なんとかデータベースラーメンカレーチャーハンぎょうざうどんそば
 

「味玉醤油 ¥880」@麺や 魁星の写真土曜日 薄曇り 21:00 先客2名 後客2名

いよいよ人生初の一日五食目のラーメンに挑もうとしている。平成最後の歳末総決算として

〝今年の店は今年のうちに〟

と称して今年オープンした新店舗ばかりの未訪問店を狙って忙しない年内でどれだけクリア出来るだろうかを実証中である。本日は早朝に思い立った百合ヶ丘から平間へ移動し、そこからは武蔵小杉を経由して関内での二食目で本日の終わりを迎えようとしている。

さすがにどの店でも特製などの盛りの多いメニューは外して身体のメンテナンスとして台湾式足ツボで食欲を刺激したりサウナではカロリー消費を試みて現在に至っている。18時過ぎに食べ終えた前食から三時間ほど経過した頃に少しだけ食欲が湧いてきた。

そこで本日ラストの五食目を飾るのは関内駅近くに今年10月18日にオープンした元大関の魁皇と読み間違えてしまいそうなこちらだ。街の呑み屋のキャッチのお兄さんの声には耳を傾けず、ひたすら真っ直ぐに店を目指した。怪しげな雑居ビルの裏通りを進んで行くと地味な建物に赤提灯が怪しげに灯るこちらを見つけた。

まずは店頭に貼られたメニューの中から品定めをする。メニューには全てのラーメンにトリュフオイルを使用との書き添えがあり得意ジャンルではない事を知った。それでも挑戦してみようと奮起して醤油か塩の二択で悩んだが、迷った時は基本の醤油という事で気持ちを固めて扉を開けた。

店内には券売機はなく口頭注文の後払い方式。席は対面式カウンターと壁沿いのカウンターのみのレイアウトで、ご主人ひとりで切り盛りされている。調理場側のカウンターに座り注文を告げるとすぐに調理が始まった。カウンターにはウンチクや写真付きのメニューが至る所に貼られてありごちゃごちゃした印象を受ける店内だ。セルフの水を汲んでひと息ついた所で我が杯が到着した。

粉引きの鳴門丼の中の姿からは具材も含めて色とりどりで華やかな景色が広がる。盛り付けも非常に丁寧で洗練されている。

まずは大きめの粒子の鶏油が液面を覆う赤銅色のスープをひとくち。宣戦布告を受けていたトリュフの香りは思ったよりは穏やかで鶏油のコクや貝出汁の旨みも初動の先頭グループに食い下がっている。トリュフオイルを使うと全ての香りを打ち消すスープが多い中で全ての香りと共存している数少ないスープだ。スープの旨みも複雑で幅もあり奥深さもあるのはグル酸とイノ酸との相乗効果によるものか。旨味もしっかりとしているが強めの色彩を放つ醤油ダレも見た目と同じく強めの醤油感を出している。ひとくち目の塩分としてはかなり強く先が心配になる。

麺は胚芽の色が見られる中細ストレート麺で麺上げまでは75秒程度。箸で持ち上げると質量が軽く感じるので加水率は高くなさそうだ。唇に当たると抵抗感のあるザラッとした口当たりでスープを取り込みやすそうな麺肌だ。束となった麺の隙間にもスープを蓄えて口の中に入ってくるのでスープとの一体感は見事。麺を食べているのにスープを飲んでいるような感覚すら覚える。パツンとした歯応えの麺は噛み潰すと内麦特有の甘みを強く感じるのはスープの塩分との対比から生まれてくるのだろう。小麦の甘みは表現されているが香りはトリュフや貝出汁の香りに押されて影を潜めていた。喉ごしも良いが麺を飲み込むとスープの香りが返ってくるので主導権はスープが握っているように思える。

具材は焼豚が二種類。先に鶏ムネ肉のレアチャーシューから食べてみるとタンパク質の繊維の密度が詰まっている。十分なマリネの作用で引き締まった肉質は厚切りなのでしっとりよりは硬めに思うがレア過ぎるよりは大歓迎で食べ応えを楽しめる。ソミュール液の糖分と塩分が浸み込んで薫香のしないハムのようだ。もう一枚の豚肩ロースの低温焼豚は提供時は鮮やかなロゼ色だがスープで熱変化を起こし気が付けば変色していた。火の通りが早いという事はかなりの薄切りとも言えるが赤身をつなぐスジの部分が硬く口に残ってしまう。スジ切りが施されていないのと低温加熱の時間が足りないのが原因ではないか。赤身本来の旨みを引き出す薄味がスジを噛み切るために増える咀嚼回数のせいで裏目に出てしまった。

追加の味玉は色付き以上に漬け汁が黄身の中心部まで浸透し熟成度は高いが比例して塩気も強い。熟成と塩分のバランスを取る難しさを感じる。見事に半熟の黄身の水分を浸透圧によってゲル化しているのでネットリした食感は素晴らしいだけに塩分が残念だった。

メンマは太めのサイズを使われているが手仕事感のあるオリジナリティとこだわりが出ている。歯応えを強めに残した下処理だが繊維は残らず解けていく心地良い食感。キリッと醤油を利かせた味付けに仕上げてあるので個性を主張するがスープの醤油味とケンカしているようにも思えた。

薬味は青ねぎの小口切りと赤玉葱のアッシェが添えてあるが、どちらの切り口も揃っていて美しい。本来なら植物性の香りを感じるはずだが伝わってこないのは他の香りが立っているからだろう。薬味としては食感だけの役目を演じている。海苔にも同じ事が言えて上質なはずの海苔だが風味は今ひとつ伝わってこない。口溶けは良いがそれだけしか印象に残らない。

オリジナリティのある薬味の生黒胡椒は他のラーメンでは見かける事はあまりない。通常の粒胡椒よりも刺激が少なく爽やかな風味が特徴なのだが麺や具材に絡む事はほとんどないだろう。最初に食べなければスープの底に沈んだ生黒胡椒に出会えるのはスープを飲み干した時だけではないかと思う。今回はスープを飲み干さなかったので必死でスープの中から探し出して味見をしたくらいだ。噛まなければ持ち味を発揮しない薬味は必要なのかと思った。

中盤どころか麺の二口目あたりからスープの強い旨味と塩気が蓄積していて中盤からは味覚が疲れ始めていた。ご主人の思いやこだわりが詰まったラーメンだが、やりたい事が多すぎて丼の中で渋滞を起こしているように思う。それぞれの具材にしっかりとした個性を持たせてあるのでぶつかり合って誰も引こうとしない。そんなラーメンに私は疲弊してしまった。

人生初の一日五食目のラーメンだったのもあるかも知れないが疲れたのは胃袋ではなく明らかに舌だったのは確かだ。それを証拠にホテルへの帰り道の伊勢佐木町でモツ焼きをつまみに大ジョッキをあおって帰れるほどだった。

もしご主人がシンプルで研ぎ澄まされた限定ラーメンを作る事があれば是非にでも食べてみたいと思う一杯でした。

投稿 | コメント (0) | このお店へのレビュー: 1件

コメント

まだコメントがありません。