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2020年11月4日の大崎裕史の今日の一杯

東京都千代田区麹町

特製中華そば(他の日のつけそばの感想も)

約40日間の長期休業を経て、10月12日に全面リニュアルオープン。メニューや味はもちろん、店内も全面改装。まるで新店のオープンだ。そういや店名もアルファベットから「ソラノイロ artisan noodles」になってるから新店扱いでも良いだろう。店内には製麺室を備え、厨房はかなり広めになり、大きなステージのよう。

店名の「artisan」は職人のこと。店主の宮崎さん自ら製麺をし、スープを炊く。コロナ禍により、いろいろ悩み、考え、そして導き出したリニュアル。新生ソラノイロの船出である。Twitterなどを遡って読むと「ラーメン屋としての原点回帰、商売の原点回帰、ソラノイロの原点回帰、自分自身の原点回帰」と書いてある。

最初は基本メニュー、とは思いつつも特製じゃないと入らない具があるので特製中華そば1400円を注文。日替わりで4種類のチャーシューを用意し、それを券売機の上に表示している。あるときは「モモ低温調理・鶏胸肉低温調理・バラ煮豚・ロース低温調理」、別の日に「肩ロース低温調理」「モモ焼豚」なども見かけた。その四種類がど〜んと乗っている特製は見た目にも食べてみても圧巻。肉好きなら、これ一択。そして今どきは珍しいワカメも特製にしか入らない。(つけめんにはちょっとだけ乗る)

清湯醤油だがあっさり、というのとはまた違って厚みのある「重層」スープ。あるいはそれぞれの味がバランス良くまとまっているので「重奏」でもいいかもしれない。それぞれの食材が旨味を奏でている。麺は自家製で日清製粉が力を入れている「金斗雲」を使用。元々はうどん用に開発された小麦粉だがそれをラーメン用に使い、個性的でおいしい麺に仕上げている。食べ進んでいるうちにあることに気が付いた。私としてはワカメの時点で気が付かなきゃダメだが、20数年前、宮崎さんと初めて会い、一緒に食べに行ったお店の味に近い。そうか、「原点回帰」にはいろんな意味が込められているのだな、と思った。
斬新ではない分、「普通」と言われるかもしれないが長く幅広い層に愛される味を作るのはかなり難しく、今回はそれを目指したと言えよう。そしてそれがいい感じでできあがったようだ。

日を改めて今度はつけそばを食べに行った。肉好きなので瀬戸のもち豚つけそば1380円である。さらに豚足380円をトッピング。ラーメン店で「豚足」と言えば大阪の行列人気店「カドヤ食堂」。ヒントにしたかもしれない。つけ汁に入れるために器も丼にしてくれた。(通常はつけそば用の小鉢を使う)
麺はもちろん変えていて、つけそば用はもち小麦などを使った中太麺。これが麺だけ啜っても食べられるくらいにおいしい。そしてつけ汁は懐かしさを感じるくらいの私好み。動物系と魚介のバランス、甘味酸味、昔はよくあったタイプだが最近の新店では出会うことが少なく、これは逆に新鮮。豚足は柔らかく煮込まれ、毎回頼みたくなるほど。そして焼売(1個150円で2個注文)も頼んだがこれは野菜の食感がよく、他とは違って個性的。何もつけなくても実においしい。

書くことが多すぎて、長くなったがこれでも書きたいことの半分くらい。
そしてそして、10月27日からコッペパン専門店「かえでパン」が本店併設店としてオープンしており、近いうちに夜営業を「夜空ノイロ」として始めるようだ。アフターコロナを見据えた大転換だが、いろいろ食べ歩いた宮崎さんの智恵と工夫が発揮されている。「夜空」もどんなアイデアが登場するのか、楽しみだ。

大崎裕史
大崎裕史

(株)ラーメンデータバンク取締役会長。日本ラーメン協会発起人の一人。東京ラーメンフェスタ実行委員長。1959年、ラーメンの地、会津生まれ。広告代理店勤務時代の1995年にラーメン情報サイト「東京のラーメン屋さん」を開設。2005年に株式会社ラーメンデータバンクを設立。2011年に取締役会長に就任。「自称日本一ラーメンを食べた男」(2024年6月末現在約14,000軒、約29,000杯実食)として雑誌やテレビに多数出演。著書に「無敵のラーメン論」(講談社新書)「日本ラーメン秘史」(日本経済新聞出版社)がある。