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「塩ざるそば(夏季限定)」@麺道 しゅはり 六甲道本店の写真まず始めに申し上げておこう。今回99点と採点したわけだが、「いわゆるラーメン好き」の方々、つまり動物系出汁、一定以上の味・濃度、あるいはジャンキーな諸々の要素を「必須」のものとして、ラーメンやつけ麺に求める人たちにはあまりお勧めできない。今回頂いた「塩ざるそば」は初めからそういった要素が捨象されているからである。
しかし良い意味で食にこだわり(とらわれ)を持たない素朴な感性の人、若い頃ほど濃い及びジャンクな味付けを好めない人、あるいは素材の旨味を愉しむ嗜好を有す人全般には強くプッシュできる。そんな一杯であった。


○ 入店


久方振りに神戸に所用。しかも昼ご飯時にも晩ご飯時にも結構な時間が取れるという好条件に恵まれた昼下がり、
やってきたは「麺道しゅはり」である。
この日は夜にラーメン虎一番へと初訪問を果たして「塩ラーメン」を食すつもりだったので、
その前にしゅはりの「潮らあめん」を久し振りに食して虎一番のものと比較考量したかったのだ。
もちろん、ただ単に食したかったのもあるけど。

しかし入店し、形式的にメニュー表に目を通したまさにそのとき、見慣れない5文字を目にする。
「夏季限定の…『塩ざるそば』??つけ麺じゃなくて『ざるそば』??」
そんなものが供されていることを知らなかったのである。
突如として、食べ比べ計画の雲行きが怪しくなる。
潮らあめんか塩ざるそば、どちらにしようか。
たっぷり30秒は悩んだはずだ。
そんなとき、ご主人が常連客らしき男性客の質問に「(塩ざるそばは)今日からです」と答えているのを耳にする。
ここで、計画は完全に頓挫した。
だってね、そんなシチュエーションじゃ、どうしても「今日から?偶然だな。なんかラッキーかも」
って思ってしまうわけですわ…。


○ 塩ざるそば


・麺

京都の製麺所麺屋棣鄂製の全粒粉麺。
卓上に置かれた「守破離新聞」には、棣鄂との試行錯誤によりレベルアップが云々といった旨の説明が
なされている。
食感としては、ツルツルとザラザラの中間領域にあるような啜り心地、もっちりとした噛み応え、
そして瑞々しい粉っぽさ(「瑞々しい」と感じさせるかどうかで、私の「粉っぽさ」の評価は変わる)等が良い。

しかし何よりも、全粒粉の穀物感の風味高さ、これに尽きるだろう。
それは今まで食した全粒粉麺の中でも、頭一つ抜けたものであった。
たとえば、同じ棣鄂製ならば、タンポポでかつて用いられていたつけ麺用の全粒粉麺よりも風味高い。
また、私の中ではアンタッチャブルであった麺や 高倉二条系列の自家製全粒粉麺よりも、風味の響かせ方が
良いとさえ感じた。

この店のご主人のことだ。嗜好・志向するもの、及び棣鄂への要求水準は相当に高いのだろう。
棣鄂もまたそれに刺激され、応えようとしているのだろう。
そんなハイレベルな競演を想像させるような、秀逸な麺だ。

・かえし

そう。つけ汁やつけダレではなく、「かえし」なのである。
七種の乾物からとった魚介系出汁に丸大醤油、味醂、日本酒が用いられているそうな。

・具

麺上に刻み海苔、別皿に味玉半個と白髪ネギ、スダチ。
チャーシューは無い(実際、この塩ざるそばには要らないと思う)。

・麺を様々な食べ方で食す

この塩ざるそばには予めいくつかの食し方が用意されていることが、守破離新聞に記されている。
詳細は覚えていないが、麺だけを食す、(つけ過ぎないように注意して)かえしにつけて食す、
ぬちマース(沖縄産の自然塩)を麺にかけて食す、スダチをかけて食す等だったと思う。
全て試したが、ここでは2つの食し方にだけ触れよう。

① かえしに通して麺を食す。

私は蕎麦の食し方に倣って3分の1程度しか通さなかったが、それでもやはりかえしの影響で、
噛み始めは蕎麦っぽい印象だ。
しかしこのすぐ後、「これは蕎麦だ」と断ずるのは性急で安直に過ぎることを感じさせられることとなる。
噛み進むにつれて前述した全粒粉の至極の風味高さが充満していき、ついには口中から鼻腔内を
吹き抜けるのがわかる。
当然ながら、そこに蕎麦の風味(蕎麦粉による)は感じられない。
「小麦の全粒粉」なのである。

この蕎麦に似た、しかし蕎麦ならざる味わい。
似て非なる味わい。
旨いね~。

② 麺にぬちマースをかけて食す

今回私が最も気に入った(というか、魅入られた)食し方。
小瓶に入れられたぬちマースをちょっとだけかけて麺を食す食べ方である。

食べ手個々人の「塩分耐性」にもよるだろうが、私には僅かなぬちマースで十分だった。
カドのないまろやかな塩分を少し利かせるだけで、ただでさえ美味しいこの全粒粉麺の風味が、
最大限に高められるのである。
また、敢えて説明されるまでもなく「絶対に身体に良い」と感じさせられることによって、身体だけではなく
こころにまで染み入る滋味も旨い(これは、全メニューに共通するしゅはり最大の強みなのかもしれない)。

味覚・嗅覚を超え、身体とこころの全体で感受させる美味しさ。
それはもうとてつもなく、脳内で分泌されるエンドルフィンが身体全体にまで「氾濫」するような
多幸感さえ抱かされる。
何だろう、これは。
この、最もシンプルにして最も贅沢な味わいは。

しかもこの食し方は、ここで終わらない。
ぬチマースに加え、スダチをかけて清涼感を加味する。
あるいはぬちマースに加えて刻み海苔を絡め、わずかにその旨味を加味する。
このどちらの食し方においてもただの味変ではなく、各々に固有の深く優しい味わいがたまらない。

2玉があっという間に無くなってしまった…。

・出汁割

もちろん蕎麦湯ではなく、出汁で割る。
潮らあめんと同じ出汁が用いられているかどうかまではわからない(厨房を見忘れた)。

湯桶のようなものに入れられて供されるその出汁を少しずつ入れていく。
初めの内は、やはりかえしが少し薄くなったと感じられる程度であった。
飲めることは飲めるが、敢えて「締め」として飲まなくても良いのだろうか。
そんな風に思わされたのも束の間、半分ほど飲んだところで思い切って出汁を全て投入すると、
かえしが出汁によって「底上げ」され、しかもしゅはりに特有の多様な味わいを蔵すスープとなった。
もししゅはりが醤油ラーメンを始めればこんなテイストになるのではないかと思わせるような、
極上のテイストである。
まあかえしと出汁を組み合わせるのだから十二分に考え得ることなのだが、それにしても
最後にこれを味わわせるとは何とも心憎い。


○ 守・破・離 ~逸脱か超越か、あるいはまた別の何かか


冒頭で申し上げたように、この塩ざるそばは「いわゆるラーメン好き」の方々(動物系出汁、一定以上の味の濃さ、
あるいはジャンキーな諸々の要素を「必須」のものとして、ラーメンやつけ麺に求める人たち)には
お勧めし難い。
きっと「全然物足りない」「蕎麦だ」等とされるだろう。
「必須」だとまではいわないにしても、それらを「最も好む」という方々にもしかり。
美味いのはわからなくもないけどやはりどこか物足りない、という感想を抱いてしまわれるのではないか。
こういった人たちにとって塩ざるそばは、「逸脱」に近いのかもしれない。

しかし「通」だとか麺フェチ、もしくはどこかの店の麺に対して一度でも
「(つけ汁に通さずに)この麺だけを最後まで食べてみたい」
というフェティシズムを抱かれたことのある方々のへウケは、概ね良好であることも予想される
(ちなみに私は麺フェチの「もどき」だ…)。
それだけの麺の風味高さ、そして良質の素材と素材のシンプルな組み合わせの妙がある。
こういった人たちにとってこの塩ざるそばは、「超越」なのかもしれない。

では限定的な客層だけが対象に定められた敷居の高い麺料理なのかといえば、それも違うような気がしている。
むしろその反対で、敷居が低いというか門戸が広い。
素材の旨味及びある素材とまた別の素材のシンプルな組み合わせの妙に、決して「素朴」の一語では
言い尽くせない満足感を抱いた経験があったり常々そういったものを食していたりする人たち。
あるいは多様な食経験を持っていたり肩肘張ることなく気楽に様々な料理を好んだりする人たち。
こういった方々にも愛される麺料理なのだと想像しているからだ。
いや、もしかするとこういった人たちが一番この塩ざるそば、そして「しゅはり」を十全に
味わえているのかもしれない。
そして敢えていうまでもなく、「ラーメン好き」の中にもこういった方々はおられる。
上で述べた「いわゆるラーメン好き」とはまた別の「ラーメン好き」が。

結局のところ、「ウマいもの」ではなく「美味しいもの」を、それも心穏やかに堪能したいという方に、
最もお勧めできるということなのかもしれない。


○ 退店


夏季限定の「塩ざるそば」は「しゅはり、ここに極まれリ」と謳いたくなるような至高の一杯である。
未食の方には、全粒粉麺とかえしの「競演」もさることながら、ぬちマース(及び、それ+スダチor刻み海苔)との
最もシンプルにして最も贅沢な組み合わせを堪能して頂きたい。
ただし「ウマいもの」だとか「ラーメン」「つけ麺」ではなく、「美味しくてこころにも身体にも良いもの」を
食すという、ある種の気楽さに似た心持ちをお忘れなく。

投稿 | コメント (3) | このお店へのレビュー: 3件

コメント

poly-heteroさん、こんにちは!

・・・・・食べたいです。 T_T
写真とpoly-heteroさんの書き込み内容から想像すると、「塩」と「スダチ」・・・・ゼッタイに美味しいだろうなぁ。
麺オンリーと塩やスダチで、ほとんど食べてしまうかも・・・自分だったら。 >_ 最初は「塩ざるそば」なのに、つけダレの色が・・・と思ったんですけど、まさか「かえし」とは!
このメニューって、ある一定の期間がかかったという事ですよねぇ?
「和だし」が、かなり効いていたのでしょうか?
この間、旅行先で食べた「出石蕎麦」の『南枝』というお店の「かえし」を思い出してしまいました。
そして、最後は「蕎麦湯」ではなく「出汁割り」だったんですね。 
余談ですけど、1度「水蕎麦」って食べてみたいんですよねぇ。 >_<

それと らぁめん たむら のコメントを有り難うございました。
まさしく「鰹ぉ~~っ!」なつけダレは『高倉二条』系を思い出しました。
記憶が曖昧(『ろおじ』)なのですが、『たむら』の方が鰹感が気持ち強かったかもです。
ただ、「鶏豚骨らぁめん」のスープを口にした後だったから、そういう印象だったのでは?・・という推理なんですけど。 ^^:

こま | 2009年6月10日 15:45

どうもタイガー道場です。
早速行ってまいりました。
これ程の衝撃は初めてです。
参りました・・・。
もうこれ以上の事を表現できる物は当分出てきそうもないですって感じです。

こまさん コメントありがとうございます

>写真とpoly-heteroさんの書き込み内容から想像すると、「塩」と「スダチ」・・・・ゼッタイに美味しいだろうなぁ。
麺オンリーと塩やスダチで、ほとんど食べてしまうかも・・・自分だったら。 >_
フフフフフ…。でしょう?
私も次回訪問時は、かえしは5口に1口程度にして出汁割用に置いておき、麺とぬちマース、スダチor刻み海苔を
存分に楽しむつもりです。

>最初は「塩ざるそば」なのに、つけダレの色が・・・と思ったんですけど、まさか「かえし」とは!

「ざるそば」というネーミングもさることながら、「潮」ではなく「塩」であることにも訳があるということなんですかね。

>「和だし」が、かなり効いていたのでしょうか?

ん~、まあとにかく「そばつゆ」に限りなく近いです。

>この間、旅行先で食べた「出石蕎麦」の『南枝』というお店の「かえし」を思い出してしまいました。
>余談ですけど、1度「水蕎麦」って食べてみたいんですよねぇ。 >_<

余談には余談で返しますと、最近私はラーメンの食べ歩きは少し減らして、その分蕎麦の食べ歩きも少しだけ
やってみようかなと思い始めています。
つけ麺の頻度は変わらないと予想されますが。

>記憶が曖昧(『ろおじ』)なのですが、『たむら』の方が鰹感が気持ち強かったかもです。

なんと…。高倉二条系列店は節系に一定以上のプライドを持っておられるので、彼らがこのつけ汁を啜ると
面白いことになるかもしれませんねぇ。

ではでは

poly-hetero | 2009年6月10日 23:11