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「特製醤油 ¥1350」@楢製麺の写真平日 曇天 11:05 先客1名 後客6名

〝ニューオープン パトロール〟

10日ほど前に新店情報の中に見つけて知ってはいたのだが、当初は営業時間も出ていなかったので二の足を踏んで突撃のタイミングを逃していたのだ。久しぶりにRDBを見直してみると、少しずつ詳細が明らかになっていたので初訪問へと踏み切った。

新たに挙がったお店情報では無休の上に昼夜通し営業となっているので訪問機会を選ばないが、昼ピークは避けたくて午前中での訪問を目指した。11時前に自宅を出ると山手線で5分足らずで最寄りの代々木駅に着いた。北口を出て馴染みのない裏通りを歩いて行くと小田急線の踏切につかまってしまった。上り下りの両電車の通過を待っていると、昨年デビューしたばかりでまだ乗車した事のない GSE(70000形) のロマンスカーのオレンジ色の車両がゆっくりと通り過ぎた。鉄ヲタでなくともテンションが上がった。

優雅な展望席の後ろ姿を見送りながら踏切を越えると、周囲の飲食店とは一線を画す圧倒的なオシャレ感を漂わせた店先を見つけた。近寄らなければラーメン店とは分からないようなハイソな外観が独特のオーラを放っている。開店時間を過ぎていたが並びもなく入店できた。

小さなドアを開けて店に入ると、外観よりもさらに高級感のある内装がワンランク上の世界に誘ってくれるようだ。スタッフさんに案内されたカウンターに座り、卓上メニューから本日のお題を品定めする。しっかりと作り込まれたメニューブックには様々なウンチクが盛り込まれて強いこだわりを感じる。筆頭メニューは塩系とはなっているが、今回もマイスタンダードの醤油系を特製にてオーダーを告げた。

そこから店内観察を始めるが、そのタイミングで空調かダクトのスイッチが入れられたのをキッカケに店内にはホコリが舞い上がったのだ。カウンターを照らすダウンライトがホコリを浮かび上げるので異様な光景に見えた。それが落ち着くまでに3分ほどかかったが、どうやらホコリではなく小麦粉だった事に後から気付いた。これはオープン直後にしか起こらないレアな現象なので仕方ないが、客としては気持ちの良いものではなかった。しかし環境面は評価対象にしないと決めているので、冷静に心を鎮めて店内を見渡す。

8席だけのコの字カウンターには店名に合わせた楢の無垢板が使われており、手の込んだ細工が施されている。通常のようにカウンター上には箸立てが置かれてなく、カウンター天板の隠し引き出しに箸とおしぼりが入っている。常連感を出したいなら着席と同時に引き出しからおしぼりを取り出せば、周囲の注目を浴びる事は間違いなしだ。調理場とは壁が隔てているので残念ながら中の様子は見られないが、さほど広くはない店内だが本日は新入りさんを含めた三人体制で回しているようだ。見えない厨房から聞こえてくる湯切りの音を聞きながら待っていると、着席して8分かけて我が杯が到着した。

その姿は私が自宅でも愛用しているステンレス製のメタル丼の中で、店内のオレンジの暖色に映されて優しい表情を見せている。このメタル高台丼にラーメン店で出会ったのは初めてだが、ご当地ラーメンでも有名な燕三条で製造されたものである。白い釉薬が塗られているので一見、陶器に見間違えてしまいそうだが軽さや熱伝導が明らかに違っている。さすがは燕三条のプレス金型職人の妙技に感心しながらレンゲを手にした。

まずは花葉色のスープをひとくち。これ程までに透明感のあるスープを見た事がないくらいに一点の曇りもない澄み切ったスープにレンゲを落としてみると、波打った液面からは微かな鶏出汁特有の香りが鼻先をくすぐる。そんな鶏清湯スープをレンゲを介して口に入れようと口元を近づけた時に、目の前が真っ暗になった。それは単なる視覚的な問題なのだが、オシャレ雰囲気を優先したダウンライトのせいで自分の頭が影になってラーメンを真っ暗にしてしまうのだ。飲食店としては有り得ない照明が残念に思いながらもスープを口に含んでみると、とても洗練された鶏主体の旨みが穏やかに広がった。表層に浮かんだ粒子の大きな鶏油も、過剰なコクや油っぽさを加えるのではなく潤い程度にまとめている。非常にあっさりしているが、そこに昆布の旨みが重なる事でより一層スープに清らかな深みを与えている。シンプルながらも奥深いスープに合わせるカエシも醤油感を強く押し出しているのではなく、色づけや香りではなく輪郭をはっきりとする役目の方に徹している。よくある鶏出汁かと思ったら、余計なものを削ぎ落とした潔いスープには久々に感動してしまった。

屋号に〝製麺〟と掲げているだけに自家製と思われる細麺には賛否が分かれそうだが個性的ではある。先ほどまで店内に小麦粉が舞っていたいたので、製麺機も客席の壁の奥に設置してあると思われる。ウンチクにも書かれた打ち立て、切りたてにこだわったとある自家製麺を箸で持ち上げてみる。カンスイ不使用との事で見た目にもカンスイ特有の色づきもない美白麺が現れた。細かく言うとラーメンのカテゴリーには属さない麺類とはなるが、興味のままに麺を啜ってみた。やや切刃のエッジを感じる口当たりで滑り込んできた麺は、滑らかと言うよりは麺肌に凹凸のあるザラつきにも似た舌触りが特徴的だ。そんな麺を奥歯で噛んでみると、細麺ではあるが軽やかなもっちり感が、うどんともラーメンとも言いがたい歯応えだ。この食感はラーメンを求めて来た人には微妙なところだが、オリジナリティな麺と言われればそうなのかもしれない。

具材のチャーシューは肉の種類や部位、調理法が異なる三枚が特製ならではのフルボリュームで添えられている。鶏ムネ肉の低温調理は厚切り仕立ての力強い歯応えと、真空調理ならではのしっとりした舌触りが同居している。強さと優しさを兼ね備えた上に、繊細なソミュール液が淡白な肉質に旨みを加えている。チャーシューと言うよりはハムに近い鶏ムネ肉は、スープを汚さないように薄味で仕上げられている。豚ロースも低温調理ではあるが、薄切りが生み出す赤身の密度の詰まった味わいを楽しめる。また豚ロースならではの一辺の脂身の甘さを感じられた。唯一の煮豚型で仕込まれているのは豚バラ肉かと思ったら、首の部分である豚トロを用いているようだ。箸で持てないほどに柔らかく煮込まれていて、豚トロにしか出せない赤身と脂身が交互になった繊維質が柔らかさを増長させる。もはやレンゲでないとスープから取り出せない状態になっていた。しかしながら味付けは最低限に抑えてあるので良質な豚肉の旨みが引き出されている。

味玉にも強いこだわりが表れていて、エサの色素によって着色されていない自然な黄身の色の卵で仕込まれている。もちろん安心安全な新鮮卵は大歓迎なのだが、スープに寄せた薄味仕立てが好みとは外れていた。卵本来の旨みも大切だが、その上に調理技術が加わった味玉の方を求めてしまった。

メンマ代わりのタケノコも拘りを見せているが穂先に近い部分の柔らかい食感と和出汁の優しい旨みのバランスは良く感じるが、根元の方になるにつれ硬い繊維が口に不快感を与えてくる。さらには薄味だけに噛めば噛むほど味気なさばかりが際立ってきて、噛む事がつらく感じるほどだった。

薬味は白ネギが笹切り状で火入れ処理されて少量添えてあるのは、白ネギ特有の刺激や辛みを感じさせない一手間なのだろう。作り手の計算通りに穏やかなスープや麺の邪魔をせずに、しっとりとした食感とネギの甘みだけをプラスしていた。あまり見かけない青みのスプラウトは水菜だろうか。しかしあまりの少量なので、色みとしても食感としても存在感を感じられずに胃袋へと入っていた。

中盤からも不思議なテクスチャーの麺を噛み締めながら食べ進めたが、スープが出来が素晴らしいだけに麺の食べ応えが物足りなくなってきた。新たなジャンルの麺類だと思えば抵抗感も少ないのだろうが、ラーメンとしては今ひとつ満足できなかった。普段は不必要なカンスイ臭を苦手としているが、カンスイの生み出す弾力や麺質には大きな力が潜んでいる事を再確認させてくれた一杯でした。

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