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「地魚醤油らぁめん ¥680+味玉半玉 ¥50」@江ノ島らぁ麺 片瀬商店の写真日曜日 晴天 12:00 店内満席 外待ち2名 後客4名

〝ニューオープン 探検記〟

少し前からRDBの新店情報で見つけていたのだが、ある計画と並行しての初訪問を狙っていたので遅れをとってしまった。オープンしてから3週間近くになろうする本日、ようやくチャンスが巡ってきた。

そこで本日は神奈川県内での連食計画を立てて自宅を午前10時前に出発したのたが、一軒目に向かった長津田の新店が定休日で、独特な骨の書かれた黒いシャッターを確認だけはしてきたのだか、やはり新店あるあるの情報量不足を露呈してしまった。しかし本日は連食目的だったので、慌てる事なく粛粛と計画を遂行する。

再び長津田駅に戻ると東急田園都市線で中央林間まで向かい小田急江ノ島線に乗り換えると、自宅を出てから2時間近くかかったが終点の片瀬江ノ島駅までやって来た。夏もそろそろ終わりを告げようとしているが、観光客の姿が多くあり繁忙期のような賑わいを見せている。そんな人混みの中を右手に江ノ島を眺めながら、海の香りに包まれて店を目指して歩いて行く。通り沿いは右も左も秋の生しらすをウリにした飲食店ばかりで心を奪われそうになりながらも、何とか堪えて10分ほど進むと味わいのある江ノ島駅が見えてきた。改札横の踏切を越えると、ちょうど正午のサイレンが鳴り響いた時だった。江ノ島駅の裏側にあたる路地を行くと、こちらの手書き看板が飛び込んできた。店の前まで近づくと、湘南っぽく愛らしい外観が出迎えてくれた。

実は初訪問が遅れた理由の一つに、鮮魚系が得意でない事が挙げられる。いや得意でないのではなく、錦糸町の超人気鮮魚系ラーメンがトラウマとなって今でも悪い印象を引きずっているのが本音だ。そんな思いを知ってか知らずか、店頭には本日のスープに使われた鮮魚の種類が書かれてある。〝宗田カツオ〟〝イナダ〟〝ハモ〟他となっているが、どれも相模湾で引き揚げられた地魚ばかりである。なので不漁が続くと店を閉める事もあるらしく、店主さんの強いこだわりが感じられる。

ちょうど正午過ぎの来店となったが行列は2名だけだったので、外待ちイスに腰を掛けて店先の様子を眺めてみる。白のれんが掛けられた入口前には、トタン屋根が軒先となった待合スペースが設けてある。海の家風のウッドデッキには4席の外待ちイスが置かれてあり、夏場でも暑さをしのげるようになっている。そんなウッドデッキには鳥の足跡が書かれてあったりと遊び心も見え、和やかな雰囲気の中で待機する事が出来る。

先客が店を出て行くのを見ると、ピーチサンダル姿から地元の熟年夫婦と思われるが、外待ちしている私にも「お待たせしたね」と一声かけて店を出て行くのだ。なんて素敵な街の方々なんだろうと、改めて江ノ島の魅力を感じられた。外待ちも5分程で入店の案内があり、快い気持ちで店内に入った。

駅近くの三角地を利用した建物で、お世辞にも広いとは言えないので券売機は設置されておらず、ひとまずはカウンターに腰を下ろして卓上メニューを一読する。やはり筆頭にあるのは鮮魚系を思わせる〝地魚〟と書かれたメニューがオススメのようなので、その中でも最前列にある醤油系に味玉を追加しようと思いホールスタッフさんの案内を待った。お冷のグラスが配られたタイミングで注文を終えると、明るい店内を見渡してみる。

狭い敷地を最大限に活かすように背中合わせのカウンターが、調理場側と窓側の二枚分けて設けてある。今回は調理場サイドに座ったが、店内には家庭用エアコンが一基しか設置されていないので室温が高くなっている。入口の扉にはエアーカーテンもあるが本日は稼働してないようだ。何よりも暑そうなのは調理場のご主人で、額に汗して実直にラーメンに向き合っている姿に信頼が置ける。そんな店内をお二人で切り盛りされているが、強面のご主人さんの真面目な仕事ぶりと女性スタッフさんの明るく親切な接客のコンビネーションには新店ならぬ落ち着きがある。そんな安定感のあるアットホームな雰囲気の中で待っていると、着席して6分で我が杯が到着した。

その姿は昔ながらの雷紋柄をデフォルメした図柄が胴に朱赤で描かれたオシャレ切立丼の中で、今風な器とは異なるシンプルで素朴な表情を見せている。派手な要素を一切見せないシックな色合いで、苦手意識のある鮮魚系への不安を取り除いてくれる。今まで出会った同タイプからは得られなかった安心感に包まれながら、急須に入れられた赤いレンゲを手にした。

まずはスープをひとくち。表層にはラード油や鶏油などの動物性オイルにはない、魚介系特有の鈍い光を蓄えている。それは魚の銀皮を潰して炊いたように、いぶし銀の如く液面で光を放つでもなく揺れている。細かいながらも液面を覆い尽くす独特の油膜にレンゲを沈めると、圧倒的な香りが押し寄せてきた。それは本日の食材の要と思われるイナダの香りで、乾物にはない鮮魚のアラならではの艶かしさを持っている。しかしこの手のスープに付き物の生臭さは香りからは感じないので、ためらいなくスープを口に含んでみた。そこには想像を超える熱さが唇に伝わってきたが、そんな灼熱スープの中でも旨みの存在をハッキリと感じ取れた。通常ならば皮膚感覚が優先して味わいどころの話じゃないはずが、しっかりと鮮魚の旨みに満ちていると感じた。スープを飲み込み鼻から息を吐き出すと、そこには色情を感じさせる艶やかな残り香が後を引く。合わせてある醤油ダレも穏やかだが、鮮魚出汁の力強さに負けていない。きちんとスープに輪郭を付ける役割を果たしながらも、過度な演出はしていない抜群のバランスで支えている。たったひとくちのスープを飲んだだけで、出汁の旨みの由来が出世魚のイナダという事もあってか、薄味仕立ての〝ブリの煮付け〟を食べているかのような世界に引き込まれていた。これは鮮魚系への苦手意識が覆るようなスープとの出会いになってしまった。

興奮冷めやらぬままに麺を引き上げてみると、麺上げまでジャスト130秒の中細ストレート麺が現れた。黄色い麺肌と麺の折り返し跡が波を打ったように見える個性的な麺は、地元片瀬の製麺所から卸されている麺らしい。つけ麺用の太麺とは仕入れ先を変えているようだが、どちらの製麺所も都内では聞きなれない湘南ブランドだ。地産地消にこだわりながらも、ご主人の目利きに合った麺を楽しみに一気にすすり上げると、ひと息では吸い込めない程の麺の長さに驚いた。およそ30センチに切り出しされた麺を勢いよくすすり込む回数が増える度に、スープの出汁の旨みと香りが寄り添ってくる。それが非常に心地良く、初めから思わず何度も何度も麺を手繰ってしまった。ご主人の丁寧で細かい湯切りがテボさばきからも伝わってきたが、余分な水分を取り除いた麺上げ工程が、滑らかな麺質に反映されているようだ。スープとの絡みが良いのも、湯切りの精度の高さが表れている。

具材の豚ロースが半分にカットされて盛り付けてある。初見では低温調理による淡いロゼ色を見せていたが、麺に夢中になっていた間に熱々のスープで加熱されて完全に火が入ってしまった。なので若干パサついた舌触りになってしまったが、薄味でも豚肉自体の品質が良いので過剰なスパイスなどに頼らなくても旨みを発揮していた。

追加した味玉は一個入りでなく半玉のトッピングとなっているが、価格も50円なので追加しやすい設定となっている。半カットされた味玉は提供前に温め直す事が難しいので冷たいものが多いが、スープが熱いおかげで私が口にした時には熱々の味玉となっていた。素晴らしいのは温度だけでなく、黄身の熟成に関しても眼を見張るものがあった。温められた黄身がネットリと舌を覆ったところへスープを流し込むと、また新たに魚卵でも食べているような風味が生み出される。

かなり太めのメンマからも手作り感が伝わってくるような発酵臭を残した下処理と味付けが絶妙で、噛みしめるたびに発酵食品ならではの香りが、にじみ出てくるオリジナリティあるメンマに仕上がっている。硬さのある歯応えを残してはあるが、繊維はちゃんと解けて消えていくように仕込まれているのが素晴らしい。

薬味のネギは、あくまで脇役として香りも穏やかに控えてある。丁寧に水にさらされてクセを取り除いた薬味なので、スープに大きな変化をもたらす事なく風味づけだけに徹しているようだ。

中盤からは麺の滑らかさよりも歯応えを強調してくるような麺質に変化していたが、決して退化ではなく進化していると感じた。終始、様々な驚きを与えられながら気が付けば丼の底が見えていた。

大満足で後会計を済ませる際に、心よりの感謝の気持ちを込めてお礼を告げて後客に席を譲った。店を後にする時に思ったのは、会話の内容からは江ノ島が地元ではないような店主さんだが、すでに江ノ島の皆さんに愛されていると伝わってきた。このラーメンならば地元にだけでなく、身体やお財布にも優しいので人気店になるのは間違いないと思った。と言うより絶えず来客が続いているので、もう人気店となっているようだ。

連食計画の一軒目にはフラれたが、このラーメンが一杯目で良かったと心から思いながら、もう一つの目的である平塚のサウナに向けて出発する事になった一杯でした。

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