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平日 薄曇り 13:30 先客3名 後客なし〝温故知新ツアー vol1〟〜古きを温ねて新しきを知る〜を本日は開催する。平成最後と云うキーワードを良く耳にする最近だが自宅にある10年以上前のラーメン本を見ていると惜しまれつつも閉店した有名店や、突如として店じまいした人気店が数多くある。そんな入れ替わりの激しいラーメン業界の中で現在も生き残っている店に行ってみる企画だ。実は過去に二回ほど同様のお試し企画を開催して訪れた武蔵野市の「支那そば あおば」や東中野の「好日」で感じた時代の流れに、身につまされる思いを感じ自身に投影してしまったのだ。その変わりゆく時代をしっかりと目に焼き付けておこうとレギュラー化を思い立ったのだ。そこで複数あるその年代のラーメン本を見ているとミレニアムに湧いた2000年の新店情報の中にこちらの名前を見つけた。現在は道路拡張の影響で移転を余儀なくされたようだが屋号も変えずに営業されているようだ。他の本を見ても人気店特集や行列ランキングでも常に上位に入っているこちらが、この企画の初回を飾るにふさわしいと判断して初訪問を決める。もちろん移転前の店には割と近所に住んでいた事もあり幾度となく通ったことがある。当時の思い出を胸に昼のピークを過ぎた頃を狙って銀座線で末広町駅に向かった。最寄駅からも距離があり大通り沿いとは言え人通りは決して多くない場所に、昔と変わらない深緑の立て看板を見つけた。ひと目見ただけで懐かしさがこみ上げてくる。以前のような行列はなくすんなりと入店出来た。15年前なら絶える事のなかった行列だったのに。券売機の前で塩味の鷄そばと醤油味の二択で悩んだが当時も良く食べていた醤油ラーメンと味付玉子を発券した。カウンターに着席すると女性スタッフに醤油の種類と麺の太さを問われる。当時は選ぶシステムは無かったように思ったが濃口醤油の太麺をチョイスした。水を汲み店内を見渡すと若いスタッフのツーオペでの切り盛りだった。そこには当時、テレビや雑誌を賑やかせたご主人の姿はなくがっかりしてしまった。これも時代の流れなのかと寂しい思いにふけっていると奥の階段から白髪のご主人が降りてきた。それはまるで神々しい主の降臨のように見えた。髪の毛も白くなり肉付きも少し良くなったご主人からは当時のストイックさは消え、穏やかな印象さえ受ける。自分とて20年近くも経てば重力に抗えない肉の重さには勝てず当時を見る影もない。そんな懐かしさと切なさの中で待っていると5分足らずで我が杯が到着した。見立てに粋な絵柄をあしらった白磁の切立丼の中の姿は記憶の中では昔と器も盛り付けも変わらない表情に見えた。唯一ナルトの有無が定かではないが入っていなかったと記憶している。まずは微粒子の鷄油に覆われた栗色のスープをひとくち。鶏由来の旨味が先導するスープに魚介の旨味が追随する基本的なWスープのはずだが動物系の旨味が二歩も三歩も先を行き魚介系のキレが追いついて来ない印象を受ける。スープ自体のバランスは対等に思われるので鷄油のコクが全体をリードしているせいで鷄主体に感じてしまうのかも。味覚のギアを鷄魚介のWスープから鶏そばにシフトチェンジして味わうことにした。鶏主体の出汁に合わせる醤油ダレはコクに負けないように強めに配合してありカエシのキレが際立っている。ひとくち目にアジャストしてくる塩分は後半からの猛威を懸念させるくらいに強い。次にチョイスした太麺というのは平打ち中太麺で自家製麺のようだ。高めの加水率が生み出すモチモチ感があり麺肌も艶やかで舌触りも喉ごしも心地良い。噛みしめるたびに溢れ出す小麦の風味と甘みは内麦ならではの特徴かと。麺上げの際にスープの中で麺が絡み合って箸の進みの邪魔をするのが残念な点だ。具材は部位の異なる二種類の焼豚。一枚は豚ロースの釜焼き焼豚で赤身の旨味を引き出すためにしっかりと加熱され流行りの焼豚とは一線を画す。やや抜け過ぎた肉質は残念だが味付けの良さでもってカバーされている。一方の豚バラの巻き型煮豚式焼豚は箸で掴めないほどに柔らかく煮込まれているのに赤身の旨さは残して脂身のとろける食感も実現している。双方の旨味を引き出している絶妙な焼豚だ。追加の味玉は硬めに引き締まった白身が懐かしさを誘う味玉で柔らかさに重きを置いた味玉とは違った味わいを楽しめる。細切りメンマはぬめりのある舌触りと麺の絡みが楽しく単体よりも麺との調和でより個性を発揮している。薬味は白ねぎを細かく切ったものだが不揃いの食感のリズムが不協和音を生んでアクセントよりも心地悪い口当たりを与える。青みは当時からカイワレ大根を添えてある印象が残っている。当時では青みにカイワレは珍しく先駆者のように思われるが、私はアンチカイワレ派なので必要ない彩り要員だ。海苔は質感も良い香りも十分な品質で好印象を残す。ナルトは論外の具材なので今回も口にせず。中盤から終盤にかけては懸念されたカエシの塩分の強さとの戦いとなってしまった。ある一流料理人がダイエットするに至った話を直接聞いたことがある。和食店の経営も順調で後任の育成も進んでいた時期に余裕のある生活をしていると10キロ以上も太ってしまったそうだ。当初は貫禄が付いて良かったと悪い評判は立たなかったのだが自身の味覚の変化に気が付かず、味付けが濃くなっているのを常連客に指摘されたそうだ。恥を忍んで弟子たちにも確認してみると同じ答えが返ってきたのを機に体重を元に戻す努力をしたそうだ。この話を聞いた時に自分も体重が増えると濃い味の食べ物を求めるようになる事を思い出した。これがこちらのご主人に当てはまるとは言えないが当時よりも高い塩分濃度を感じて箸を置いてしまった。時の流れが変えたのは店の場所だけでないのかと思うと残念な気持ちにもなるが、変わったのは店の味ではなく自分の味の感じ方なのだと思ってしまった。また今回も一杯のラーメンから色んな事を考えさせられる機会を与えてもらった。この〝温故知新ツアー〟を定期的に続けようと心に刻んだ一杯でした。
〝温故知新ツアー vol1〟〜古きを温ねて新しきを知る〜
を本日は開催する。平成最後と云うキーワードを良く耳にする最近だが自宅にある10年以上前のラーメン本を見ていると惜しまれつつも閉店した有名店や、突如として店じまいした人気店が数多くある。そんな入れ替わりの激しいラーメン業界の中で現在も生き残っている店に行ってみる企画だ。
実は過去に二回ほど同様のお試し企画を開催して訪れた武蔵野市の「支那そば あおば」や東中野の「好日」で感じた時代の流れに、身につまされる思いを感じ自身に投影してしまったのだ。その変わりゆく時代をしっかりと目に焼き付けておこうとレギュラー化を思い立ったのだ。
そこで複数あるその年代のラーメン本を見ているとミレニアムに湧いた2000年の新店情報の中にこちらの名前を見つけた。現在は道路拡張の影響で移転を余儀なくされたようだが屋号も変えずに営業されているようだ。他の本を見ても人気店特集や行列ランキングでも常に上位に入っているこちらが、この企画の初回を飾るにふさわしいと判断して初訪問を決める。
もちろん移転前の店には割と近所に住んでいた事もあり幾度となく通ったことがある。当時の思い出を胸に昼のピークを過ぎた頃を狙って銀座線で末広町駅に向かった。最寄駅からも距離があり大通り沿いとは言え人通りは決して多くない場所に、昔と変わらない深緑の立て看板を見つけた。ひと目見ただけで懐かしさがこみ上げてくる。以前のような行列はなくすんなりと入店出来た。15年前なら絶える事のなかった行列だったのに。
券売機の前で塩味の鷄そばと醤油味の二択で悩んだが当時も良く食べていた醤油ラーメンと味付玉子を発券した。カウンターに着席すると女性スタッフに醤油の種類と麺の太さを問われる。当時は選ぶシステムは無かったように思ったが濃口醤油の太麺をチョイスした。
水を汲み店内を見渡すと若いスタッフのツーオペでの切り盛りだった。そこには当時、テレビや雑誌を賑やかせたご主人の姿はなくがっかりしてしまった。これも時代の流れなのかと寂しい思いにふけっていると奥の階段から白髪のご主人が降りてきた。それはまるで神々しい主の降臨のように見えた。
髪の毛も白くなり肉付きも少し良くなったご主人からは当時のストイックさは消え、穏やかな印象さえ受ける。自分とて20年近くも経てば重力に抗えない肉の重さには勝てず当時を見る影もない。そんな懐かしさと切なさの中で待っていると5分足らずで我が杯が到着した。見立てに粋な絵柄をあしらった白磁の切立丼の中の姿は記憶の中では昔と器も盛り付けも変わらない表情に見えた。唯一ナルトの有無が定かではないが入っていなかったと記憶している。
まずは微粒子の鷄油に覆われた栗色のスープをひとくち。鶏由来の旨味が先導するスープに魚介の旨味が追随する基本的なWスープのはずだが動物系の旨味が二歩も三歩も先を行き魚介系のキレが追いついて来ない印象を受ける。スープ自体のバランスは対等に思われるので鷄油のコクが全体をリードしているせいで鷄主体に感じてしまうのかも。味覚のギアを鷄魚介のWスープから鶏そばにシフトチェンジして味わうことにした。鶏主体の出汁に合わせる醤油ダレはコクに負けないように強めに配合してありカエシのキレが際立っている。ひとくち目にアジャストしてくる塩分は後半からの猛威を懸念させるくらいに強い。
次にチョイスした太麺というのは平打ち中太麺で自家製麺のようだ。高めの加水率が生み出すモチモチ感があり麺肌も艶やかで舌触りも喉ごしも心地良い。噛みしめるたびに溢れ出す小麦の風味と甘みは内麦ならではの特徴かと。麺上げの際にスープの中で麺が絡み合って箸の進みの邪魔をするのが残念な点だ。
具材は部位の異なる二種類の焼豚。一枚は豚ロースの釜焼き焼豚で赤身の旨味を引き出すためにしっかりと加熱され流行りの焼豚とは一線を画す。やや抜け過ぎた肉質は残念だが味付けの良さでもってカバーされている。一方の豚バラの巻き型煮豚式焼豚は箸で掴めないほどに柔らかく煮込まれているのに赤身の旨さは残して脂身のとろける食感も実現している。双方の旨味を引き出している絶妙な焼豚だ。
追加の味玉は硬めに引き締まった白身が懐かしさを誘う味玉で柔らかさに重きを置いた味玉とは違った味わいを楽しめる。
細切りメンマはぬめりのある舌触りと麺の絡みが楽しく単体よりも麺との調和でより個性を発揮している。
薬味は白ねぎを細かく切ったものだが不揃いの食感のリズムが不協和音を生んでアクセントよりも心地悪い口当たりを与える。青みは当時からカイワレ大根を添えてある印象が残っている。当時では青みにカイワレは珍しく先駆者のように思われるが、私はアンチカイワレ派なので必要ない彩り要員だ。海苔は質感も良い香りも十分な品質で好印象を残す。ナルトは論外の具材なので今回も口にせず。
中盤から終盤にかけては懸念されたカエシの塩分の強さとの戦いとなってしまった。ある一流料理人がダイエットするに至った話を直接聞いたことがある。和食店の経営も順調で後任の育成も進んでいた時期に余裕のある生活をしていると10キロ以上も太ってしまったそうだ。当初は貫禄が付いて良かったと悪い評判は立たなかったのだが自身の味覚の変化に気が付かず、味付けが濃くなっているのを常連客に指摘されたそうだ。恥を忍んで弟子たちにも確認してみると同じ答えが返ってきたのを機に体重を元に戻す努力をしたそうだ。
この話を聞いた時に自分も体重が増えると濃い味の食べ物を求めるようになる事を思い出した。これがこちらのご主人に当てはまるとは言えないが当時よりも高い塩分濃度を感じて箸を置いてしまった。
時の流れが変えたのは店の場所だけでないのかと思うと残念な気持ちにもなるが、変わったのは店の味ではなく自分の味の感じ方なのだと思ってしまった。また今回も一杯のラーメンから色んな事を考えさせられる機会を与えてもらった。この〝温故知新ツアー〟を定期的に続けようと心に刻んだ一杯でした。