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「醤油そば 味玉 ¥850」@佐々木製麺所の写真平日 晴天 10:50 待ちなし 後客なし

〝初訪問〟〝無化調〟〝清湯醤油系〟

昨夜から三大ワードを求めて荻窪にて前泊してコチラを目指す予定だった。自宅からでは距離もあるゆえに、宿泊先の大浴場や風呂上がりの生ビールの取り憑かれているのが実際のところだ。

今朝もゆっくりと目覚めた後に朝風呂を浴びた。さすがに起き抜けのビールは気が引けるので我慢したがコーヒーを飲みながら念入りに予習をしてからホテルを出た。本日も午後3時のチェックアウトなので、ホテルに戻ってくる事を想定して外出扱いで出発した。こちらの店は最寄駅からはかなり遠いがバスルートならば歩かずに済みそうなので、そのルートを選択した。

11時開店前の現着を目指して10時半にホテルを出ると中央線で吉祥寺まで行き、関東バス 西荻窪行きで7分ほどで着いた。そこからはバス通りを脇道に入ると半シャッターの店を見つけた。ホテルを出て20分で着いていた。自宅からだと一時間近くかかるので前泊した甲斐がある。行列がないので近くのコンビニにて張り込みを開始する。

定刻になっても行列は出来ず、シャッターも上がらぬままだ。先ほど店内を確認した時には準備している様子が見えたので臨時休業ではないだろうが、心配になっていると定刻を5分過ぎてようやくシャッターが上がった。紺地に白で屋号の書かれた暖簾が掛かったのを見届けて店先へと引き返した。

少し重たい引き戸を開けて一番客で店内へ。券売機で予習済みのお題に味玉を追加してカウンターに腰を下ろす。BGMのない無音で緊張感のある店内を見渡すと、入口の横には製麺室が設けられている。屋号通りの自家製麺のようだ。相変わらず「餅は餅屋、麺は麺屋」的な先入観のある私には自家製麺で(特に細麺)唸るような麺に出会う機会が少ない。しかし過去の評価で高得点を付けている店の半数は自家製麺の店と矛盾しているのだが。本日の麺はどちらに転ぶか楽しみだ。L字カウンターの清潔感のある店内をご夫妻だろう二人で切り盛りされている。まだまだ春は遠い寒さの残る季節でも暖房を入れてないのも拘りなのだろうか。寒さが堪える中、後客もおらず着席して8分ほどでワンロット一杯だけの贅沢なオペレーションにて我が杯が到着した。

白磁のシャープな切立丼の中の姿は、食べずとも私好みであると直感で予測した。飾り気のない容姿だが、実に丁寧に盛り付けられている。無音で暖房のない店内や、必要以上な接客をするでもないお二人の思いが、この姿に映し出されているようだ。全てはラーメンに集中するための環境を作るためで無駄な要素は必要ないと言うことだろう。その思いに応えるために真摯にラーメンだけに向き合ってみる。

まずは煮干し由来の水泡の浮かんだスープをひとくち。香味油も薄っすらとだけ油膜を張っているが、レンゲはすんなりとスープに入っていく。口元にレンゲが近づくとイメージした煮干し香はなく、鰹節の気高い香りが押し寄せた。イメージと現実の違いに脳が誤作動を起こしたままスープを口に含むと、新たな風味が口の中に張り巡らされた。それは酸味の効いた醤油ダレの風味だ。視覚からは煮干し感、香りは鰹節、味覚は醤油と、一気に異なる感覚が襲ってきた。言い換えればそれぞれの風味が一体となっているとも言える。すぐに脳をリセットしてスープをもうひとくち。やはりカエシの風味が先頭を切るが、鶏ベースに鰹節などの魚介系や乾物といったオーソドックスな構成が基礎を築いている。この組み合わせが安心感を生んで、ホッとさせてくれる。全ての均衡がとれた素晴らしいスープは予想をはるかに超えていた。

自家製麺は麺上げまでジャスト60秒の中細ストレート麺。麺肌にはフスマの粒が色濃く出た全粒粉入り。箸で拾い上げると加水率はやや低めと思われる麺質が感じられる。しなやかと言うよりは毅然としたハリを残した打ち方と茹で加減。待ちきれずに口に運ぶと噛まずとも小麦の香りが溢れてくる。思わずニヤッとしてしまう麺との出会いに嬉しくて仕方ない。麺肌には溶け出してないグルテンも麺の内にはみっちりと詰まっていて、パツンパツンの食感の中にも弾力のある噛み応えは他では感じたことがない。香り、舌触り、歯応えも良い上に喉越しまで良いときては非の打ち所がない。この細さの自家製麺は神奈川淡麗系によくある噛みどころのないタイプが多いが、コチラの麺の咀嚼対応力には感動レベルだ。気が付けば興奮状態のまま半分以上の麺を啜っていた。

正気を取り戻して具材を楽しんでみる。チャーシューは片面が炙られて香ばしい豚バラ煮豚型の厚切りが一枚。素材の赤身と脂身のバランスが良く、見た目からも旨いがあふれている。柔らかくはあるが箸でも持ち上げられるトロトロ過ぎない肉質も良い。噛みごたえもあるが、脂身は程よくトロけ甘みは全開である。赤身の繊維質とのコラボが口の中で見事に成立している。強めの味付けではあるが醤油よりも香辛料主体の味付けなので濃すぎる事はなく口の中で消えていく。

追加の味玉は歯を立てると非常に柔らかいので浸透が足りないかと思いきや、均一に漬けダレが浸み込んでいる。その中心の黄身はネットリとゲル化して玉羊羹の様な仕上がりだ。このノングラデーションの味玉は薄い漬けダレにじっくりと漬け込まないと成し得ないはずだ。もちろん塩分は入りすぎる事なく黄身の甘みを存分に引き出している。一朝一夕では生まれない味玉もなかなかお目にかかれない逸品だった。そのうえ温め直した温度からも一仕事が感じられる。

メンマにも手仕事感が表れていて、脇役ながら主役級の出来栄え。下味は控えめで主張しないが、完全発酵メンマの特性を活かした食感を生み出すのは下処理の丁寧さを意味する。柔らかすぎず引き締まった麻竹の繊維を断ち切るような食感がアクセント役を大いに演じている。しかし主役は麺である事を知ってか、出しゃばってこない助演賞もののメンマだ。

薬味は職人魂を感じる繊細な切り口の青ねぎと白ねぎ。青ねぎの小口切りは軽やかな香りと食感が見事で、細かく刻まれた白ねぎもスープの加熱によって辛味が甘みに変化している。この辺りの計算も明確に結果となって表れている。麺やスープに寄り添いながらも邪魔をしない口当たりの薬味は、陰となって役目を果たしている。

中盤からも夢中で箸が進み、一瞬で完食完飲していた。食後にはスープの醤油感の強さから若干の喉の渇きを感じたが、それでも全てのレベルが飛び抜けていたので今年になって二回目の大台突破となった。もしカエシが3%少なかったら、より高得点になっていたかも知れない程に私好みのラーメンだった。

正直、BM歴も長くあまり期待してなかっただけに衝撃は大きかった。早く食べ終えてしまったので後客もなく寂しく席を立った。店を出て店頭の立て看板に目をやると、新たなメニューも気になった。そこには平打ち麺の告知があり、醤油系でも変更可能のアナウンスがあった。すぐさまに店に戻り連食できそうなコンディションだったが、次回訪問の楽しみとして店を後にした。

こちらのラーメンは「ハレとケ」で表現すると華やかな「ハレ」の日ではなく「ケ」の日常的な景色が良く合っていると感じた。あまり取り沙汰されていなくとも美味しいラーメンがある事を知り、新たな開拓意欲が目覚めた一杯でした。

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