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「味玉醤油らーめん(並盛)¥900」@純手打ち だるまの写真土曜日 晴天 11:15 先待ち8名 後待ち10名以上

快調に目覚めたものの昨夜の呑みあとのラーメンの塩分が顔のむくみに表れる。鏡を見ずとも腫れぼったいのが分かる。やはり老化には抗えない。昨晩はベッドに入る前から自然と目が覚めた時間に合わせて店探しをしようと決めていた。

午前10時起床。もう少し早起きすれば候補店の選択肢も増えたのだが難しい時間だ。必然的に自宅から一時間圏内の開店前を狙うことになる。沿線を絞って捜索しているとこちらの店がヒットした。身体的にも清湯醤油系のを欲していたので悩む事なく仕度を始める。

この丸ノ内線には苦い思い出があり乗り換えが分からず方南町と中野坂上間を行ったり来たりした事がある。行き先を間違えようものなら開店前の到着計画が台無しになるので乗り換えアプリを片手に慎重に事を進める。最新の注意を払いながら予定通りの時間に駅に降り立つ。

今回の中野富士見町も初見参である。小さな川添いにあるこじんまりとした駅だ。しかし遠くには新宿副都心のビルがそびえ立ちギャップに驚く。駅前の橋を渡り角を曲がるとすぐ行列が目に飛び込んで来た。土曜日という事もあってか皆さんの初動も早いようだ。ラフな格好のご近所さんから大きなバッグを持つ遠方組まで客層はバラバラ。年配の女性も見受けられおじさんには心強い味方だ。

並んでる間に品定めをしておく。麺は大盛や中盛まで同じ料金のようだ。特製は全部のせとあるが初訪問なのでバランス重視で並盛にして定番の味玉追加だけにしよう。気温は高くないが直射日光を遮るビルもなく風も抜けないアスファルトの上でじっと我慢する。開店直前には行列も倍以上に増え相当の人気ぶりが伺える。

定刻に案内が始まる。カウンター席しか無いようで二巡目を覚悟したがドラフト一巡目の最後のひと席に滑り込んだ。最高のラッキー。入口から離れた後方に並んでいたので気が付かなかったが大きなガラス張りの製麺室がある。製麺室と言うよりは蕎麦切り小屋のようで製麺機はなく麺打ち台が置かれてあるだけだ。外観も内装も洒落てはいるがどことなくホッとする雰囲気。店の方の醸し出す雰囲気もそれを助けているようだ。BGMはちょっと前の洋楽ヒットチャートの常連曲がさらに和ませる。

一巡目に滑り込んだが3ロット目の提供なのでしばし店内を観察する。最初に驚いたのは店内待ちのスペースが多く設けられている事。坪当りの客数を減らしてまでも客の居心地を最優先してるあたりが泣けてくる。次に驚いたのは茹でる直前に生地を手切りしてから押し込み平打ちにして打ち粉をはたく。店主さんの大胸筋と上腕二頭筋は麺を打つためのものかと思ってしまうほど麺への愛情が注がれている。

着席して10分ほど経っただろうか3ロット目の作業が始まった。まずは馬鈴薯澱粉のような打ち粉をはたいた麺を麺茹で釜へ。一度、沸騰は静まるがすぐに再沸騰し麺が対流し始める。その間に具材を準備する。低温焼豚はすぐに盛り付けられるようにステンレス製の皿に整列して並べてある。豚バラ焼豚は茹で釜の上の熱気が当たる場所で脂肪の融点に戻している。この細部までの気配りに興奮を抑えきれない。運びやすいように受け皿に丼が置かれ漆黒の醤油ダレに黄金色の香味油を入れ、そこに透明感のあるスープを注ぐ。ロット毎にスープの味をチェックされてるので更に安心感がある。麺も指先で度々茹で加減を確かめられていた。茹で時間は5分程だろうか満を持して茹でムラのないよう鮮やかな平ザルさばきで麺をすくい上げる。優しくスープにくぐらせ手早く具材を盛る。見事な工程で我が杯が到着。

白磁の切立丼に収まった勇姿は雄々しく力強さを感じる。丁寧に盛られてはあるが独特の麺がそう思わせる要因かも。高まる興奮を鎮めるよう言い聞かせながらレンゲを持つ。

柿茶色の清湯醤油スープをひとくち。鷄ベースの出汁と魚介系の出汁がバランスの取れたデュエットかと思えば乾物系や野菜由来の旨みが重なり合いトリオからのカルテットへと無限の重なりを奏でる。醤油ダレのキレが一歩前を先導するが過剰な主張する事なく調和を保つ。

環境に配慮してかエコ箸と割り箸の二種類が用意されてあるが麺肌がきめ細やかそうなので世論に反して割り箸を手に取った。その箸で純手打ち麺を掴む。角のある割り箸からも滑り落ちるツルツルの肌。箸先からもしっかりと茹でてあるのが分かる。ゴワつきは無くしなやかさが伝わってくる。逃げる麺を口の中へ放り込むとツルッとした肌ながらちぢれ具合で歯触りが変化する。もっちりと纏わりつく様な麺があればスルッと喉奥まで流れ込む麺もある。太さや厚みがどれひとつ同じ麺は無く個性豊かな楽団のようである。その個性豊かな楽団員を束ねる指揮者役のスープは多少の塩気の強さがないとまとめられない事をこの時に気づいた。

純手打ち麺を掲げているが具材も全てが秀逸だった。豚肩ロースの低温焼豚は肉の旨みが出て食感も良い抜群のレア具合。融点まで戻された豚バラ焼豚は漬け込みも味付けも良く脂身の甘みが旨みに変わっていた。

珍しい金絲メンマは細切りメンマとは別物で穂先メンマを割いている様な繊細さで発酵食材ならではの香りが残っていて素晴らしい。青みのほうれん草は歯応えを残す下茹でではなくしっかりとボイルされ特有の青い香りがする。

追加した味玉もベスト3に入る出来栄え。薄っすらと色付けされた白身の旨みに圧倒されていると中からはベルベットな紅緋色の黄身が姿を見せる。浸透圧により塩分が入り込み黄身の甘さを増幅させている。半熟具合も流れ出る手前のベストタイミングと圧巻。

何気ない薬味の白ねぎだが程よくスープで加熱されて甘みを生み出しスープや麺とひとつとなる。夢中になって食べ進めていたが、ふと気付いた。具材のどれもが麺との相性を重視されているのだ。最初は味の確認のために具材ひとつひとつを単体で食べていたがひと通り味見が終わると麺を頬張るたびに具材それぞれが麺に寄り添ってきて絡み合い胃袋に収まって行く。極細の金絲メンマのしなやかさも、よく茹でたほうれん草の柔らかな食感も細かく切られた白ねぎのシャキシャキ感も全てが麺を引き立てる様に作曲されているのだと思うと感服した。

やや強めのスープも丼を傾け完飲した。清湯醤油ラーメンとしては亜種かも知れないが心から感動できるラーメンに出会った。奏者となる麺と楽曲となる具材を指揮者となるスープで奏でるハーモニーはまさにフルオーケストラ。食後も店先には大勢の行列があったが続けて並んでも良いかなと思える一杯でした。

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