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「濃厚イカ煮干しそば」@寿製麺よしかわ 川越店の写真「鬼が出るらしいぞ」
ある日の夏、そんな噂が巷を流れた。
あの男たちがそんな噂を聞いて放っておくわけにはいかない。
久しぶりにラーメン隊が集められた。
全員集合だ。
全員が集合するのはこれが最後になるかもしれない。
タイ人風の男も前日入りで駆け付けた。
するとあの男からLINEが入った。
「ちと早く着いたが大丈夫か?」
何年振りか・・・
一本食いの助手席には数日前にヘラブナ釣りをしてこんがりと腕に日焼けをしたあの男がふてぶてしく座っている。
ラーメン隊の柱だ。
煮干し柱のヤスヒロさんだ。
「今回は難しい任務になりますが、ヤスヒロさんがいれば安心ですね」
彼は今までどんな鬼であろうと倒してきた。
彼にかかればどんなに濃い煮干しであろうと、臭いスープであろうとたちまち胃袋に収めてしまう。
彼の身にまとっている脂肪は前回会ってから何キロ分増えたのだろうか。
数々の戦いの記録が体に表れている。
よーく彼の体を見てみる。すると、あったはずの首がない。
いや、そんなはずはない。しかしどこを見渡しても首がない。
これも戦いの証だ。そういうことだ。
しかしまだ、彼は元気で何よりだ。


一本食いの車で鬼が出るという、うわさのよしかわ山へ向かう。
これから戦いに行くのだが何となく気分が高揚する。久しぶりに揃ったからだろう。
よしかわに到着すると食券機を見る。
存在感を示す【濃厚イカつけ麺】
「上弦の鬼だ」
これを倒せるだろうか。
ヤスヒロはもちろん大食い旦那も、私も【濃厚イカつけ麺】を頼む。
タイ人風の男と一本食いで他の雑魚鬼を相手している間に我々3人で上弦の鬼と対決する。
一本食いは【夏野菜の冷やし煮干しそば】というかわいい鬼を相手する。
テーブル席に5人が座りこれまでの思い出話や近況などを話す。
「資格は取れたのかよ」
「資格が取れないんだよ~来月また試験があるんだよ~受かる気しねー」
相変わらず資格は取れてないらしい。
「仕事は大変なのか?」
「大変だな。でも前の会社の方が暑かったな」
そんなとき、嫌なにおいがした。
「奴が来た」
緊張感が走る。
「おまちどおさま」
来た瞬間からとんでもない匂いだ。
「これが上弦の鬼か、思っていたよりも手ごわそうだぞ」
皆臨戦態勢に入る。
しかし我々も日ごろからラーメン隊としての鍛錬を積んでいる。
そう簡単にやられることはない。
一斉に戦いが始まる。
大食い旦那も勢いよく麺を掻き込む。
ヤスヒロはうまそうに食べている。
「うまい!」
いつものように麺を掻き込んでいる。
「うまい!」
さすがはラーメン隊だ。どんなラーメンであろうと容赦はしない。
しばらく食べ進んでいたら、急に箸が止まってしまった。
濃いイカのエキスがボディーブローのように腹にダメージを蓄積していた。
「これは厳しい」
「スープ割りを入れると薄まっていいよ」
大食い旦那は早くも技を使っていた。
この男も百戦錬磨だ。味変をしたり、水で流し込んだりいろんな技を持っている。
スープ割りを入れると、なるほど薄まっていい。
しかしそれでも濃い…
しまいには麺をそのまま食べ始める…完全にやられた。
自分の負けだ。
残るはヤスヒロに託すしかない。
「ヤスヒロ、スープ割りはいらないのか?」
「無理するなよ。残してもいいぞ」
するとヤスヒロは拒否し、何やらぶつぶつ言い始めた。
「君らと俺とではそもそも価値基準が違う!俺はスープ割りはしない!俺は俺の責務を全うする!絶対にラーメンは残さない!」
ヤスヒロの食べる勢いはさらに増していく。

「煮干しの呼吸…壱ノ型、 スープ割りせずにスープ飲み干す…」
グボオオオオオーー
器を両手で持ち残ったスープを直に飲み始めた。
「まさか!あの濃い臭いスープをそのまま飲むのか!」
「そんなことしたらヤスヒロさんの内臓がやられてしまうぞ!」
「ヤスヒロさん!!!」
スープを完全に飲み干した。
勝ったのだ。ヤスヒロはこの戦いに勝ったのだ

食べ終わったヤスヒロに
「チャーシュー食べるか?」と聞いてみる。
「いいのか?むふーん」
とぺろりと平らげた。
もう限界なので残った麺も食べてもらったが、それもぺろりと食べてしまう。
さすが柱だ。この男は自分なんかとはレベルが違う。
一本食いはゆっくりと【夏野菜の冷やし煮干しそば】を食べている。
「しょっぱいなー」

「ヤスヒロ、まさかまだ余裕あるんじゃないか?」
「まぁな」
「HotMottだったら何が食える?」
「まぁ、メンチカツくらいならいけるなー」
彼がやられるところは想像できない。
全く頼もしい。

ヤスヒロは戦いには勝ったがそのダメージは徐々に体へ蓄積されていくだろう。
いずれは痛風へと向かうことだろうが、それまでの間ヤスヒロは平和のために黙々と鬼を退治していく。
「今度は君たちが、ラーメン隊を支える柱となるのだ。俺は信じる。君たちを信じる」
そうして彼は地元へ戻っていった。

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