そうな麺はコシを残した茹で具合で、麺上げまで120秒くらいだろうか。いざ口に運ぶと、表面にはグルテンが溶け出し始めているので想像以上の滑らかさがある。束で啜ると麺が短いので、啜っている感覚は少ないが、口に飛び込んでくると口内を暴れまわり、上あごの内側をくすぐるように滑り落ちて行く。これは味覚や嗅覚だけでは表現しきれない旨さの一因だ。滑りの良い麺を奥歯で捉えると、すり潰されたグルテンが甘みとなって新たな一面を見せてくれる。変幻自在な自家製麺ならではの楽しみだ。

具材は、得のせなので焼豚は4枚入りとなっているが、どう見ても5枚入っていたのは大きさによって枚数が変えられているのだろう。そんな気使いにも人柄や店柄が表れている。そんな焼豚は豚肩ロースを煮豚型で調理してある。出来立て切りたての焼豚を口に含むと、作りたてだが熱くはなく、肉汁が流れ出ない程度の温度にまで下げてある。たしかに熱々の状態の焼豚をカットすると肉汁が放出してしまうからだろう。そんな細やかな計算をされた焼豚は柔らかくも豚肉の赤身本来の旨味はしっかりと詰まっている。味付けも絶妙の味加減なので、麺と食べても良いし、薬味の白ねぎと一緒に食べても良しと、何にでも合わせられる見事な出来映え。追加して本当に良かったと思える絶品焼豚。

味玉は見た目の色からは浅漬けに思えるが、しっかりと旨味が浸透している。塩気よりも出汁が浸みているので、噛んだ瞬間に香る出汁と黄身の甘さが一つになって、持ち味を発揮する。また、玉子の持つ口内の塩分をリセットする役目もはたしている。

細メンマは、完全発酵の乾燥メンマだろうか、独自の下処理と調理によってオリジナリティのあるメンマに仕上がっている。麻竹の繊維を残した硬めのメンマだが、カリッとしたメンマには珍しい歯応え。硬めゆえに噛む回数が自然と増えるが、噛んでいくうちに発酵臭が感じられる。メンマの原料が麻竹である事を再確認できる。どんなにこだわっていても、メンマは外注の既製品を使っている店が多い中で、手間のかかる乾燥メンマを使っているあたりが、信頼の置ける理由でもある。

薬味の白葱は荒々しく見えるが、実は手が込んでいる。大きめの角切りにされたネギは、生のままで添えてあるのではなく、一度スープと一緒に加熱してあるのだろうか、半分くらい熱が通されている。その加熱によってシャキッとした食感も残しながら、白葱の持つ辛味と甘味の両方を引き出している。

今回、得のせにした具材の中で、ひとつだけ残念だったのが、迫力あるビジュアルの主である海苔だ。大判な海苔が五枚も添えてあるが、写真では黒々として見える。しかし実際は黒の色素が保存状態のせいで湿気を帯びて劣化が始まっていた。いわゆる〝赤変〟と言われるものだ。赤変と言っても海苔が赤くなるのではなく、緑色の色素が抜ける事で赤く見えてくるのだ。しっかりと湿気から守るジップ付きの保存袋で海苔を保管してあるが、密閉された狭い調理場内は、スープや茹で釜の湿気が想像以上に多いので、通常の保存方法では品質を保つことは困難なのだろう。そんな赤変した海苔からは、香りも立たず風味は飛んでいる。一度、赤変した海苔は直火や乾燥剤を使ってパリッとさせたとしても、口溶けの良さは戻ってこない。麺を包んだり、焼豚やメンマと一緒にして食べきったが、この海苔なら一枚あれば十分だと思った。

最終的には麺を小盛りにしたので、得のせの具材も全て完食できた。私には麺量140gの小盛りでも満足できる量だったが、初動で感じた塩分の強さが後を引いて、スープを飲み干すには至らなかった。

今回は麺を小盛りにした事でスープのバランスを壊してしまったのかも知れないとも思った。今回の出来立ての焼豚の旨さは衝撃的だったので、次回も焼豚は追加して麺を並盛りにしようかなと、すでに次回の構想が繰り広げられるほどに夢中にさせられる一杯でした。

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