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「味玉地鶏 (醤油) ¥850」@自家製麺 純の写真平日 晴天 11:00 先客1名 後客7名

〝ニューオープン パトロール〟

ポイントカードに全くの無関心でTポイントカードすら持っていない私が、大切にカードケースに忍ばせておいたサービス券が役に立つ時が来た。それは先週利用した上野駅前のサウナ内の食事処でのドリンク一杯無料券なのだ。もちろん生ビールにも使用可能だったので大事に取っておいたのだ。

早速の利用機会が訪れたのは、RDBの新店情報の中に挙がってきた葛飾区内の二店舗を初訪問する為に上野に前泊しようと決めたからだ。そこで昨晩は上野のネオン街である仲町通りには出向かずに、午後10時早々にチェックインをして大浴場へと向かった。まずまず高温のサウナで、お決まりの10分 × 3セットをこなしたが、本日の水風呂の温度が普段より高めの16度と手足が痺れるほどの冷たさではなく物足りずに寂しさを残しながら食事処へと向かった。

そこでまずはドリンク券を取り出して、何よりも美味い無料ビールで渇いた喉を潤した。生ビールの銘柄も副原料のコーンスターチを使用してないビールなのもIT系おじさんにはうれしい理由だ。しかもよく冷えたジョッキで泡もきめ細かいとなれば喉が唸るのも当然だ。ラーメンのスープは熱い方が良いが、水風呂と生ビールは冷えている方がありがたい。夜も更けてきたので身体の事を考えてツマミは〝しらすおろし〟だけとヘルシーにして無料を含めて5杯の生ビールを楽しんでベッドに入った。

上野のネオン街と深酒を避けたおかげで翌朝もすこぶる体調良く目が覚めた。ゆっくりと朝風呂を浴びると午前10時のチェックアウト時刻に押し出されるように京成上野駅に向かった。

昨晩からお店情報でこちらの下調べをしてみたのだが営業時間や定休日の情報すらなく不安ではあったが、何時オープンかも分からないままに店を目指した。京成線を青砥で一度乗り換えると最寄りの京成立石駅に20分で着いた。以前は時々訪れていた街で、おでん モツ焼き 鶏の唐揚げなどの名店が立ち並ぶ駅周辺は飲んべえのハートをわしづかみにして離さない都内屈指の商店街だ。

ラーメンだけの為には初めて降り立った駅から線路沿いに少しだけ歩くと神社の先に真新しい外観のコチラをみつけた。まだ午前10時半でオープンはしていないが、ガラス越しには店内で作業する人影が見られるので心配した定休日ではなさそうだ。何時にオープンするか分からないので、目の前の諏訪神社の境内から張り込みする事にした。

境内のベンチに座り大きなイチョウの木の日陰に守られなが店先を注視する。ここで11時半開店ならば一時間近くも待たないといけないと思いながらも慌てた用もないので、のんびりと初夏の風を感じながら待ってみる。

すると11時を少し前に入口の扉が開いて店頭にメニュー看板が置かれたが、立て看板はクローズのままである。しかしこれは11時オープンの予兆だと信じて境内から店先へと移動した。店先に着くと私が張り込みしていた場所からは死角となっていた所にすでに先客が待っていた。なんとか二番手をキープすると藍染めの小さな暖簾掛かりオープンとなった。

店内に入ると入口左手に設置された大型の券売機にて品定めをする。メニューボタンは多く設けてあるが、開店直後という事でメニューは絞り込まれたラインナップとなっている。オープン記念で特製にしようかとも考えたが、本日は連食予定なので醤油系の味玉入りを発券した。スタッフの誘導でカウンターの端の席から案内されると、偶然にも店主さんの目の前の特別リングサイドをゲットできた。卓上のお冷を汲んでから店内観察をはじめる。

最近このフレーズを書く事が多くなった〝白と木目を基調としたオシャレな店内〟にはL字カウンターだけの客席とカウンターの突き当たりには製麺室が設けてある。中には大和製作所の高級製麺機その名も〝リッチメン〟が堂々と鎮座している。店内に山積みにされた粉袋もからも自家製麺は間違いなく、その事が「吉と出るか凶と出るか」楽しみになってきた。そんな店内を本日は三人体制で回しているが、ご主人がスープ張りから麺上げまでを担い、盛り付け以降は別のスタッフが担当している分業スタイルで作り上げられている。それだけ自家製麺に集中して細心の注意を払われている証なのだろう。個人的には当たり外れの多い自家製麺に期待しながら待っていると、着席して5分もせずに我が杯が到着した。

その姿は白磁の鳴門丼の中で、シンプルながらも美意識高い系の麗しい表情を浮かべている。見るからに具材や薬味の隅々にまでこだわりを感じさせてくれる姿を見た時には、思わずレンゲを握りしめていた。

まずは柿渋色のスープをひとくち。澄み切ったとはまた違った、そこはかとない透明感が淡麗ながらも味わいの奥深さを想像させる。目の前に届けられた瞬間から鶏由来の香りが漂ってきているスープの表層を覆った大量の油膜をレンゲで破ると、さらに明確な鶏主体のスープの香りが押し寄せてきた。この瞬間は最近流行りの鶏清湯系だと正直言って思ってしまったが、すぐ直後に印象が一変する事になった。液面の鶏油を出来るだけ避けてすくったレンゲの中のスープを口元に近づけてみると、レンゲと口元の距離に反比例するかのように香りが穏やかになってくる。つまりは鶏由来の香りはスープに含まれるものよりも、鶏油から感じる香りなのだろう。そんな香りの少ないスープだけを口に含むと、とても繊細で清らかな鶏出汁の旨みが広かった。言い換えれば鶏出汁自体にはインパクトがなく、鶏油が香りやコクを演出しているようだ。それでも鶏油にはクセや油っぽさは皆無で絶妙なバランスを保っている。個人的には穏やかなスープの方が好みなのだが、ベースの鶏出汁が非常に淡い印象に思えた。その分、カエシを強め利かせてインパクトを補っているようにも感じた。もしかしたら本日のスープがベストコンディションではなく、鶏油やカエシで微調整してあるのならば最高の状態のスープも味わってみたいと思ったのが本音だ。もちろん本日分のスープも素晴らしいとは思うが、もっと上があるように思えて仕方がないスープだった。

しかしながら口の中にはスープの旨みと鶏油の潤滑油が張りめぐらされ、麺の受け入れ態勢はバッチリ整っている。麺上げまでジャスト60秒の自家製中細ストレート麺を箸で持ち上げてみると、適度に全粒粉のフスマが麺肌に浮かび上がった美しい麺が現れた。箸先からは繊細ながらも強いハリが伝わってきて、表面に薄っすらとだけ溶け出したグルテンが半透明に輝いて見える。そんな景色が堪らずに一気に麺をすすり込むと、やや硬めの口当たりが唇と舌先を直撃する。ハードな食感ではあるが、程よい加水率が生み出すグルテンのモッチリした弾力が歯応えをよくしている。自家製の中細麺に不信感がある理由の一つに過度なシルクタッチの麺質があるのだが、この自家製麺には中細麺ながらも強い食べ応えを感じられる特別な麺だった。この麺質ならば多少の時間経過でもダレる事は少なそうなので具材も楽しみながら食べ進めた。

具材のチャーシューは豚肩ロースの低温調理で、かなりの薄切りで添えてある。スープによる熱変化の前にレア状態で食べてみると、かなりのロゼ色ではあるが赤身には不快な生っぽさは感じない。しかし脂身に沿ったスジの部分が生の状態に近く噛みきれずに口に残ってしまう。豚肉自体の品質は良いが下味が薄いので噛み切ろうとする度に生っぽさを感じてしまうのが残念なレアチャーシューだった。なので二枚目からはスープで加熱して食べる事で逃げ切った。

肉の具材がもう一種類入っていたのは鶏ツミレで鶏出汁に合わせた具材なのだろうが、茹で置きしてからの時間が経っているのか芯温も冷たく肉汁も抜け出してしまっていた。そのためパサついた食感となってしまい本来の旨みをアピールできていなかった。

追加した味玉も本来の姿かどうかは分からないが、少しばかり表面に色の付いた半熟ゆでたまごだった。全体のバランスを考えた薄味なのだろうか、定義のない味玉ではあるが追加しなくても良かったと思う仕上がりだった。

穂先メンマは味付けや食感ともに申し分なく発酵食品の香りを感じられ、根元から穂先までの食感のグラデーションも楽しめて良いアクセントになってくれた。

薬味は丁寧に笹切りされた青ネギで、食感や香りの良さから九条ねぎだろうか。繊細な脇役として目立ちはしないが無くてはならない薬味となっていた。

中盤からも麺の美味さは衰えを知らず、箸のスピードは加速するばかりで瞬く間に平らげていた。もちろんスープも丼を両手で傾けて飲み干したが、若干の物足りなさも感じなが器を置いた。

本日は具材のコンディションが私には今ひとつだったが、それにしても高評価をせざるを得ない飛び抜けた麺の美味さだった。もしスープが完璧な状態で具材のない醤油ラーメンだったとしたら、90点の大台をも遥かに超えていたかもしれないラーメンに出会ってしまった。

飲んべえならずとも美味い食べ物があふれているこの街に、また新たな名店が誕生した事は間違いない。すでに近々での再訪は心に誓っており、こうなれば引っ越しをも考えてしまいそうな一杯でした。

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