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「特製らーめん ¥1100」@らーめん よっちゃんの写真土曜日 曇天 11:00 先客5名 後客3名

〝ニューオープン パトロール〟

前食の新店パトロールを終えると、何とか運行本数の少ない帰りのバスに間に合い所沢駅まで戻ってきた。それは昨夜から連食予定を計画していたコチラへの移動のためである。連食先が同じ西武線沿線と思い移動手段を安易に考えていたが、前食の所在地が高速機動装置を備えてない歩兵民には非常に難関な場所だったので所沢駅に戻って来るまでに一時間以上も要してしまった。

再び戻って来た駅ビルでコーヒーを飲みながら胃袋に小休止を与えると、西武新宿線に乗って連食予定のコチラを目指した。各停しか停まらない最寄りの上井草駅までは30分、しかし駅前からは近いようなので北口改札を出て踏切を渡り南口にある店を目指して行った。

するとあり得ない光景が目の前に広がっていた。店の入口に貼られていたの臨時休業を知らせる貼り紙だった。ここまでなら良くある話なのだが、貼り紙の内容に目を疑った。そこには

『明日5月7日(金) 休業させて頂きます ご迷惑おかけします』

本日は6月7日なので、まさかの一ヶ月間違いで告知していた。私も直前にはTwitterで確認をしていたのだが5月下旬にオープンした店なのに、その間違いに全く気が付かなかった私もどうかしていた。前日から所沢に泊まってまでの連食計画は藻屑の泡と消え去った。



と、ここまでは実際には昨日の話で、本日はリベンジをかけて自宅から再び上井草駅に乗り込んできた。半世紀の間に一度も来たことのない駅に、二日連続で降り立つとは思いもしなかった。昨日と違って雨が降っていない事をありがたく思いながら店へと向かった。本日は自宅から向かったので店のある南口に直接出られた。目の前右手にはお祝いの胡蝶蘭が置かれた店先がすぐに見えたが、開店40分も前なので準備中の看板の前には並びもない。駅前の商店街にただひとりで立っているのも滑稽に見えるので、ひとまずは駅前のベンチにて張り込みを開始する。

そのまま店頭には動きのもなく定刻2分前を迎えると、早開けとなったのか店内に人が入って行った。それに続いて学生たちも店内へと吸い込まれて行くのも見えた。遠くからその様子を見届けてから六番手で私も入店となりカウンターに腰を下ろした。

券売機は設置されておらず卓上に置かれたメニューから品定めをするが、潔いほどにシンプルなメニュー構成だ。迷う必要はないが、オープン祝いも兼ねて特製を選んでお願いすると店内を見回してみる。L字カウンターだけの客席の店内を、多分ご夫妻と思われる若いお二人で切り盛りしている。きっと昔はヤンチャしていたんだろうなと思える雰囲気だが、接客も丁寧で心地よい。テボの振り方やスープの張り方はぎこちなくみえるが、真っ直ぐにラーメンを作っている姿は好印象だ。調理場内にも最新鋭の厨房機器があるわけでもなく、至ってシンプルな厨房となっている。必要最低限の調理道具で生み出すラーメンに期待しながら待っていると、着席して6分で我が杯が到着した。オープン直後にもかかわらずオペレーションの速さに驚いたが、絞り込んだメニューがスピードアップにつながっているのだろう。

その姿は白磁の鳴門丼の中で、店構えとも共通するシンプルな景色を見せている。これで特製なの、と言う意見も聞こえてきそうな派手さのない盛り付けではあるが、価格設定は評価の対象としないので費用対効果の事は考えずにレンゲを手に取った。

まずは赤銅色のスープをひとくち。液面には細やかな粒子の鶏油がキラキラと店内の照明を乱反射して美しく光り輝いている。視覚的にも食欲を刺激されて、スープにレンゲを沈めると嗅覚を通じて食欲に訴えかけるのが、鶏ガラ清湯スープならではの軽やかな動物系の香りと鰹節主体の魚介出汁の香りだった。久しくこのタイプのスープに出会ってなかったので、香りだけでテンションが上がった。高まる気持ちを抑えながらスープを口に含むと、先陣を切ったのは出汁の旨みではなく醤油ダレのキレの鋭さだった。高めに設定してはあるが、決して塩気が強すぎるわけではなくシャープな香味を感じる江戸風なカエシだ。調理工程を見ていると カンロレードルをカエシ用に使われていたが、目一杯の分量を入れずに2mmほど少なめに計り入れる点に強いこだわりを感じた。もしレードル目一杯にカエシを入れたなら、私には塩っぱすぎて飲めなかったかも知れない。わずかな分量の違いでも結果として大きく左右するカエシの重みを理解して実行されていた。

自家製麺ではないが麺上げにもこだわりが見られた。ジャスト115秒の茹で時間が表すように120秒ではご主人が納得できなかったのだろう。たった5秒にも妥協しない信念が、麺上げ作業からも垣間見られた。そんな店主さんのお眼鏡にかなったのは外注の中細ストレート麺で、持ち上げた箸先からは全粒粉配合かと思えるような色づきの強い麺肌だ。加水率が低いのか、醤油ダレのカラメル色素が早くも沈着している。言い換えればスープとの一体感が想像できる麺質のようだ。そんな麺をすすってみると店主さんの狙い通りに、ふっくらとしたハリがありながらも滑らかな口当たりで滑り込んできた。このタイプの麺によくあるのは、滑らかさが仇となって咀嚼から逃げようとする歯切れを悪さを持ち合わせる方が多いが、この麺にはそれを感じない。滑りは良いが奥歯できっちりと捕らえる事ができ、奥歯を跳ね返すくらいの弾力もある。ベストの食べ頃が短いと思われる気むずかしそうな麺を思い通りに操っていて驚いた。

具材のチャーシューは豚バラの巻き型で煮込まれていたが、糸巻きの甘さが仕上がりの形となって表れている。丸い円状ではなく〝への字〟状になっていたが、中心部への煮汁の浸み方を計算しての糸巻きなのではと思ってしまうほどに豚バラ肉全体に均等に味が浸みていた。肉質自体も赤身と脂身のバランスに優れた部位が使われていて、柔らかな食感の中にも赤身の歯応えと脂身の甘みが楽しめた。

独自の〝味玉論〟があり評価が厳しくなりがちなのだが。こちらの煮玉子は満点まであと少しと非常に惜しい仕上がりだった。まずは下茹での半熟加減の均一性が完璧で、その半熟の黄身をゲル化させる熟成期間も経てある。その上に卵本来のうまみを残しながら浸けダレを浸み込ませてあり、どこの味玉を参考にして作られたのだろうかと聞きたくなるような素晴らしい仕込み内容だった。ただ一つ残念なのは提供温度の冷たさである。せめて常温以上ならば採点はより高くなったであろう。さらに温め直してあれば、余裕で80点を越えていたと思うくらいに仕込みはパーフェクトだった。※ もしかしたら昨日の臨時休業で丸一日熟成が進んだ結果が良かっただけかもしれないとも思うが、そうでない事を信じたい。

そんな完璧に近い煮玉子に反して、手仕事感が伝わってこないのは極太メンマだ。これは一方的な願いで現時点では大変だと思うが、いずれオペレーションが落ち着いてきたら是非ご主人自らの手でメンマを仕込んで欲しいと勝手な思いが湧いてきた。それは煮玉子の出来から店主さんのセンスの良さを感じたので望んでしまうワガママだ。

薬味の青ネギと白ネギにも、ひと手間かけられて水にさらして余計な香味を取り除いてあった。そんな繊細な薬味は出しゃばる事なく脇役に徹していた。

中盤からは麺の表情も和らいできて歯応えの強さは弱くなってきたが、自身の早食いの特性を活かして麺がダレる前に完食できた。終盤のスープには微かに塩気が強く重なってきたので飲み干す事は出来なかったが、ほとんど完飲していた。

採点では80点を越えなかったが、益々ブラッシュアップを重ねられるのが期待ではなく、明らかに近い未来で見えると思った。非常に偏った趣向の偏屈人間を魅了してくれるラーメンに出会えた事を心より感謝する一杯となりました。

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