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「叉焼メン(840円)」@下前商店の写真299杯目。

横浜元町にある下前商店。2010年2月13日。この日は、土曜日であった。ラーメンをこよなく愛される二人の大人がお店に向かった日である。当日は、雨が落ちてきていた日だったようだ。お二人はKMさんとB級グルメさん。お店とお店が丁寧に作ったラーメンを堪能されたと、お二人ともに話されている。そしてレビューと同時に上げられている写真が、レビューと同様豊穣なラーメンを雄弁に物語っている。心が、うごいた。

その後、事件がおこり、普通に食べればいいはずのラーメンに番号まで付して、カウントダウンしなければならない愚をおかさざるを得ない状況に陥る。296から300までのカウントアップ。その空席だった5席の最初を埋めたのは、ここ下前商店。いつ行くかは別にして、残りを4席にしたお店である。その強い意志を決めたのが2月13日のお二人の紀行文であった。旅の描写であるから、それは紀行文という。

横浜元町もしばらく行っていない。中華街も同様。中華街に最後のラーメンを食べに行きたい、とRDBでも公言していた。下前商店に行けば、うきうきすることがたくさん待っている。ウチキパンも近そうだ。中華街でおみやげもたくさん買える。日本で最大のチャイナタウン。

東ドイツの真ん中に飛び地で西ベルリンがあったころ、汽車に乗ってベルリンに行ったことがある。イタリアから北上する列車だった。いよいよ東ドイツの領土に入ったとき、乗っていた車両に数人の軍人が機関銃を持ってどかどか入ってきた。東ドイツの軍隊である。恐怖をあおるようなまがまがしい色の軍服と機関銃は本物である。何が起きたかまったく分からなかった。乗客たちは、軍人に乗車切符を見せている。こっちの順番になり、とりあえず切符を見せた。行列に向かって半分どなり声で何か言っている。ドイツ語はできない。

同じボックスにいた乗客が、英語は話せるかと聞いてきた。話せる、と答えた。それは良かった。彼らは、あなたの持っている切符では東ドイツの領土内で列車に乗ることは出来ない、と言ってます。それは、きっと正しいと思った。そもそも東ドイツの切符なんて買えっこない。それでは、どうすればいいか、彼らに訊いてくれますか?盛んに応酬してくれた気配。

ドイツ人は基本的に親切である。地図を広げて道を訊いていると、どんどん人が集まってきて、中で英語の出来る人にドイツ語でがんがんアドバイスする人がでてくる。フランス人には、道を訊かないことに決めている。違う町で3回わざと違う方向を教えられたことがある。ウイットなのか、東洋人に対するやり方なのか。3回とも、郊外の田舎にある中世の建物を利用したベッド&ブレックファーストの場所を訊いた時。ホテルの場所を訊いて、反対方向の場所を教えるフランスの文化は理解できなかった。さて、東ドイツ領土内を走る国際列車でおきた出来事に話を戻す。

最後に、西ドイツの紙幣でxxxマルク払えと言ってます、と聞いたときにはもう腰が抜けそうになっていた。行列が33歳のできごとである。無事にベルリン動物園駅で降りた。駅のインフォメーションで中華料理のお店をきいた。チャイナタウンではないが、中華料理屋が近くに固まって何軒かあるところを教えてもらい、そこに行った。いまでもこのとき食べた西ベルリン中華街の味を越えるものに出会っていない。

下前商店は元町・中華街駅から近いと地図は示している。であるなら、みなとみらい線に横浜から乗るか、始発の渋谷から乗るかのどちらか。それでは、選ぶのは始発に決まっている。渋谷から、特急券の要らない特急が出ている。始発から終点まで乗ればいい。かつては、渋谷から横浜までは気が遠くなるほど時間がかかった記憶がある。今は、30分かからないのではないか。

終点に着いて地図を頼って人ごみを歩く。元町には独特の空気感を感じる。お店のせいなのか、人のせいなのか。おそらくは、MOTOMACHIという語感のせいかもしれない。ISIKAWACHOUでは、だめなのである。元町プラザが見えたので、もう着いたも同然になった。そこで、ウチキパンの看板を早速見つける。

パン屋さんの2代目が、それまで先代が切り盛りしてきたアンパン屋をハード系の有名パン屋として興すことは、よく聞く話である。それが、3代目となると、相当な老舗、草分けという話になる。ところが、このウチキパンは、なんと当主4代目。いかにお店が貴重なものか。日本で一番古いかもしれない。横浜がインターナショナルだからこそ、それが背景で古くからパンの需要があった。そして綿々と刻んできた歴史が重い。お店の進歩がお客を引き込む。店外から見ても、レジに行列が出来ている。これは、帰りに並ぼう。

ウチキパンの先が二股に分かれていて、右のほうにすすむ。1本目のT字路を右に折れたら、ラーメンのちょうちんが見えた。うまく地図が解読できた好例であった。

道は行き止まりのような細い路地で、路地の真ん中に三脚をだし、ラーメンと書かれたちょうちんが出されていた。ウチキパンから来ると、T字路をまがった地点ではお店を見ることができない。このように道にラーメンの赤いちょうちんを見つけるのは、ひとつの楽しみである。ただ、知らないとまず来ない地域であろう。情報のありがたいところである。このようなお店が300軒も載っているラーメン本から、自分の好みの店を発見することは極めて難しい。ラーメン本の記述には奥行きがないから、すべての店が平板に見える。陰影がない。手垢にまみれていない情報のありがたさをつくづく感じながら、お店のドアを引いた。お店の半分はよしずでおおわれ、昼下がりのけだるい日光をさえぎっていた。

入ってすぐ店主の声に迎えられ、店主と目が合う。若い店主である。L字に配置されたカウンターの角の2席が空いていた。腰掛けたら直後にさっと4名が出て行ったので、左奥の席に落ち着いた。店主一人の切り盛りなので、忙しいのが良く分かる。カウンターには、お客が置いていったお金も回収されずに残っているような状況で、言われればすぐ助けてあげたい気持ちになる。ステンレスの什器が清潔感を演出している。BGMは店主の好みのようである。有線ではなく、自分のコレクションからCDを使い、ミニコンポを使い。音楽のセンスもよろしい。

冷蔵庫からなにやら取り出して作業を始めた。しばらく見てよう。それは、ワンタンを作るところだった。あわてているようなスピードで、へらを使って皮にあんを入れている。その都度作るやり方なのか、今間に合わなくなっているのか。ワンタンの1人前ができたようである。こちらを向いてオーダーをきいてくれる。

最後まで迷ってお店に入ってきた。チャーシューは絶対食べて帰りたい。実に見事なチャーシューが写真におさまっていた。迷ったのは、ワンタンをどうするか。カロリー的にはスルーすべきである、と思いながら、迷いながら、未練タップリで入店した。それが、皮肉なことに、目の前で手で作られていく過程を見て、さらに混乱に拍車がかかる。

すみません、それでは、叉焼メン(840円)でお願いします。

誘惑を振り切り、わずか3,4ヶ月後には好きなものを食べれることに賭ける、ことのほうを優先した。その後も客が出て行っては入ってくるというのを繰り返して、常に8分方の入りであった。この路地裏にして、である。

料理の名前に店主の思いを感じた。チャーシューメンと表記せず、チャーシュー麺と表記せず、叉焼メンである。炙って作った叉焼を使っている、ことを言っている。鮮やかな紅色は、中華街に近いのだから、きっちり紅南乳(ほうなんるう)を使っているに違いない。缶詰が一般的だが、あれだけの数の本格的な中華料理屋があるのだから、もしかしたら業務用に酒と紅米を使い、紅麹菌を使って腐乳を作っているお店があるのかもしれない。

先客の配膳が終わり、次のロットの準備とドンブリの洗いが終わったようだ。いよいよの順番になった。茹で時間が極端に短い。これは細麺を使っているという情報から納得している。一連の動作が完了。トッピングを乗せて、ようやくの配膳となった。これが299か。しみじみを麺を見た。

割と濃い目の醤油色がついているのにもかかわらず、透明なスープで沈んだ麺が見えている。表面には小さな油滴が無数に浮いている。思ったより脂は少ないようだ。トレードマークの叉焼が2列縦隊できちんと並べられている。ワンタンが入らないので、こういう構図になるのか、と思った。叉焼の厚みがすごい。こんなに厚切りにしていいのか心配になるくらいである。時間がなくて大雑把に切らざるを得なかった、との邪推が本当に聞こえるような厚さ。粗ザク切りの葱。茹でほうれん草。

何が食べたいって、そりゃあ叉焼でしょ。一番大きくて一番厚いところを一枚ピックアップして、がぶりつく。ほお。想像していたよりは柔らかい仕上がりになっていた。肉の旨みが、肉の繊維の間から絞り出てくるような旨みである。このようなグレードの叉焼が、ラーメンに合わせていただけるのが、この横浜ならではであろう。この叉焼はうまい。

香港では、旨いことは旨いという叉焼をいい加減食べたが、どうも合わない部分が目だって、これという叉焼に出会っていない。蜂蜜が甘すぎたり、八角が強すぎたり、自分の味覚には合わないのが多かった。マカオプレートのチャーシューも、ちょっと。その点、ここのお店の叉焼をお手本にして次回は熱烈歓迎してもらいたいものだ。

スープは子供の頃食べたそのままのおいしいスープが再現された、と思うほどのすばらしい出来である。コクを出しながらも脂っぽさを排し、やや甘みのある醤油味は中華そばの普遍的なうまさだと思う。この店主は、なぜこの味を選んだのか、不思議な気がする。メニュー、名刺には、スッキリ、サッパリらーめん!、と書いてある。確かにスッキリしているし、サッパリもしている。それ以上に旨みがすごいのだが、それを書くほどおろかではない。この系統のラーメンに郷愁を感じる年齢にはとても見えない。郷愁ではなく、追求して辿り着いた味なのであろう。大人である。

スープの由来は良く分からない。実にシンプルな作りながらも味の重なりを感じるということは、鶏清湯をベースにしたスープと考えるのが普通かな。Wスープなどという流行ものではないので、基本に忠実に丁寧にとっただしなのであって、由来の追及は不要のようだ。意味を感じない。

麺の出来も良かった。細いがしなりのある強靭な麺で、50年前の中華そばといえば、このような細麺が主流だと思って食べていた。どのお店もこのような麺をだしていた。中華街にはどのくらいの数の製麺所があるのだろうか。このお店を出たら、川を渡って永楽製麺所に寄ってみようとも思っている。永楽の細麺はいつ食べても見事である。細麺のこしには驚くばかりである。タンメンもイーフーメンもいい。この下前商店の細麺が、これほど旨いのは想像していた。想像通り、と言ったほうがいいかもしれない。永楽からの推測である。ほとんどストレートなこの麺が、中華街のしっかりした歴史の賜物であると断言できよう。

一杯の叉焼メンに、すっかり愉快な時間を提供してもらった。これだけの作品を提供してくれる店主に感謝の言葉を残して、表にでた。空気は冷たいが、差してくる光には春の気配がある。あと数日で年度がかわり、新しい日常が始まる人も多いことだろう。新しい生活を告げる桜の花も5分咲きを超えた。さて、中華街の雑踏に足を踏み入れる心の準備は出来ている。次はどんな楽しみが待っているか。中華街に向かって歩き始めた。

投稿(更新) | コメント (8) | このお店へのレビュー: 1件

コメント

行列さん、ごちそうさま。

なんだか一緒にお店まで歩き、
一緒に食べた気になりましたよ。
とうとう次は区切りですね。
そんな言い方は野暮ですかね。
次も期待してます。

つくし野ラーメン隊1号 | 2010年3月29日 20:22

こんばんは

ラス前にクンロクの連荘ですか
レビューを読んで素晴らしさとともに感慨深いものがあります
むしろレビューと呼んでいいのかさえ憚られますね
ただただ感心して読ませていただきました
生意気を言わせていただければ共有できた喜びを感じます!

B級グルメ | 2010年3月29日 20:42

こんばんは!!!

っ!!!!!


ココはっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



・・・・・・・・・・・・・・・・今自分の中で世界で一番行きたいお店なんです 笑
来週にでも行こうかと思ってたんですよ。

今だから書きますが、しろ八のコメントする時に
「ちなみに自分が今一番行きたいお店は下前商店です」
と言おうかと思ってたのですが杞憂でしたね。
もしもそれで「そっちも行きたい!」なんか思ってしまったら・・・と思いやめました。

なので、正直嬉しいです。本当に嬉しいです。
ちょっと、目から水分が出ました。きっと汗ですね。。
そして非常ーーーーーーに羨ましくもあります 笑
悔しいけれど、最高に嬉しくもあります。ありがとうございます^^
もーこの食べたい衝動をどう抑えればよいのか・・・

次の最後の一杯。
あまり僕の目から水分を出させないで下さいね。
決して僕の中では「最後」と思ってません。
体調が良くなり、ゆっくりなペースでも、
「大好きなラーメンを愉しんでいる」行列さんの姿を夢見て寝ることにします。

am | 2010年3月30日 00:13

KMです。

おはようございます。
お店の名前と点数を見ただけで感激しました。

すばらしい文章の中に名前を出していただき、大変光栄に思います。

おそらく同じころ、この前の土曜日、友人とこちらに
お邪魔しました。その後、いつものように中華街に消えていきました(笑)。
友人はこの春就職です。場所は日立だそうです。

色々なことが書かれているので、沢山書きたいことがあります。
でも無粋なので、止めます。

同じラーメンを旨いといってくれる方と味を共有できること。
これはRDBの良さですね。
しろ八と下前、もうそれで十分です。

次の一軒も楽しみにしてます。

この投稿の後、同じ店のことを書くのは、どうしようかと
考えてます。
でも、行列殿に関係がない気がしないので、これから
原稿を書く事にしました。

KM | 2010年3月30日 07:57

つくし野ラーメン隊1号 さん

お付き合いいただきまして、ありがとうございます。
長々とお連れしてしまいました。
お次のお店はここでした。機会があれば是非どうぞ。

行列 | 2010年3月30日 20:24

B級グルメ さん

はい、77の親の連荘です。
もう一回来ましたので、3本ば。りゃんし、までいけないのが無念です。
ただのおっさんの繰り言です。そんなたいしたもんでは、ありません。
共有ですね、まさに。うまいものは、うまい。
また、すぐ再登場しますので、引き続きお付き合いいただきたく思います。

行列 | 2010年3月30日 20:28

am さん

それほど思っていただくとは。申し訳ないです。
病状はたいしたことありません。女医さんにさんざん脅かされただけです。
下前商店、お先にいただきました。是非店主にエールを送りに行ってください。
近くにあるウチキパン屋さんも覗いてくださいね。
ラーメンは中断しますが、その他の食べ物のブログを食べ物ブログに
載せてますので、そちらもご参考までに、ってPRしてしまいました。

行列 | 2010年3月30日 20:34

KM さん

まさに、土曜日ですよ。ニアミスでしたか。
子供のころ数年日立で育ちました。ドジョウを取っていた田んぼに
マンションが建ってました。何もなくて、いいところです。
原稿を書くようになって、よかったです。
書かないというのは、けしからんですよ。ラーメンに申し訳ない。

行列 | 2010年3月30日 20:37