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平日 晴天 10:55 待ちなし 後客なし〝ニューオープン 探検記〟先週に引き続き普段は利用する事のない〝上から読んでも西葛西、下から読んだらイサカシニ〟にやって来た。それは前回の新店めぐりで訪れた西葛西での連食計画の3軒目の候補に挙げていて実際にも店の前までは行ったのだが、ガラス越しに見える店内には客の姿も見えずラーメン店らしからぬ外観に尻込みして初訪問をやめてしまったのだった。しかしそれから数日経っても気になってしまい、覚悟を決めて再び訪れる事にした。そうと決まれば自宅からは西葛西よりも遠いが、船橋のサウナをネット予約して昨晩から船橋に前泊する事にした。こちらのサウナ付きカプセルホテルのネット予約の利点は、入館料と同じ料金で生ビール一杯付きのプランがある事だ。入館時にチケットを受け取り、まずは大浴場へと向かうと恒例の3セットをこなした。露天風呂がないので外気浴は出来ないが、水風呂の横に置かれたビーチチェアで小休止を挟みながら昨夜も〝ととのう〟事ができた。サウナ上がりの最大の楽しみである生ビールのために上階の食事処に上がると、いつもの席が空いていたので腰を下ろした。いつもの席などどうでも良いと思われるかもしれないが、私にとっては大きな問題なのだ。昔からあるサウナ施設の食事処は大抵決まって畳部屋がほとんどである。しかし腰や膝への負担がツライ年齢になってきたので、こちらのようにテーブル席が少しだが設けられてあるだけでも本当にありがたい。そんな少ないテーブル席の良い点は他にもあり、近くにテレビが置かれてないので翌日のラーメンの予習やレビューを書くのに集中できる事である。さらには調理場のビールサーバーが近いので、呼び鈴を鳴らさなくても目線で生ビールを注文できるのだ。立て続けに何杯も飲む私には非常に助かる〝神席〟である。そんな絶好のポジションを得ると、生ビールの杯数も知らずうちに増えてしまう。サウナの聖地と呼ばれる静岡にある「サウナしきじ」には及ばないまでも、こちらの食事メニューも中々のラインナップである。私の中では関東ではトップランクの食事処と思っているので、つまみ選びも楽しみの一つだ。もちろんサウナの食事処の定番メニューのおつまみ付きビールセットもあるが、好物の目玉焼きをオーダーした。昼はラーメンで味玉、夜は目玉焼きと卵の摂取量が心配ではあるが、片面焼きの半熟目玉焼きの黄身に小さな穴を開けて醤油を少しだけ垂らし入れて食べるのが堪らないのだ。白身を箸で切って醤油の入った黄身に絡めて食べる瞬間の悦びは、最高の味玉に出会った時に匹敵する。いや味玉には裏切られる事はあるが、目玉焼きだけは私を裏切らない唯一の存在かもしれない。そんな愛おしい目玉焼きをツマミに夜は更けていった。もはやラーメンレビューではないと、お叱りを受けそうなのでラーメンの本題に入る。翌朝の朝風呂の件は割愛して話を進めると、ホテルを午前10時にチェックアウトして西船橋を経由して東西線にて西葛西に着いた。やはり乗り換えが必要なので、わざわざ遠い船橋での前泊の意味を疑問に思いながらも必要性を自分に言い聞かせた。ただ単にサウナ上がりの生ビールが飲みたいだけなのではないかと、自問自答を繰り返しながら店へと向かった。前回で道順は知っているので迷わずに西葛西駅北口から歩いて2分で店先に着いたが、11時開店の10分前の現着だったので行列もなく先頭にて待機を始める。大通りから少し入った場所にあるので人通りの少ない店先での一人待ちは目立つので、ひとまずは少し離れたとこから張り込んでみる。やはり外から見ても独特の雰囲気があり入りづらい店構えだが、ガラス窓の垂れ幕のラーメンの写真や店先の立て看板の店内への矢印や「召し上がれ」の文字が誘い入れてくれるようだ。前回は三食目だった事もあり直ぐに断念してしまったが、本日は何がなんでも入ってやると心に決めて待っていると定刻通りにオープンとなった。恐る恐る店内に入るとBARのようなと言うよりも、もはや完全たるBARである。さらに警戒心が高まってしまうようなオシャレな内装に気後れしながらも、何食わぬそぶりでカウンターに腰を下ろした。カウンター越しにはウイスキーなどのボトルが並んでいるので夜は勿論BAR営業をされていると思われるので、券売機は設置されておらず卓上メニューから本日のお題を品定めする。メニューの筆頭は、つけ麺となっていたが自身の基本に忠実にラーメンと味玉を選んで口頭注文した。慣れない雰囲気を落ち着かせようとセルフでお冷を入れるのだが、このウォーターポットがオシャレなコック付きのガラス製なので余計に落ち着かない。水の中にはレモンスライスが大量に入れられた、いわゆるオシャレカフェにあるヤツだ。さらに緊張感が高まってしまいそうになったが良く見回してみると、それほど見慣れない景色ではない事に気付いた。カウンターの背後に置かれたお冷が置かれたコーナーもアイランド式のコの字カウンターとなっていて、中には人が入れる接客スペースにもなっていた。不思議と慣れ親しんだ景色に見え始めたのは、大好きなガー◯ズバーを思い起こしたからだった。すぐにでも女の子が出て来そうな雰囲気だが、本日は男性スタッフが二人体制で回していたので現実へと引き戻されてしまった。ようやく気持ちも落ち着いてきたところで薄暗い店内を更に物色してみると、前後のカウンター以外にも入口左手には半個室のようなプライベート席もあるようだ。ラーメン店向けに設計された訳ではないので、もちろん調理スペースも少なく厨房は奥まった場所にあり作業工程は見る事ができない。それを残念に思っていたが、調理場の狭さゆえに他では見ない独特の手法を見る事ができた。暖簾で仕切られた奥の調理場で茹でられた麺を替え玉のように皿で運び、スープを温めていたカウンターの中で麺を受け取ると最終的な盛り付けを完成させるステージチェンジ方式を採用されているのだ。これをサウナで例えるならば、大浴場で温まった身体が冷めないうちに素早く脱衣所で室内着に着替えると言ったとこだろうか。どうしてもラーメンレビューがサウナレビューに脱線してしまうが、気を改めて待っているとラーメンよりも先に箸とレンゲがセットされた木製のお盆が目の前に置かれた。その上には味変用のアイテムも二種類セットされていて、その内の一品は食前に食べながらラーメンを待つ前菜の役割もあるようだ。その一品というのははミョウガのオリーブオイル漬けだが、ラーメンに味変を求めない私は前菜として食べる事にした。やや粗めの千切りにされたミョウガとオリーブオイルの香りが食欲を刺激するが、刺激されたのは食欲だけではなかった。それは合わせた塩の強さで、かなり塩辛くなっていた。スープに入れる事を前提としての塩分かもしれないが前菜としては随分と刺激が強すぎたので、隣に添えてあった味変用のカットレモンをかけて塩気を和らげてから食べ直した。これでラーメンが到着する前に味変アイテムを使い切ってしまったので結果オーライだった。いささか口の中が塩っぱくなりながら待っていると、着席して8分ほどで我が杯が到着した。その姿は白磁の鳴門模様の切立丼の中でネオビジュアルな表情を浮かべていたが、保守穏健派の私でも驚かなかったのは店先に置かれた写真見て免疫を高めておいたからなのだ。今まで出会ったラーメンの中でも特殊な容姿だが、新たな出会いが待っているかもと期待を込めて木製のレンゲを手にした。まずはスープをひとくち。不規則ながらもキレイな円形粒子の香味油が浮かんだ液面の奥には、乳化手前の半濁したスープが見られる。店名の「山」の文字から魚介系ではないだろうと予測しながらレンゲを沈めると、やはり動物系のコクのある香りが立ち昇ってきた。そこには〝山=畑〟を思わせる具材の野菜とともに大地の力を感じさせる様子が目に浮かんでくる。そんな自然の恵みを感じながらスープを口に含んでみると、清湯スープにはない動物由来のコラーゲンの粘りが唇に張り付いてくる。濃厚ではないが重みのある中濃タイプのスープで、若干の鶏出汁特有のクセが出ている。そのクセを隠すようにカエシの醤油ダレも強めに利かせてあるので、薄味党の私には塩っぱく感じてしまったスープだ。これも麺との相性を考慮された塩分設定なのだろうと、気持ちを切り替えてレンゲを箸に持ち替えた。麺上げ工程が全く見えないので定かではないが、聴覚を研ぎ澄まして音を聞き分けると120秒くらいと思われる麺を引き上げてみる。そこには全粒粉のフスマが散らばった太めのストレート麺が、切刃のエッジを麺肌に誇示しながら現れた。一見すると日本蕎麦と見まがうような麺質に見られ、食べる前に様々な想像を掻き立てる麺だ。箸先の重みからは加水の高さを思わせる麺を一気にすすり上げると、シャープな四角い口当たりで飛び込んできた。やはり麺自体の口当たりは日本蕎麦のようだが、スープの粘りをまとっているので蕎麦にはない滑らかさも加味している。歯応えの面でもラーメンならではの、かん水の効果による歯応えも感じられる。モッチリとした食べ応えが咀嚼の楽しみを与えてくれ、弾ける小麦の香りが次の一手を急かさせる。ただ、中盤からの麺の変化が早そうにも思える麺の茹で加減だけを心配しながら具材陣に取り掛かった。具材のチャーシューは豚バラの煮豚型を大きめの角切りで盛り付けてあり、表面にはしっかりと焼き目を付けて香ばしく仕上げてある。このサイズの角切りでも柔らかすぎて、正直なにを食べているのか思考を働かせないと判別できないチャーシューだった。追加した味玉も残念ながら普通の半熟ゆで卵に色が付いたくらいだったので、追加しなくても良かったと後悔してしまった。確かにメニューには「ゆで卵」とは書かれてなかったので仕方ないが味玉と表記しているならば、せめてもう少し味の浸透を期待してしまった。残念な具材が続いてしまったが、こちらの店の真骨頂は色とりどりに盛り付けられた野菜たちだと信じながら一つずつ吟味してみる。セオリー通りに色素の淡い物から食べてみるが、どの野菜よりも淡色なのは黄色いズッキーニと思われた。かなり薄切りだが、しっかりと火入れされてズッキーニの持つウリ科カボチャ属の甘みが引き出されている。次に淡色なのは緑色のオクラで下茹でがされてあり、もしかしたら煮浸しかもしれないが出汁の旨みは感じられなかった。続いて赤色のパプリカは具材の野菜類の中では唯一フレッシュな状態で添えてあった。赤パプ自体の旨みはあるが、ローストしてからマリネするなどの一仕事があれば甘みを引き出せたと思ってしまう。最後に一番色素の強い姫竹を食べてみると香ばしさを出すために炙られてあったが、下味の醤油感が強いので香ばしさを超えて苦味にすら感じてしまった。しかし赤パプリカ以外の具材には、きちんと一仕事がされている事は野菜の旨みを引き出す手法としては素晴らしく思った。薬味には玉ねぎアッシェが添えてあり、煮干し系だけでなく濃いめの動物系スープの中でも辛味がアクセントになってくれた。中盤からは初動で懸念されたスープの塩気と麺の退化が現実となって襲ってきてしまい、どちらも平らげる事なく箸とレンゲを置いた。後客でもいればラーメンを残したとしても何気なく席を立てたのだが、私以外の客がいない上に後会計システムなので申し訳なく思いながら会計を済ませた。この時の心境は身分不相応にも、ガー○ズバーで高級シャンパンを開けてしまった時のドキドキ感と比類ないと思ってしまった一杯でした。
〝ニューオープン 探検記〟
先週に引き続き普段は利用する事のない〝上から読んでも西葛西、下から読んだらイサカシニ〟にやって来た。
それは前回の新店めぐりで訪れた西葛西での連食計画の3軒目の候補に挙げていて実際にも店の前までは行ったのだが、ガラス越しに見える店内には客の姿も見えずラーメン店らしからぬ外観に尻込みして初訪問をやめてしまったのだった。
しかしそれから数日経っても気になってしまい、覚悟を決めて再び訪れる事にした。そうと決まれば自宅からは西葛西よりも遠いが、船橋のサウナをネット予約して昨晩から船橋に前泊する事にした。こちらのサウナ付きカプセルホテルのネット予約の利点は、入館料と同じ料金で生ビール一杯付きのプランがある事だ。入館時にチケットを受け取り、まずは大浴場へと向かうと恒例の3セットをこなした。露天風呂がないので外気浴は出来ないが、水風呂の横に置かれたビーチチェアで小休止を挟みながら昨夜も〝ととのう〟事ができた。
サウナ上がりの最大の楽しみである生ビールのために上階の食事処に上がると、いつもの席が空いていたので腰を下ろした。いつもの席などどうでも良いと思われるかもしれないが、私にとっては大きな問題なのだ。昔からあるサウナ施設の食事処は大抵決まって畳部屋がほとんどである。しかし腰や膝への負担がツライ年齢になってきたので、こちらのようにテーブル席が少しだが設けられてあるだけでも本当にありがたい。そんな少ないテーブル席の良い点は他にもあり、近くにテレビが置かれてないので翌日のラーメンの予習やレビューを書くのに集中できる事である。さらには調理場のビールサーバーが近いので、呼び鈴を鳴らさなくても目線で生ビールを注文できるのだ。立て続けに何杯も飲む私には非常に助かる〝神席〟である。
そんな絶好のポジションを得ると、生ビールの杯数も知らずうちに増えてしまう。サウナの聖地と呼ばれる静岡にある「サウナしきじ」には及ばないまでも、こちらの食事メニューも中々のラインナップである。私の中では関東ではトップランクの食事処と思っているので、つまみ選びも楽しみの一つだ。もちろんサウナの食事処の定番メニューのおつまみ付きビールセットもあるが、好物の目玉焼きをオーダーした。昼はラーメンで味玉、夜は目玉焼きと卵の摂取量が心配ではあるが、片面焼きの半熟目玉焼きの黄身に小さな穴を開けて醤油を少しだけ垂らし入れて食べるのが堪らないのだ。白身を箸で切って醤油の入った黄身に絡めて食べる瞬間の悦びは、最高の味玉に出会った時に匹敵する。いや味玉には裏切られる事はあるが、目玉焼きだけは私を裏切らない唯一の存在かもしれない。そんな愛おしい目玉焼きをツマミに夜は更けていった。
もはやラーメンレビューではないと、お叱りを受けそうなのでラーメンの本題に入る。
翌朝の朝風呂の件は割愛して話を進めると、ホテルを午前10時にチェックアウトして西船橋を経由して東西線にて西葛西に着いた。やはり乗り換えが必要なので、わざわざ遠い船橋での前泊の意味を疑問に思いながらも必要性を自分に言い聞かせた。ただ単にサウナ上がりの生ビールが飲みたいだけなのではないかと、自問自答を繰り返しながら店へと向かった。
前回で道順は知っているので迷わずに西葛西駅北口から歩いて2分で店先に着いたが、11時開店の10分前の現着だったので行列もなく先頭にて待機を始める。大通りから少し入った場所にあるので人通りの少ない店先での一人待ちは目立つので、ひとまずは少し離れたとこから張り込んでみる。
やはり外から見ても独特の雰囲気があり入りづらい店構えだが、ガラス窓の垂れ幕のラーメンの写真や店先の立て看板の店内への矢印や「召し上がれ」の文字が誘い入れてくれるようだ。前回は三食目だった事もあり直ぐに断念してしまったが、本日は何がなんでも入ってやると心に決めて待っていると定刻通りにオープンとなった。
恐る恐る店内に入るとBARのようなと言うよりも、もはや完全たるBARである。さらに警戒心が高まってしまうようなオシャレな内装に気後れしながらも、何食わぬそぶりでカウンターに腰を下ろした。カウンター越しにはウイスキーなどのボトルが並んでいるので夜は勿論BAR営業をされていると思われるので、券売機は設置されておらず卓上メニューから本日のお題を品定めする。
メニューの筆頭は、つけ麺となっていたが自身の基本に忠実にラーメンと味玉を選んで口頭注文した。慣れない雰囲気を落ち着かせようとセルフでお冷を入れるのだが、このウォーターポットがオシャレなコック付きのガラス製なので余計に落ち着かない。水の中にはレモンスライスが大量に入れられた、いわゆるオシャレカフェにあるヤツだ。さらに緊張感が高まってしまいそうになったが良く見回してみると、それほど見慣れない景色ではない事に気付いた。カウンターの背後に置かれたお冷が置かれたコーナーもアイランド式のコの字カウンターとなっていて、中には人が入れる接客スペースにもなっていた。不思議と慣れ親しんだ景色に見え始めたのは、大好きなガー◯ズバーを思い起こしたからだった。すぐにでも女の子が出て来そうな雰囲気だが、本日は男性スタッフが二人体制で回していたので現実へと引き戻されてしまった。
ようやく気持ちも落ち着いてきたところで薄暗い店内を更に物色してみると、前後のカウンター以外にも入口左手には半個室のようなプライベート席もあるようだ。ラーメン店向けに設計された訳ではないので、もちろん調理スペースも少なく厨房は奥まった場所にあり作業工程は見る事ができない。それを残念に思っていたが、調理場の狭さゆえに他では見ない独特の手法を見る事ができた。暖簾で仕切られた奥の調理場で茹でられた麺を替え玉のように皿で運び、スープを温めていたカウンターの中で麺を受け取ると最終的な盛り付けを完成させるステージチェンジ方式を採用されているのだ。
これをサウナで例えるならば、大浴場で温まった身体が冷めないうちに素早く脱衣所で室内着に着替えると言ったとこだろうか。
どうしてもラーメンレビューがサウナレビューに脱線してしまうが、気を改めて待っているとラーメンよりも先に箸とレンゲがセットされた木製のお盆が目の前に置かれた。その上には味変用のアイテムも二種類セットされていて、その内の一品は食前に食べながらラーメンを待つ前菜の役割もあるようだ。その一品というのははミョウガのオリーブオイル漬けだが、ラーメンに味変を求めない私は前菜として食べる事にした。やや粗めの千切りにされたミョウガとオリーブオイルの香りが食欲を刺激するが、刺激されたのは食欲だけではなかった。それは合わせた塩の強さで、かなり塩辛くなっていた。スープに入れる事を前提としての塩分かもしれないが前菜としては随分と刺激が強すぎたので、隣に添えてあった味変用のカットレモンをかけて塩気を和らげてから食べ直した。これでラーメンが到着する前に味変アイテムを使い切ってしまったので結果オーライだった。
いささか口の中が塩っぱくなりながら待っていると、着席して8分ほどで我が杯が到着した。その姿は白磁の鳴門模様の切立丼の中でネオビジュアルな表情を浮かべていたが、保守穏健派の私でも驚かなかったのは店先に置かれた写真見て免疫を高めておいたからなのだ。今まで出会ったラーメンの中でも特殊な容姿だが、新たな出会いが待っているかもと期待を込めて木製のレンゲを手にした。
まずはスープをひとくち。不規則ながらもキレイな円形粒子の香味油が浮かんだ液面の奥には、乳化手前の半濁したスープが見られる。店名の「山」の文字から魚介系ではないだろうと予測しながらレンゲを沈めると、やはり動物系のコクのある香りが立ち昇ってきた。そこには〝山=畑〟を思わせる具材の野菜とともに大地の力を感じさせる様子が目に浮かんでくる。そんな自然の恵みを感じながらスープを口に含んでみると、清湯スープにはない動物由来のコラーゲンの粘りが唇に張り付いてくる。濃厚ではないが重みのある中濃タイプのスープで、若干の鶏出汁特有のクセが出ている。そのクセを隠すようにカエシの醤油ダレも強めに利かせてあるので、薄味党の私には塩っぱく感じてしまったスープだ。これも麺との相性を考慮された塩分設定なのだろうと、気持ちを切り替えてレンゲを箸に持ち替えた。
麺上げ工程が全く見えないので定かではないが、聴覚を研ぎ澄まして音を聞き分けると120秒くらいと思われる麺を引き上げてみる。そこには全粒粉のフスマが散らばった太めのストレート麺が、切刃のエッジを麺肌に誇示しながら現れた。一見すると日本蕎麦と見まがうような麺質に見られ、食べる前に様々な想像を掻き立てる麺だ。箸先の重みからは加水の高さを思わせる麺を一気にすすり上げると、シャープな四角い口当たりで飛び込んできた。やはり麺自体の口当たりは日本蕎麦のようだが、スープの粘りをまとっているので蕎麦にはない滑らかさも加味している。歯応えの面でもラーメンならではの、かん水の効果による歯応えも感じられる。モッチリとした食べ応えが咀嚼の楽しみを与えてくれ、弾ける小麦の香りが次の一手を急かさせる。ただ、中盤からの麺の変化が早そうにも思える麺の茹で加減だけを心配しながら具材陣に取り掛かった。
具材のチャーシューは豚バラの煮豚型を大きめの角切りで盛り付けてあり、表面にはしっかりと焼き目を付けて香ばしく仕上げてある。このサイズの角切りでも柔らかすぎて、正直なにを食べているのか思考を働かせないと判別できないチャーシューだった。
追加した味玉も残念ながら普通の半熟ゆで卵に色が付いたくらいだったので、追加しなくても良かったと後悔してしまった。確かにメニューには「ゆで卵」とは書かれてなかったので仕方ないが味玉と表記しているならば、せめてもう少し味の浸透を期待してしまった。
残念な具材が続いてしまったが、こちらの店の真骨頂は色とりどりに盛り付けられた野菜たちだと信じながら一つずつ吟味してみる。セオリー通りに色素の淡い物から食べてみるが、どの野菜よりも淡色なのは黄色いズッキーニと思われた。かなり薄切りだが、しっかりと火入れされてズッキーニの持つウリ科カボチャ属の甘みが引き出されている。次に淡色なのは緑色のオクラで下茹でがされてあり、もしかしたら煮浸しかもしれないが出汁の旨みは感じられなかった。続いて赤色のパプリカは具材の野菜類の中では唯一フレッシュな状態で添えてあった。赤パプ自体の旨みはあるが、ローストしてからマリネするなどの一仕事があれば甘みを引き出せたと思ってしまう。最後に一番色素の強い姫竹を食べてみると香ばしさを出すために炙られてあったが、下味の醤油感が強いので香ばしさを超えて苦味にすら感じてしまった。しかし赤パプリカ以外の具材には、きちんと一仕事がされている事は野菜の旨みを引き出す手法としては素晴らしく思った。
薬味には玉ねぎアッシェが添えてあり、煮干し系だけでなく濃いめの動物系スープの中でも辛味がアクセントになってくれた。
中盤からは初動で懸念されたスープの塩気と麺の退化が現実となって襲ってきてしまい、どちらも平らげる事なく箸とレンゲを置いた。
後客でもいればラーメンを残したとしても何気なく席を立てたのだが、私以外の客がいない上に後会計システムなので申し訳なく思いながら会計を済ませた。この時の心境は身分不相応にも、ガー○ズバーで高級シャンパンを開けてしまった時のドキドキ感と比類ないと思ってしまった一杯でした。